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シゴトがうまくいくヒントがありそう!
人気のコノ人に「シゴト」について聴きました

宮野真守

Mamoru Miyano
声優

役の声帯を任される身として
その役を「演じる」のではなく
その役と「生きる」ことにしています

2006年、アニメ『DEATH NOTE』の主人公・夜神月役を機に、一躍大人気声優となった宮野真守。その後、立て続けに話題作に出演、今や日本の声優界になくてはならない存在感を放っている。シリアスからおちゃめな役まで、豊かな声と表現で、幅広いキャラクターを演じわける実力派。宮野真守の、人とシゴトを引き寄せる「声」。その理由。

斬新な設定と世界観
深い人間性を描く作品

劇場版アニメ『亜人』のオーディションの話をいただいたことをきっかけに、原作を読み始めました。すぐに、斬新な世界観と設定に目が離せなくなり、心を奪われてしまいました。主人公・永井圭の頭が良すぎるがゆえの、冷徹な行動や自分勝手な部分も、とても興味深く感じましたね。僕らも、普段の生活の中で考えかたがブレたり、シチュエーションによって思考の変化が起きたり、相手によって態度が変わることって、実はよくありますよね。原作コミックでは、心が描写されることで彼は「クズ」なんて言われかたをしていましたが、圭の人間らしさに、とても共感できたんです。同時に、人間の奥底にある本質をにじませている深い作品であることがわかりました。こんな素晴らしい作品の主人公の声は、ぜひやりたい! と、思いがどんどん膨らんでいましたから、オーディションに受かったときには本当にうれしかったですね。現場に入ると、ほかのキャストの皆さんや瀬下寛之総監督と話せる機会が設けられ、自分のイマジネーションと合致する部分と、それ以外に足りなかったものに気づかせてもらいました。どんな作品でも同じですが、監督が方向性を指し示してくださり、僕ら声優は、それに対してベストな形をつくりながら立ち回っていきます。『亜人』は決してシンプルな作品ではありません。解釈が複雑であるがため、どういうキャラクターがふさわしいのか、どうしてもつかみきれない部分がありました。監督から、作品のポリシーをうががえたときに、大いに納得できて、声を吹き込むワクワクがさらに高まっていきました。

壮絶な死を経験して
大事なものが見えた

すべての作品に共通して心がけていることがあります。それは、役を「演じる」のではなく、役を「生きる」という意識です。きっかけになったのは、アニメ『DEATH NOTE』の夜神月の声を担当したとき。月は最後に壮絶な死を迎えるのですが、そのときに僕自身も死を迎える怖さを感じました。収録に行くのが嫌になるくらいの恐怖に陥った瞬間、声優をする上での大切なものが見えたような気がしました。役の体の一部である声帯を任される身として、役を生きたい。そのために、キャラクターの情報、どんな生活をしていて、どこに向かうのか。台本には描かれていない部分も自分の中で構築しています。最近のアニメ作品の傾向で、短めのスパンで描かれるシリーズが多い中、『亜人』は劇場3部作、さらに2016年1月よりTVシリーズの放送も決定しています。絶対に死なない新人類「亜人」という難しい役柄を、どう生きていくか、長いつき合いになりますから、永井圭とともに、ゆっくり、丁寧に、考えていこうと思っています。

ダメの積み重ねだったけど
決してあきらめなかった

7歳から劇団に所属し、舞台やドラマなどのシゴトをしてきました。壁にぶつかったり、悩んだり、うまくいかないことは、本当にたくさん経験してきています。たとえば、オーディション。不合格だったら自分がほかの人よりも劣っていた、という事実を突きつけられる。シゴトを始めた当初は、思い通りにならないことばかり。ダメを積み重ねているような感じでした。それでも、この業界で生きていくという気持ちが、ブレたことはありません。苦しみながらも、打開策を常に考えていました。転機をくれたのが、声優のシゴトだったんです。高校生のとき、それまで未経験だった声優のオーディションで合格。海外ドラマの吹き替えで、僕にとってほぼ初めてのレギュラー作品。しかも1年間も放送されるという大きなシゴトでした。そのオーディションに受かったとき、自分が輝ける場所を見つけられた気がしました。初めて「人から求められた」というような喜びを感じ、同時に、簡単にあきらめないで続けてよかったと強く思いました。ダメだった体験や失敗も、ただのネガティブな思い出では終わりません。いろんな積み重ねが今、自分の使えるスキルや武器になっています。そしてこれからも。苦しいことも、楽しいことも、すべての経験が未来の成功につながっているんです。

Mamoru Miyano Profile
みやのまもる 1983年6月8日生まれ、埼玉県出身。7歳から劇団に所属、舞台やドラマなどに出演。海外ドラマ『私はケイトリン』で声優デビューを果たす。1年間のレギュラーとなった同作品で、声優としての経験を磨いた。代表作のひとつである『DEATH NOTE』では、「第2回声優アワード主演男優賞」「東京国際アニメフェア2008」「第7回東京アニメアワード個人賞(声優部門)」とさまざまな賞を受賞、声優として高い評価を得た。アーティストとしても活躍。多彩な魅力で注目を集めている。