東芝:画像半導体売却へ ソニーに 人員削減数千人規模か
毎日新聞 2015年10月24日 11時15分(最終更新 10月24日 12時12分)
◇大分工場一部を200億円で 他工場生産ラインは閉鎖検討
不正会計問題で業績不振に陥っている東芝が、主力の半導体関連事業で工場の一部売却や閉鎖を行う方向で調整していることが24日分かった。デジタルカメラなどに使われる半導体の画像センサーを製造している大分工場の一部をソニーに約200億円で売却する方向。家電などに使われる単機能半導体などを製造する他工場の生産ラインも一部閉鎖を検討している。これに伴い希望退職を募り、人員削減規模は数千人に上る可能性がある。10月末にも正式決定する。
東芝の半導体などの電子デバイス部門の売上高は2015年3月期で1兆7687億円。全体の約4分の1を占め、営業利益は2166億円に上る。収益の柱は、スマートフォンなどに使われる記憶装置「NAND型フラッシュメモリー」で、他の半導体事業は赤字になるなど業績が低迷している。同社では「主力の半導体事業でも利益の水増しが行われ、不採算部門のリストラが全く行われていなかった」(関係者)との指摘が出ていた。
画像センサーで東芝のシェア(市場占有率)はわずかで事業拡大が見込みにくいため、同センサーで強みを持つソニーへの売却を検討している。一方、単機能半導体などは「買い手を見つけるのさえ難しい」(関係者)として生産ラインを閉鎖する方向だ。東芝の半導体事業では子会社も含めて国内に6カ所の工場があり、約1万2500人が勤務。うち大分工場では従業員約2600人を抱えている。
東芝の室町正志社長は10月1日の毎日新聞などのインタビューに対し、半導体事業などのリストラ策の検討を進める意向を示したうえで「場合によっては従業員対策も必要。どこまで踏み込むべきか議論している」と述べ、人員削減も検討していることを明らかにしていた。人員削減は数千人規模に膨らみそうだ。
半導体以外でも、家電では海外製造拠点の集約や撤退などの構造改革を進める方針。テレビやパソコンなど他の事業でも事業の大幅な縮小を検討し、財務基盤の強化を図る考えだ。【片平知宏】
◇東芝大分工場
東芝大分工場は、同社の国内有数の半導体生産拠点の一つで、1970年7月に操業を始めた。敷地面積は、東京ドームの8個分にあたる38万3000平方メートルで、従業員は約2600人。スマートフォン(スマホ)やカメラの画像センサー、車や医療機器関連のシステムLSI(大規模集積回路)などを生産している。
東芝は九州・山口で、2012年に当時の円高と新興国との競争激化を理由に北九州工場(北九州市)を閉鎖している。
大分工場の売却先として検討されているソニーは、九州に画像センサーを主力に製造する完全子会社のソニーセミコンダクタ(熊本県菊陽町)がある。生産拠点は大分県国東市、鹿児島県霧島市、長崎県諫早市など国内7カ所あり、最近はスマホ関連需要の増大を背景に生産を拡大している。【小原擁】
◇東芝の不正会計問題
インフラ関連工事、半導体、テレビ、パソコンなど東芝の主要事業で利益の水増しが行われていた問題。損失計上を先送りしたり、売り上げを過大計上したりするなどの不正処理が判明し、東芝は2009年3月期以降の約7年間の損益(税引き前)について、計2248億円下方修正した。東芝が設置した第三者委員会は7月、不正会計で組織的な関与があったと認定。現場に対する強い業績改善圧力が指摘され、歴代3社長は引責辞任した。