ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く

「南京大虐殺文書」記憶遺産登録の裏に、
国連トップの座をめぐる陰謀説も

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第134回】 2015年10月24日
previous page
4
nextpage

 今回の南京大虐殺文書の登録が実現したのは、日本の信用を貶めようとする中国の企みと、来年末に行なわれる国連事務総長選挙への出馬を考えているイリナ・ボコバ事務局長(世界記憶遺産は国際諮問委員会の審査の後、ボコバ事務局長が登録を決定)の思惑が一致したから――、との見方もある。外信部記者が言う。

 「彼女の頭にあるのは、来年末に控えた国連事務総長と言って間違いありません。歴史的な評価や事実認定が定まらない案件の世界記憶遺産登録はきわめて異例ですが、それを強行したのは、彼女が中国を味方につけたいと考えたからに他なりません」

 次期国連事務総長にはすでに数人が立候補を表明しているが、その最有力候補がブルガリア出身のボコバ氏なのだという。東欧出身の事務総長はいないのだそうだ。

 が、このボコバ氏、ちょっとキナ臭いのである。

 ウィキリークス英語版に書いてあるのだけれど、父親がブルガリア共産党機関誌の編集長をしていただけあって、彼女も若いころからのコミュニストのようだ。モスクワ国際関連大学に学んだブルガリア共産党の党員だった。志位和夫委員長ならお友だちになれちゃうだろう。

 現在の国連事務総長は「国連は中立な機関ではない」と言い放ち、国連史における「最悪の事務総長」「やる気と学ぶ姿勢に欠ける」「能なし」と揶揄される藩基文氏だ。次の韓国大統領選に出馬すると言われている人物だが、事務総長という立場にありながら、藩氏は中国の軍事パレードに出席した。

 それだけで藩事務総長の偏りがよくわかるが、その軍事パレードに夫婦で出席していたのが、藩氏の次の事務総長になろうかというイリナ・ボコバ氏だった。次期総長の椅子を狙っていながらこれはどうかとは思うが、国連内部でもボコバ氏の「親中ぶり」はつとに有名なのだという。

〈つまり、ボコバ氏は中国が事務総長選挙で、自分に拒否権を発動しない代わりに「南京大虐殺文書」の世界記憶遺産への登録を認めるという“裏取り引き”を行なったと疑われているのだ〉

 「(事務総長の)立候補者は一九三の加盟国代表が出席する総会での質疑を経て、安保理で一人に絞られます。その際、米、英、仏、露、中の常任理事国だけが“死のキス”と呼ばれる拒否権を保有しており、この一ヵ国でも反対すれば承認はされません」

previous page
4
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
ビジネスプロフェッショナルの方必見!年収2,000万円以上の求人特集
ビジネスプロフェッショナルの方必見!
年収2,000万円以上の求人特集

管理職、経営、スペシャリストなどのキーポジションを国内外の優良・成長企業が求めています。まずはあなたの業界の求人を覗いてみませんか?[PR]

経営課題解決まとめ企業経営・組織マネジメントに役立つ記事をテーマごとにセレクトしました

クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

注目のトピックスPR

話題の記事

降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く

三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

「新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く」

⇒バックナンバー一覧