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暫定2車線の高速道路 「損失は巨額」
10月24日 18時12分

暫定2車線の高速道路 「損失は巨額」
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全国の高速道路や自動車専用道路のうち、上下線をポールなどで区切って暫定的な2車線の対面通行にしている区間では、車が対向車線にはみ出す死傷事故が相次ぎ、この10年間に300億円を超える損失が生じたほか、速度制限による経済的な損失も1年間に175億円に上るという分析結果を会計検査院がまとめました。
4車線道路として計画された全国の高速道路や自動車専用道路では、交通量が少ないなどの理由で、暫定的に片側1車線の2車線道路として運用されている区間がおよそ2400キロあります。
このうち、およそ1750キロは中央分離帯を設けずに簡易な樹脂製のポールなどで上下の車線を分ける対面通行になっていて、会計検査院はこうした区間で生じる経済的な損失を分析しました。
その結果、車が対向車線にはみ出す死傷事故が、高速道路会社3社が管理する区間だけでも去年までの10年間に677件起き、119人が死亡していて、人的な損失のほか、道路の補修や交通渋滞、被害者の苦痛などを金額に換算すると経済的な損失は314億円余りに上るということです。
また、ポールなどで車線を区切る対面通行区間は中央分離帯が設置されている区間より制限速度が時速10キロ抑えられていて、これによる物流の遅れなどの損失は、年間175億円に上るということです。会計検査院は4車線化が見込まれないまま、開通から長期間が経過した対面通行の区間では、安全面や経済面から中央分離帯を設置するなどの対策を求める提言を国土交通省に示す方針です。

会計検査院の分析

会計検査院は暫定的な2車線道路のうち、中央分離帯を設けず樹脂製のポールなどで区切られた対面通行の区間についてさまざまな観点から分析しました。
まず、事故による経済的な損失です。去年までの10年間に高速道路会社3社が管理する道路のうち、車が対向車線にはみ出した事故をまとめたところ、対面通行の区間では677件の死傷事故が起き、119人が死亡していました。これに対し、分離帯がある区間は距離が短いため、単純比較はできませんが、死傷事故は7件で死亡した人は3人でした。
対面通行の区間で起きた677件の死傷事故について、経済的な損失額を内閣府の基準に沿って計算したところ、死傷者の人的な損失、車や道路の補修などの物的な損失、それに交通渋滞による損失でおよそ58億円。
さらに、被害者の肉体的な痛みや苦しみなどを金額に換算すると、およそ256億円となり、合わせて314億円の損失が生じているということです。
次に速度規制による経済的な損失です。暫定的な2車線道路では制限速度がポールなどで車線を区切る対面通行区間は時速70キロ、中央分離帯が設置されている区間は時速80キロとなっています。この10キロの速度差によって物流の遅れなどで生じる損失を国土交通省のマニュアルに基づいて昨年度の交通量で計算したところ、1年間で175億円の損失となったということです。
また、全国で2400キロ余りある暫定的な2車線の区間が、開通してからどれくらいそのままの状態かも調べました。
その結果、58%の1317キロが開通からすでに10年以上が経過していて、このうち272キロは20年以上経っていたというこです。
さらに、対面通行となっている区間を4車線化した場合と2車線のままコンクリートなどの丈夫な分離帯を設けた場合、1キロ当たりの工事にかかる費用も過去の実績に基づいて算出して比較しました。4車線化では12億円から36億円が必要なのに対し、コンクリートなどの分離帯では1億4000万円から2億5000万円という結果になったということです。
こうした分析結果を踏まえ、会計検査院は4車線化の見通しがたっていない対面通行の区間では、安全面からも経済面からも分離帯を設置することなどを検討するよう求めています。

東九州自動車道では

福岡県の北九州市から鹿児島市まで九州の東側を結ぶ、東九州自動車道はもともとは4車線で計画された道路で、平成26年度までに344キロが開通しています。
このうち、少なくとも西日本高速道路会社が管理する177キロの区間では、上下の車線を樹脂製のポールで区切った対面通行の暫定的な2車線道路になっていて、コンクリート製の分離帯がある2車線の区間は限られています。
頑丈な分離帯が設置されないのは、4車線化する工事を行うときに、取り除く費用がかかることや、2車線のまま固定されるのではないかという地元の懸念などが大きな理由ですが、90キロの区間は対面通行の状態のまま開通からすでに10年以上が経過しています。
こうした現状に、道路を利用するドライバーからは不安や不満の声が聞かれます。
大分県佐伯市の蒲江インターチェンジの近くの道の駅に来ていた女性は、「ポールの区間は走りにくく、トンネルもあるので気を使います。仕切りはポールよりコンクリート製のほうがよいです」と話していました。バスの運転手の男性は「理想は4車線、片側2車線。2車線にならないと事故が多いし、渋滞がひどくなると思う。ポールの区間は夜とか雨の日は怖いです」と話しています。また、鹿児島県霧島市の国分パーキングエリアに来ていたトラック運転手の男性は、「追い越し車線がないので大型車両がいると道が詰まってしまうので、早く片側2車線にしてほしい。スピードが落ちると後ろがずらっと並ぶので走りづらさはある。大型車両どうしですれ違う時は気を使う」と話していました。
一方、高速道路が通る地元の自治体からも、安全や地域振興の観点から改善を求める声が上がっています。
大分県では、ことし3月に県内を通る東九州自動車道のすべての区間が開通しましたが、4車線の区間は一部だけで、残りの区間の多くは対面通行となっています。
ことし3月に対面通行の区間で起きた車7台が絡む事故では、緊急車両が一般車両を追い越せなかったことが原因で、警察が現場に到着するまでに1時間以上かかる事態が起きたということです。
また、追い越し車線がない区間では渋滞が起きやすくなったり、補修工事や点検による夜間の通行止めなどによって、物流や観光にも大きな影響を与えているということです。
大分県は経済団体とともに国などに4車線化を要望していて、大分県の進秀人土木建築部長は、「救急救命などの緊急時だけでなく、産業面でも影響が大きい。4車線化が進んでいる福岡県や熊本県には企業がどんどん来ている。大分県は遅れていますけど、4車線化にすることで、産業面、観光振興の面でも大きなメリットがあると考えている」と話しています。

事故も相次ぐ

暫定的な2車線道路のうち、対面通行の区間では、車が対向車線にはみ出して衝突する死傷事故がことしに入ってからも全国各地で相次いでいます。
1月には、宮崎県西都市の東九州自動道でワゴン車と乗用車が正面衝突するなど3台が絡んだ事故があり、1人が死亡、5人がけがをしました。
3月には、福島県いわき市内を通る常磐自動車道で、乗用車と大型トラックが正面衝突し、乗用車の男性が死亡しました。
また7月には、新潟市の磐越自動車道でキャンピングカーが対向車線のワゴン車と衝突し、5歳の男の子が死亡し、5人がけがをしました。

専門家「作り替えて質上げる時代」

暫定的な2車線の区間が多い日本の道路は国際的には特殊な構造で、国土交通省によりますと、ドイツの高速道路では全体の99%、フランスでは98%、韓国では95%が4車線以上になっているということです。
今回の会計検査院の分析について専門家は、対面通行の区間を中心に改善していくことの必要性を指摘しています。
交通政策に詳しい東京大学大学院の家田仁教授は、「日本では限られたコストのなかで、できるだけ早くネットワークを広げようと暫定2車線という方式をとってきた。しかし、追い越しができず、安全性でも課題があるため、作り替えて質を上げる時代に入ってきている。今後、交通量が多いところでは、車線を増やす検討も必要だが、少ないところでは2車線のまま安全性を向上させるなど、タイプを分けて戦略的に進めることが重要だ。ポールだけで車線を区切るという状態は変更する時期だと思う」と指摘しています。

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