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【社会】

大阪女児焼死 高裁、再審と刑停止を決定 無期懲役の母親ら2人

弁護側が行った再現実験の映像=弁護団提供の動画からのコマ落とし

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 大阪市東住吉区で一九九五年、十一歳の女児が焼死した火災で殺人や現住建造物等放火などの罪に問われ、無期懲役が確定した母親青木恵子元被告(51)と、同居相手の朴龍晧(ぼくたつひろ)元被告(49)が申し立てた再審請求で、大阪高裁(米山正明裁判長)は二十三日、「自然発火の可能性がある」として二〇一二年三月の大阪地裁決定に続いて再審開始を認め、検察側の即時抗告を退けた。 

 服役中の二人に対する刑の執行を二十六日午後二時で停止することも決め、約二十年ぶりに釈放される可能性が出てきた。検察側は執行停止決定に即日異議を申し立てた。再審開始については最高裁への特別抗告を検討する。

 確定判決の柱は「車庫でガソリン約七・三リットルをまき、ライターで火を付けた」という捜査段階の朴元被告の自白だったが、米山裁判長も地裁決定に続いて弁護団が建物などを再現して実施した火災実験の結果を重視。

 「車庫に止めた車の給油口からガソリンが漏れ、約九十センチ離れた風呂釜の種火から引火した自然発火の可能性が具体的に認められる」と弁護側主張をほぼ全面的に認めた。

 再審段階で実施された火災実験については「再現性が相当備わっている」と評価。いずれもガソリンをまき終える前に風呂釜の種火から引火して現場が「火の海」となったのに、朴元被告がやけどを負わなかった点などを踏まえ「自白内容通りの犯行を実現できる可能性は乏しく、放火を認めた朴元被告の自白に信用性を認める前提がなくなった」とした。

 その上で「確定までの段階でこれらの証拠が出されていれば、有罪には達していなかった」と結論付けた。

 刑の執行停止については「無罪の可能性が高くなっており、逮捕以来約二十年にわたる身体拘束を今後も続けるのは正義に反する」とした。

 検察側は抗告審段階になって実施した実験で弁護側の実験結果を覆せず「自白に疑問が残ることは否定しがたいが、放火したという核心部分は信用できる。自然発火の可能性はない」と反論し地裁決定の取り消しを求めていた。

 <大阪・東住吉事件> 1995年7月22日夕、大阪市東住吉区で住宅火災が起き、青木恵子元被告(51)の長女めぐみさん=当時(11)=が風呂場で焼死した。大阪府警は災害死亡保険金1500万円をだまし取る目的で放火、殺害したとして9月、青木元被告と同居の朴龍晧元被告(49)を逮捕。2人は公判では一貫して無罪を主張したが、大阪地裁は99年、捜査段階の朴元被告の自白を信用できるとして起訴内容を認定し無期懲役を言い渡した。二審大阪高裁、最高裁も支持し2006年に確定。2人は09年に再審請求した。

 

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