生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
「くらしきらり解説」です。
死者・行方不明者63人と戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火から1年余り。
ことしも各地の山々は紅葉の見頃を迎えまして多くの登山者や観光客で、にぎわっています。
そこできょうは登山の噴火対策はどこまで進んだかをテーマにお伝えします。
担当は二宮徹解説委員です。
御嶽山の噴火からもう1年が過ぎましたね。
二宮⇒噴火は紅葉シーズンの晴れた土曜日の正午前突然起きました。
噴煙で真っ暗になりほとんど逃げるまもなく噴石が雨のように降りました。
運よく山小屋に逃げ込めたとしても噴石が屋根や壁を突き抜けて飛んできました。
噴火から登山者や観光客をどう守るのか火山防災の見直しが迫られました。
この1年で登山者の安全を守る取り組みというのは進んだんでしょうか。
活動火山対策特別措置法いわゆる活火山法が改正されるなどさまざまな取り組みが進んでいます。
そのうち気象庁の噴火速報なんですが山頂や火口が雲で見えない場合でも早く噴火に気付いてもらうために新たに導入されました。
また、それぞれの地元に自治体や専門家で作る火山防災協議会というのが設けられました。
そして駅やバス停などで火山情報を得られるようにしたり山小屋にヘルメットを置いたりという情報提供、安全対策も進んでいます。
また具体的な避難計画ですとかハザードマップ作りというのも進んでいます。
ただ私が特に気になるのはシェルターの建設なんです。
いざというときに命を守る場所になるはずなんですがこの1年ほとんど進んでいないんです。
シェルターを造るのにどうしてそんなに時間がかかっているんですか。
1つ数千万円かかるということや、国立公園では景観に配慮しなければならないという課題があります。
しかし地元がそれ以上に頭を悩ませているのがどこにどんなシェルターを造るかなんです。
シェルターはそんなにいろいろあるんですか。
桜島と草津白根山にあるシェルターの写真です。
屋根と壁だけのものや地下に造ったもの、立派な建物など大きさも形もさまざまなんです。
このうちどれを造るかに地元は悩むんですか。
それぞれ一長一短なんです。
簡単な造りのものはヘリコプターで運んで組み立てられます。
ただ大きな噴石だと穴が開いてしまいます。
噴煙を防げないということがあります。
壁が一部ありません。
コンクリートで覆われたものはかなり頑丈です。
この2つはいちばん下の真ん中はトイレがあります。
そしていちばん下の右側のものはトイレがあってレストハウスです。
大量に資材が必要なので険しい場所に造れない、広い場所にしか造れないということがあってどの山でもどこにでも建てられるものではありません。
上だったらなおさら建てるのが大変ですね。
シェルターを建てるのは簡単ではないんですね。
このままシェルターを造らないとなると噴火をしたときの危険が減らせませんので多くの火山にできるだけ頑丈なシェルターを造ってほしいと思います。
ただやはり場所選び建設時間がかかることから国は今ある山小屋を活用しようという方針です。
その際に使ってもらおうというのが。
布ですか。
ちょっと厚めの布ですね。
ランチョンマットよりは薄いけれども頑丈なテーブルクロスのような感じですね。
特殊な合成繊維でアラミド繊維といいます。
衝撃に強くて穴が開いたり破れたりしにくいというのが特徴です。
防弾チョッキですとか防護服、消防服耐震補強の材料などに使われます。
これを山小屋の屋根の内側に張って噴石が飛び込んでくるのを防ごうというものですがその実験の様子です。
実験は先月、神奈川県横須賀市の防衛大学校で行われました。
山小屋の屋根に見立てた鋼板と木の板の内側にアラミド繊維を2枚重ねて張ってあります。
これに筒型の石を時速およそ300キロで衝突させます。
ソフトボールより少し大きい噴石が飛んできたのと同じくらいの衝撃です。
ハイスピードカメラの映像です。
内側にアラミド繊維が張ってあります。
こうして板が大きく割れるのが分かります。
ただ、こうして衝撃を吸収しているんです。
右側は何もありません。
アラミド繊維がないものは貫通してしまっています。
そして張ってあるものは大きく板が壊れたように見えますが壊れることで石が中に入ってくるのを防いでいます。
貫通していませんね。
これで山小屋を補強するということですね。
1平方メートル当たりおよそ1万円です。
山小屋の一部を覆うには200万円程度です。
ただシェルターは1つ数千万円から何億円かかります。
それを建てるのに比べれば予算も工事などはるかに手間が少なくて済みます。
山小屋がすべて負担するのは大変なので国や自治体が補助金を出すなどしてこうしたものの普及を後押ししてほしいと思います。
山小屋がこうして安全になることはとてもいいことですがいざ登山をしているときに山小屋が近くにないときもありますよね。
活火山に登山する場合、何に注意すればいいですか。
活火山法の改正で登山者に努力義務というのが定められました。
改正活火山法は年内に施行されます。
罰則はありませんが自分で安全を確保する努力が求められます。
まずは火山の情報を自分で集めることです。
気象庁のホームページですとかふもとのビジターセンターなどで登ろうとする山の状況を確認したり避難場所を確認したりということをしておく必要があります。
特に噴火速報などの情報をメールで配信するような市町村も増えています。
そうしたサービスを確認するとよいと思います。
情報収集は大事ですね。
それともう1つ、登山届の提出も呼びかけています。
山岳ガイド協会のホームページではオンラインで提出できます。
そしてもう1つは噴火に備えた装備も大事です。
ヘルメットですとかゴーグル携帯ラジオ、マスクスマートフォンなどで装備をして登山中も最新の情報を入手できるようにしておいてください。
登山者も変わらなければいけないんですね。
情報を待つという姿勢ではなくて自分から取りにいく安全への備えも怠らないという姿勢が大切です。
今、紅葉シーズンで温泉旅行もそうですし登山する方も増えている時期です。
全国の火山の状況というのはどうなっているんですか。
警報が発表されている火山というのは、きのう現在で14あります。
噴火警戒レベルは5月に噴火した口永良部島はきのう警戒範囲が縮小されましたがレベル5が引き続き出ています。
阿蘇山と桜島ではレベル3でそのほか雌阿寒岳、浅間山、箱根山はレベル2で引き続き注意が必要です。
最近の噴火について言えば先月阿蘇山の噴火も予知はできませんでした。
逆に一部の住民が避難した桜島では今のところ心配された規模の噴火は起きていません。
ということはやはり火山がいつ噴火するのかというのを見極めるのはまだまだ難しいのが現状です。
国は火山の観測、研究安全対策をもっと進める必要があります。
一方火山に登る人たちも情報に注意して十分な装備をしたうえで温泉や紅葉を楽しんでほしいと思います。
2015/10/22(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「登山の噴火対策はどこまで進んだか?」[字]
NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
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