在日米軍基地の施設整備費や従業員給与など駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」をめぐり、日米両政府が今後5年間の水準を定める特別協定の交渉に入っている。

 今年度の1899億円から700億円程度の減額を求める日本に対し、米国は3割増を要求しているもようだ。

 忘れてならないのは、この予算は日本国民の税金で負担しているということである。

 3割増がなぜ必要なのか、日本政府は積算根拠とともに米側に厳しくただしてもらいたい。

 少子高齢化が進み、国の借金は1千兆円を超す。財政再建の圧力は増す一方だ。中国の軍拡や海洋進出への対応で一定の防衛費の負担は必要だとしても、予算に聖域はあり得ない。

 その意味で、日本側が今回、米軍基地内のレストランやバーなど娯楽施設で働く従業員の労務費の廃止などを米側に提案したのは理解できる。

 そもそも「思いやり予算」をめぐる日本の気前の良さは、米軍基地を受け入れている国の中で突出している。

 米国防総省の04年の統計によると、02年の日本の米軍駐留経費の負担率は日米全体の74・5%で、ドイツの32・6%、韓国の40%に比べて格段に高い。この「厚遇」を続けるべきか、そこから議論が必要だろう。

 米政府も国防予算の削減が続くなど、財政事情の厳しさは同じだ。日米双方がコスト意識を高め、それぞれの負担のあり方を精査し、その当否を改めて考え直すべき時ではないか。

 日本の防衛費の増加幅は18年度までの5年間の中期防衛力整備計画で年0・8%ずつと決まっている。仮に思いやり予算が増えれば、その分、装備品などの予算は削られることになる。

 一方で、その装備品は、来年度の概算要求で新型輸送機オスプレイや戦闘機F35A、滞空型無人機グローバルホーク、新早期警戒機E2Dなど米国製兵器の購入が目白押しだ。維持費や修理費もかさむに違いない。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設についても、もし日本政府が本格着工に踏み切れば、経費は大きく増えるだろう。安保法制の成立を受けて自衛隊の活動が拡大すれば、その関連経費もふくらむ可能性が高い。

 負担のあり方に納税者の理解が得られなければ、日米同盟への疑問が広がりかねない。

 日米が役割をどう分担し、優先順位をどこに置き、安全保障の将来像をどう描くか。根幹の議論の中で、思いやり予算のあり方も再検討する必要がある。