金剛山で開催された離散家族再会行事を取材するため現地を訪れた韓国の報道関係者が、北朝鮮当局からノートパソコンを全て検閲されていたことがわかった。北朝鮮の東海線出入事務所(CIQ)の職員らは今月20日、訪朝手続きをしていた韓国の取材記者29人のノートパソコンを全て検査し、保存されていた文書や写真、動画など全ファイルの内容をチェックしたという。
北朝鮮が報道関係者のノートパソコンを全て検閲するのはこれまで前例がなく、また韓国と北朝鮮で事前に合意もしていなかった。パスワードが必要な場合はその入力も要求された。その結果、普段なら数分で終わる手続きに2時間30分もかかった。以前も報道関係者が所持する取材用の機器が北朝鮮当局に検査されたことはあったが、その時は彼らに都合の悪い写真や動画がないか簡単にチェックするだけだった。ところが今回は北朝鮮に入る前の段階から全員のノートパソコンがチェックされ、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記や北朝鮮体制に関する内容がないか集中的に検査された。
報道関係者のノートパソコンに保存されているファイルを全てチェックする行為は、世界的にみても前例のないあまりにも非常識な言論統制だ。ノートパソコンには記事や取材メモはもちろん、私的な日記や電子メールも保存されているため、これらをチェックすることは記者に対する人権侵害に他ならない。もしこの問題で韓国政府が抗議しなければ、北朝鮮は今後事前に記事を見せるよう要求してくるかも知れない。
またこれらの状況を現場で傍観していた韓国統一部(省に相当)職員の対応も理解し難い。当時、現場には統一部の職員50人以上がいたが、彼らは誰も北朝鮮に対して抗議も問題提起もしなかった。本来なら統一部職員は直ちに検閲を中止させ、再発防止の約束を取っておくべきだった。ところが中には「北朝鮮にも法律や制度があるのだから、このようなこともあり得るのでは」と口にする統一部職員もいたという。韓国の政府関係者がこの程度の考えしか持っていないから、北朝鮮はわれわれを甘く見て、今回のような暴挙を繰り返すのではないか。