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三井不動産“傾斜マンション”大騒動 絶対に騙されないための「10の鉄則」〈横浜は氷山の一角〉

 投稿者:東京新報  投稿日:2015年10月22日(木)07時22分2秒
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  三井不動産“傾斜マンション”大騒動 絶対に騙されないための「10の鉄則」〈横浜は氷山の一角〉

「一生に一度の買い物」とは言うけれど、それも売り手への信頼あればこそ。業界トップブランドで発覚した悪質な“施工偽装”は、その前提を根底から覆した。「業界の常識」に騙されずに、大切な資産を守るため、今すぐ実践できるチェックポイントを一挙公開!

 新横浜駅から車で二十分。週末には多くの家族連れで賑わう大型商業施設「ららぽーと横浜」に隣接する大型マンションが、騒動の“発火点”となった。
 このマンションは業界最大手の「三井不動産レジデンシャル」が販売した「パークシティLaLa横浜」。
 中心価格帯三千五百万円~四千万円台、全七百五戸の四棟のうち、ウエストコート(西棟)が基礎工事の施工不良により傾いていたことが判明、“傾斜マンション”として、連日報道陣が押し掛ける騒ぎとなった。西棟に住む女性住民が憤慨する。
「ベランダのひびが一つ、また一つと増えていくので、おかしいなとは思っていました。ただ、三井不動産レジデンシャルからは『震災の影響なので大丈夫』と説明があったそうなので、安心していました。今となっては騙されたという憤りでいっぱいです」
 傾斜の原因は支持層と呼ばれる固い地盤まで基礎工事の杭が届いていないことだった。
「最終的に七十本の杭について施工データの偽装が認められました。支持層に届いていない『未達』や差し込み不足だったにもかかわらず、適切に差し込まれているように改ざんしたのです。結果、隣の棟との渡り廊下の手すりにずれが生じ、住民が知ることになりました」(社会部記者)
 住民が業者側に相談したのは昨年十一月のこと。当初は「東日本大震災の影響」と施工不良を認めなかった業者側が一転これを認めたのは、横浜市が現地調査を終えた後の今年九月のことだった。横浜市建築安全課担当者が語る。
「九月十五日に三井不動産レジデンシャルと三井住友建設の担当者が来庁し、杭の未達と差し込み不足について報告がありました。その時点ではデータ改ざんについての報告はありませんでしたが、その後、十月六日に旭化成建材の担当者らとともにやってきてデータ転用の一報がありました」
 三井不動産レジデンシャルから発注を受けた施工主は三井住友建設だが、杭の打設を担当したのは下請けの旭化成建材だった。
 十月十六日、住民説明会後に囲み取材に応じた同社の前田富弘社長は現場の責任者がデータ改ざんを行った可能性に言及した。
「何らかの不良を隠すため、悪意を持って、意図的に何らかの操作がされたことが推測される」
「悪意を持って」改ざんをした現場責任者とはいかなる人物だったのか。
「施工当時で十五年のキャリアがあるベテランでした。当時は同業他社からの出向でしたが、現在では契約社員になりました。いまは連日出社して、会社側の調査に協力しています」(旭化成広報担当者)
 だが、問題の責任は本当に一人の担当者に帰せられるべきものだったのか。

下請けを「叩く」三井不動産

「建材は安全第一に工事を行っているので業界での評判は良い。他社であればわざわざ杭を打たないような固い地盤でも安全の為に多くの杭を打っていました。ただ、元請からのプレッシャーはもの凄い。工期や予算は絶対ですから。そうした中で安全性をおざなりにしてしまうことは、業界として珍しくはないですね」(旭化成グループ元社員)
 住宅ジャーナリストの榊淳司氏もこう指摘する。
「現場責任者個人の責任が追及されていますが、一義的な責任は売主の三井不動産レジデンシャルにあるはず。『ウチの社員ではないんです』と建材に罪をかぶせようとしているように思えてなりません」
 レジデンシャルは三井不動産グループに属し、部長以上のポストの多くは三井不動産からの出向組だ。
「三井不動産はとにかく下請けを叩く。超一流のブランドを看板に、コストをどんどん削って二次・三次に至るまで下請けを締め上げます。三井のマンションが高額なのは、あくまでブランド料。お客さんは『三井だから良い素材と良い人材で作っている』と思っているかもしれないが、そういう思いに胡坐(あぐら)をかいて値段を吊り上げているだけですよ」(三井不動産OB)
 横浜の物件の騒動が冷めやらぬ中、小誌記者は三井不動産レジデンシャルが手掛ける別の物件の内覧に訪れた。営業マンの男性は、事件について「ご迷惑をおかけした横浜の方には、一日でも早く安心していただくように努力していく次第です」と頭を下げる。
 その一方で「今回問題が判明したのは旭化成建材さんが杭を工事したところですが、ここは別の会社になります」と“予防線”を張ることも忘れない。
 ところが、別の会社とはどこかを尋ねると、
「えっとですね……私どもお調べさせて頂いて、(旭化成建材とは)会社としての名前は違いました。すみません、ちょっといま(会社名は)ド忘れしてしまいましたが……」
 大販売主の営業マンにとっては、これだけの大騒動があっても、“下請け”に対する認識はこの程度のものなのだろうか。
 問題発覚後、旭化成は、約三千件にのぼる旭化成建材の施工物件の調査を表明。調査次第では、LaLa横浜のケースは“氷山の一角”に過ぎないことが明らかになる可能性も高いという。
「施工主のプレッシャーによって現場が無理をして改ざんに手を染めた今回の構図は、全国のどんなマンション建設現場でも起こり得ることでもあります」(前出・三井不動産OB)
 前出の榊氏も指摘する。
「特に今後五、六年は欠陥マンションが増えていく可能性があります。東日本大震災の復興需要により東北で働く職人さんが増え、全国的に人手不足が深刻化しています。その結果、工期が遅れ突貫工事になってしまう恐れがあるのです」
 こうなってくると「自分の住んでいるマンションは大丈夫か」「これからマンションを買うつもりだったけど、怖くて買えない」という向きもあるだろう。
“欠陥マンション”を掴まされないためには、どうすればいいのか。小誌では専門家に緊急取材を敢行、以下に騙されないための「十の鉄則」を紹介する。
 まずは今回の件で注目された「基礎」の欠陥やデータの改ざんを見抜くことはできるのか。欠陥住宅関東ネット事務局長の谷合(たにあい)周三弁護士は法の不備について指摘する。

「閉まりにくいドア」に要注意

「一般の方がデータの改ざんを見抜くことはまず不可能ですが、杭の工事に関しては、法的な規定もありません。第三者によるチェックが存在しないのです」
 それでも今、自分が住んでいるマンションの基礎の欠陥を、簡単にチェックできるポイントがある。
「まず台所の下の配管を見て水漏れをチェックしてください【鉄則(1)】。水漏れの跡を示すカビが生えていることがあります。単純に配管に亀裂が入って水漏れしているだけかもしれませんが、マンション全体の傾きによる負荷が配管にかかり、水漏れの原因となる可能性もあります」(住宅ジャーナリストの山下和之氏)
 不動産コンサルタントの長嶋修氏は「日常的な室内の異変」に目を向けることが大切と指摘する。
「例えばドアなど建具がガタついていないかどうか。建物が傾いていると、ドアが閉まりにくくなったりします。傾きのチェックにはインターネットで千円程度で購入できる水平器が有効です。また室内の壁に亀裂が入っていないかどうか注意深く見ることも大切です。横浜でも、そうした事例が確認されたそうです」
 もし亀裂やひび割れを見つけても、すぐに過度な不安に陥る必要はない。肝心なのは「良いひび割れと悪いひび割れ」の見極めだ。
「コンクリートは時間が経てばひび割れるものです。ただそのひび割れが幅〇・三ミリ以上で且つ深いものであれば要注意。目安としては名刺が入ってしまうようなものは悪いひび割れですから、構造か地盤のどちらかに問題があると疑われます」(同前)
 もし、異変を確認したらまずは近隣の住民に相談して、その異変は自分の部屋だけのものなのか、それともマンション全体に同様の事例が確認されているのか把握する必要がある。
 これからマンションの購入を検討している場合は、基礎工事の種類である「杭基礎」と「直接基礎」の違いに注目【鉄則(2)】だ。
「横浜の物件のように、支持層までの距離が長ければ杭を打って基礎工事をする『杭基礎』になります。ところが地表から支持層までの距離が短い場合、杭を打たずに基礎を作る『直接基礎』でも建物の安全性は保てます」(前出・山下氏)
 直接基礎であれば、LaLa横浜のような杭の未達による施工不良を避けることができるのだ。
 支持層の深さは地域差も大きいという。前出の長嶋氏が解説する。
「八王子周辺の武蔵野台地では支持層が地表から約一メートルの深さにあり、地盤についての問題は起こりにくい。対して江東区や墨田区など湾岸地域から春日部、東武動物公園の先までは極めて地盤が弱い砂礫層で出来ている。支持層までに五十メートルくらいありますからコストもかかるし、施工不良が起こる可能性も高まります」
 さらに地盤の良し悪しは地名からも推測できる【鉄則(3)】という。
「例えば渋谷は文字通り『谷』ですから高低差が大きく、支持層までの距離もまちまちですが、南平台などの高級住宅地は支持層までの距離が短い高台にあり良い地盤といえます。高級住宅地が高級であるのには、それなりの理由があるといえます」(同前)
 ちなみに問題となった横浜の物件の所在地は「池辺町」。一般的に水辺は地盤が悪いとされており、不安を感じたら事前に地盤状況を専門家に聞いて欲しい。

不動産チラシにもヒントが

 地盤の確認を終えたら、次は内見の際の鉄則だ。内見は欠陥マンションを見抜く大きなチャンスなのだ。
「まず浴室の天井のコンクリートの厚さについて聞く【鉄則(4)】べきです」というのは『危ない建物を見抜く方法』の著者で耐震コンサルタントの染谷秀人氏だ。
「上の階の浴槽があるため浴室の天井はどうしても薄くなりがちで、特に中古の場合は、厚さが十センチほどしかない物件もあります。最近の物件は二十センチがスタンダードですが、これが十五センチ以下であれば要注意です」
 中古の場合は、建築年数もチェックポイントとなるが、実は新しければいいというものではないという。
「中古の場合は十年くらい経過した物件から選ぶと安心【鉄則(5)】できます。十年経てばよい物件と悪い物件で経年劣化に差が出てきますから。外壁のひび割れのほか、外廊下などの共用部分もしっかり確認してください」(「建築Gメンの会」の田岡照良副理事長)
 横浜の物件では、共用部分の手すりのずれが発覚の発端となっている。
 また、前出の染谷氏は、「築二十年ほどの高強度コンクリート製のマンションは避けるべき【鉄則(6)】」と警鐘を鳴らす。
「高強度コンクリートは九〇年代半ばごろから使われ始めた比較的新しい材料で、それほど実績がない。しかも当時は新材料なので施工管理者は扱いに慣れておらず、完成直後なのに床一面にひび割れのみられる物件もありました。それを隠すため上からモルタルを塗ってとりあえず目隠しをするのです。もちろん、住民には公表されません」
 こうした“隠された欠陥”を見破るためには、管理組合が定期的に行う大規模修繕工事が絶好の機会【鉄則(7)】となる。
 前出の山下氏が語る。
「大規模修繕の際には、外壁のタイルなどを剥がして工事を行います。その際、思わぬ欠陥が見つかることがあるのです」
 大規模修繕のための事前調査を行う業者には、配水管の変化など他の部分に異変がないかの確認も同時に行うよう依頼した方がいいだろう。
 一方で、中古マンションとは異なり、物件が完成する前に売買契約を結ぶことが多い新築マンションの場合は、購入の際に欠陥住宅を見破ることは難しい。購入者向けに開かれる見学会もあるが、そこで欠陥を見抜くことは可能なのか。
「〇五年の耐震偽装事件後、見学会は増えました。ただ工事現場だけでは一級建築士などの専門家が見てもわからない。ましてや杭打ちなんて横にいてもわかりません。地中の杭を目で確認できるわけでもありませんし」(前出・榊氏)
 それでも、チェックできるポイントはある。チラシに記された「物件概要」である。不動産仲介業者「Housmart」の針山昌幸社長が語る。
「物件概要にある『完成時期』と『入居予定時期』に注目【鉄則(8)】してください。物件完成後、施工会社と、企画したデベロッパーの間で何度も確認作業を行います。異変があれば対応工事を行い、マンションの欠陥を防ぐためです。つまり、完成時期と入居予定時期の間が、確認と対応工事のために用意された期間となります。もしこの期間が一カ月以下しかない場合、確認作業もそこそこに、突貫工事をした可能性が高いので要注意です」
 さて、ここまで騙されないための様々な鉄則を紹介してきたが、不幸にして欠陥マンションに住んでいることが発覚した場合には、どうすれば良いのか。
 前出の針山氏が語る。
「管理組合を通じて、住宅診断士によるホームインスペクション(住宅診断)を実施することで欠陥箇所や修復費用を専門家の視点から調査【鉄則(9)】してもらいましょう」
 また都道府県の建築士会などに頼めば専門家を紹介してくれるという。
「金額的にも大きな費用はかからないので、管理組合で一級建築士に依頼して、どこが問題なのか写真を撮り文書を作って売主に交渉をすべきです」(マンション管理士の三木勝利氏)
 住宅診断を済ませたら業者側との交渉となるが、相手側には、日々数多くのトラブルが寄せられており、その処理の仕方も巧妙だ。
 前出の榊氏が語る。
「東日本大震災の際に、東京西部にある築五年くらいのタワーマンションが、内壁にひびが入るなど大きな被害を受けました。すると売主側は何食わぬ顔で一億数千万円の見積もりを持ってきたそうです。ただ震度四程度の地域でしたから、そんな被害が出るのはどう考えてもおかしい。しかし管理組合が大人しかったこともありそのまま発注してしまったそうです」
 当然のことだが、業者を相手に闘うには、住民でつくる管理組合が正常に機能している必要がある。
「例えば管理組合は管理会社との間に管理委託契約を結び、清掃にかかる費用や管理人の人件費などを定めています。この内容が一度は住民目線で見直されているかどうかで、管理組合が機能しているかがわかる。中古物件を選ぶ際は、管理会社にこのあたりを聞いておくことも、チェックポイントになります」(一級建築士の稲葉なおと氏)
 業者側と交渉するために重要なのが、どういう施工を行ったのかが一目瞭然となる図面や仕様書からなる設計図書だ。だが、これを巡っては奇妙な出来事がしばしば起こるという。
「デベロッパーは管理組合と揉めた物件については、なぜか設計図書を紛失するんです。『担当者がおりませんのでわかりません』と。通常は管理会社が預かっているんですけどね」(前出・榊氏)

「資産価値はゼロに等しい」

 裁判になった際に欠陥の原因を立証されないように、なるべく情報を出したくないという業者側の意図も透けて見えるが、これにどう対処すればよいのか。
「裁判では立証責任は住民側にあるので、どこを突けば良いのか専門の弁護士などに相談するのがいいと思います。また管理組合とは別に構造問題対策チームを立ち上げることも重要です【鉄則(10)】」(前出・谷合氏)
 管理組合は一、二年で交代するが、専従の対策チームであれば、中長期的な視野で問題に対処できる。
 横浜の物件では全戸建て替えを巡り、住民同士の意見が対立し、説明会では感情的にぶつかる場面もあった。業者側と対峙するには住民同士の結束が第一であるのは言うまでもない。
 最後に、前出の針山氏はこう指摘する。
「実際に住み始めてからの対処には様々なハードルがあり解決までには困難が予想されます。まずは欠陥マンションを購入しないことに最大限の注意を払うべきでしょう」
 横浜の物件の場合、仮に建て替えをするにしても四年はかかるとされており、住民も怒りを隠さない。
「四千万円で購入してまだローンが二千万円残っています。説明会では三井側から『改修すれば資産価値は下がりません』と言われましたが、何を言っているんだと。今後どうすればいいのか不安でいっぱいです」
 前出の榊氏が語る。
「資産価値が下がらないはずありません。現状では欲しいという人がいるわけありませんから。資産価値はゼロに等しいと言っても差し支え無いと思います」
“一生に一度の買い物”で泣き寝入りをしないためには、自分の資産は自分で守るしかない。

「週刊文春」2015年10月29日秋の特大号
 
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