子宮頸がんワクチンに関する本当の&A

厚生労働省は2013年6月「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」と題するリーフレットを作成、配布し始めました。

リーフレットでは「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で受けてください。」とされていますが、保護者や本人が接種を受けるかどうかを判断するのに十分な情報は書かれていません。

そこで、当会議では、判断のキーポイントに絞って、独自のQ&Aを作成しました。

ワクチンが子宮頸がんを予防する効果はどの程度あるのですか。

子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていません。

  1. サーバリックス、ガーダシルともに、実際にがんの発生を抑えたというデータは存在せず、あるのは、ワクチンを接種したグループに子宮頸がんになる前の異形成(前がん病変)が少なかったという臨床試験のデータだけです。
  2. しかも、異形成を防いだのは、子宮頸がんの原因ウイルスのうち、16型と18型のウイルスによるものだけです。日本人の子宮頸がんのうち、16型と18型によるものは、全体の半数程度1)です。
  3. 16型・18型の異形成を防ぐ効果が確認されているのは、最長でも9年程度です。
  4. 既にウイルスに感染している人には、ワクチンは効果がありません。

解説(より詳しい情報が必要な方はお読みください)

ワクチンが対象にしている型以外のウイルスには異形成を防ぐ効果が確認されていないこと、すでに感染した人には効果が期待できないこと、また接種しても検診をやめるわけにはいかないことなどは、それぞれのワクチンの添付文書にも記載されています。

サーバリックス添付文書の記載

ガーダシル添付文書の記載

(HPV6型と11型は、子宮頸がんではなく、尖圭コンジローマの予防を目的としています)

・効果の限界を認める専門家の発言

子宮頸がんの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の専門家である理化学研究所新興・再興感染症研究ネットワーク推進センター神田忠仁チームリーダーは、2010年8月27日厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で以下のように発言しています。

「HPVワクチンは非常にチャレンジングな、新しいコンセプトのワクチンです。今どういうふうに説明されているかというと、筋肉に3回抗原を打つと、血清中に高い力価の中和抗体が出てきて、それが女性の生殖器の粘膜に常時染み出していて、ウイルスが性行為で感染してくると、そこで止めるという考え方です。そういうふうに説明されていますが、実際に、血中にどのくらいの抗体価があれば、染み出ていって完全に感染を防げるのか、あるいは女の子に打って、その子がだんだん成熟していって、かなりおばちゃんになっても、同じように血中の抗体価と並行して粘膜上抗体が出るのかは、データは全くありません。したがって、いま申し上げたのは、このワクチンは、はしかのワクチンとか、いままでうまくいっているワクチンと同じように、『ワクチン』という言葉で括ってはまずい。新しい概念のワクチンである。その効き方に関して、かなり不明な点が残っていますし、まだ効果の継続性に関しては、データがないというのが実情と私は思っております。」

・16型と18型に対する有効率について

添付文書には、16、18型に関連する子宮粘膜の異形成(前がん病変)を防ぐ効果が高かったという臨床試験結果が紹介されています。

しかしこれは、臨床試験に参加した全女性を集計したデータではなく、接種から6,7か月後の時点でウイルス感染がなかった女性だけを選んで集計したものです。ワクチンに対する反応が良かった女性だけを選んで集計すれば予防効果が大きくなるのは当然です。「接種した女性全体」を対象に集計したワクチンの有効率は、16型・18型に関連する病変でも28%~57%程度にとどまり、すべての型による病変への有効率は22%~37%とさらに低下します。2)3)

また、16型・18型の感染を防ぐと他の型のウイルスの感染が逆に増えるのではないかという懸念もあり、実際にガーダシルの臨床試験では、他の型による高度異形成(前がん状態)が増えたというデータもあります。3)

・有効性の持続期間について

臨床試験の参加者の一部を追跡調査した結果では、異形成を防止する効果は最長9年程度が確認されています。20年以上抗体価が続くと推定する研究データ4)もありますが、それは血液中の抗体価が維持されると推定しているだけであり、ワクチンの目的であるウイルス感染を未然に防ぐことが成功するかどうかはわかりません。

参考文献1)
Asato, T., et al., A large case-control study of cervical cancer risk associated with human papillomavirus infection in Japan,by nucleotide sequencing-based genotyping . J Infect Dis, 2004.189(10): p.1829-1832.
参考文献2)
Human Papillomavirus Bivalent (Types 16 and 18) Vaccine, Recombinant Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Briefing Document September 9, 2009
参考文献3)
VRBPAC Background Document Gardasil? HPV Quadrivalent Vaccine May 18, 2006 VRBPAC Meeting
参考文献4)
David, M.P., et al., Long-term persistence of anti-HPV-16 and -18 antibodies induced by vaccination with the AS04-adjuvantedcervical cancer vaccine: modeling of sustained antibody responses.Gynecol Oncol, 2009. 115(3 Suppl): p. S1-6.

ワクチンの安全性は確立されているのですか。

安全性は確立しているとはいえません。

  1. 重い副反応として、アナフィラキシー(呼吸困難、じんましんなどを症状とする重いアレルギー)、ギラン・バレー症候群(両手・足の力の入りにくさなどを症状とする末梢神経の病気)、急性散在性脳脊髄炎(頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気)などが報告されています。
  2. ワクチンの販売開始から2013年3月末までに厚生労働省に報告された「重篤な副反応」(入院程度以上の副反応)の頻度は、サーバリックスが100万接種当たり43.4、ガーダシルが100万接種当たり33.2です。
    しかし、これは3月末までの企業や医療機関の自発的報告をワクチン出荷本数で割り算して出しただけのもので、「氷山の一角」であると考えられます。
    接種後しばらくしてから発症する自己免疫疾患や、全身に痛みが広がっていく疼痛症候群といった副作用が報道され、知られるようになったのは上記の集計期間の後であり、接種との関連に気づかず報告されていない症例が相当数あると思われます。
  3. また、確率の如何にかかわらず、結果として重篤な被害にあわれた方にとっては、深刻な問題であることにかわりはありません。

解説(より詳しい情報が必要な方はお読みください)

厚生労働省作成のリーフレットには「まれに重い副反応もあります」として、アナフィラキシー(呼吸困難、じん麻疹などを症状とする重いアレルギー)が約96万接種に1回、ギラン・バレー症候群(両手・足の力の入りにくさなどを症状とする末梢神経の病気)が約430万接種に1回、急性散在性脳脊髄炎(頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気)が約430万接種に1回という頻度を載せています。しかし、これが氷山の一角と考えられることについては触れられていません。

このワクチンには「アジュバント」と呼ばれる人の免疫システムを強く刺激する化学物質が混ぜられています。自己免疫疾患は、本来なら体に侵入してきた異物を攻撃するはずの免疫システムが、誤って自分の臓器や組織を攻撃してしまうことで起きる病気であるため、免疫を強く刺激するアジュバントの存在が、接種後の自己免疫疾患(ギランバレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎など)を引き起こしやすくしているのではないかと指摘する専門家もいます。5)

参考文献5)
Tomljenovic, L.,et al.,Human papillomavirus (HPV) vaccine policy and evidence-based medicine: Are they at odds? . Annals of Medicine, 2013. 45(2): p.182-193

ワクチンを接種すれば、検診を受けなくてもよいのですか。

ワクチンは、日本人の子宮頸がんのうちの約半数を占める型のウイルスには効果がありませんので、ワクチンを接種すれば、検診を受けなくていいとは言えません。

日本では、年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、約2,700人が死亡していると報告されていますが(厚生労働省人口動態統計)、一方で、検診を受けて早期発見をし、適切な治療をすれば、子宮を失ったり、死亡したりすることを防げる病気でもあると言われています。6)

参考文献6)
厚生労働省研究班「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」2009年10月31日
http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/shikyukeigan.html

ワクチンの評価に関与している専門家とワクチンメーカーとの関係を教えてください。

一般に、医薬品の評価にかかわる専門家が、企業から寄付金・契約金等(研究費や原稿料、講演料、コンサルタント料)などを受け取っている場合には、評価の公正さが歪められる可能性があると指摘されています(このような状態を「利益相反」といいます)。

このワクチンの副反応について検討した委員を見てみますと、委員15人のうち11人(73%)が、参考人2人のうち1人がワクチンメーカーから金銭を受け取っていました。
しかも、サーバリックスのメーカーであるグラクソ・スミスクラインからは5人、ガーダシルのメーカーであるMSDからも8人が、金銭を受け取っていました。

2つのメーカーから金銭を受け取っていた11人のうち6人(55%)は、HPVワクチンの副反応についての審議が始まった2013年5月の時点では金額を正しく申告せず、その後外部からの指摘や厚生労働省の再調査を受けて申告を修正しています。正しく申告しなかったこの6人の中には座長の桃井真理子氏、五十嵐隆氏も含まれています。

解説(より詳しい情報が必要な方はお読みください)

このワクチンの副反応報告について2013年5月16日に審議し、接種を中断する必要がないとの結論をまとめた厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会のメンバーは以下のようになっていますが、各委員・参考人からの申告によるとワクチン関連企業からそれぞれ以下のような金額(※)を受け取っています。

※直近3年度のうち最も受取額の多い年度の受取額。
遵守事項等資料 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000032dqp.html)より

【副反応検討部会】
氏名 所属・役職 寄付金等の受け取り状況
稲松孝思委員 東京都健康長寿医療センター顧問 MSDから50万円以下
の金額を受け取った
岡田賢司委員 岡歯科大学全身管理部門総合医学講座小児科学分野教授 北里第一三共ワクチンから50万円以下、
武田薬品工業から50万円以下、
化学及血清療法研究所から50万円以下、
阪大微生物病研究会から50万円以下、
サノフィパスツールから50万円以下、
グラクソ・スミスクラインから50万円以下、
MSDから50万円超500万円以下、
ファイザーから50万円以下
の金額を受け取った
岡部信彦委員 川崎市健康安全研究所長 北里第一三共ワクチンから50万円以下、
武田薬品工業から50万円以下、
化学及血清療法研究所から50万円以下、
阪大微生物病研究会から50万円以下、
サノフィパスツールから50万円以下、
デンカ生研から50万円以下、
グラクソ・スミスクラインから50万円以下、
MSDから50万円以下、
ファイザーから50万円以下 の金額を受け取った
熊田聡子委員 都立神経病院神経小児科医長 グラクソ・スミスクラインから50万円以下
の金額を受け取った
倉根一郎委員 国立感染症研究所副所長 受け取っていない
薗部友良委員 育良クリニック小児科顧問 サノフィパスツールから50万円以下、
日本ポリオ研究所から50万円以下、
武田薬品工業から50万円以下、
ファイザーから50万円超500万円以下、
グラクソ・スミスクラインから50万円超500万円以下、
MSDから50万円超500万円以下
の金額を受け取った
多屋馨子委員 国立感染症研究所感染症疫学センター第三室長 武田薬品工業から50万円以下、
化学及血清療法研究所から50万円以下、
阪大微生物病研究会から50万円以下、
グラクソ・スミスクラインから50万円以下
の金額を受け取った
永井英明委員 独立行政法人国立病院機構東京病院外来診療部長 北里第一三共ワクチンから50万円以下、
ファイザーから50万円以下、
MSDから50万円以下
の金額を受け取った
道永麻里委員 公益社団法人日本医師会常任理事 受け取っていない
桃井眞里子委員 国際医療福祉大学副学長 MSDから50万円以下
の金額を受け取った
池田修一参考人 信州大学医学部内科学第三講座教授 受け取っていない
【安全対策調査会】
氏名 所属・役職 寄付金等の受け取り状況
五十嵐隆委員 独立行政法人国立成育医療研究センター総長 グラクソ・スミスクラインから50万円超500万円以下、
MSDから50万円超500万円以下

の金額を受け取った。
遠藤一司委員 明治薬科大学医薬品安全管理学講座教授 受け取っていない
大野泰雄委員 国立医薬品食品衛生研究所客員研究員 受け取っていない
(子息配偶者がMSD社員)
柿崎暁委員 群馬大学医学部附属病院 MSDから50万円以下
の金額を受け取った。
神田隆参考人 山口大学大学院医学系研究科神経内科教授 MSDから50万円超500万円以下
の金額を受け取った。

厚生労働省の審議会等では、製薬企業等から受け取った金額が、直近の3年の最も多い年度で、
年間500万円を超える場合は、その専門家は「審議に加わらない」
年間500万円以下の場合は「審議には参加できるが、議決に加わらない」
年間50万円以下の場合は審議にも議決にも加わることができる、となっています。

世界保健機関(WHO)の見解はどうなっているでしょうか。

WHOは、2009年に、方針説明書(position paper)を公表し、このワクチンの使用を推奨していますが、無条件で「世界全体においてこのワクチンを使用するよう推奨」しているわけではありません。

その国において「子宮頸がんやその他のHPV関連疾患が公衆衛生上の優先課題であること、ワクチン接種戦略に費用対効果が認められること」等が推奨の前提条件であることが明記されています(この点で厚生労働省の回答は不正確で誤解を与えます)。

日本は、子宮頸がんによる死亡率が人口10万人あたり4.2人(厚生労働省2011年人口動態統計)と少ないうえ、がん検診や適切な治療を行うことでほとんど死亡率をゼロにできる医療システムをもっています。従って、日本には、このワクチンを推奨する前提が揃っているとはいえません。

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