(金山杉子)あっ美也子さん。
今パートの帰り?
(久保美也子)あっはい。
(金山健三)日が短うなりましたな。
丹波栗。
この時期しかあらしまへんで。
(杉子)美味しいよ。
(金山)うん?どないしはったん?ちょっとちょっと美也子さんどこ行くの?
(涌田亜美)対象車両がNシステムにヒットしました。
国道24号線を…。
(亜美)「宇治…」
(土門薫)聞こえない。
感度悪し。
再度送ってくれ。
国道24号線を宇治西インターチェンジ方面へ向かっています。
「24号線どっち方向だ?」宇治西インターチェンジ方面です。
(相馬涼)なんか今日電波悪くないですか?
(榊マリコ)この嵐のせいよ。
嵐?
(パトカーのサイレン)
(カメラのシャッター音)
(蒲原勇樹)2週間ぶりに帰ってきた夫が発見したそうです。
2週間ぶり…?愛人宅からのご帰宅ですよ。
(久保良行)今日改めて話し合う事になってました。
離婚に応じていたんですか?奥さんは。
だがあなたにはもう奥さんへの愛情はなかった。
土門さん。
部屋のごみ箱に黄色いブラウスが捨てられていました。
新品同様のようですがお心当たりは…?俺が結婚記念日に買ってやった服ですよ。
半月も帰ってこなかった俺への当てつけでしょう。
(相馬)最近多いですね。
夫婦間の刃傷沙汰。
夫が犯人って決まってないでしょう。
でも一昨日は結局夫でしたよ。
そういや犯人すぐ身柄確保出来てよかったね。
無線の調子が悪くてイライラしましたけど。
(亜美)嵐のせいですよ。
太陽表面の大規模なフレア現象で当時スケールG4の磁気嵐が発生してましたから。
困るよな。
地球規模の無線障害とはな。
なあ。
なんだ?これ。
(相馬)うわっ…。
蝶?
(宇佐見裕也)ブラックライトと同じ波長で光るという事はなんらかの紫外線蛍光物質で描かれていますね。
目に見えない紫外線を吸収して目に見える蛍光を発する何か。
(亜美)これ犯人から警察へのメッセージかもしれませんよ。
(杉子)美也子さんホンマに最近変やったわ。
どう変だったんです?うちで野菜さっぱり買うてくれへんようになったんよ。
なんだよそんな事か…。
なんだとはなんやの?あんた!メモっときや!久保美也子さんを最後に見たのはいつですか?あれは確か一昨日の…。
そうやあの晩なんや様子が…。
そうそう。
山のほう見てえらい驚いてはって…。
山のほう?左大文字山…。
(風丘早月)傷は背中の中央付近にただ1カ所。
深そうね。
強烈な殺意を持って一撃。
ねえ見て。
この位置が汚れるって…筆記具を使った時よね。
(カメラのシャッター音)
(相馬)玄関の土から芳樟という木の葉の断片が検出されました。
(日野和正)芳樟?
(相馬)はい。
クスノキの変種らしいですね。
結構珍しいみたいです。
生えてるとこ当たってみます。
(日野)玄関のドアノブからは内側外側ともに夫婦のものとは違う第三者の指紋が検出された。
犯歴はなし。
その一つがこれだけども…。
先端寄りが直線的に途切れてる。
絆創膏か何かを貼っているのかもしれないね。
夫の愛人の指紋も照合する必要がありますね。
犯行現場の壁の絵ですが洗濯用洗剤の水溶液で描かれていました。
ブラックライトで光ったのは洗剤に含まれているビススチルベン型蛍光増白剤のためです。
(日野)蛍光増白剤には紫外線を吸収して蛍光する作用があるからね。
成分を詳しく調べた結果被害者宅に置いてあった洗剤と同一の製品でした。
(相馬)犯人が持ち込んだものじゃなかったんですか?絵筆に使われたのは恐らくこれ。
メイクボックスの中にあったフェイスブラシの1本よ。
ALSライトで蛍光しました。
それと回収袋に入っていた新聞の数枚も同じようにALSで蛍光しました。
つまりこの絵は犯人から警察へのメッセージじゃなく殺された久保美也子さん本人が自宅にあった道具で描いた可能性が高い。
なぜ蛍光する絵なんか描いたのかって疑問はあるけど…。
しかもこれ描いてる途中で乾いたら見えなくなってしまいますよね。
ブラックライトで照らしながら描いたとか。
今は別に普通に売ってますからね。
そう思ってライト探したけど部屋にはなかったよ。
それにしてもこれよく見るとなかなか絵心があるね。
(宇佐見)被害者は美術大学の出身だそうですからね。
もっとも3年で退学していますが…。
もう一つ。
ごみ箱に捨てられていたブラウスにも気になる点があるの。
蛍光部分からビタミンB群が検出されたわ。
ビタミンB群には蛍光増白剤と同じように紫外線を吸収して可視光を出す作用がある。
サプリメントドリンク多分これね。
久保美也子はこのドリンクを誤って服にこぼした。
水洗いしてシミは落ちてもビタミンB群の成分だけはわずかに残ってしまった。
だがなんの不都合がある?ブラックライトに照らされて暮らしていたわけじゃないだろう?先月まではこちらでよく買い物をしていたんですね?
(杉子)そう。
それが突然さっぱり。
土門さん私を持ち上げて。
うん?なんだ?一体。
照明を調べたいの。
お願い。
これ踏み台にならしませんか?あっどうも。
これLED照明ですね。
(杉子)そう先月変えたんや。
節電対策。
虫も寄りつかへんようになるって聞いたんで。
照明を変えた時期と久保美也子さんがこちらで買い物をしなくなった時期一致しませんか?虫やったんか?あの人。
(杉子)アホ!どういう事だ?彼女は特別な目の持ち主だったのかもしれない。
えっ?網膜の錐体細胞には赤青緑の3種類のチャンネルがある。
これによって人間は…。
380ナノメートルから780ナノメートルの波長の光線のみを色として感じ取る事が出来る。
だけどごくまれに第4のチャンネルを持つ四色型色覚の人間が存在する事がわかっているの。
このスーパービジョンの持ち主は380ナノメートル以下の波長をも可視光線として感知出来る。
つまり紫外線を色として見る事が出来る。
久保美也子さんが四色型色覚者だったと仮定すれば確かに奇妙な行動のいくつかは説明がつくね。
夫から贈られたブラウスを処分したのは彼女にだけは見えるシミがついてしまったため。
買い物するお店を変えたのはLED照明のせい。
太陽光には目に見えない紫外線波長の光線が含まれている。
だけどお店のLEDライトは紫外線の波長をカットした製品だったからあのお店は彼女にとって外の世界とは全く色合いが異なる世界になってしまった。
だから品物を選びづらくなった。
(相馬)じゃあ事件前日左大文字山を見て驚いた理由はなんなんですか?それだけがまだわからないの。
夜の山に彼女にだけ見える何かがあったんじゃない?何しろ紫外線が感知出来るって事はさ私たちには単色に見える月とか雲とか雪景色なんかも様々な色彩に感じ取れるって事でしょ?まあ第4のチャンネルを持たない我々にとってその世界は想像つかないけどね。
四色型色覚者って発生率はどれぐらいなんでしょう?諸説あるけど現在確認されているのは世界でもほんの数人のみ。
確か日本人でもいませんでしたっけ?前テレビで見た気がする。
京都在住の絵本画家の女性が日本で唯一このスーパービジョンの持ち主だと言われてるね。
でも被害者の夫はなぜこんな大事な事を俺たちに黙ってたんですかね。
世界でも数人って…。
あいつがその中の一人だったって言うんですか?ええ。
日常生活で何かお気づきになった点は…?いやそう言われても…。
あっでもあいつ変な特技が…。
特技?蝶のオスとメスを見分けられたんです。
(少年)お姉ちゃんこれは?
(美也子)メス!
(少年)メスだ!また当たった!すげえ!百発百中じゃん!モンシロチョウのオスとメスは肉眼ではほとんど見分けがつきませんが紫外線領域では全く別の模様を持つ事がわかっています。
奥様は間違いなく四色型色覚者だったようですね。
特別な人間だから愚痴ばかりだったんですかね。
は?あいつ本当は画家になりたかったんですよ。
夢を捨てて俺と結婚したもんで新婚の時から文句タラタラで。
唯一の身内であるあなたにも自分の能力を隠していた理由に何か心当たりは?馬鹿にしてたんでしょう凡人の夫を。
久保美也子さんの目には普通の人には見えないものが見えていた。
それが悲劇を招いたとは考えられないかしら?自らの特殊能力のために殺されたと?例えば何か見てはいけないものを見てしまった。
同じスーパービジョンの人間が京都市内に住んでいるんだったな。
ええ。
絵本画家の司麗香という女性よ。
美術の世界ではかなり有名な人らしいわ。
久保美也子は仲間に会いたいとは思わなかっただろうか。
ファンの集いの参加者名簿に久保美也子さんの名前がありました。
彼女と面識がおありですね。
(司麗香)ええ。
私の熱心なファンの一人だったわ。
彼女はあなたと同じ四色型色覚者でした。
その事実を本人からお聞きになった事は…?聞くまでもないわ。
初めて会った瞬間気づいた。
画集の出版記念のサイン会でね美也子さん私が会場に現れるのを待ちながらこんな仕草をしてたの。
(スタッフ)司先生どうぞこちらへお願いします。
(麗香の声)私にも同じ癖があるのよ。
色の境目をこうやってつい指でなぞってしまう。
色の境目。
ネクターガイドの模様ですね。
ネクターガイド?花の中には蜜の周辺に紫外線領域の模様を持つものがあるの。
一部の鳥やミツバチなど紫外線が見える花粉媒介者たちはこのネクターガイドを目印に蜜の在りかを知るとも言われている。
その模様があなたの目には見えるんですね。
ええはっきりとね。
だけど今はぼんやりしか見えない。
このサングラスなかなかいいわ。
紫外線の多くをカットしてくれる。
普通の人の色覚に近づく事が出来るの。
久保美也子さんは自分が四色型色覚者である事実を夫にさえ隠していました。
その理由はわかりますか?人の心はわからないけど…。
そういえば…。
嬉しいわ。
同じ目を持つ仲間に出会えたのは生まれて初めてよ。
仲間だなんて…!司先生と私は全然違います!先生なんてやめて。
麗香でいいから。
麗香さんはご自身の能力を存分に生かしてらっしゃいます。
美しい絵でたくさんの人を感動させて…。
それに比べて私はただの平凡な主婦です。
神様からのギフトがある。
平凡なんかじゃないわ。
このギフトのせいで私はねじれてしまいました。
ねじれてしまった?そう言っていたんですか?特別な能力をねたんで攻撃する人もいる。
まともに取り合ってると人間不信になってしまう。
能力を隠して生きるのは一つの知恵かもしれないわね。
(ノック)
(磯村忠志)先生『アート画報』の取材の方がお待ちです。
もうそんな時間?ごめんなさい。
失礼させて頂くわ。
あっもう一つだけ。
左大文字山に何かが見えた事はありませんか?左大文字山?事件前日の夜あの山にスーパービジョンの持ち主にしか見えない何かが存在していた可能性があります。
気づいたら連絡します。
それじゃあ。
(携帯電話)もしもし。
芳樟の木のある場所が京都市内にありました。
白河美術大学…。
(仙川京一郎)いいか?人物画っていうのはな内面を描くんだ内面を。
目ん玉ひん剥いて腹の中まで見通すつもりで対象に向き合え。
先生動きすぎです。
動くもんなんだよ生き物っていうのは。
おう?
(仙川)おっおっおっおっ…。
この目だこの目。
人間の腹の中を見通す目だ。
いいね!気に入ったね!あの…。
学長の仙川京一郎さんですね。
授業後お話伺えますか?おお〜こっちはまた猟犬みたいな目した人だな。
10年前に退学した久保美也子さんについてお聞きしたい事が…。
俺に会いに?あの子が?はい。
事件当日の昼間です。
しかしあなたはパリから帰る飛行機の中だった。
フランスで芸術賞の授賞式があったそうですね。
すれ違っちまうもんだな人っていうのは…。
対応した事務局職員の話では久保さんはあなたに伝えたい事があるようだったと…。
伝えたいって何を?それを伺いたいんです。
心当たりは…。
わかるわけないだろそんなもん。
あの子は俺を憎んでたはずだ。
と言いますと…?昔あの子がコンクールに出品しようとした作品を俺は否定した。
平凡だってな。
(美也子)前にお話ししましたよね?私は特別な色覚の持ち主だって。
普通の人には見えない世界が見えるって。
ああ言ってたな。
そんな私の作品が平凡なはずありません!確かにお前さんは人には見えないものが見える。
だがそれだけだ。
えっ?
(仙川)表現者にとって見るって事は戦いだろ。
この世界と格闘するって事だろ。
だがお前さんは人物を描いても人の腹の中まで見ようとしない。
風景を描いても自然の神秘を見通そうとしない。
その見えすぎるお目目のせいで傲慢で怠惰な何も見ようとしない人間になっちまってるんだよ。
お前さんの作品の底にあるのは膨らんだ自意識それだけだ。
絶対入賞してみせますから。
(仙川の声)だが結局あの子の作品はコンクールで落選。
大学を辞めたのはそのひと月後だった。
久保美也子はかつての担当教授に一体何を伝えようとしたんだ。
自分を平凡だと言い切った因縁の相手に。
芳樟の木があるのは附属美術館の入り口前だそうよ。
ここね。
うん。
学長の不在がわかったあと久保美也子は美術館に足を運んだんだろうか。
会期最終日にここを訪れていると思うんですが…。
(佐藤志穂)申し訳ありません。
美術展には多くの方が見えましたので特に記憶には…。
指どうされました?えっ?その絆創膏。
絆創膏か何かを貼ってるのかもしれないね。
ああ入場者アンケート集計の際紙で切ってしまって。
入場者アンケート?それ確認させて頂けますか?はい。
あと美術展のパンフレットも1冊お願いします。
はい。
(志穂)どうぞ。
アンケートは事務所にありますのでこちらへ。
(相馬)パンフレットから検出された学芸員の指紋が事件現場のドアノブの指紋と一致しました。
佐藤志穂。
2010年から白河美術大学附属美術館に勤務。
今回の美術展を企画したのは彼女よ。
(宇佐見)被害者は大学を訪れた日間違いなく美術展に足を運びアンケートを記入しています。
遺体の右手小指の汚れですが分析の結果リベルテ社製のボールペンのインクでした。
美術館の備品のボールペンがまさにその製品です。
(日野)だけどこの中に被害者の書いた用紙はなし。
(亜美)学芸員が抜き取ったとか?被害者が来た事を隠蔽するために。
それにしても美術館の学芸員がたまたま展示を見に来た主婦を殺す動機っていうのは…?
(宇佐見)2人の間には面識もなさそうですしね…。
誰かの指図とか?久保美也子さんが目撃した見てはいけない何か…。
それはあの美術館にあったのかもしれない。
佐藤。
例の件どうにかしろよ。
…わかってます。
(美也子)私の目は飛んでいる蝶のオスとメスを見分けられる。
子供の頃それですごいすごいって言われて得意になって…。
でも一度しわくちゃの蝶を見ました。
しわくちゃ?さなぎから出るのに失敗して羽がねじれてしまってそのまま地面に落ちて息絶えてました。
私はあの蝶と一緒だったんですね。
ねじれた羽は自力で伸ばすしかないだろうが。
人とは違う特別な自分。
それが幻想だって気づいた時そこから本当の戦いが始まるんだ。
コンクールに落ちたぐらいでそう落ち込むな。
私は結局自分にしか興味がない人間でした。
絵の道はきっぱり諦めます。
(磯村)あなたも強引な方ですねえ。
個展準備中のアーティストをアトリエから無理やり引っ張り出すとは。
あっそこで止めてください。
事件前日久保美也子さんはあの山に何かを見て翌日10年ぶりにかつての恩師に会いに行った。
彼女の行動のきっかけとなった何かが夜の山に存在していたはずなんです。
もどかしいわ…。
人が見えない色は見えるのに彼女の心はさっぱり見えてこない。
どんな小さな違和感でもいいんです。
何か気づきませんか?あの山と事件には間接的なつながりがあったかもしれないんです。
月は?その日の月はどんな形だったのかしら?事件前夜は新月。
月はありませんでした。
ますますわからないわ。
もし満月だったとしたらごく弱い紫外線に何かが浮かび上がった可能性もあるかもしれないんだけど…。
紫外線に浮かび上がった…。
あっ!
(蒲原)久保美也子さんは確かに入場者アンケートを書いている。
しかしあなたが警察に渡した用紙の中に彼女が記入したものは見当たりませんでした。
あなたがあらかじめアンケートを抜き取った。
ひどい言いがかりですね。
美術展の展示の一つ桃山時代の黒楽茶碗『比叡』。
あなたは会期終了直後市内の専門業者に真贋鑑定を依頼しましたね?そして今日紫外線照射による分析の結果が出た。
『比叡』は昭和に入ってから作られた贋作だった。
(仙川)認めちまったほうがいいぞ。
こんな猟犬みたいな目した男から逃げられやしないって。
まあこっちの若者はまだまだポチってお目目だがな。
(蒲原)なっ…!あなたも知っていたんですか?贋作だと。
会期中に気づいてこの子に伝えたんだが取り合ってくれなくてさ…。
(志穂)『比叡』は展示の目玉でした。
会期中はどうにもなりませんでした。
最終日が過ぎたらX線検査なり紫外線検査なりでちゃんと鑑定してもらおうと…。
だが会期最終日来館者の一人が『比叡』を贋作だと見抜いた。
彼女のアンケートにはその事が書かれていたのでは?
(蒲原)「比叡ニセモノだと思います」「紫外線鑑定で調べてください」口止めのために殺したわけですか?殺してません!私はただ鑑定結果が出るまでは口をつぐんでいてもらおうと…。
(志穂の声)あの晩久保美也子さんの自宅を訪ねました。
住所はアンケートに書かれてましたから。
(志穂)キャッ!
(足音)
(足音)
(チャイム)すみません。
(志穂)久保さん?
(志穂の声)さっきぶつかった人が犯人に違いない。
そう思ったけど…。
(操作音)
(志穂の声)下手すれば私が疑われる。
それに贋作の事も話さなきゃいけなくなる。
すみませんでした。
当時の着衣を提出してください。
接触した人物の痕跡を調べます。
行きましょう。
(仙川)10年前の事だがな…。
一つ思い出したんだ。
(美也子)私は結局自分にしか興味がない人間でした。
絵の道はきっぱり諦めます。
ねじれた羽がいつか治ったら…。
もう一度絵筆を執る気になったら…その時は俺に会いに来いよ。
久保さんがあなたに会いに来たのは再出発の決意を伝えるためだったと?ねじれた羽のまま死んだわけじゃない。
宇佐見さんの鑑定を待つ間事件前の久保美也子さんの行動を整理してみましょう。
10月13日の夜左大文字山に何かを見た。
その翌日かつての恩師に会うために白河美術大学を訪れ贋作を発見。
恩師に会いに行った理由は恐らく再び絵筆を執るという決意を伝えるため。
という事は13日の夜に見た何かが心境の変化に関係している。
(日野)ちなみに壁に絵を描いたのもこの晩以降だね。
(日野)洗剤が付着した新聞紙は13日の夕刊だった。
(亜美)あれ?13日の夜って…。
(日野)どうかした?ああいや磁気嵐だったなあと思って。
すいません事件には関係ないですよね。
磁気嵐…。
太陽フレア…!太陽から放たれた荷電粒子が地球上層に入ってくると電離層にある酸素原子や窒素分子との衝突が起こる。
その衝突によってエネルギーを与えられた原子や分子は余分なエネルギーを光として放出する。
それって…。
久保美也子さんはこの日左大文字山に何かを見たんじゃなく山の上空にオーロラを見たのかも。
京都でオーロラ!?歴史上記録は何度もあるね。
昔の人は京都の北の空が赤く染まる現象を赤気と呼んで恐れた。
赤気は現在はオーロラだと考えられてる。
磁気嵐の際のオーロラベルトは通常より赤道寄りに拡大するの。
低緯度地方ではこの時南下したオーロラカーテンの赤色部分が北の空に見える。
事件前夜スーパービジョンの持ち主にだけ見えるオーロラが京都に出現していたとしたら…。
オーロラ活動中電離層では実に様々な現象が起こりうる事がわかっているの。
磁場の脈動電流の発生そして不可視領域の光線の放射…。
(宇佐見)着衣の鑑定終了しました。
これで真犯人にたどり着けるかもしれない。
こちらの窓北向きですね。
北向きの窓は光量の変化が少ないため画家のアトリエに適していると聞いた事があります。
ええ。
特に私のような色覚の人間には南向きの窓はにぎやかすぎるので…。
「天に赤気ありその形雉の尾に似たり」…。
えっ?『日本書紀』に書かれた近畿地方のオーロラ現象と思われる記述です。
久保美也子さんが殺害された前日も大規模な磁気嵐が日本列島にまでオーロラベルトを運んできていました。
あの日美也子さんは北の空に奇跡的な光景を見ていた可能性が高いんです。
四色型色覚者だけが見る事の出来る紫外線領域の低緯度オーロラを。
この窓からあなたも同じ空を見ていたはずだ。
だが我々が左大文字山について尋ねた時あなたはオーロラの事など何一つ話さなかった。
久保美也子さんと同じ目の持ち主なら気づいたはずだ。
事件前日彼女を驚かせたのが山ではなくてオーロラだったと。
司麗香さん。
あなたは本当は四色型色覚者なんかじゃないんじゃありませんか?何を…。
あなたはずっと紫外線が見える演技をしてきた。
世界に数人しかいないスーパービジョンの人間について調べ自分もその一人だと装っていたんだ。
そんなあなたの前に現れた本物のスーパービジョンの持ち主。
それが久保美也子さんだった。
10月13日の夜久保美也子さんが京都の空に見たのは世にも美しく恐ろしい風景だった。
その直後彼女は家には帰らずどこかへ向かった事がわかっています。
考えられる場所はただ一つ。
同じ目を持つ仲間の元です。
麗香さんあれ!ごめんなさい今日は創作に集中したいの。
えっ?その瞬間久保美也子さんは気づいてしまった。
あなたの目にオーロラが見えていない事を。
嘘だったんですか…?そして知ってしまった。
あなたがずっと世の中に対して嘘をついていたという事実を。
だが彼女を殺したのはあなたではない。
久保美也子の口を封じる動機があったもう一人の人物…。
(足音)司麗香さんのデビュー以来ずっとあなたがマネジャーを務めてきたそうですね。
ええ。
事件の晩マンションを訪れた白河美術大学の職員が犯人とおぼしき人物と出合い頭に接触していました。
職員が身につけていた芳樟の葉をモチーフにした大学の記章…。
ここに犯人の服の繊維が絡みついていました。
青系の染料から生地が特定出来た。
事件当日にあなたが着ていたスーツまさにその生地の製品でしたよ。
この日8時過ぎまで美術出版社のパーティーに出席していましたね?青い染料か…。
色で追い詰められるとはね…。
罰よ…。
見えもしない色を見えると偽って世の中を欺いてきた罰…。
やはり被害者はあなた方の嘘を見破っていたんだな?ええそうですよ。
先生の破滅は私の破滅でもある。
嘘だったんですか…?
(磯村の声)我々はずっと運命共同体だった。
麗香さんが倒れた!?うわごとであなたの名前を。
とにかく来てください。
わかりました。
すぐ支度します!
(刺す音)あっ!あっ…。
(志穂)キャッ!
(磯村の声)1人で決めて1人で実行しました。
先生には事後報告です。
てっきり褒めてくれるもんだと思いましたけどね…。
彼女に見破られてホッとしたのよ。
平凡な人間の平凡な自意識がつかせた嘘だった。
特別な人間になりたい選ばれた人間だって思われたいって…。
だけどいつの間にか後戻り出来なくなってた。
あなたは真実を公表したかったんですか?勇気さえ…勇気さえあればね。
(磯村の笑い声)ずっと私と楽しんでたじゃありませんか。
愚かな世間をだまし続けるのを。
楽しんでなんかないわ!私の目はごまかせませんよ。
誰よりも近くでずっとあなたを見てきたんですから!続きは取調室で聞かせてもらう。
さあ行きましょう。
美術大学を辞める時久保美也子さんは自分自身を羽化に失敗し羽がねじれた蝶に例えていたそうです。
羽がねじれた…。
(美也子)このギフトのせいで私はねじれてしまいました。
ですがこの蝶見事に羽を広げています。
彼女がこの絵を描いたのは事件前日あなたに会いに行ったそのあとです。
(美也子)私誰にも言いません。
麗香さんは特別な方です。
謙虚で努力家で人の心を打つ絵を描き続けて…。
本当に特別な方だからきっとこのままでいいんです。
あなたは私の恩人よ。
えっ?新しい自分になりたい。
心の中でずっとそう願ってた。
ずっと勇気が満ちるのを待っていた。
いつか必ず飛び立とう。
嵐に向かって飛び立とうって。
嵐に…向かって…。
久保美也子さんもあなたと同じように心の底では飛び立ちたいと願っていたのかもしれませんね。
あなたが見せた弱さと強さが彼女に絵筆を執らせたのなら…。
あなたもまた彼女の恩人だったんです。
「信じられない!裏切られた気分です!」「私画集全部捨てちゃいましたよ!」「そうですか…」「信じられません!」「このように司麗香さん自らのブログで告白した真実はファンの間で怒りと悲しみを…」
(ノック)
(仙川)自分がいい絵だと思ったならそれで十分だと思うがな…。
まあ自力でものを見る人間は少ないって事だな。
「見る事は戦い」でしたっけ?そのとおり!住む世界は違うがお互い頑張ろうぜ!ご協力ありがとうございました。
おう!あんたよく見ると菩薩様みたいな優しい目してるな。
初めて言われました。
では。
菩薩様に猟犬か…。
はい?いいコンビだ。
フフフ…。
お前の目のほうがよっぽど猟犬だと思うがな。
それ褒め言葉よね?
(松木正)助けてくれよ落合さん!あの女は死神だ…。
もっと早くわかるべきだった。
殺された松木は落合のエスだな?
(落合佐妃子)チャンスだと思ったわ。
松木を殺したのはあんただ!もう誰の血も流させないで。
2015/10/22(木) 20:00〜20:54
ABCテレビ1
科捜研の女 #2[字]
沢口靖子演じる京都府警科学捜査研究所の榊マリコが、犯罪現場に残された微細証拠を手がかりに、事件の真相を究明する科学捜査ミステリー。
詳細情報
◇番組内容
主婦の美也子(柊瑠美)が自宅で刺殺された。現場には特殊ライトのみで浮かぶ謎の蝶の絵が…犯人のメッセージか!?マリコ(沢口靖子)ら科捜研の鑑定の結果、絵画は美也子のもので、彼女が常人より幅広い色彩が見える特殊な目の持ち主だった事が判明。手がかりを求め、同じ“目”の持ち主の有名画家・司麗香(笛木優子)を訪ねると、美也子と交流があった事が分かり…!?
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、風間トオル、斉藤暁、長田成哉、山本ひかる、石井一彰
【ゲスト】笛木優子、柊瑠美、北見敏之、小橋めぐみ、尾崎右宗
◇脚本
岩下悠子
◇監督
森本浩史
◇音楽
川井憲次
◇主題歌
柴咲コウ『野性の同盟』(ビクターエンタテインメント)
【作詞・作曲】椎名林檎
◇スタッフ
【ゼネラルプロデューサー】井土隆(テレビ朝日)
【プロデューサー】関拓也(テレビ朝日)、藤本一彦(テレビ朝日)、塚田英明(東映)、中尾亜由子(東映)
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken/
☆携帯サイト
メニュー>テレビ>テレビ朝日>科捜研の女
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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