武内Pは誰だったのか問題
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武内Pは誰だったのか問題

2015-10-23 23:00
  • 3

 もう少し自由に、適当にお話を。

A:武内Pの過去は結局描かれなかったね、という感想を目にした。武内Pはアイドルのプロデュースに失敗して、アイドルを逃した過去を持っている。アニメが終わった時点で、そこへの解明ももうちょっと期待していたファンもいるということだろう。しかし、アイドルたちがメインだし、そこを暴いてもしょうがないよね、という納得の仕方はなんか違う。だって、だってさんざん常務とのポエムバトルをやったじゃん!
 だから、武内Pの過去には、あえて詳しく描かなかったことで生じる意味というものがあるんじゃないだろうか。その意味をもう少し適当に考えることにしよう。

B:そもそも武内Pは、明るいオモテ面として、新米のP、アニメ内でどんどん成長していく若者、としての側面が強く見えていた。中の人の若さも大いに手伝って、彼は単なる出来上がったキャラクターではなく、アイドルとともに成長していく、アイマスに参入していくプロデューサーだ、ということが意識づけられたものである。だから、彼がみくにゃんにちゃんと言わなかったり、未央を傷つけたりしたことも含めて、彼がもまたアイドルと同じく未熟であり、ともに歩んでいく仲間に近づいてくるんだ、という予感があった。
 まとめると、「未熟な新米Pの成長物語」が表にあるというところか。
 ところが、担当アイドルが逃げた、という話はまったく別の物語を思わせる。それは彼にとってCPのアイドル達は、本来の担当アイドルではなかったかもしれない、ということである。彼はアイドル達と非常に距離を置いて接しており、これはほとんど二期まで変わりない。もちろん笑顔を見せるようになったが、彼の本領であるちょっとポエムちっくなところは、主に常務とのバトルで表現され、最後のNOMAKEで卯月に「詩人みたいですね」と言われるまで、披露することが少なかったのだ。お仕事以外で積極的にアイドル達と交流するということはほとんどなく、あくまで積極的なアイドルが彼に尋ねる、気にする、ということによって交流を保っていたように感じられるのだ。だから、問題が発生してから追いかける羽目になっている。
 これははっきり言って、担当Pとしては異常である。アイドル自身がどんどん先に行って追いかけきれないならともかく、CGはすべて武内Pの企画がまず先にあるわけで、担当Pであるならそれを元にもっと自分から話しかけてもおかしくはないはずだ。だから彼の属性として、卯月Pでも未央Pでも凛Pでもない、NGPでもない、「担当PでないP」としての側面が横顔に張り付いている、ように見える。
 これを「担当アイドルを失ったPが、別のアイドルをプロデュースすることによって回復していく物語」として設定しよう。

C:もちろん主軸となる物語は、新米Pの成長録であることは間違いない。だがもう一方の面に注目していくと、なぜこの過去を深く突っ込まなかったのかという答えが見えてくる。過去に逃がしたアイドルたちに誰が当てはまるのか、という妄想も何度か見たことがあるが、仮に未出演のアイドルだとすると、武内Pの動き方に次のような説明がつけられてしまう。
 担当アイドルを失ったPが傷心のまま、別のアイドルを集めてプロデュースをするとどうなるか。自分の内心にはそのアイドルが残っているため、積極的にそのアイドル達と絡む気になれない。もちろん、仕事は好きだし、企画を立てるのも別に嫌ということではないが…あえてコミュニケーションを取りたいとは思わないだろう。むしろ中途半端に心を残したまま、彼女たちと接することに抵抗を感じてしまう。/デレステで、ものすごく執着している担当アイドルがいないと、いくら他のキャラの親愛度をためてもコミュを見る気になれないのと同じ心理状態と考えて欲しい。/ところが、その態度がかえって目の前にいるアイドル達を傷つけ、暴走させる結果を産んでしまったのである。ここで彼は一度悩み、「本人が選んだ道だから」と自分を納得させて、真正面に向き合うことを避けてしまう。だが、別のアイドルに励まされ、Pは過去のアイドルを振りきって、目の前にいるアイドル達のプロデュースに全力を尽くすことを誓う。
 これが1期の武内Pだ。わかるだろう、過去のアイドル達を具体的に設定すると、この時点ではそのアイドルの未練を振りきって(嫌な言い方をすればそのアイドルを見捨てて)CPを選んだ、という物語になりかねないのである。主旋律としては、新米Pが「私はあなたのプロデューサーです」という担当Pへと成長していく物語であるのだから、もし誰かの元・担当Pであることが強調されては絶望しか生み出さない。重ねて言うが、これは1期の時点の話である。

D:Cでの強調が最低限に抑えられたことは、2期での武内Pの動き方への目線に制約を与えていることにはなっただろう。大まかに言って、2期の武内Pのテーマとしては2つの疑問がある。1つ目は、なぜあれだけCPに執着しておきながら、その解体に近づきそうな凛とアーニャのPK行きを許したのか、2つ目は謎のポエム力である。
 これはそもそも武内Pが最初からCPやCPのメンバーのプロデューサーではなかったと仮定すると見えやすい。彼は1期でかつての担当アイドルを振りきって、目の前の少女たちに集中しようと考えるようになった。それは要するに、彼女たちのプロデューサーになりたいと思ったというよりも、傷つけてアイドルの道を閉ざしかけたことに対する責任感という方が近い。彼女たちが大好きで堪らないから、だからこのプロデュース方法が絶対一番いいんだ、というよりも、「彼女たち一人ひとりの歩み方を保障しなくては、そのためのプロジェクトを守らなくては」という考え方である。責任感から出発したものだから、しなくてはならない型の方向に行きやすく、Pの企画がかえってアイドル達にとっては我慢してこなさなくてはならないものになりかけることもあった(17・18話など)。しかし、責任感でプロデュースしているだけでは、アイドルにとってもPにとっても、面白くなるわけがない。武内Pにとって笑顔になる(楽しむ)ことは、自分が選んだアイドルが、CPだろうとPKだろうと、新しい衣装、曲、踊りを得て、何より新しいステージに立つことが出来る未来だ。それは同時に、彼がかつて失った(と同時にかつて選んだ)アイドルたちが、帰ってこれるかもしれない未来である。
 簡単に2期のPの物語を結論づけると、彼はCPという企画のプロデューサーから、一人ひとりのアイドルのプロデューサーへと成長する(それが「あなたは私が選んだ」「私はあなたのプロデューサーですから」といった担当Pへの変化・成長)話なのだ。それは同時に、CPという企画の枠からの解放も意味している。自分が選んだアイドルが新しいステージを得られるなら、それはCPでなくても構わない。同時にそれは他のPにとっても同じこと、つまりCPの二期生として自分の担当アイドルが出てもまったく問題はない、むしろ出して欲しい、ということなのである。だから彼はCPのプロデューサーを続ける一方で、彼女たち一人ひとりのプロデューサーとしても活躍していく。
 こう考えていけば、あの謎のポエム力の意味もいよいよ分かってくるだろう。彼が本来アイドル達とやりたかったコミュニケーションは、ポエムだったのだ。彼は責任感から本来の担当Pになりきれておらず、本当の意味で自分が楽しむためにプロデュースすることをぐっと我慢していたのだ。決して蘭子から魂を学んだとかそういうあれではない

E:我慢してきた、と聞くと誰かを思い出しますね。そう、卯月である。
 実は武内Pと卯月は非常によく似ている。それは今まで述べてきた「かつての仲間(担当アイドル)を失っている」ということだ。もし卯月や武内Pがそのかつて周りにいた人たちこそが、自分が一緒に歩みたかった人で、もうその人達とは歩けないのだと諦めてしまっていたとしたら、1期が非常に残酷な物語になり、そして2期で初めて二人は救われたと言えるだろう。これは別にCPが真の仲間ではなかったとかそういうことではなく、周りに仲間として信じてもらえたことによって、我慢せずに打ち明けられるようになったということなのだ。
 武内Pとは対極的に、あまり我慢しなかった人もいる。常務だ。
 個人的に、常務に関しては個別にまとめたいと思っているが、彼女は武内Pの影であったと考えると非常に分かりやすい。常務は美城のカラーを根付かせるという使命感を持ちつつも、我慢せずに自分の好きなアイドルを推して理想を描こうとしたプロデューサーであり、何より失っていないPである。それとポエムを話す。つまり失っていない武内Pは常務になっていたのかもしれないのである。常務と武内Pの対決が頻繁に描かれたのは、信頼のないまま傲慢に担当アイドルをプロデュースしようとすればどうなるか、という対比ではなかったか。だからこそ、武内Pは最後に常務と向き合うのだ。
 まあこの辺はもう少し丁寧に考えるべきだろう。おそらく間違い、ということでよい。

F:つまり、武内Pは新米Pであると同時に、担当アイドルを諦めてしまったPでもあったのである。繰り返しになるが、その過去をいちいち掘り下げなかったということは、後者の意味はあくまでも側面であって、基本的には成長物語ということで良いはずだ。かつての担当アイドルに思いを馳せるのは、そのPだけで良いだろう。
 してみると、彼がようやくCP一人ひとりのPになれたということは、武内P流のアイドル達に捧げるポエムが、特別編では見られるかもしれない。どうですかね。

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なるほど、たしかに20話あたりで守るべきはCPという形ではない。ということに彼は気づきはじめ、22話でそれを結論したように思えますね。


23時間前
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>>1
コメントありがとうございます!
実はそのこと自体は比較的分かりやすいのですが、ではなぜCPに固執していたのか、が分かりにくいのではないかと思っています。まだ担当Pになっていなかったというのが私の考えですが、どうでしょうかね。
12時間前
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担当じゃなかったからという結論は非常に面白いとおもいます。
自分はこれは13話までの成功体験と常務のプロジェクト白紙化宣言により、CPそれ自体の価値を証明する必要があったためと考えます。CPだからメンバーは笑顔になれる。この結論が間違っていたことは卯月の脱落、TPなどで証明されてしまいます。
22話のライブの成功を持って、プロデューサーは守るべきはCPではなく、アイドルの笑顔であると結論した。と考えています、その直後にその思想の体現者である卯月が壊れたわけですね、
4時間前
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