大阪市東住吉区で起きた小6女児の死亡火災で、殺人罪などで無期懲役が確定し服役中の母親ら2人の再審請求に対し、大阪高裁はきのう、検察の即時抗告を棄却、地裁の再審開始決定を支持する決定を出した。

 直接の証拠は捜査段階の自白だけという事件だった。高裁は決定で「自白を裏付ける物証や客観的事実はない」と指摘し、捜査のあり方を批判した。

 自白の信用性が揺らいだ以上、当然の判断だ。捜査のどこに問題があったのか、警察や検察は謙虚に省みるべきだ。

 事件が起きたのは95年。女児が自宅の火災で焼死し、母親と内縁の夫が、保険金めあてに殺害したとして逮捕された。刑は06年に確定した。

 再審の焦点は火災の原因が、放火か自然発火かの認定だ。

 車庫にガソリンをまいて放火した――。夫の自白に沿って弁護側が独自に再現実験したところ、火は爆発的に広がり、とてもやけどを負わずに屋外へ逃げるのは困難だと分かった。

 これが決め手になり12年、地裁が再審開始を決定、検察が即時抗告していた。しかし検察が改めてやった実験でも、車からのガソリン漏れが起き、自然発火した可能性の方が強まった。

 車庫に風呂釜の種火があったことは当初からわかっていた。捜査段階で実験を綿密にやったのか、大阪府警が自然発火の可能性を検討し尽くしていたのか、厳しく問われよう。

 即時抗告審で母親は訴えた。

 「何で娘を助けられへんかったんや、殺したことと同じやぞと言われ、自責の念にさいなまれ私のせいだと思い込んだ」

 決定の中で高裁は「取調官はたびたび大声を出し、被害者を救出しなかったことを責め、相当の体調悪化がうかがえる中で自供書を作成させた」と、強要があった可能性を指摘した。密室の取り調べで、あってはならぬ捜査だった。

 取調官の誘導や強要に屈し、虚偽の自白をする。そんな事例は再審で男性の無罪が確定した足利事件などで問題になった。

 描いた構図に沿って客観証拠を都合よく解釈することは、決して許されない。まして今回の事件が起きた当時はパソコンも普及し始め、指紋のデータベース化など、科学捜査の導入が進んでいた時代だ。

 大阪高裁は「刑の執行を今後も継続することは正義に反する」と、2人の釈放を認めた。検察側は異議を申し立てたが、「無罪を言い渡すべき蓋然性(がいぜんせい)がより高くなった」という決定の重みをよく考えるべきだ。