最近韓国に亡命した北朝鮮の海外駐在官の中に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記の秘密資金を管理する労働党39号室や、韓国への工作を担当する偵察総局所属の幹部が含まれていることが、22日までに分かった。亡命した駐在官の中には、数百万ドル(数億円)の北朝鮮統治資金を持ち逃げし、金正恩政権に金銭的打撃を加えた人物もいると伝えられている。北朝鮮を支える中核階層の一部が「カネを持って高飛び」している格好だ。
北朝鮮の事情に詳しい北京の消息筋は22日「2013年にアフリカで亡命したA氏は労働党39号室所属で、北朝鮮がアフリカに銅像を立ててやって受け取った代金の一部を持ち逃げしたらしい」と語った。北朝鮮は10年以降、セネガル・アンゴラ・ジンバブエなどで独裁者の大型銅像を立てる事業を行い、外貨収入を得た。
また、中華圏にいた労働党39号室の幹部B氏は14年、平壌で勉強していた子どもがしばらく留学に出掛けたのに乗じ、数百万ドルもの北朝鮮秘密資金をくすねて子どもと共に亡命した、と消息筋は伝えた。北朝鮮は、海外駐在官の亡命を防ぐため、子どもを平壌にとどめておくケースが多い。子どものため亡命をためらう駐在官も相当数いるという。
さらに、カリブ海の国で昨年亡命したC氏は、かつて大韓航空機爆破テロなどを起こした労働党35号室出身だという。労働党35号室は、09年に人民武力部(国防省に相当)偵察局などと統合され、現在の偵察総局に改編された。偵察総局は、哨戒艦「天安」爆沈事件などを主導した組織だ。C氏は韓国側に平壌の内部事情を伝え、北朝鮮が崩壊する可能性を強調したという。このほか、ロシアの朝鮮大聖銀行の幹部D氏は昨年、銀行の資本金の一部を持って行方をくらましたと伝えられている。
この消息筋は「世界各地の北朝鮮公館で、亡命する駐在官が出ている。北朝鮮情報だけでなく、統治資金まで持ち逃げしており、金正恩政権に衝撃を与えている」と伝えた。中には、韓国ではなく第三国行きを選ぶ亡命駐在官もいるという。
韓国の情報機関、国家情報院は20日、国会情報委員会の国政監査で「北朝鮮の海外駐在官出身の亡命者は、13年の8人、14年の18人から、今年(1-10月)は20人と、徐々に増加している」と報告した。