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「恥をかかされたから次はない」という女は存在する

レビュー モテとナンパをめぐる話

部屋に上げてもらったとか、食事に同伴してくれたとかで舞い上がらんと相手の真意を確かめなあかん」と書いてきましたが、わたしは間違っていたかもしれません。

今回は「食事に同伴する」「密室で二人きりになる」が肉体関係を望む明白なサインで、それを受けてもらえなかったら次はない、という女性グループが実在することをお話します。

 

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女に恥をかかせる男

元AV女優、現カップルコミュニケーションアドバイザー小室友里先生の女の「したい」を見抜く技術 会話・しぐさでわかる38のサインと作法 によると、女性はどんなに社会が変わっても絶対に、自分から、男性をベッドに誘ってはいけない。男性はどんなに素敵なひとからであっても女性の側から誘われると興味をなくし引いてしまう。女性はOKサインをさりげなく出しながらひたすら男性からのアプローチを待つしかないそうです。ほう。

 

だから男性は女性のサインを見抜いて、男性側からベッドに誘わなければいけない。さもないとOKサインを出したのに袖にされた女性は恥をかかされて大ダメージを受け、以後二度とその男性とは関わりたいと思わなくなる。「このまえ楽しく食事をしたばかりなのに・・・なぜ急に避けられるようになったんだ?」それはあなたが彼女に恥をかかせたからだ、と小室先生は語る。ほほう。

 

数ヶ月前だったらわたしはこの話に驚いていたと思う。そんなん初耳やわ!でもモテとナンパの話を追ってきたいまならわかる。そうか。これはモテ地獄の作法なんだな。
「いったい誰が男から誘わなければならないとか、女は手を出されなかったら怒って当然とか言っているのか」と思っていたけれど、モテ地獄の人々だったんだね。

 

 茶道華道モテ道には作法がある

あおいちゃんパニック」というSFコメディがある。

あおいちゃんは宇宙人のパパと地球人のママのミックスで、中学から地球へ転校してきた。重力の違いや習慣の違いでさまざまな事件がおきる。ある日美術の時間にスケッチが遅れていたあおいちゃんにクラスメイトの森村くんが「手伝ってやろうか?」と聞く。あおいちゃんは顔を真っ赤にしてはわわわわと走り去ってしまう。あおいちゃんの故郷では共同で絵を描くことはなんとプロポーズを意味していたのだった。

 あおいちゃんは頭では日本にそんなルールがないことを知っている。でも絵を描く=結婚という文化で育ったあおいちゃんは森村くんを意識せずにはいられない。

 

モテ地獄でトロフィー彼女、トロフィー彼氏を求める人々はモテ地獄の作法こそ男女のスタンダードだと思っている。だからモテについて語るときはもちろんその文脈で話す。そして小室友里さんによれば、三回目の食事でしかるべきサインを送ってきた女性は男性にお膳を据えているのであり、「据え膳食わぬは男の恥」であり、「女に恥をかかせる」行為なのだそうだ。

 

・・・そうなんだ・・・。本当に、そんな世界があるんだ・・・。

 

そしてモテ地獄では男女が部屋で二人きりになるのは明らかなOKサイン。モテ道に精通した男女なら肉体関係を望まずにそのような状況になることはない。いっしょに絵を描いたら結婚。外から見るとびっくりするが、中の人には共通認識。モテ道にはこのような暗黙のルールが多々あり、それを駆使することで面と向かって相手の顔を潰すことを避けている。

 

大人になること、男女の仲を知ること=モテ地獄の作法に通じることと心得てきた人にとって、このような知識の習得は大切なことなのだと思う。モテ地獄で上層を目指す方には必修科目だと思うので、しっかり身につけていただきたい。たぶん恋愛工学信者の方々は藤沢数希によってこの辺を厳しく躾けられているのだろう。

 

しかし「策士、策に溺れる」というが、かの藤沢数希がうしじまいい肉さんに三万円の寿司をおごり、ホテルのバーへ案内しながら一線を越えることができなかった理由はまさにこの作法のせいではないかと思う。

 

モテ作法が盲点を作る

小室友里先生には必殺技がある。これぞ、と思う男性と食事にいったときには「お手!」といって手を出させ、その手をぎゅっと握り「ずーっとこうしていたいな」という。この技に落ちなかった男性はいないと彼女は語る。手を握るのは明らかなOKサインなのだ。

 

ところがどっこい、藤島数希は三万円の寿司をおごっている間中ずーっとうしじまさんの手を握り続けていた。うしじまさんは「三万円の寿司おごってもらってるんだから、手ぐらいいいかな」と思ってそのままにしていた。これはOKサインではなく義理譲歩だったのである。

 

小室先生によればホテルのバーまでついてきてくれたら先は決まったようなものだ。これがモテ地獄のスタンダードだとすれば藤沢数希も「いける!」と確信したことだろう。彼は最終的にうしじまさんの自宅のドアの前までついてきた。自宅の場所を教える、部屋の前まで来るとはモテ地獄マナーとしては「上がってお茶でも」といわざるをえない状況であり、部屋に上げたら肉体関係という絶体絶命の状態である。しかしうしじまさんの行動はモテ地獄作法にのっとったものではなかった。ドアは閉められ、二人の夜は終わった。

 

モテに毒された人々はうしじまさんの行為を不誠実だと思うかもしれない。OKサイン出しまくりで寿司だけ食って帰るなんてひどい。でもそれはモテ地獄の中だけの、それも極東日本の島国のごく一部のローカルルールにすぎない。それを守るいわれはない。

 

このようなすれ違いはいたるところである。モテ作法を身につければモテ地獄の亡者同士では話が早い。でもがんばればがんばるほど、そのような作法を離れた人の感覚からは遠ざかる。食事は食事、お茶はお茶、プレゼントはプレゼントである。

 

それだけではない。サークラはこのようなモテ地獄作法でスタンダードとされる「あなたに気があります」というサインを意図的にせっせと送る。そうすることで交際を仄めかすことすらせず相手を勘違いさせる。思わせぶりはモテの基本なのだ。モテ本ナンパ本は手取り足取りそのやり方を教えている。

 

キャバ嬢やホストのように仕事としてそうしたテクニックを身につけている人々もいる。アイドルや営業職の人間もいちぶそのような態度をとる。そして白黒はっきりつける段になってようやく「そんなつもりじゃなかった」という。これは不誠実なことだけれど、真意を確かめずにモテ仕草で読解したのは自分自身だ。

ではその気があるのかないのかはっきり言ってもらうにはどうしたらいいのか。

 

知りたいことは聞く

「部屋に呼ぶなら肉体関係OKかどうか事前に教えてほしい」という人たちがいたけれど、はっきり知りたいなら聞けばいいと思う。でもこれは夕飯時に招かれて食事が出るかどうか微妙なときと同じで、食事は出ますか?とは聞きづらい。こういう場合、やはり基本は出ないものと考えて、出ても入る程度に軽く何かつまんで出かけると思う。

 

でもね。わたしモテは地獄だってずっと書いてるじゃないですか。パートナーシップとは違うものだと思うって。でね、パートナーになることを考えている人だったら、肉体関係ってその場のノリで越えるものじゃないと思うのよね。その線越えるまえにほかに聞くことあるんじゃないかと思う。

 

モテ地獄暮らしの人だったら「ここまでサイン出してるのに!」って怒るかもしれない。「次はない!」ってなるかもしれない。でもモテ地獄の人ってなかなか解脱しないから、交際したらあなたもモテの作法に明るくならなきゃいけないよ。ついていける?

 

「お宝鑑定団」なみの鑑識で、自分の経歴や相手の経歴や収入を、容姿を、親兄弟や出身地をトロフィーにされる世界になじめる?
三度の食事をしたとしても、部屋に招かれたとしても、見極めなきゃいけないのは相手がどの言語に通じた世界で生きているのか、そっちだと思うのよね。

 

でも「まかせろ、モテを制覇してやるわ!」っていう人は小室友里先生の女の「したい」を見抜く技術 会話・しぐさでわかる38のサインと作法をおすすめします。読みやすい文章のお手本のような本で、構成の参考にもなります。わたしはムリだと思った。とろろ蕎麦を頼んだら肉体関係OKサインになる世界なんて恐ろしすぎる。

 

kutabirehateko.hateblo.jp