クローズアップ現代「政治に関心ありますか?〜“18歳選挙権”導入へ〜」 2015.10.21



(チャイム)
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
今夜のテーマは18歳と政治です。
来年の参議院選挙で行われる70年ぶりの大改革。
選挙権を得る年齢が18歳に引き下げられます。
ところが去年の衆議院選挙で投票したのは20代では3人に1人以下。
多くの若者にとって政治は遠い存在になっています。
一方で安全保障関連法を巡っては若者が政治に声を上げる動きも広がりました。
18歳選挙権を機に学校では政治との向き合い方を教える主権者教育が始まろうとしています。
若者が政治を身近に感じるためには何が必要か考えます。
社会保障政策に、財政問題安全保障政策や農業や産業政策さらには温暖化対策。
政治によって進んでいく方向が決まっていくこうした重要でそれぞれが非常に複雑な課題について自分の意見を持って議論することが果たしてできるのか。
突きつけられると思わず後ずさりしてしまいそうです。
この秋から高校では現代の政治について自分の意見を持って考える力を育む主権者教育という授業が本格的に始まります。
来年導入される18歳からの選挙権を踏まえて主権者としての自覚を持ちまた、必要となる知識やそして、判断力を討論や模擬投票などを通して身につけてもらおうというものです。
18歳の選挙権そして、政治についての意識を高める教育はすでに多くの海外の国々では盛んに行われています。
若者は政治に無関心。
また、政治は若者の声を聞かないといった悪循環も指摘されていますが実際、過去3回の衆議院選挙の投票率はご覧のように20代で全体を大きく下回っています。
その一方で内閣府が行った調査では社会に役に立ちたいと答える20代は67%。
ほかの世代と比べても決して低くはありません。
役に立って社会をよくしたいという多くの若者たちに向かって始まる、民主主義を育てる授業。
学ぶ側の若者たち。
そして教える側の教員たちに何をもたらそうとしているのか取材しました。
神奈川県立湘南台高校です。
全国に先駆けて主権者教育に取り組んでいます。
この日は身近なニュースを巡って生徒どうしが討論を行いました。
テーマは電車内で携帯電話を利用する際のルールの変更です。
これまでは優先席付近では常に電源オフでしたが今月から混雑時に限って電源オフになりました。
初めのうちは賛成反対といった明確な意見はなかなか出てきません。
しかし、ある資料が配られると様子が変わりました。
心臓のペースメーカーへの携帯電話の影響について距離が15センチ以下にならなければ問題ないとする資料です。
一方、資料を読み込んだうえで反対する生徒も出てきました。
携帯電話に気を取られお年寄りとぶつかるといった別の問題も出てくるのではないかというのです。
この高校で主権者教育を担当している黒崎洋介さんです。
生徒みずからが根拠を考え賛否をぶつけ合ったことに黒崎さんは手応えを感じていました。
高校3年生の堀水真世さんです。
授業で討論を行ううちに政治や社会の見方が以前とは変わってきたと感じています。
転機となったのは被災地のがれきを全国で受け入れることの是非を議論したことでした。
初めは漠然と受け入れに抵抗感があった堀水さん。
しかし調べてみるとがれきの処理が進まず復興が遅れていると知り意見を持つためには幅広く情報を集める必要があると感じたのです。
一方、教える側の教員は難しい課題に直面していました。
意見が鋭く対立する現実の政治課題を取り上げるかどうかです。
主権者教育の担当者が集まった検討会。
よろしくお願いします。
黒崎さんが授業のテーマに提案したのは、国会でも大きな議論になった集団的自衛権でした。
ところが、ほかの教員からは懸念の声が上がりました。
授業の進め方しだいで生徒を特定の見方に誘導することにつながってしまうのではないかという懸念です。
学校の教員は法律で政治的中立が義務づけられています。
特定の政党を支持したり反対したりするための教育を行うことはできません。
NHKが今月行った全国の公民科教員などへのアンケートです。
授業で現実政治を扱う際に政治的中立性を担保できるかどうか尋ねたところ7割が戸惑いや不安を感じていると回答しました。
何を持って政治的中立を担保したと判断するのか。
教員の発言について保護者からのクレームが寄せられる心配がある。
中立でない、偏向していると中傷されたり、政治家が教員の処分を叫んだりしないだろうか。
集団的自衛権を取り上げることを提案した黒崎さん。
意見が対立する問題だからこそ生徒が向き合う価値があると考えています。
この日、できるかぎり多くの情報を提供することで授業で扱うことに理解を求めました。
湘南台高校では来月にも集団的自衛権を扱うことに決めましたがどう授業を進めるかは今後の課題になっています。
今夜は、2人のゲストをお迎えしております。
野村総合研究所顧問で、若い世代の政治参加の重要性を提起していらっしゃいます増田寛也さん、そして、幅広い視点で若者の今を読み解いていらっしゃいます、東京工業大学准教授、西田亮介さんです。
まず、今の黒崎教諭でしたけれども、若い人たちが、難しい政治的論争になっている問題でも、自分の力で考えて、そして公正に判断する力を身につけて、世に出ていってほしいと。
そういう志しで挑んでらっしゃる取り組み、増田さん、どうご覧になられましたか?
大変すばらしいことだと思いますね。
今、やはりこの主権者教育が、いかに重要かということを、きちんと全国民がやっぱりわきまえる必要がある。
若い世代が、やっぱり政治的には、あまり重要視されていないような、そういう時代ですよね。
そのときにやっぱり、主権者教育によって、若い人たちがきちんと、こういう問題に目覚める、自分の意見をしっかり持って、政治に参加していくということが、すごく重要だと、私は思います。
西田さんはどうですか?
まさに最先端のグッド・プラクティスだと思うんですね。
ただし、これまさに、一番よいケースなので、これがすべてどの学校でも展開されると思うと、やや不安が残るというところはあると思います。
こういった取り組みができるような、どうすれば担保できるのかという点も考える必要があると思います。
そうすると、現実的にはなかなかそこまで踏み込めない学校が多いと見てらっしゃるんですか?
そうですね、先ほどのアンケートにもあったとおりで、これをどうやって、例えばネガティブリストとか、どういう行動に関わらなければ教員の方たちが責任を問われることはないのか、あるいは政治からの圧力とか、プレッシャーがかかりにくいようにすることができるのか、そういった問題について、考えていく必要もあると思います。
具体的には、中立性ということの担保が不安だという、アンケート結果でしたよね。
そうですね。
黒崎先生は、大変頑張ってらっしゃると、一番リスクを取って、やってらっしゃると思うんですけれども、それをすべての先生に求めては、なかなか難しいのかなと。
それができるようにする仕組みが必要だと思います。
増田さん、この中立性とは何かっていう、どうやって担保していけるんでしょうね。
政治的な問題であればあるほど、そのちょうどど真ん中を定めるというのは、非常に難しいと思うんですが、大事なことは、どういう問題であっても、今回、黒崎先生が取り上げようとしている集団的自衛権も、まず、多様な意見があるということですね。
多様な意見があって、その多様な意見を、きちんと生徒たちに伝えていくということが必要だろうと。
で、周りが過度に、やっぱり干渉するのはよくないし、それから逆に、先生方も本当に試行錯誤だと思うんですが、遠慮することもなくてね、それは一つ一つ、初めてのケースだから、積み上げることでしかないんですが、その多様な意見というのを、またたぶん、黒崎先生が自分でいろいろこういう意見も、こういう意見もってやるとなかなか難しくなるんで、例えばですけどね、新聞でよく、いろんな一つのテーマについて、各党はこういう考え方ですっていうのを、一覧表にしているのありますよね。
それを複数の新聞を、題材にして、生徒に提供するとか、そのあたりのやり方を、これからいろいろ施行していくということが必要だろうと思いますね。
その主権者、本当に責任ある主権者になってもらいたいという思いで、教育をこうした取り組みが始まるわけですけれども、先ほどもちょっと触れられましたけど、なぜ今、これが大事なのか。
18歳に選挙年齢を下げたということ、有権者の数の2%、僅か2%とも言えると思うんですけど、増えるだけなんですけど、なぜこれが大事なんですか?
例えば今の日本の課題とすると、社会保障なんか、大変大きな問題ですよね。
今の日本の財政状況から言うと、ある種、世代間闘争というんですかね、少子化の問題をしっかりと解決しようとすると、高齢者のほうの社会保障を削って、少子化、あるいは若者たちに回していくしかないんですが、そういったことは、どうしても政治家にしてみるとね、有権者の数が多い、自分の当落につながる、高齢者のほうをどうしても優先しがち。
ですから、よくシルバー民主主義といいますけれどもね。
そういうことが現実にずっと起こってきて、社会保障の問題について、先送り、先送りなんですよね。
ですからそういう意味では、私は、シルバー民主主義ということじゃなくて、本当の真の意味の民主主義にしていくうえでも、この若い世代が、本当に積極的に投票に行くという、このことが重要じゃないかと思いますね。
西田さん、若い世代は、今の政治をどう見ているのか。
自分たちは不利益を被っているのではないかという意識を強く持ってるんですか。
社会への関心というのは、どの程度持ってるんでしょうか。
明らかに右肩上がりの時代は終わってしまって、自分たちが先行する世代とは違った状況にあるということは、強く認識していると思います。
そうしますと、政治は信用できるのかと聞かれた場合、どう答えるんでしょうね。
政治について、例えば自分の投票が、政治を変えるという感覚は、極めて乏しいと、ほかの国と比較しても、薄いんだという研究結果があったりします。
だけど、今、例えば安全保障政策なんかを見ても、デモを行う若者たちが増えたりする光景も見たわけですよね。
全体として、社会をよくしたいという、役に立ちたいという数字も高いわけですけども、どういう関わり方をしようとしているんでしょうか?
今、向かう先が多様になってるんだと思います。
例えばNPOとか、企業でもインターンとか、いろいろなことに向くようになったと。
昔は例えば、紛争、大学闘争とか、学生運動とか、そういったものに向いてたものが、より身近で、具体的な問題解決に向くようになってるんじゃないかと。
その向かう先が、多様になってるんじゃないかと思いますね。
そうすると国会とか、国会議員とか、そういったこと、いわゆる本当の政治というものに対する見方というのは、どうなんですか?
それも一つの表れで、先ほどのデモのように、デモで主張をするという人たちも出てきているということだと思います。
なるほど。
さあ、その政治的な中立というものを考えながら主権者教育ということを行うということの難しさも、VTRに出てきたんですけれども、18歳選挙権を実りあるものにするために、学校の外で若者と政治の距離を縮めようという自治体の模索も始まっています。
愛知県新城市です。
18歳選挙権の導入を前に若者に実際の政治に参加してもらう試みが始まっています。
若者の声を行政に取り入れることで過疎化に歯止めをかけたいという考えからです。
そこで市がことし設置したのが若者議会です。
福祉や町づくりなどの政策を若者の視点で考え採用されたものは実行に移します。
予算は1000万円。
16歳の高校生から29歳の社会人まで20人が参加しました。
参加者の一人、高校3年生の瀬野尾宗伺さんです。
新城市を住み続けたい町にしようと参加しました。
提案したのは、若者の利用率が低い市立図書館の改革でした。
目をつけたのは館内にある郷土資料の展示室です。
30年前、市のPRのために作りましたが、今では利用者はほとんどいません。
ここを若者向けの多目的スペースに変えたいというものでした。
しかし、展示品を管理する部署からは、資料の展示も図書館の役割だと反論が出ました。
この日は瀬野尾さんの提案がそのまま受け入れられることはありませんでした。
若者議会が始まって5か月。
市はスポーツイベントの開催など6つの提案を採用する方向で検討しています。
瀬野尾さんが提案した図書館の改革も議論の末一部採用される見通しです。
瀬野尾さんにとっては政治の世界の厳しさとおもしろさを体験する機会となりました。
西田さん、高校生で自分の提案が少しでも採用されるとうれしいでしょうね。
そうでしょうね。
手触りがあるというか、自分が作ったものとか、提案したものが採用されるということに対して、愛着が湧いたりするんじゃないですかね。
若者議会の設置、どう見てらっしゃいます?
これはもう、まさに、すばらしい取り組みだと思いますね。
若い人たちが、身近なところから政治を感じて、その先に国の政治とかも感じられると、なおいいんじゃないですかね。
増田さんはどう見ていらっしゃいますか?
実はこれ見てね、若い人たちがこうやって、自分の意見をきちんと固めようとしているわけですよね。
ですから、それを見た政治家が、やっぱりきちんとこういう若者の声を受け止めると、それから残念なことに、今ね、前回の総選挙は、僅か投票率52.6%でしたよね。
大人全般が、1票の持っている意味とか、投票の持つ意味を、やっぱりないがしろにしてるんじゃないかと。
そういうのがやっぱり、若者はその背中を見て、結局、棄権したりするわけですから。
若者がそういう試みをしている中で、今度は政治家や大人が、それにぐっと近づいていくということが必要じゃないでしょうか。
身近で合意形成をどうやってしていくのかというのを見られるというのは、すごい貴重な経験ですよね。
若ければ若いほど、他人の意見に耳を傾ける、自分の考えをまとめる。
だけど今度はそれを合意形成して、一つの結論に導き出す、そのプロセスをずっと経験するというのは、すごく大事だと思いますね。
西田さん、今、増田さんは、もっともっと大人自身が、投票率を高めることを背中で見せなければいけないということもおっしゃったんですけれども、若者がもっと政治に関わろうと、本当に思えるようになるには、何が必要だと思っていらっしゃいますか。
そうですね、今回のような教育の取り組みもそうですし、ほかに仕組みの問題もあるんだと思うんですね。
例えば、若い人たちが、自分たちの中から立候補できるようにするとか、例えば、比選挙年齢といいますけど、これを引き下げるとか、あるいは選挙に立候補するのにお金かかりますから、供託金というんですけど、供託金を引き下げるとか、さまざまな、つまり社会全体で、政治について、考える機会を提供していくという試みが必要なんじゃないかと思いますね。
そうすると、この秋から始まる主権者教育、そこへの期待というのは、どの程度お持ちなんでしょうか?
これ第一歩だと思いますね。
ここがきっかけになって、世の中の機運が、政治について考える必要があるんだと、そういう雰囲気ができるということが一番重要だと思いますね。
増田さんは、この18歳に選挙権年齢が引き下げられる。
そこで民主主義を育てていこうという取り組みが始まっていくわけですけれども、どう考えて、私たちは進んでいくべきだと思われますか?
民主主義と、本当に基本のところを、政治家も大人も、それから彼らも、もう一回、きちんと確認をするチャンス。
だから私は被選挙権を引き下げるというのは、私、大変賛成ですしね、それから公職選挙法で、べからず衆になってますよね。
2015/10/21(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「政治に関心ありますか?〜“18歳選挙権”導入へ〜」[字]

来年夏の参議院選挙で実現する“18歳選挙権” カギを握るのが「主権者教育」。学校でどこまで政治を扱うべきか?社会が担う役割は?教育現場などの模索を通して考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】野村総合研究所顧問…増田寛也,東京工業大学准教授…西田亮介,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】野村総合研究所顧問…増田寛也,東京工業大学准教授…西田亮介,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:19110(0x4AA6)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: