スリップのところでも触れましたが、
今回は番線印についてです。
印とありますように、判子の話が中心になりますが、
書店は『番線印』というものを持っています。
出版社と取次会社は持っていません。
番線は、本の送り先を表記した、
いわば書店の住所のようなもので、
それが判子のかたちになっているので番線印とよばれています。
この印は書店の住所を表すとともに、
取引で使う印鑑の役割もします。
トーハンの番線印
前々回で、本にはさんである注文書スリップの話を
しましたが、書店は注文スリップに番線印を押します。
企業が見積書や注文書に押す社印と同じです。
そのため書店は注文スリップに番線印を押すだけで、
正式な注文書とみなされますし、
同時に本の送り先も表記されるのです。
一般的な企業におきかえると
番線印ひとつで社印(ゴム印)と社判を
兼用しているようなものです。
この番線印は、取次会社が書店に対して交付する番線が
刻まれていますので、取次3社と取引がある書店は
番線印を3つ所有することになります。
たとえば、取次4社と取引のある書店が、
トーハンを経由して本を注文したいときには
注文書にトーハン番線印を押します。
この捺印は、トーハンのルートで本が届くということだけでなく、
決済はトーハンでおこなうことも意味します。
決済とは、売れた本から書店の取り分を除き、
残りの金額をトーハンへ支払うというものです。
ですので取次会社トーハンは、
できるだけ多くの書店から自社の配送ルートを
使ってもらうよう営業をします。
取次会社大手のトーハンと日販は、
ライバル関係にありますので、日々書店の奪い合いです。
書店もその競争のことは理解していて、
各取次と上手に付き合っています。
そのため書店の中で、取次1社としか契約をしていない
ところは意外と少ないものです。
たとえば、
本を注文してから届くまでのスピードが速いのはトーハン。
POSレジの環境が整っているのは日販。
関西地区の対応が手厚いのは大阪屋。
教科書の扱いならば日教販。
など、書店は取次各社の特長を上手に活用しているのです。
書店からの注文を受ける出版社は、どの取次会社を使って
本を送るかの選択権はありません。
注文書に押されている番線印の取次へ納品するだけです。
出版社も取次各社とはそれぞれ取引契約を結んでいますので、
正直なところ、納品するときに
「トーハンじゃなく日販なら好条件なのに…」
と思うことも結構あります。
でもどこの取次を使うかは書店の決めることです。
出版社は素直に番線印の取次に本を納めるだけなのです。
出版界はとても進んだところと、昔のままのものが
混在しています。
たとえば、POSレジから連動した注文システムは、
レジで売上を上げた瞬間に注文することも可能です。
注文データは
書店⇒取次⇒出版社
という順にオンラインで流れますので、
このときは番線印など不要です。
また小さな書店と小規模な取次などは、番線印を
使って商いをしていて、昭和の雰囲気があります。
個人的な感想ですが、それはそのまま
電子書籍と紙の本の混在にも結び付くような気がします。
どちらが正しい、ということではなく
両方とも残っていくものだと思います。