京都地検の女6 2015.10.23


(高原純之介)久しぶりじゃないか。
ん?なんだと?居場所がないって…。
いやしかしだな…。
だから…。
(通話が切れる音)
(成増清剛)それでねエアメールに書いてあるんですよ。
「セーヌ川沿いを歩いているとお父さんも連れてきてあげたいと思います」なんてね!まあ大人びた事言っちゃってさ。
へへへっ…。
聞いてます?ああもちろん。
いいね娘からのラブレターなんて。
いやぁラブレターなんて…。
(携帯電話の振動音)あちょちょっと失礼。
はい俺だ。
わかった。
すぐ行くよ。
事件か?ここはいいから行きたまえ。
あ〜飲みてぇ。
ダメですよねクソ…。
じゃいってきます。
(ため息)
(車のクラクション)おいっ!おい待て!!
(オートバイのエンジン音)いかん…バッジが!
(サイレン)ご苦労さまです。
(池内弘二)ああ。
ったくビール半分飲んだとこに呼び出しやがってよ。
こっちは風呂の前で裸になってましたよ。
大変だねこの仕事も。
バーテンか。
(池内)はい。
上野民生31歳。
頭部打撲による脳挫傷。
もみ合ってここから落ちた際にあのブロックで強打したようです。
すぐそこの「NEXT」っていうバーに勤務してます。
ちなみに財布は手付かずです。
物取りの線はなしか。
(舌打ち)
(ドアが開く音)
(鶴丸あや)副部長!ほんとですか?検事バッジのついた上着をひったくられたって。
悪いニュースほどあっという間に広がる。
検事にとって検事バッジは命の次に大事な分身ですよ!?それをどうして…!だから…。
さては先斗町あたりできれいなおねえさんに手を回してご機嫌で飲んでたんじゃないんですか?その隙に上着をサッ…。
最近は白粉のにおいには縁がない。
ゆうべは成増君と…。
注意散漫油断の塊!万が一あの検事バッジが悪辣な人間の手に渡って悪用されでもしたらどうなさるおつもりですか!ちょっとね厄介な事があってぼんやりしてたんだよ。
あ〜もうこれ以上責めないでくれないか!副部長ほどのお立場の方に苦言を呈する事が出来るのはこの鶴丸しか…。
厄介な事ってなんです?始末書書かなきゃいけないから一人にしてくれ。
(電話)はい高原。
うん?よしわかったすぐ行く。
僕の上着を拾ったという人が受付に来てるそうだ。
ああこれだ!
(草村楓)高原さんですね?名刺を見てこちらに。
いやぁ助かった。
ありがとう!今朝ジョギングしてたら堀川公園のベンチに置いてあったんです。
(高原)ああそうですか。
副部長バッジ確認しないと。
(高原)ああそうだな。
えーっとえーっと…。
ああついてる!バッジが!レプリカじゃないだろうな。
(高原)よし本物だ間違いない!一安心だわ。
ほんとによく出てきました。
これもあなたのおかげです。
あら?おい君!
(高原)消えたよ善意の天使は。
ったくもう…。
(鶴丸りん)もぉ〜お母さんどうして起こしてくれないの?遅刻しちゃう!何言ってんのよ。
あなたは教師の卵なのよ?いつまでも子供みたいな事言ってないの。
いってきます!んもう!
(斉藤加奈子)副部長ずっと気にしてるみたいですよ?うーん…。
私もねなんか引っかかるのよ。
(太田勇一)えっ?今から取りかかるのはバーのバーテンダーが逆恨みされて傷害致死に至ったっていう至極簡単な案件ですよね?フローリングの床よりもすべすべして引っかかりようがないと思うんですけど。
そっちじゃないですよ。
副部長の上着の件!あの善意の天使!25〜26のなかなかの美女だったそうですね。
すごい美女よ。
パッと見はOLさん風なの。
でも胸元にキラキラ光るラメをつけてたの。
これから出勤しようとするOLがラメつける?それになんで急に消えたの?におうわね…。
彼女はきっとわけありの女性よ。
これ主婦の勘!その主婦の勘がたびたび当たってる事は認めますよ。
でも副部長のお話は本件と無関係ですね。
私の辞書に寄り道という言葉はございません。
無駄口たたいてる暇があるならさっさと被疑者を呼びましょうよ。
ねえ斉藤寄り道もしないような人生を送るとね路傍に咲く一輪の花の美しさにも気づかずモノクロームで無機質な人生を送る事になるのよ。
反面教師にします。
そうね豊かに生きましょう。
その無駄口と無駄なぜい肉を落とせよ女ども。
深沢実さんあなたは事件のあった10月25日の前日死亡した上野さんが勤めるBARNEXTへ行った。
そこで…。
何するんですか!隣に座った客と口論になりその際仲裁に入ったバーテンの上野さんに店を追い出され…。
(深沢実)てめえこら!
(上野民生)いい加減にしろおっさん。
クソッタレ!それを恨みに思い翌日再びバーまで出向き上野さんを殴った。
殴られた上野さんは倒れて地面にあったコンクリートブロックで頭部を強打し…。
(深沢)俺は誰も殺してない。
俺はその晩そんなところにはいなかった。
なんだって!?上着をひったくった男の行方はまだ掴めてません。
(池内)バイクのナンバーの末尾が2だった以外に何か覚えてる事ありませんか?
(高原)ないんだ。
悪いねつまらん事件で手をわずらわせて。
(楓)冷麺1つ。
はい。
君…?検事さん?偶然!まったくだねえ!いやお礼を言おうと思ったのにいなくなられて困ってたとこなんだよ。
こっちは君のおかげで命拾いだ。
(池内)副部長…?僕の上着を拾ってくれた…。
名前を教えてもらってもいいかな?草村楓です。
聞いていいかな?OLさん?幼稚園で先生してます。
私も聞いていいですか?うん?私検事さんとか弁護士さんっていうのは高学歴でみんなお金持ちになる人だと思ってたけど違うんですね。
ほう司法関係者に知り合いが?ええ弁護士の卵だって人を知ってます。
でもその人就職先がなくて風呂なしアパートひと部屋に同じ弁護士を目指す人と三人暮らしでトイレは共同。
いつもよれよれのTシャツにジーンズにサンダル。
いつも同じグレーのパーカ着てて髪なんてボサボサで。
眼鏡のフレーム折れてるのにいつもテープでとめたまま。
大学の奨学金500万も借金として残ってるって言ってました。
それは僕らも頭を痛めてる問題でね。
司法制度改革で司法試験の合格者を増やしたのはいいが就職先の見つからない弁護士の卵が大勢いるんだよ。
その卵さん弁護士事務所を70か所回ったけどダメだったって言ってました。
僕には居場所がないって。
居場所がないって…。
まあそんなのは…。
検事さん誰か知り合いの弁護士紹介してあげてください。
お願いします。
深沢は上野さんの死亡推定時刻ひので町の常磐津のお師匠さんのところにいたって供述したわ。
裏を取ったらそのとおりだって。
深沢にはアリバイがあるのよ?どういう事なの一体。
深沢のコレが嘘ついてかばってんだよ。
じゃそれをどう証明するのよ。
ご心配なく。
新たな目撃者がいるんだよ。
いつもあのバーの近くで手相を見ている占い師だ。
事件の夜深沢らしき男が女と喋っていたと言ってる。
その女に当たれば深沢かどうかはっきりするな。
肝心のその彼女はどこの誰なの?一目でわかったそうだよ。
キャバ嬢だって。
キャバ嬢?アゲアゲの盛り髪になドレスにコート羽織ってたよ。
深沢のなじみの店探しゃ一発だよ。
まおせんべいでも食って待ってて。
すぐ答え出すから!ったく…。
何言っちゃってんの?
(久米優奈)深沢社長ならよくうちのお店にも来てる。
やっぱりな。
ならさ25日の夜10時頃この店の子でさこの先の通りを歩いてた子いないかな?えっ!じゃあ再会なさったんですか?善意の天使と。
ああ。
彼女草村楓さんっていうんだがねサバサバした性格のいい子だったよ。
彼女の知り合いの弁護士の卵のために一肌脱ぐ約束をした。
なんでも就職出来ずに自分には居場所がないと嘆いているそうだ。
まったく近頃の若いもんはすぐそういう言葉を口にする。
困ったもんだ。
でその草村さんはどんなお仕事を?幼稚園の先生だと言ってたな。
やっぱり変。
いや上着を届けに来てくれた時彼女このあたりにラメつけてましたよね。
普通つけます?幼稚園の先生がラメ。
あの日パーティーでもあったんじゃないのか?そんな…。
(携帯電話)じゃお先に。
お疲れさまでした。
ああ成増さん。
深沢のなじみの店のキャバ嬢で事件のあった夜早退した子がいた。
源氏名が怜奈。
本名草村楓。
草村楓!?
(楓)はーいどうぞ。
京都地検の鶴丸です。
まあ…見違えたわ。
お会いするの二度目ですね。
幼稚園の先生してるって聞きましたけど?まずいな…嘘がバレバレ。
この人知ってるね?ええお店のお客さんです。
あなたは25日の夜店を早退してる。
その時この先の通りでこの深沢と会ってるよな?いいえ。
でもあなたが早退した時間深沢らしき人物と話しているのを見た人がいるんだ。
私はタクシー拾って直アパートに帰りました。
通りは歩いてません。
これは傷害致死事件に関する捜査なの。
あなたの目撃供述が必要なのよ。
よく思い出して。
嘘ついたのは幼稚園の先生だっていうのだけです。
今のそれは人違い。
もういいですね?よし…。
あやちゃん笑顔は?なーんて。
こっちだ。
(シャッター音)ああそうそうこの子でしたよあの男と話してたのは。
やっぱり。
お水の女は信用出来ねえなまったく。
あのどんな様子でした?確か背広の上着大事そうに抱えていたな。
上着を?草村さんがキャバクラ勤め?はい。
胸のラメはそのせいでした。
前の晩につけたものが落ちていなかった。
彼女は事件当夜被疑者の深沢と出会っています。
なのにそれを隠している。
変だねえ。
なぜだ?その晩彼女は男ものの上着を抱えていたそうです。
それってもしかしたら副部長の上着だったんじゃ…。
僕の?彼女は全て計算ずくだったんじゃ…。
副部長の上着をひったくったのも知り合いの弁護士の卵に…。
なんだって?グルで恩を売って私に就職口を斡旋してもらおうとしたって事か?可能性はあります。
おいあやちゃんよく考えてものを言った方がいい。
いくら卵だからといってこれから法の世界に携わろうという人間ならひったくりが立派な窃盗罪だと十分承知しているはずだ。
いくら就職先が見つからないからといってそんな罪を犯すとは…。
それにだな草村さんがそんな悪辣なたくらみに手を貸すとは思えん。
彼女は副部長に職業も偽りました。
そうかもしれんが…。
まあいずれにせよ草村楓の供述しだいで深沢を起訴出来るかどうかが決まるんです。
今度こそ正直に話してもらわないと。
(チャイム)はーい。
こんにちは。
意味わかんないんですけど。
あなたは副部長の上着を持ってた事を知られたくなくて目撃供述をしないんじゃないの?と言ってるの。
全然違う。
でも占い師ははっきりあなたを見たと言ってるのよ?あのおじさん近眼の老眼なの。
それにキャバ嬢ってみんな似た格好してるから間違えたのよ。
では教えてくれないか?君の知り合いの弁護士の卵の名前を。
あーあまた嘘がバレバレ。
この不景気でお客来なくって。
だから検事さんをしっかり掴んでおけば法曹界っての?そっち方面の手堅いお客確実にゲット出来ると思ったの。
オヤジたらすにはまずかわいく頼み事をして気を引くのが一番。
君…。
ほんとは弁護士の卵の知り合いなんていない。
新しい客がほしかっただけ。
ぜーんぶ嘘。
あやちゃん帰ろう。
時間の無駄だ!
(ドアが閉まる音)
(楓)みんなで乾杯しましょうよ。
(客たち)お〜!草村楓はキャバ嬢としては26でもうとうがたってんだけど未だに指名が多くてこの不景気に店を持たせたいって奴もいるとかで。
でも女の子たちの評判はひどかったな。
どういう事?客をつかまえるためだったら手段を選ばないって。
で弁護士の卵は?そっちは全く手掛かりなしだね。
弁護士検事弁護士の卵その手の客は一人もいませんでした。
そうなんだ…。
(池内)こっちもそうでしたよ。
(店員)いらっしゃいませ!草村楓の小学校中学校高校の同級生にも他の交友関係にも司法関係者は一人もいませんでした。
じゃあほんとに弁護士の卵の知り合いなんていうのはいなかったって事ですかね。
副部長の上着をひったくったのは草村楓とは関係のない人間ですよ。
私はそうは思わないわ。
風呂なしのアパートひと部屋に弁護士の卵3人で暮らしている。
トイレは共同。
いつもよれよれのTシャツにジーンズでサンダルばき。
でグレーのパーカを着てて頭はボサボサ。
眼鏡のフレーム折れてるのにテープでとめたまんま。
彼女そう言ったんですよね?
(高原)ああ。
嘘がうまいねえ。
違う!ディテール細かすぎ!彼女の部屋に行ったけどあったのはファッション雑誌だけよ。
小説のたぐいは一切なかった。
つまり彼女は想像力豊かな文学少女じゃないわ。
彼女は実際に自分が知ってる人間について語ったのよ。
自分には居場所がないと嘆いてる弁護士の卵はいます!だからいないって言ってるでしょ。
でも…!
(高原)もういい!成増君池内君面倒かけたね。
ああいや…。
お先に失礼するよ。
まゆっくりしてってくれ。
なっ。
(高原)お勘定。
(池内)あご馳走になります。
副部長!なんかいつもと違いますね。
うん?この間厄介ごとを抱えてるっておっしゃってましたけど今回の事件となんか関係があるんじゃ…?ふっさすが鋭いね。
実は先日息子から電話があった。
息子ってあの私の下で司法修習してた荻原良さん?ああ。
まあ…。
確か今は大手の弁護士事務所で弁護士を。
うん。
そこを…辞めたそうだ。
ええ!?20人近い弁護士が所属していて競争が激しいとかでね。
要領のいい奴だと思ってたんだが仕事がうまくいかず自分には居場所がなくなったと。
で副部長はなんと?特には何も。
どうして?そんな大事な事を話されたのに。
いろいろ思うところはあったがのみ込んだ。
前のかみさんとの息子だし僕も再婚して長いからね。
距離があるっていうか…。
親子じゃないですか!思った事は言ってあげなきゃ。
彼だってきっと副部長の…いえお父さんの意見が聞きたくて…。
甘えてるんだよ。
今時の若い者は何かあるとすぐ「居場所がない」「自分には向いてない」。
我慢するって事を知らないんだ。
それで一方的に電話してきて「報告は以上です」で終わりだ。
こっちにしたってやりようがない。
だからガツンと息子さんを叱らなきゃ!叱れるもんなら叱ってる!だが温度差があるんだよ。
うざいとか言われてそれで終わりだ。
なんと思われたっていいじゃありませんか。
親が子供の顔色を見て言葉をのみ込むなんて。
うちだってねりんとものすごいケンカしますよ。
だけどケンカを…。
もうこの話はやめよう。
あやちゃん明日からは速やかに職務を遂行したまえ。
いいね?弁護士の卵なんていうのはいなかったんだ。
(優奈)だから弁護士とかの知り合いなんて怜奈さんにはいなかったですって。
じゃあ何か彼女が隠したがってる事ってなかった?秘密にしたがってる事とか。
そりゃあるでしょうよいっぱい。
あ…あれなんてそう…。
あれって?青くて丸いもの?
(優奈)大事な人からもらった宝物だっていっつもバッグに入れてた。
(優奈)怜奈さーん!あっ…。
(黒田春樹)おい楓。
来い!
(楓)何するのよ!
(楓)助けて!
(一同)乾杯!
(吉川香織)おいしそう!
(漆原さやか)あっあやさーん!こっちこっち…。
どうしたの?急に呼び出して。
あっすごい…。
(香織)お祝いお祝い!はいはいはい飲んで飲んで。
仕事中仕事中。
(香織)そっか。
食べて食べて。
(さやか)あのなこの人のな長男夫婦に子供が出来たんや。
ええっおめでた?
(桜井麗子)びっくり〜!でも私絶対「おばあちゃん」なんて呼ばせない!
(柿野たまこ)でもかわいいって言いますよね孫は。
そやけどこれもめっちゃかかるのちゃうん?誕生日ひな祭りこどもの日クリスマスにお正月…。
まあいろいろと物入りやわ〜。
うーんおいしそう!最近はハロウィーンやイースターも祝いますからね。
(麗子)えっイースターって何?キリストの復活を祝うお祭りです。
卵に赤とか青とかきれいに色を塗ってそれを庭なんかに隠しておいて子供に見つけさせるんですよ。
(香織)それ幼稚園でやってはったわ。
卵…青…幼稚園…。
嘘ついたのは幼稚園の先生だっていうのだけです。
もしかしたら…。
(携帯電話)はい鶴丸。
ええっ?成増さん!どういう事?草村楓を連れ去ったのは暴力団組員黒田春樹だ。
彼女のなじみの客で店を持たせてやるからって以前からまあしつこくつきまとってたらしいわ。
成増さん!成増さん黒田のヤサが割れました。
よし行くぞ!
(楓)何するのよ!?お前の頼み聞いてやったんだ。
今度は俺の言う事聞く番だろ。
(楓)違う!頼んでない!待てこら!
(楓)やめて…!うわっ。
(黒田)いつまでも甘い顔してると思うなよ。
(楓)やめて…嫌!
(楓)嫌っ!誰か!
(刑事)黒田!こっち来いオラ!
(黒田)なんだ…!?
(池内)大丈夫?え?おい傷害の現行犯だ。
この女に言われて…!
(楓)違う!違う!
(池内)違うってどうしたの?傷害って何?私は何もされてない。
これから彼とお楽しみのところだったのに邪魔しないでよ。
えっ?草村さんが黒田をかばった?参ったよここにアザ作ってるのによ殴られてねえの一点張りでよ。
なぜ?ねえどうしてかばうの?どうぞ。
お帰りください。
待って。
これ大事なものなんでしょ?
(保育士)ええ。
イースターにはこんな風に色をつけた卵を庭で園児たちに探させてますけど。
やっぱりこれだわ草村さんが持ってたのは。
よれよれのTシャツにジーンズグレーのパーカ…。
眼鏡のフレームをテープでとめたまま…。
すみませんこの人は?
(保育士)その横にいる子のお母さんの弟さんです。
弁護士の卵見っけ!
(外山保)よいしょ。
よいしょ。
すみません。
外山保さんですね?ええ。
失礼ですけど弁護士さんですよね?そうですが。
京都地検の鶴丸といいます。
草村楓さんご存じですよね?えっ…ええ。
僕が検事バッジを手に入れるために上着をひったくった!?もちろんそうでない事を祈ってますが。
いくらまだ仕事がない新米でも僕は弁護士です。
そんなバカな真似するわけないでしょう。
でも草村楓さんはこの一件にかかわっています。
彼女が?まさか。
あなたと草村さんの関係を教えてください。
あなたが検事バッジを巡る事件にほんとに無関係なら。
会ったのは今年の4月。
僕は姪と幼稚園に行ってて…。
きれい。
ダメダメ!それは園児に拾わせてるんだ。
今日はイースターだから。
(楓)イースター?キリストが復活したお祝いなんだ。
クリスチャンでもないのに変だけどね。
でもこれほんとかわいい。
しょうがない。
いいよそれ1つだけあげるよ。
えっ?
(外山)それがきっかけで時々メールのやり取りをするようになって。
それから?それだけです。
最近は全く会っていません。
でも彼女はあなたの仕事の事をとても心配しています。
それに青いイースターエッグ大事な人からもらったって…。
それ誰か別の男の事じゃないかな。
僕らはそんな付き合いはしていません。
失礼します。
帰ろう。
うん。
(携帯電話)はい鶴丸。
例の黒田ですが所持していたバイクのナンバープレートの末尾が「2」でした。
副部長の上着をひったくったのは恐らく奴です。
教えて。
あなたなの?黒田に副部長の上着をひったくるように頼んだのは。
知りません。
弁護士の卵を見つけたわ。
外山保さん。
イースターエッグをくれたのも彼ね?ひょっとして今回の事は…。
彼は関係ない。
なんにも全然関係ないの!外山さんが事件に関係しているとわかれば弁護士としての活動に迷惑がかかる。
それを恐れて彼女は副部長の上着を奪った黒田をかばっているんだと私は思います。
うーんそういう事か。
このままじゃ傷害致死事件解決のめども立たんな。
それだけじゃありません。
居場所のない若者の問題も。
副部長のご子息も含めてまだなんら解決してません。

(外山)まだそんなもの持ってたのか。
私ねこれ外山さんだと思ってるの。
弁護士の卵さん卵さん早くひなになぁれ。
子供だましだ。
無駄だよ。
また面接ダメだったの?司法試験に受かった時は未来が輝いて見えた。
でもこんなにまで僕の居場所がないなんて。
やけになんないなんない。
前向きに!君に何がわかる!
(ノック)京都地検刑事部副部長高原だ。
(咳払い)君は神戸地裁で修習を受けたそうだね。
あそこに知人がいるんで尋ねてみた。
なかなか成績優秀だったとか。
その成績は意味がないようです。
弁護士事務所は雇用してくれないし個人で弁護士活動を始めても仕事の依頼は全くないですからね。
泣き言は言いたくありませんが途方に暮れています。
それに変な事件に関係あるように思われて…。
その件だが草村楓さんは乱暴されかかったんだ。
それでもまだ君は関係ないと言い張っている。
それをどう思うかね?どうと言われても…。
ここは息が詰まる。
出よう。
君は自分には居場所がないと嘆いているそうだな。
司法の世界だけじゃない。
この国は今の若者には生きづらい場所になっているようだ。
だがいつの時代も若者が生きやすかった事などない!言い訳して生きるな!理想を持ち理想のために努力を重ねそれでもあらゆる場所から疎外され続けている者の気持ちがあなたにわかるんですか?疎外なんて言葉簡単に使うな。
壁にぶち当たっても跳ね飛ばされてもそれを乗り越えていくのが若者だ!君は弁護士としての役割をどう思ってる?我々検察の使命は真実を追求する事にある。
一番大事な事はなんだ?人を知る事だ。
人を知り己を知る。
法に携わる者は誰よりも己を厳しく律しなければならない。
秋の冷たい霜のように夏の厳しい日差しのように。
秋霜烈日…。
その象徴としてこのバッジがあるんだ。
弁護士だって同じだろう。
弁護する相手は生身の人間だ。
心の奥底にある真実の声に耳を貸す事の出来ない者には弁護士なんか務まらん!君だって弁護士バッジは持ってるはずだ。
その意味は知ってるな?公正平等を表す天びん。
その天びんの周りにある花びらはなんだ?ヒマワリだろ。
正義と自由を表すヒマワリ。
どんな場所で育とうとも常に太陽を目指しているヒマワリ。
今の君にそのヒマワリの心があるか?楓さん…ずっとイースターエッグを大切に持ってるわ。
来い。
(高原)俺も『六法』を抱えて大学院に通っていた時は今の君と同じないないづくしの極貧生活だった。
だが常に仲間たちと切磋琢磨。
いつだって笑ってたぞ!やせ蛙負けるな一茶ここにあり。
なーんてな。
ヘヘヘ…。
私も検事の卵だった時理想と現実のギャップに歯ぎしりして落ち込んだ。
でも弱さを知る事でほんとに強くなる事も出来る。
一歩よ!その一歩を踏み出す勇気さえあれば…。
はあ〜。
すみません日曜日にわざわざこんなところまで。
私事件とは本当に関係ないですから。
わかってます。
今日はあなたとゆっくり話がしたかった。
さあどうぞ。
どうして?私はこの人とはなんの関係もないのよ!
(外山)待ってくれ!僕は君から逃げた。
君を助けられなかった情けない男だ。
そんな…。
だけど僕だって弁護士の端くれだ。
もし君が犯罪に加担していたのだとしたら僕が弁護をする!僕の初仕事として。
本当の事を話してくれ。
じゃないと傷害致死事件を犯した犯人がのうのうと生きていく事になる。
そんな真似はさせられない。
頼む!このとおりだ。
やめて。
そんなのやめて!僕の事を思ってくれてるのはよくわかる。
でも君の正直な供述が得られないなら僕は弁護士をやめる!お願いだ!頼んだんじゃないの。
検事の知り合いいるの?知り合いじゃねえよ。
たまに行く店に検事バッジキラキラさせてんのがいるんだよ。
ねえその人と話が出来ない?弁護士になりたいけど就職出来なくて困ってる人がいるの。
検事がキャバ嬢まともに相手にするか?そうよね…。
(楓の声)それから3日後だった。
(楓)これ…。
検事バッジが付いてる。
これでその知り合いは助かるだろ。
いけない事だとわかってた。
でもつい…。
それから?
(楓)あっ…。
ああ…今度な。
確かに深沢実だったのね?間違いありません。
ありがとう。
あなたのその供述があれば彼を起訴出来るわ。
副部長。
うん。
彼女は刑法256条1項盗品譲り受けの罪に当たりますが今の内容なら立件はされませんよね?君の将来にも影響はないだろう。
ああよかった…。
でも草村さんあなたには十分な反省を望みますよ。
はい。
ごめんなさい。
これ返します。
私には持ってる資格ないから。
この卵は外山さんであるだけじゃない。
あなたでもあるのよ。
えっ?あなたの人生はまだまだこれから。
あなたは妻の卵でもあり母親の卵でもあるの。
君も初めての弁護をしたとはいえ弁護士の卵である事に変わりはない。
卵がかえってひなになるまで大事にあたためないと。
楓さん僕は今回の件でもう一回勉強し直す決心をした。
知識と経験を積んでなんとしても弁護士としてやっていけるようにする。
だから…。
僕のそばにいてくれないか?えっ?お互いを思いやる2人が寄り添えばそこが2人の居場所になる。
検事さん…。
ダメかな?いいの?ほんとに私でいいの?結局検事の粘り勝ちか。
ああまったくなぁ。
あっそうだ。
ちょっと起訴祝いによちょっと一杯行こうか。
おお!成増さんのおごりとは珍しいな。
いいよいいよ。
全て丸くおさまったのも副部長が外山さんを叱ってくださったおかげですね。
いや僕は別に…。
ううん。
でもあれは本当は息子さんに言いたかった事ですよね?息子さんにもちゃんと言わなくちゃダメですよ。
それなんだがね手紙を書いた。
まあ。
卵の親として口では言いにくい事もまあしっかりとね…。
まああいつがどういう風に受け止めてくれるかはわからんが…。
(りん)お母さん!電子レンジの中に冷たくなって固まったご飯が入れっぱなしだったよ。
もうお母さんでしょ!ああ…ごめん。
私チンして食べようと思ってたのをつい忘れちゃって。
いつも事件の事ばっか考えてボーッとしてるからよ。
しっかりしてよ!たまには卵に叱られるのもいいね。
ほんと一緒に暮らすの嫌になっちゃう。
ええっ?ちょっとお母さんを追い出そうっていうの?困る!居場所なくなる〜!2015/10/23(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
京都地検の女6[再][字]

高原副部長(蟹江敬三)が、検事バッジのついた上着をひったくられた!
翌朝届けに来てくれたのは清楚な若い女性だったが、上着を返すと名前も名乗らず消えてしまい…!?

詳細情報
◇番組内容
名取裕子主演▽“主婦の勘”を武器に難事件に立ち向かう女性検事・鶴丸あやの活躍を描く検察ミステリー第6弾!心に響く深い人間ドラマを京都情緒たっぷりにお届けします!
◇出演者
名取裕子、寺島進、益岡徹、大島蓉子、みやなおこ、山口美也子、小林きな子、小林千晴、脇沢佳奈、福本清三、渡辺いっけい、蟹江敬三
《ゲスト》
 小沢真珠、石母田史朗、笹木俊志、外川貴博

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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