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−シンガポール編− (2008年9月号)
世界3大がっかり名所をご存知だろうか。シンガポールのマーライオン、デンマークはコペンハーゲンの人魚姫の2つに、ベルギーはブリュッセルの小便小僧を加える説とオーストラリアはシドニーのオペラハウスを加える説がある。しかし、他のがっかり名所を裏切り、オペラハウスは2007年にユネスコの世界文化遺産に指定されてしまった。このオペラハウスの名誉の脱落により、3大がっかりは確定された。いずれにせよ、マーライオンが人魚姫と並んで、迷うことなくがっかりの王道であったことは間違いない。
ところが、そのマーライオンに異変が起こった。人魚姫、小便小僧と同様に意外と小さいという理由で、がっかりの地位を不動のものとしていたマーライオンが、巨大化したうえ、目からビームを発射するようになったというのだ。本家本元のマーライオンは、8メートルの像である。しかし、新たにセントーサ島にマーライオンの形をした、37メートルの展望タワーができたのである。ショーのハイライトとして目から光線を夜空に放つ、巨大マーライオンの姿は、夜の観光名所となっている。
本家マーライオンががっかりに挙げられていたのは、意外と小さいこと以外にも理由があった。2002年に海辺に造られたマーライオン・ピアに移転されるまで、近くに橋がかけられていて正面から見えず、口から吐いていた水もポンプの故障で長らく止まったままだったのだ。確かに移転された後のマーライオンを見てがっかりすることはなかったし、記念写真を撮っている観光客も多かった。
昔々、マレーシアの王族が対岸に見える大地を目指して航海に出た。しかし、途中で海が大荒れしたため、王族がかぶっていた王冠を海に投げた。すると海は静まり、無事に目指す大地にたどり着くことができた。そのとき、ライオンが現れて、王族にその大地を治めることを許して立ち去った。王族はその大地をライオンの街、シンガポールと名づけ、海の神とライオンを合体させたマーライオンを国の守り神として祀った。それがシンガポールの建国神話である。
シンガポールは琵琶湖ほどの大きさしかない小さな国だ。主要な産業は観光。だから、シンガポールという国はいつ行っても安全で清潔で楽しい。チャイナタウンにアラブストリートにリトルインディア、ナイトサファリにアンダーウォーターワールド、そして忘れちゃならないラッフルズホテル。小さくても見どころ盛りだくさんなのだ。
マーライオンはシンガポールに5つもある。8メートルの本家、その本家の後ろにあるミニマーライオン、シンガポール政府観光局本局の前、海抜115メートルのマント・フェーバー、そしてセントーサ島のマーライオンタワーだ。5つ目のマーライオンが群を抜いて大きいのは、シンガポール政府が本腰を入れて世界3大がっかり名所からの脱却を図ったからだろう。国の守り神マーライオンは、今やがっかりどころか、シンガポールという巨大テーマパークの目玉なのである。
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デンマークはコペンハーゲンの人魚姫、ベルギーはブリュッセルの小便小僧と並ぶ世界3大がっかりのひとつ、シンガポールの本家本元マーライオン
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片岡恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。同大学図書館司書として勤めた後、スペイン留学。さらに3年に渡って中南米を放浪。ベネズエラで不法労働中、テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHK『地球ラジオ』にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行雑誌『格安航空券&ホテルガイド』で「バッカー列伝」を連載開始。その後まもなく日本語講師アシスタントとしてフィリピンに滞在したのがきっかけとなり、『地球の歩き方 フィリピン』を編集、執筆する。現在は雑誌記事やガイドブックなどを執筆するかたわら、阿佐ヶ谷LoftAで『旅人の夜』という旅イベントを主催している。2008年現在、37ヶ国を歴訪。世界遺産にも詳しく、2007年8月に放送されたNHK『プレムアム10』「プロが選ぶ世界遺産ベスト30」に出演し、フィリピンの棚田を紹介した。中南米、フィリピンを得意とする秘境者(ひきょうもの)として活躍中。

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(2008年9月号 | 2008年8月 7日 木曜日 16:29 更新)

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