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【群馬】

「32年間 取り戻す」 「狭山事件」石川さん夫妻 前橋で講演

冤罪を訴える石川一雄さん(左)と妻の早智子さん=前橋市で

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 1963年に埼玉県狭山市で女子高校生が殺害された「狭山事件」で、無期懲役が確定して服役後に仮釈放され、無実を訴えている石川一雄さん(76)と妻の早智子さん(68)が、前橋市総合福祉会館で講演した。一雄さんは「再審請求はいよいよ大詰めを迎えている。刑務所にいた32年間を取り戻したい。命を懸けて闘っており、不退転の決意が私を支えている」と支援を呼び掛けた。 (菅原洋)

 この事件では、東京高裁で第三次再審請求審が進んでいる。一雄さんは「自分の冤罪(えんざい)は(うその自白を誘導された)取り調べの録音テープを聞けば、分かってもらえる。検察が持つ証拠の開示を進めることが絶対に必要だ。司法の誤謬(ごびゅう)を正したい」と言葉に力を込めた。

 一雄さんは被差別部落の出身。警察が当時の取り調べで部落差別による見込み捜査をした、と再三主張してきた。講演では「この事件は単なる冤罪ではない。私が部落出身でなければ、逮捕されなかったはずだ。部落に対する国家の犯罪と思っている。冤罪が晴れたら、差別をなくす運動の先頭に立ちたい」と意欲をみせた。

 早智子さんは「私も徳島の被差別部落で生まれ、職場などで差別を受けてきた。差別をなくす運動の中で、石川の悲しみ、切なさを抱えるメッセージを知り、一緒になった」と感慨を込めて振り返った。

 早智子さんは最後に「検察、司法の不正義は許さない。今、再審を開けば、石川の冤罪は分かってもらえる。人の命はどうなるのか分からない。石川の元気なうちに再審を始めてほしい。あと一歩なので、ご協力をお願いします」と懸命に訴えた。

 講演は市民や関係団体でつくる「狭山事件を考える市民の会・群馬」(前橋市)の主催。約五十人が出席した総会の後に開かれた。

 狭山事件 女子高校生=当時(16)=が誘拐され、自宅に身代金を要求する脅迫状が届けられた後、遺体となって見つかった事件。一雄さんは別件で逮捕され、強盗殺人容疑などで再逮捕された。

 取り調べで一雄さんは刑事から「兄を逮捕する」と迫られ、かばうために自白し、一審は死刑判決を受けた。二審では無罪を主張したが、無期懲役となり、最高裁で確定し、1994年に仮釈放された。

 自白では素手による犯行とされるが、多数の証拠品から石川さんの指紋は全く出ていない。脅迫状の筆跡は本人と異なるという弁護側の複数の筆跡鑑定も出ているなど、数々の疑問が提示されている。

 

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