(桐石響樹)待てよ!
(桐石)待てって言ってるだろ!おい!ああー!あ…。
(桐石)あ…ごめんなさい。
藁山!
(森江春策)出版プロデューサー藁山さん…。
つまりご用件というのは私に本を書かないかと?
(藁山花俊)そうです。
おぉ…いやあの…どうぞおかけください。
先生のお噂は有名ですよ。
いやなんでも弁護士になる前は新聞記者をなさっていたとか…。
あはい。
ハハ…。
いやぁブンヤ上がりの弁護士とはユニークな経歴ですなぁ。
いや先生が本を出されればベストセラー間違いなしですよ。
ベストセラー…?森江先生のそのユニークな体験談を本にしたら売れるに決まってますよ。
本がヒットしたらテレビのコメンテーターの仕事も入るでしょう。
そしたら森江先生超有名人ですよ。
うわ…わぁ…。
(藁山)事務所も都心の一等地に構えられますよ。
いかがです?ああ…私が手記をね…。
(町田澄代)はいどうぞ。
あっどうもすいません。
あの失礼ですけど本ってそんなに簡単に出せるものなんですか?今出版業界は不況だって聞きますけど。
おっしゃるとおりです。
そこで提案しておりますのが共同出版というやり方で。
まあ先生の場合出版されればベストセラー間違いありませんからこのチャンスを逃す手はありませんよ〜。
(咳払い)とりあえず今日のところはご検討していただくという事で。
詳しい事はまた2人だけでゆっくりと…。
ぜひ前向きに検討させていただきます…。
それでは失礼をいたします。
どうもご苦労さまでした。
ああ…コメンテーターで超有名人か…。
思ったとおりだわ。
ん?共同出版っていうのは自費出版の事ですよ。
自費出版…?だから本を出すお金を先生が払うって事ですよ。
あはあ…いやでも自費出版でもベストセラーになれば元は取れるわけだし…。
どうも来た時からうさんくさいと思ったんですよ〜。
ロマンスグレー気取りのカツラにサングラスなんかしちゃって。
あれカツラなの?見ればわかるでしょ?あいや…でも身なりはちゃんとしてたしそれにあのスーツ高そうだよ。
身なりで人が決まるのなら私先生の下で働いたりなんかしません。
あら…?またボタン取れかかってる…。
つけときますから上着脱いでください。
いやいいよ。
あダメですよ。
もう〜。
(ため息)もうこの際だからはっきり言いますけど。
私先生の事は立派な方だと思ってます。
弁護料を払えない経済的弱者の力になりたい。
そうおっしゃって先生は進んで国選の弁護を引き受けておられる。
うん…。
だからこそその分…。
あらやだ。
あの人傘忘れてる。
あらブランド物。
傘まで気取っちゃって。
大家さん自転車借ります!よいしょ…。
はあよいしょ…。
藁山さん!忘れ物!藁山さん…!ああ!はい。
ハハ…どうもどうも。
いやこれ私のお気に入りの傘なんですよ。
これを忘れるなんてどうかしてる。
ハハハ…。
(桐石)見つけたぞこらー!どうして俺から逃げるんだよ!ふざけやがって…!ああ…!君!あんたみたいなクズを殴って先生との約束を破るわけにはいかねえよ。
逃げるも逃げないも君のようにいきなりケンカ腰じゃ…。
ちゃんと説明しろと言ってんだよ!わかった。
君は確か…桐石くんといったね。
じゃあ明日午後8時私の家にいらっしゃい。
その時に話し合おうじゃないか。
本当だな?あはい…。
じゃ失敬。
あっお米屋さんちょうどよかったわ。
いつものコシヒカリお願いね。
いや私あの…。
あ…配達急いで頼むわよ。
いや…急いでったって私は米屋じゃないんだけど…。
ああ…はい。
藁山を呼べと言ってるんだ!藁山を!
(豊幌元雄)だから藁山さんがどこにいるのか私にもわからないんですよ!わからないで済むはずはないだろ!本を出せば全国の書店に本が並ぶと言うから私は300万の費用を払ったんだ。
一体どこの書店にわしの本が並んでいるんだね?ですから苦情は藁山さんに言ってくださいよ!契約書にはねうちは書店に置いてもらえるよう営業努力をするとしか書かれてないんですよ。
これ以上大声出されるなら営業妨害で訴えますよ。
訴える?訴えたいのはこっちのほうだ!冗談じゃない!もう…詐欺だ!
(加藤高弥)豊幌さん。
(豊幌)ああ?藁山先生こちらに来てませんか?
(携帯電話)連絡が取れなくて困ってるんですよ。
弟子の君が知らないのに俺にわかるわけないだろ。
(携帯電話)フフ…藁山さんだよ。
(加藤)ああ…!藁山さん今どこにいるんですか?クレームがすごくて困ってんですよ。
とにかく一度会って話を…。
え…?今夜9時ですか…。
わかりました。
必ず行きます。
いやどこ…。
あのちょっと…!
(電話を切る音)
(豊幌)参ったよ。
君の師匠にも困ったもんだよ。
(朝浜江里梨)私が描いた絵を私に無断でどうしてこの絵本に載せたのかと訊いてるんです!
(江里梨)この絵もです!
(藁山)何度も同じ事を言わせないでくれよ。
誤解だよ。
似てはいるがそれは君の絵ではない。
ふざけないでください!この絵は明らかに私の絵です!だったら出るとこへ出てケリをつけようじゃないか。
(藁山)いつでも受けて立ちますよ。
(雷鳴)
(男の悲鳴)
(雷鳴)
(来栖綴)桐石さん…。
(雷鳴)
(綴の悲鳴)
(パトカーのサイレン)
(カメラのシャッター音)
(山野正夫)ホシはこれで殴ったか…。
(山野)豊幌さんとおっしゃいましたね。
あなたがこちらを訪ねてきたのは午後9時頃…。
ええ。
9時に藁山さんに来るようにと言われてました。
(山野)死体を発見されてすぐに警察に通報された。
そうです。
(山野)あのバットは藁山さんの?
(豊幌)ああええ…。
以前訪ねた時もあったように思います。
藁山さん昔野球やってたとかで。
(山野)藁山さん独身だったそうですが男所帯にしてはずいぶんときちんと整理されてますね。
几帳面な方でしたから。
(山野)なるほど几帳面なメモだ。
「朝浜江里梨桐石響樹来栖綴」
(山野)この3人は藁山さんとどういう…?あ…この3人はそれぞれ藁山さんとトラブルを抱えてましたよ。
トラブルを…?いやもうびっくりしました。
今朝のニュースで藁山さんの事知って…。
藁山さんの手帳のおとつい21日の欄に「森江法律事務所」とメモがありましてね。
ええ…この日なら確かにお見えになりました。
その時の事を詳しく話していただけませんか。
ああ…。
用件は私に手記を書かないかという出版の依頼に関する事でしたけど。
藁山さん傘を忘れられて…。
どうして俺から逃げるんだ!ふざけやがって…!
(山野)名前は桐石…?ええ。
何かトラブルがあったみたいで…。
いやまあ殴ったりはしてませんけど。
うーん…。
まさか会ったばかりの人が殺されるなんてね。
藁山さんいろんなところから恨み買ってたのかもしれないですね。
先生だってもう少しで騙されるとこだったんですもん。
だねぇ。
うーん…。
大将替え玉。
(店主)はいよ!ダメ!ダメですよ!どうして…?替え玉食べてこそのとんこつラーメンでしょ。
それを我慢してこそのメタボ克服でしょ。
あっ先生ちゃんとスポーツジム行ってますか?行ってますよ。
だから替え玉。
(テレビ)「次にただ今入りましたニュースです」「昨日町田市で起きた藁山花俊さん殺害事件で捜査本部は神奈川県川崎市に住む桐石響樹容疑者22歳を逮捕しました」ああ…。
どうしたんです?私が変な事を言ったばかりに…。
いやそんな関係ないですよ。
先生のせいじゃないですよ。
とにかく行く。
えっ!?替え玉はどうします?あ…先生!
(山野)ですから現在取り調べ中です。
じゃあの…面会が無理なら教えてください。
逮捕の決め手はなんだったんですか?そんな事話する必要ないでしょう。
あなたは担当弁護士じゃないんだから。
とにかくお引き取りください!あの…ああ…。
(池内拓也)よう刑事さん。
なんで桐石が逮捕されなきゃなんねえんだよ。
(林亘)説明しろよ。
なんでこういつも間違えられるのかな…。
私はね米屋でもなければ刑事でもないの。
(林)刑事じゃなかったらなんなんだよ?私は…弁護士。
弁護士?おいだったら桐石助けてくれよ!あいつが人殺しなんかするはずないんだよ弁護士さん。
(池内)なあ頼むよ!弁護士さん。
なあ!
(林)マジなんとかしてくれよ!
(池内)頼むよ!
(山野)頭部に3か所の打撲痕。
頭蓋骨陥没だ。
このバットにお前の指紋が付いてたんだ。
いい加減正直に話したらどうなんだ。
(天藤範正)今日函館から戻ったんだって?
(菊園綾子)はい。
ご無沙汰いたしました。
朝一番の飛行機で。
神戸に名古屋福岡のあと金沢福島そして函館か…。
まあ地方勤務は検察官の宿命だからね。
(天藤)ご苦労さん。
いえ。
徹底した証拠調べに計算され尽くした論陣。
赴任先でも数々の難事件を担当し見事にすべてを有罪に導いた。
「突きの菊園」は健在のようだな。
君は東京地検の期待の星だからね。
ありがとうございます。
ああ紹介しておこう。
君の担当事務官の高柳くんだ。
(高柳明信)高柳でございます。
お噂はかねがね。
菊園検事とご一緒に仕事を出来ます事光栄でございます。
よろしくお願いをいたします。
いえこちらこそ。
早速だが君に担当してもらいたい事案がある。
町田で起きた出版プロデューサーが撲殺された事件だ。
被告人は黙秘を通しているが物証も状況もそろってる。
難しい事件じゃない。
加えて弁護人が弁護人ですから。
あの…森江春策というブンヤ上がりのドンくさい男だそうで。
あっ検事と同期だとか。
森江春策…さあ…。
司法修習生時代に一緒に研修に来ててよく比べられていたじゃないか。
司法試験をトップ合格した君とビリッケツで入ったあの男。
2人はまるでウサギとカメだって。
カメですか…。
検事あの…「突きの菊園」というのは一体…。
私昔剣道やってたんです。
で得意技が「突き」。
あっああ…。
だから。
なるほど。
高柳さん刑事部に行って事件の資料を持ってきてください。
あっ公判用の捜査記録でしたらこちらに。
そうじゃなくて警察から上がってきたすべての資料に目を通したいんです。
えっ!?すべてって…。
私の仕事のモットーは迅速集中徹底です。
まして今回の公判は裁判員制度で行われる。
私にとっても初めての経験ですし短期間の集中審理のためには事前の入念な準備がすべてです。
どんな小さな情報も頭にたたき込んでおきたいので。
検事ならカメみたいな弁護士に負けるわけがありません。
すぐにお持ちいたします。
カメ…カメカメカメ…。
そういえばいたような…。
池内くんと林くんバンド仲間だって?勝手に弁護すればいいだろ。
取り調べでは黙秘を続けたそうだね。
でも私には本当の事を話してくれないかな。
いろいろ話聞いたよ。
君は横浜にある定時制の夜間高校に通っていた。
そこに文芸部の顧問として相沢先生という君にとっては恩師ともいえる先生がいた。
半年前…。
(桐石)ざけんなよ!この野郎!桐石…!おい桐石!
(相沢克己)何やってんだお前ら!君がたびたび暴力事件を起こして退学処分になった後も何かと君の事を心配してくれていた。
その相沢先生が4か月前に亡くなられたそうだね。
(相沢)暴力を振るうのは最低の人間のやる事だ。
二度とケンカはするな。
約束してくれるか?約束するよ。
(相沢)これは俺が書いた小説だ。
日の目を見る事はなかった…。
うあっ…!ああ…。
先生…!?先生!相沢先生!
(桐石たち)先生…!相沢先生!しっかりしてくれよ…!先生!先生が亡くなったあと君はその小説を先生のために出版したいと思った。
そして同級生だった来栖綴さんに紹介されたのが藁山さんだった。
君は本を出すためにバイトでためていた全財産60万を払った。
ところが出来てきた本は勝手に中身を改ざんした先生を裏切るようなものだった。
君が藁山さんを恨むのは当然だ。
それでも君には相沢先生との約束があるはずだ。
池内くんも林くんもそんな君が人殺しをするはずはないってそう言ってるんだよ。
友達だけじゃない。
私もこの目で見た。
あんたみたいなクズを殴って先生との約束を破るわけにはいかねえよ。
私も君を信じたいと思ってる。
だったら勝手に信じればいいだろ。
(ため息)
(江里梨の声)どうしてこの絵本に載せたのかと訊いてるんです!
(綴の悲鳴)
(豊幌の声)今夜9時ですか…。
(加藤の声)連絡が取れなくて困ってるんです。
(桐石の声)うああー!被告人の動機は十分。
物証もある。
(桐石の声)うああー!
(桐石の声)うああー!はあ…ほぼ間違いない。
状況から見ても桐石で決まりだ。
(携帯電話)もしもし。
あーっもうこんな時間…!はいじゃすぐ出ます。
今日はここまでにします。
(高柳)あはい。
一応資料には全部目を通しましたから。
全部ですか!?あ…お疲れさまでございました。
ところで高柳さん。
お寿司お好き?
(高柳)はい?
(高柳)そうですか…。
こちらが検事のご自宅。
創業120年ですか…。
はあ〜すごいですねぇ。
あ…いただきます。
(菊園喜助)まったくよ…。
東京に戻ってきた日ぐらい早く帰って親の肩でももんでやろうっていう気はねえのかい?何言ってんの。
そっちこそそんな気もないくせに。
今日はね東京に戻ったお祝いしてやるって言われてたんです。
あそうなんですか。
はい何握ろうか?いや私は…。
どうぞご遠慮なく。
あ…。
じゃまず大トロお願い。
で私はその次ウニ。
情けねえな…。
寿司屋の娘ならよもっとこうほら…ひもひかり…粋なものは頼めないの?好きなもの頼ませてよ。
あとはイクラ。
で大トロウニイクラの繰り返しでいいわ。
はいよ。
どうぞ。
うわぁ〜。
光栄です。
うん…。
おいしい!
(高柳)うまい…!寿司はやっぱり大トロね。
はい綾子にはこれだ。
料理教室…?頼んでない。
死んだ母さんの遺言だよ。
お前に料理を教えてやれなかったのが心残りだってよ…。
遺言と言えば聞くと思って。
私今ねそんな時間ないの。
だいたい料理なんてプロの作ったおいしいもん食べるのが一番。
悪いけど。
情けねえ…。
おめえはそういう了見か。
了見…?ポリシーよ。
何がポリシーだ。
もう申し込んじゃったんだよ。
行けよ。
イヤよ。
行けったら行けよ。
イヤったら絶対イヤ!え…まああの…今日せっかくのね…。
行けよ。
ウニ特上。
え…あの…。
おいしい。
先生!桐石さん今日もダメでした?うん…。
しゃべらないって事はきっとワケがあるんだよ。
だからこそ私は彼を信じたいと思ってるんだ。
先生が信じるっておっしゃるのなら私も信じます。
私の離婚訴訟の時もそうでした。
夫はそりゃあひどい男で大酒は飲むわ暴力は振るうわで。
なのに非は私にあるかのように言い張って。
でも先生は私を信じてくださいました。
あの時私どんだけうれしかったか…。
加えて離婚が成立して職のない私に先生は声をかけてくださった。
以来5年…。
いいよ。
今さらそんな事もう…。
私先生のお役に立ちたいんです。
桐石さんの無実を勝ち取るためなら私出来る限り…。
どうしたの?なんだか燃えちゃってるみたいだね。
さっき地検の高柳って事務官から公判前整理手続についての連絡がありました。
なんだか先生の事を見下したみたいな偉そうな口調で。
先生今度の裁判絶対負けないでください!勝つか負けるかはやってみなきゃわからないよ。
それと担当検察官は菊園綾子という人だそうです。
菊園綾子…!?本当に?うわぁ懐かしいな。
私の同期なんだ。
もう才色兼備でね美人な上に頭切れるんだ。
それにね剣道強くて「突きの菊園」なんて言われて。
彼女と私ねウサギとカメって言われてたんだよ。
喜んでどうすんです〜?そんなすごい人相手にするんじゃ…。
先生ちょっと上着脱いでください。
ボタンなんか取れてないよもう。
いやそうじゃなくって背広新調するんですよ。
この際オーダーメードで。
え…裁判に勝つ事と背広とどう関係あるの?今度の公判は裁判員制度で行われるんですよ。
裁判員の人たちにいい印象を持っていただかないと…。
あら92センチ…。
えっ!?ダメだこりゃ。
先生ちゃんとジム行ってます?うんもう…。
それと何より大事なのは裁判員の人たちにわかりやすく説明するプレゼン能力ですよね。
先生の場合それも問題ですよね…。
そうなんだよね…。
わかりました。
あの練習しましょう。
ね?私が裁判員になりますから先生は私を見つめて弁論を。
ああ…練習で思い出したけど今日スポーツジム行く日だ。
だからねあの…悪いけど自転車借りるから。
先生お腹引っ込めてくださいよ!はいはい!
(須貝福子)今日から新しいお仲間が入ります。
菊園綾子さんです。
(拍手)よろしくお願いします。
カメ…!?えっ?えっ…あいえ。
それでは皆さんお席のほうへ。
いや〜こんなところで会えるとは…。
お顔を見て思い出しました。
カメ…。
あの…森江さん…?はい。
あの森江さんはどうしてこちらに?ああ…あのねメタボだからジムに行けって言われたんですよ。
でもね私思うんですよ。
あこちらです。
あの…体動かすよりも低カロリーの料理をマスターしたほうが体に優しいんじゃないかって。
それにね料理してる間ってこうなんていうんですかね無心になれるっていうか。
そうですか…。
皆さん今日はだし巻き玉子を作りますが誰が一番上手に作れるか競争しましょう。
よし…。
自信おありですか?自信ですって?ええ…。
私こう見えて寿司屋の娘ですよ。
おぉ〜ああそうですか。
見せてください。
(生徒)うまいわねぇ〜。
どうしてこんなにお上手なのかしら森江さんは。
ホント惚れ惚れしちゃう。
いやぁエヘヘ…。
あ…!?
(ため息)菊園さん!いやぁ…裁判前にあなたに会えるなんて。
いかがですか?せっかくですからお茶でも。
いえ。
今は裁判に集中しましょうお互いに。
相変わらずだな。
昔のまんまだ。
公判前整理手続はさして問題ないですよね?開示すべき証拠資料も召喚する証人も。
はい。
森江さん。
本気で被告人を無罪だと思われるんですか?はい。
罪を認めてませんし。
信じたいと思っています。
信じたい…?私たちの仕事は人を信じる事ですか?弁護士と検察官立場に違いはあっても目指すものは同じはずです。
真実はなんなのか。
主観ではなく物証を通して真実を追究し明らかにする。
それが私たちの仕事じゃないんですか?もちろんそうですけど。
でも私たちが相手にしてるのは人間ですから。
はあ…人を信じるだけでは真実は見えてはきません。
私裁判では揺るぎない真実を明らかにしてみせます。
あなたの目の前で。
では。
(ため息)お手柔らかにお願いします。
(玉村君江)裁判員の皆さんまもなく公判が始まるわけですがその前に何か質問がありましたら遠慮なくおっしゃってください。
(鎌田次郎)質問って言われたって…。
抽選で選ばれて正直困ったなと思ったけど。
今は緊張してるっていうか。
守秘義務もあるっていうしさドキドキだよ。
(大森菊子)私もです。
私たちの判断で被告人の人生が決まるんですからねぇ。
(新島ともか)私は法律は詳しくないですし…。
本当にこんな私が人を裁いていいんでしょうか?
(藤巻脩吾)法律の知識は必要ありません。
皆さんには法廷においてなされる証言と提出される証拠に基づいて被告人の有罪無罪を決定し刑の重さを判断していただきます。
はい。
(井本太一郎)はい。
はい。
(藤巻)それではこれより被告人桐石響樹に対する審理を開始します。
被告人は前へ出てください。
「被告人は去る4月22日東京都町田市南町田9丁目8番6号在藁山花俊宅を訪れかねてより恨みを募らせていた事から口論となり室内にあったバットを用い藁山花俊の頭部を3度にわたり殴打」「死に至らしめたものである」「罪名および罰状殺人。
刑法第199条」被告人に訊きますが今検察官が読み上げた事実について何か言いたい事がありますか?俺は藁山を殺しました。
だから俺は有罪です。
(ざわめき)静かにしてください!弁護人のご意見は?あ…え…べ…弁護人といたしましてはあ…被告人のただ今の発言にかかわらずあくまで被告人の無罪を主張いたします。
(ざわめき)静かにしてください。
静粛に。
静粛に!裁判長!被告人が自ら有罪を認めているにもかかわらず弁護人はそれをあえて無視し審理をいたずらに混乱させようとしています。
裁判員制度が導入された目的のひとつは裁判の迅速化であり無用な審理の引き延ばしは…。
はい…はい!あの…お言葉ですがあの引き延ばしなんて毛頭…。
私はあくまでもこの今日を含めた3日間定められた範囲内で証拠調べを行いたいだけで。
あ…それに審理は少しも引き延ばされておりません。
何しろ今始まったばかりですから。
(藤巻)弁護人は本件をあくまで否認事件として扱う根拠を述べてください。
被告人はこれまで黙秘を続けてきました。
それが公判が始まった今日なぜ急に罪を認めたのか。
私には納得出来ないからです。
(ため息)
(藤巻)では現時点での皆さんのご感想をいただけますか?まったくあの弁護人は何考えてんだろうなぁ…。
捜査段階であれ公判段階であれ自白は自白だろう。
(井本)いくら無罪を勝ち取る事が手柄になるからって…。
(吉永信孝)スタンドプレーでしょうねぇ。
(ともか)あのこういう事ってよくあるんですか?被告人本人が罪を認めてるのに弁護人が無罪を主張するっていうのは。
あまりないでしょうね。
被告人本人がやったって言ってるのになぁ。
でも被害者の藁山さんにも非はありますよね。
相沢先生でしたか?被告人のただ1人の理解者だった恩師が亡くなって…。
その相沢先生の書いた小説を…。
だからあれじゃない?有罪は決まりでさあとは情状酌量をどうするかだよ。
そういう事なんでしょうね。
ワケを聞かせてくれ。
どうして今日になって急に自分がやったなんて言うの。
なぜ…?やったからやったって言ったんだ。
あんたに話す事はないよ。
あ…桐石くん…!検事!どこへ行かれるんですか?補充捜査。
補充捜査?いやだって勝敗は決まったも同然ですよ。
まったくあのカメは無能ですよ。
自白した時点で量刑に照準を絞る戦法で来るかと思ったらもうあくまで無罪を主張するなんて…。
まぁあんなカメ相手だったら勝ったも同然です。
はい。
被告人が自白を翻したらどうします?なるほど…!で補充捜査ですか。
今回の事件物証も証人も完璧なんですけどひとつだけ気になる事があるんです。
なんです?犯行後の被告人の足取り。
桐石が藁山邸を訪ねたのは夜8時頃。
その後自宅に帰ったのが夜11時。
8時から11時までの3時間どこで何をしていたのか。
いやそれは…殺人を犯したあとですから…。
あ!高揚してどこかで酒を飲んでいたとか。
でもそれをわざわざ検事が…。
高柳さん。
真実というものは無駄に思える捜査の中にこそ隠れているもの。
迅速集中徹底…恐れ入りました。
お供いたします。
(桐石)あんたみたいなクズを殴って先生との約束を破るわけにはいかねえよ。
うああー!うああー!《そんなはずは…》現場百回。
「迷ったら現場に戻れ」はわかるんですけどね…。
何か見落としてるような気がしてね…。
いやそれにしてもきれいに整頓してあるよね。
ええ…。
藁山さんってかなり整理整頓好きだったんですね。
ねぇ見てよこの本棚。
タイトルがアイウエオ順にきちんと並べられてるよ。
普通ここまで出来ないよねぇ。
あこれこれ。
この本。
この『アイウエオ整理術』ってこの本がね藁山さんが書いた中で一番売れた本なんだって。
へぇ〜。
で明日からの裁判どうするんですか?
(ため息)しかし桐石くんはどうして急に自白したんだ…?先生は桐石さんの自白は嘘だと…?うんだって警察の取り調べでも自供しなかったんだよ。
これまで私が何度面会した時も何も言わなかった…。
でどうして今日言うのよ。
そんな事私に訊かれたって…。
昨日までと今日と何が違うんだ…?今日法廷で何か…。
行ってみよう。
1番〜!さぁ来いや来いや!
(男子生徒たちの騒ぎ声)来栖さん。
来栖さん!ちょっといいですか?あなたは裁判には明日証人として出廷する事になっている。
なのにどうして今日もいらしたのかなぁと…。
あ…それは裁判の事が気になって…。
藁山さんに桐石くんを紹介したのはあなたでしたよね?ええ…。
でもあなたも藁山さんの被害者なんでしょ?騙されたんです。
私小説を書くのが好きで半年くらい前天宝舎が主催したケータイ小説のコンクールに応募しました。
そしたら藁山さんから連絡があって「コンクールには落選したけど手を入れれば面白いものになる。
出版したい」って言われて…。
お金を払った…。
「本を出せば元手はすぐに取れる」そう言われて…。
私家の事情で高校も夜間に通って大学への進学費用も自分でバイトして貯めてたんです。
その50万を藁山さんに払いました。
3か月前やっと本になったんですけど半分以上カットされた本で本屋にも並ばなかった。
その藁山さんを桐石くんに紹介したのは…?相沢先生が亡くなってから桐石さんが先生の本を出版したいって。
その頃は私藁山さんを信じてたんです。
だから…。
でも桐石さんも私と同じ目に遭って…。
(桐石の声)どうしてくれんだよ!お前が藁山を紹介したばっかりに相沢先生の小説が…!お前のせいだよ!ごめんなさい。
謝って済むか!綴…俺はお前を絶対許さない!私がバカだったんです。
じゃあ裁判を傍聴したのは責任を感じて?こんな事になったのも私のせいです。
だから恨まれても仕方ないです。
桐石くん来栖綴さんを恨んでいたか…。
う〜ん…。
桐石さんの自白が嘘だって証明するためには何か物証なり新たな証言なりが出ない限り無理ですよ。
無理…だよなぁ…。
この若者ねぇ…さあ…。
ありがとうございます。
ダメだ…。
ああそう…。
この男性に間違いないですか?
(元山一平)ええ。
22日の夜に間違いないですね?そうです。
検事…!見〜つけた。
被害者藁山花俊氏は頭部を鈍器で殴打され死に至りました。
頭髪がずれているのは被害者がカツラを着用していたからです。
凶器に用いられたのは室内にあったバットで解剖の結果頭部の打撲痕と合致。
付着していた血液型も藁山氏と同じA型。
DNA型も合致しました。
そしてバットのグリップ部分に付着していた指紋は被告人桐石響樹の指紋と合致しました。
この事が犯人特定に決定的な意味をもつ事はもちろん言うまでもありません。
以上の事実を踏まえた上で証人を尋問したいと思います。
事件当夜藁山邸には複数の訪問者がいました。
全員藁山氏から時間を指定された人たちです。
これが藁山氏の手帳に書かれていたメモです。
わかりやすいように活字にしたものがこれです。
手帳には4名しか記入されていませんがもう1人訪問者がいた事がわかっていますのでまずはその証人から。
加藤高弥といいます。
証人と藁山花俊氏の関係をおっしゃってください。
師弟関係にありました。
私は藁山先生の弟子です。
22日の日証人は何時に藁山邸を訪ねましたか?夕方6時です。
時間は藁山氏自身から指定されたんですね?そうです。
今夜は来客があるからその前に来いと言われて…。
え〜手帳にはあなたの名前が書かれてませんよね?なぜなんでしょうかね?それは…私は弟子ですし他の方々とは意味合いが…。
う〜んつまり他の4名は苦情を言いにくる客であなたはそうでないと?う〜んそうかなぁ?これは5年前に出版された本です。
藁山さんは小説からハウツー本まで幅広く執筆されてます。
あなたこれ一緒に書かれたんですよね?そうです。
ところが共作なのにあなたの名前はない。
それは…先生の方針で。
お金の面ではどうですか?あなたは事件当時藁山さんと連絡が取れなくて困っていた。
それはギャラの未払いが続いていて…。
つまり他の4人と同様あなたも藁山さんに不満と怒りを…。
異議あり!弁護人の発言はあくまで推測であり証人を侮辱するものです。
異議を認めます。
あ…はい…。
え〜では質問を変えます。
え〜あなたは6時に訪ねて6時半頃藁山さんの家を出たという事ですがそれを証明してくれる人はいますか?どうして私が疑われなきゃいけないんです。
私は先生のおかげで出版の世界で生きてこられたんです。
恩を感じる事はあっても藁山先生を恨む気持ちなどみじんもありませんよ!終わります。
午後7時の来訪者があなたですね。
朝浜江里梨さん。
はい。
ご職業は?イラストレーターです。
藁山邸を訪ねた時の事を話してください。
藁山は最低の人間ですよ。
藁山は見本として預けていた私の絵を無断で流用して自費出版の絵本に載せたんです。
(江里梨)ふざけないでください!この絵は明らかに私の絵です!
(江里梨の声)でも藁山は流用ではないと言い張るばかりで…。
これ以上いても意味がないと思い15分ほどで家を出ました。
え〜証人が訪ねた午後7時から7時15分までは藁山さんは生きていたという事ですね。
(江里梨)もちろんです。
あはい。
え…あ…。
その事を証明してくれる人は他に誰か…。
裁判長。
弁護人は何度も無意味な質問を繰り返し時間を無駄に費やすのみで裁判員制度のもつ意味を理解しているとは到底思えません。
こんな事態も想定して証人を用意していますのでここで新たな証人の尋問を申請します。
その証人で何を立証するんですか?午後7時15分に藁山氏が生きていた事をです。
証人の職業を教えてください。
町田南署地域課第二派出所に勤務する警察官です。
22日の夜証人は警邏のため藁山花俊邸の前を通りましたね?はい。
その時の正確な時刻はわかりますか?警邏する道順は大体決まっていますし日報で確認してきましたので時刻はわかります。
夜7時15分頃です。
その時証人は2人の人物を目撃した…。
はい。
1人は朝浜江里梨さん。
そしてもう1人証人は目撃したんですね?
(堀田の声)はい。
藁山さんです。
え〜22日の夜に目撃したのは藁山さんに間違いない…?はい。
でもサングラスをしていたんだし…。
(堀田)藁山さんに間違いありません。
確かです。
う…あ…うん…。
(井本)愛妻弁当ですか〜?あ…いや普段は作ってもらえないんですけどね裁判員になったらどういうわけか女房子供から「パパすごい」って尊敬されて。
いいご家族でうらやましいなぁ。
私なんか「パパは本当にツイてないわね」って…。
へへ…父親の威厳が形無しですよ…。
(ともか)弁護人は被告人が無罪ならその前に訪れた加藤高弥さんと朝浜江里梨さんが犯人の可能性もあるって言いたかったんですかね?でもその可能性はあの警察官の証言で否定されちゃいましたね。
うん…。
あの検事は用意周到。
まったく大したもんだよ。
今日も「俺がやりました」って言やぁそれで終わりだな。
でも被告人質問は最終日の明日じゃなかったかしら?じゃあ次は…来栖綴さん。
あなたが被告人を目撃したのは何時頃ですか?
(綴の声)8時20分頃だったと思います。
被告人はあなたを見て逃げるように走り去ったんですね?…はい。
間違いありませんか?はい。
そして証人は8時30分に藁山邸を訪ねた。
(綴)はい。
藁山氏を訪ねたのはなぜですか?私が書いたケータイ小説を本にすると騙されてそのために払った50万を返してほしかったからです。
藁山さん?
(綴の声)玄関の鍵がかかってなかったので中に入りました。
藁山さん…?イヤー!藁山氏の死体を発見してそのあとどうしましたか?すぐに藁山さんの家を出て帰りました。
どうして警察に通報しなかったんでしょうか?驚いて…怖くてどうしていいのかわからなくて…。
証人は被告人を藁山さんに紹介する事で被告人から恨まれていた。
(桐石の声)どうしてくれんだよ!お前のせいだろ!俺はお前を絶対許さない!証人はいかがですか?被告人をどう思っていましたか?異議あり!弁護人の質問は本件の審理となんら関係ありません。
いや…あの…藁山さんの死体を発見していながらなぜ証人が警察に通報しなかったのかを知りたいんです。
異議を却下します。
警察に知らせなかったのは被告人をかばいたかったんじゃないんですか?うんうん。
あでもそうすると今度は矛盾が生じちゃうんだな。
え〜あ…じゃあどうしてそのあとの警察の事情聴取で被告人を見たという事を話したんですか?桐石さんが逮捕されたあと刑事さんが何度も来てバットから桐石さんの指紋が出た。
犯人は桐石さんに間違いない。
桐石さんを目撃しなかったかと何度も訊かれて…。
うんうん…なるほどね。
ああそうでしたか。
ああそれならわかります。
そんなの事件の本質と関係ないだろう…。
人の心が見えなきゃ本質も何もないでしょうが。
え〜おたくの出版社天宝舎と藁山さんの関係を教えてもらえませんか?3年前に本の売り上げが落ちてうちの会社の経営が苦しくなってる時藁山さんが自費出版やろうってうちの会社の社長に話持ち掛けてきたんです。
でもとにかく藁山さんのやり方は度を超えていて…。
で苦情があなたのもとに殺到するようになった。
まあそうです。
するとあなたも藁山さんに相当怒りを感じていたんでしょうね。
殺したいと思うような。
裁判長!弁護人は質問の仕方に注意してください。
あ…すいません。
え〜あの…証人にもうひとつだけ。
この5年前に藁山さんが書かれた本ですが藁山さんのお宅の本棚見ていや〜驚きましたね。
本がすべてアイウエオ順に並べてあって藁山さんそういう癖があったんですか?
(豊幌)ありました。
本棚の本だけじゃなく資料はもちろん名刺にCDすべての物をアイウエオ順に整理してそれはもう徹底してました。
はいはい。
あ…いやあの…これはもちろんあの審理には関係ないといえば関係ないんですけど…。
いやぁ私どうもあの気になった事は質問せずにいられないっていう癖がありまして…。
あ…あ…。
ああすいません。
あ…ん…終わります。
(ため息)これにてすべての証人尋問を終わります。
裁判長。
現時点で弁護人の弁護方針に変更がないか確認したいのですがよろしいでしょうか?どうぞ。
今日の証拠調べを終えてなお弁護人は被告人の無罪を主張されるのですか?はい。
ではもし仮に…仮にですよ。
被告人が無実だとするとどういう事が考えられるのでしょうか?えーと…。
今日の証言でえ〜2番目の訪問者である朝浜江里梨さんが帰る7時15分までは藁山さんは生きていたという事が確認出来ました。
問題はそのあとです。
被告人桐石響樹が来る8時までの間に45分という時間があります。
この間に誰か他の人間が訪ねてきて藁山さんを殺害した…。
ああいやこれあの推測です。
あくまでも推測で…。
被告人桐石響樹は来栖綴さん豊幌元雄さん同様死体を発見したにすぎないと?被告人を有罪だとする客観的物証もバットに付いた指紋だけです。
指紋にしても例えば被告人が死体を見て驚いて思わずそばにあったバットに触れてしまった…という可能性も考えられます。
被告人の自白については?もう…ヤケになってしまったという事も…。
では弁護人はあくまでも昨日と同じ主張をされるわけですね?被告人がヤケになって嘘の自白をしていると。
可能性はゼロではないと思います。
被告人が犯人とは限らない合理的な疑いがある以上信じたいと思います。
(ため息)
(咳払い)裁判長。
極めて異例ではありますがここでもう1人だけ新たな証人を申請したいのですが。
またですか?今度は何を立証…?犯人が被告人とは限らない…。
たった今そう弁護人が主張した可能性をゼロに。
合理的疑いをほんの1ミリも残さないためです。
川崎駅前で焼き鳥屋をやっとります。
事件があった夜客として証人の店へ来た人がこの法廷の中にいますか?いたら指さしてください。
その人です。
被告人が店へ来たのは22日の夜何時頃ですか?夜9時過ぎだったと思います。
どうしてそんなにはっきり覚えているんですか?そりゃあもう飲みっぷりがすごかったし…酔っ払ってブツブツと…。
証人は被告人が何かしゃべってるのを聞いたんですね?ではその内容を教えてください。
ええ。
殴ってしまった…!バットで…殴ってしまった…!事件のあった夜被告人は焼き鳥屋で酒を飲んだ際バットで殴ったとすでに犯行を自白していた…。
なのにそれをヤケって言うかしら…?違うよねぇ…。
失礼。
1人の世界に入ってしまって。
どうぞ。
弁護人の反対尋問を。
弁護人反対尋問を。
え…あ…はい!…ああ!ああすいません。
あ…ありません。
(ざわめき)桐石くん…。
ごめん…。
(鎌田)1ミリの可能性も検事に消されちゃったな。
木っ端みじんって言葉は今日のあの弁護人のためにあるんだろうな。
私は「可能性がゼロじゃない限り被告人を信じたい」…。
ああこの弁護人は本気で人を信じようとしてるって思って感動したんですけど…。
でもそこまででしたねぇ。
明日はもう来る事もないんじゃないですか?そうだよなぁ。
すべてが明らかになったんだから今懲役何年とかちゃちゃっと決めちゃえばいいんだよ。
そんな乱暴な事を…!有罪は決まりとしても審理は最後まで責任もって見るべきですよ。
明日は被告人質問論告最終弁論のあと評議を行い判決の言い渡しとなります。
大丈夫ですか?先生。
あ…う…。
あら森江さん。
お顔の色が優れませんが大丈夫ですか?あ…へへ…。
筑前煮ですよ今夜。
では。
あ…。
お大事に。
あなたもね。
筑前煮って何?ああ…なんでしょうね…。
(ため息)ああもう先生しっかりしてください!もう…。
いやあ見事な手際だったそうじゃないか。
いえそんな…。
弁護人の主張を予想し事前に万全の証人を用意して息の根を止めた。
さすが突きの菊園だな。
ありがとうございます。
37.2度。
(ため息)微妙な体温ねぇ。
いつもここぞって肝心な時に熱が出るんだよな。
研修生時代もあの菊園綾子さんには負けてばっかりだったんだ。
周りからはウサギとカメだなんて笑われて。
カメだったらウサギに勝てるんじゃないですか?あ〜無理無理。
あのウサギさん絶対眠らないから。
う〜ん藁山さんがうちの事務所に来た時に傘さえ忘れなければねえ。
そうすれば先生は桐石さんに会う事はなかったし弁護を引き受ける事にもならなかったんですよね。
傘か…。
…傘!ねえ澄江さん昨日藁山さんの家行った時に玄関の傘立てにあの傘なかったよね?ほらあの…あの傘…。
いやこれ私のお気に入りの傘なんですよ。
これを忘れるなんてどうかしてる。
ハハハ…。
うんそういえば…。
(澄江の声)なかったような…。
どうしてないの?訊いてみよう。
玄関…玄関の写真玄関の写真…。
玄関の写真…。
あった!ない!いつ消えたんだ?
(綴)傘…ですか?うん。
木の柄でブランドものの立派な傘。
事件の夜あなたが藁山さんの家を訪ねた時…。
(綴の声)ありました。
あった?間違いない?ええ。
あともうひとつ。
あなたと桐石くんの事なんだけど以前は仲よかったんだよね?だからこそよかれと思って藁山さんの事を桐石くんに紹介したんだよね?私中学の時イジメに遭ってずっと引きこもりだったんです。
高校に通うようになってからもあんまり人と話す事が出来なくて…。
(綴の声)でもそんな私に優しくしてくれたのが桐石さんでした。
桐石さんはもう私の事嫌いでしょうけど私は今でも桐石さんの事を…。
来栖綴さんが来た時には傘はあった。
そうです。
南町田一帯に雨が降りだした時間です。
22日の日です。
ええ。
降りだしたのは午後8時3分ですね?8時3分…。
やんだのが8時46分。
わかりました。
ありがとうございました。
気象庁の記録ですから間違いないと思いますよ。
うん。
…となると雨が降りだしたのが8時3分だから桐石くんが訪ねてきた直後か。
でも来栖綴さんが桐石くんを見かけた時は桐石くんはずぶ濡れだった。
という事は藁山さんの傘一体誰が持ち出したんだ?そのあと訪ねた豊幌元雄さん?いや雨がやんだのが8時46分だから豊幌さんが訪ねてきた時には雨は降っていない。
じゃあ一体誰が…?だから藁山さんの生存が確認された7時15分から桐石くんが訪ねてくる8時までの45分の間にやっぱり誰か訪ねてきたんだよ。
ひょっとすると豊幌さんが時間より前に雨が降る前に訪ねてきたのかも…。
ともかく誰かが来ていて桐石くんや綴さんが訪ねてきた時も室内に隠れていたんだよ。
…え!?その誰かが綴さんが帰ったあと藁山さんの傘を持ち出した。
となるとその人はその後その傘どうしたのかな?駅までは差して行ったでしょうけどそのあとは捨てたんじゃないですかね。
あ澄江さん悪いけど駅に電話して遺失物として届けられていないか確認してみてくれないかな?はいわかりました。
先生は?私はもう一度桐石くんのバンド仲間から話を訊いてみる。
やあ。
弁護料の事ならバイト代が入ったら必ず…。
いやそういう事で来たんじゃないんだ。
新聞で見たよ。
桐石裁判で自白したんだって?ああ…でもね私は最後まで彼の事信じたいと思ってるんだ。
だからどんな事でもいいんだ。
彼の事をもっと教えてくれないかな?そう言われても…。
前にも言ったけど相沢先生が死んでから桐石は変わったとしか…。
俺は先生のためだけじゃないと思うけど。
うん?桐石急にギターの練習にも熱入れてさ。
どうしてもライブに呼びたい人がいるらしいんだよ。
そう…それってもしかして来栖綴さん?うん。
いつだったか藁山の事で怒鳴っちまったって落ち込んでた。
あいつ不器用でさ好きな子が出来てもうまく言えないんだよ。
逆に怒ったりして。
そうか…。
桐石くんも来栖さんの事を…。
(ともか)ねえ私が裁判で休んじゃってるからみんなに迷惑かけてるんじゃないかって気になっちゃってさ。
ねえ社員さんたちちゃんと手伝ってくれてる?
(大倉益美)手伝ってくれるわけないじゃん。
やっぱり…。
戻ったら課長に文句言ってやる。
(益美)そんな事したらクビになるのはともかだよ?所詮私たちは派遣社員。
人じゃなくて数なんだから。
まあね…。
しょうがないって。
私ね裁判員に選ばれた時最初はこれじゃ派遣の仕事と同じだなって思ったの。
国民の義務っていうだけで裁判所に行かされて…。
6人のうちの1人。
数合わせに過ぎないんじゃないかって。
でもね実際に裁判に立ち会ってみたらなんかこうやりがいがあるっていうか…。
検事さんがね美人で切れ者なの。
なんかこうチャキチャキっていう感じでさ。
へ〜すごいじゃんそれ。
で弁護士さんやり込められちゃって。
ダメじゃんそれ。
でもね被告人の事嘘みたいに信じてて…変な人。
すいません遅くなりました。
わ〜今日は筑前煮か。
体調はもうよろしいんですか?ああなんとか…。
それに料理してるほうが気分が変わるんで。
今日は私完璧ですから。
ああ予習されてきたんですねレシピ。
あ〜待った!手順メチャクチャじゃないですか。
調味料の順番は「サシスセソ」。
「砂糖塩酢しょう油」です。
ああそうでした。
サシスセソ…。
…あれ?何か…?いやあの何か今ひらめいたような…。
まだ熱あるんじゃないんですか?おいしいわねえ。
どうしていつもおいしく出来るのかしら?森江さんは。
いやそんな…。
あ菊園さんのご相伴させていただきます。
失礼します。
(むせる声)うん…。
で「煮汁がほとんどなくなったら残りしょう油の大さじ1を回し入れて照りよく炒りあげる」。
完璧なんだけどなあ…。
何?「砂糖大さじ4塩少々酢少々しょう油大さじ4杯」。
なんか見落としてる?菊園さん。
筑前煮の事ですか?いやいやそれは…それは置いといて…。
あの今度私の事務所にいらっしゃいません?積もる話をゆっくりと。
事務所ってどちらですか?丸の内?それとも六本木?銀座です。
え?銀座?いや戸越銀座のど真ん中に。
考えておきます。
とにかく明日の最終弁論は迅速に。
お忙しい裁判員の方々のためにも。
では。
(ため息)サシスセソと…。
アイウエオ…。
…アイウエオ?
(電話)あ!はいもしもし。
あ澄江さん。
傘あった!?藁山さんの傘は警視庁の遺失物センターに保管されていました。
その傘を本件の証拠資料として押収していただきたいんです。
こんな時間に来て何言ってんですか。
裁判所の許可は明日朝一番で取りますから。
お願いします。
ああそれからもうひとつだけ鑑定していただきたい物があるんですけど。
これです。
(山野)これは「協力者指紋」といって事件の関係者に指紋の提出をお願いするものです。
どうして指紋を採られなければならないんです?そうですよ。
私たちは証言してくれっていうから裁判所来てんですよ昨日も今日も。
その上指紋だなんてそんな…。
お願いします。
協力しろと言われるのなら私は構いませんが。
私も構いません。
森江さんこれは一体どういう事なんですか?それはあのこのあとの裁判で明らかにします。
あ…それから裁判長もうひとつお願いしたい事があるんですけど。
(藤巻)はあ…。
(君江)本日の被告人質問ですが弁護人からの要請で異例ですが「対質」という形式で行う事になりました。
対質?何?それ。
まあ平たく言いますと被告人だけでなく証人たちも一緒に同じ質問に答えてもらいながら審理を行うものです。
裁判員のみなさんこの対質で私が述べます事は最終弁論も兼ねております。
異例中の異例ですがこれも裁判の迅速化という事でご容赦いただきたいと思います。
え〜まずこれが藁山花俊さんが愛用していた傘です。
事件のあった22日の夜9時半頃すずかけ台駅の遺失物取り扱い所に届けられました。
事件当夜南町田地区では雷をともなった激しい雨が降りました。
その点もメモに加えておきました。
そこでお訊きしたいんですがまず加藤高弥さん。
あなたが藁山さんの家を訪ねた時この傘は傘立てにありましたか?記憶が定かではありませんがあったと思います。
朝浜江里梨さんいかがですか?ありました覚えてます。
被告人は?覚えてないよ。
来栖綴さんいかがですか?間違いありません。
傘立てにありました。
豊幌元雄さんいかがですか?覚えてません。
これは22日の夜捜査時に撮影された現場写真です。
ご覧のように傘はありません。
来栖綴さんが帰った8時30分その時にはあったこの傘が消えてしまっている。
という事はですよつまりは誰か持ち出した人物がいるという事になります。
では次の質問です。
みなさんは藁山さんの顔を認識出来ますか?つまり会えば必ずこの人は藁山さんだとわかるかどうかという事です。
まず加藤さんいかがですか?私は藁山先生の弟子ですよ。
認識も何もわかるに決まってるじゃないですか。
裁判長弁護人の質問はまったく意味のないものです。
私も同意見ですがまあ最終弁論を兼ねているというのですからもう少し聞いてみましょう。
ありがとうございます。
では朝浜江里梨さんいかがですか?会えばわかります。
これまでも何度かお会いしてますから。
来栖綴さんはいかがですか?私はケータイ小説の事で5回くらい会いました。
ですから会えばわかります。
豊幌元雄さんは訊くまでも…。
もちろんです。
藁山さんを他の人間と間違えるなんてありません。
まあ私が言いたいのは銀髪のカツラにサングラスをかけた人を藁山さんだと間違えるという事はないかという事なんです。
…まあそれはいいです。
それで被告人ですが被告人は事件前に藁山さんとは何回会いましたか?2回だよ。
最初に会ったのは天宝舎で。
(桐石の声)その時は遠くから見ただけで…。
相沢先生の小説を出版する事は電話で話が済んでたしあとは豊幌さんに原稿を渡して…。
なるほど。
じゃあ商店街で会ったのは2回目?どうして俺から逃げるんだよ!ふざけやがって…!
(森江の声)あの時も顔を合わせていたのはものの1分ほどでしたからね。
被告人は藁山さんをはっきりと認識する事は出来ないかもしれませんね。
それはそれとして傘の話に戻ります。
では誰がこの傘を持ち出したのか?持ち出したという事は当然傘を使用したという事です。
つまりその人物が訪ねてきた時には雨は降っていなかった。
そして藁山さんの家にいる間に雨が降りだした。
だから仕方なく傘を拝借した。
雨が降りだしたのは8時3分です。
被告人が訪ねてきた直後。
しかし被告人はずぶ濡れで立ち去っています。
…となると雨が降る前に訪ねてきた加藤高弥さんか朝浜江里梨さん…。
どうして私が傘を持ち出すんです?私は7時15分には家を出ました。
(江里梨の声)その時雨は降っていません。
私も同じです。
でも誰かがいたんです。
実は被告人が訪ねた時も来栖綴さんが訪ねた時もその人物は家の中にいました。
そして来栖綴さんが帰ったあと傘を手に逃げるように出ていった。
私はその人物こそ藁山さんを殺害した真犯人だと思っています。
その真犯人とは誰なのか?私はひとつの仮説を立ててみました。
異議あり!法廷は仮説を述べる場ではありません。
何より本件は被告人が罪を認めた自白事件であり昨日の証拠調べによってその裏づけもなされたはずです。
いや裏づけがなされたとはいえません。
居酒屋の店主の証言によってです。
事件の夜被告人が「バットで殴った」と言っていたという証言。
「バットで殴ってしまった」と言ったんですよ。
意味は同じです。
違いますよ。
「殴ってしまった」とはつい殴ったという事でせいぜい1回だ。
頭蓋骨が陥没するまで3回も殴って「殴ってしまった」とは言いません。
俺がやったって言ってるだろ!違う。
君はあとから来た来栖綴さんがとどめをさしたと思った。
だから来栖綴さんをかばうために嘘の自白をしたんだ。
弁護人はいつまで仮説や推論を続けるつもりですか?傘があったかなかったかは証人たちの記憶違いという事もある。
明白な自白事件を認めようともせず傘ひとつで延々仮説推論を述べる事など検察側こそ断じて認められません。
(ともか)あの…。
私も発言してもいいんですよね?もちろんです。
裁判員の発言は認められていますよ。
あの…私は傘の事が気になります。
もう少し弁護人の話を聞いてみたいなって…。
私も同じです。
たとえ仮説でも…。
うんうん俺もだな。
いいでしょう。
ですが弁護人は手短にお願いします。
ではずばり言います。
私には気になる証人が1人だけいます。
それは加藤さんあなたです。
あなたは午後の6時に藁山さんの家を訪ね6時半に出たという。
しかしそれを証明するものは何もない。
でも問題なのはあの日どうしてあなたを呼び出したかという事です。
何が言いたいんです?藁山さんはこれまでなぜ被告人とだけは会おうとしなかったのか?それは被告人を暴力的な人物だと思っていたからでしょう。
だからあなたを呼んで被告人の相手をさせた。
自分の身代わりとして。
私が先生の代わりをですか?無理ですよ。
すぐにバレてしまいます。
(藁山)大丈夫だ。
服はこれを着ろ。
もし何かあればこれを使えばいい。
(雷鳴)
(桐石)なあ頼む。
俺のはいいからせめて綴の50万だけは返してやれ。
そして被告人はあなたが身代わりになっている事に気がつかなかった。
うああー!ああっ!そこへ隠れていた藁山さんが姿を見せ…。
大丈夫か?
(加藤)うう…。
(笑い声)そのあと2人の間でどういうやりとりがあったかはわかりませんが。
だがたぶんこれまでも弟子とは名ばかりのぞんざいな扱いを受けていたんじゃないんですか?あなたは藁山さんを許せなかった。
一歩間違えば死んでいたんですから。
その時あなたは思った。
今藁山さんを殺せば桐石響樹を犯人にする事が出来る。
(加藤)あ〜!!だから…。
あなたはすぐにその場を立ち去ろうとした。
そこへ来栖綴さんが訪ねてきた。
…来栖です。
あなたは慌てて身を隠し…。
藁山さん?そして綴さんが殺害された藁山さんの死体を見て驚いて家を飛び出したあとあなたは傘を持って家を出た。
バカバカしい。
証拠がどこにあるっていうんですか。
証人の言うとおりです。
ああどうやら証拠が届いたようです。
モニターに映してください。
加藤さん。
この傘に付着していた指紋の中にあなたの指紋と合致しているものがありました。
(加藤)そんなものが証拠になるんですか?私は藁山先生の弟子ですよ!その傘には以前触った事がある。
指紋はその時に…。
ああ…そうきましたか。
ではもうひとつ鑑定結果をご覧にいれましょう。
それは藁山さんのカツラの内側についていた毛髪の鑑定です。
結果藁山さんの血液型A型とは違うAB型の毛髪が検出されました。
加藤さんあなたの血液型を教えていただけませんか?いくら弟子とはいっても常日頃師匠のカツラをかぶるような事はありませんよね。
(加藤のすすり泣き)以上で最終弁論を終わります。
おしまいに裁判員の賢明なる発言のおかげで最終弁論をまっとう出来た事を感謝いたします。
ありがとうございました。
判決を言い渡します。
主文。
被告人は無罪。
(どよめき)
(ため息)ありがとうございました。
…あどうもおつかれさまでした。
森江さん。
はい?ひとつ教えてください。
はい…はい。
どうやって正しい訪問順に気づいたんですか?ああ…それはね菊園さんあなたのおかげなんですよ。
昨日ほら「サシスセソ」って教えてくれたじゃないですか。
あれでピンときたんですよ。
藁山さんの『アイウエオ整理術』。
このね加藤高弥さん朝浜江里梨さんの順番を逆にすると訪問者が朝浜加藤桐石来栖豊幌でアイウエオ順になるでしょう?藁山さんってひょっとして人を呼ぶ順番までアイウエオ順にこだわっていたんじゃないかなって。
なるほど…。
それじゃまたお料理教室で。
では。
では。
「真実は人の心の中にある」。
これ先生の口癖です。
先生はカメかもしれませんけど先生が人を信じたから真実を解明出来たんです。
では。
お見事。
検事…。
でも次は負けない。
カメなんかに負けるもんですか。
(加藤)私は先生の弟子である事を誇りに思ってました。
先生を尊敬しているからこそこの15年弟子であり続けたんです。
なのに先生は変わってしまった。
(藁山の声)ハハハハ…。
これでいい。
これでもうあの桐石というやつも私の前には現れんだろう。
来たら傷害で訴えるだけだ。
お前の役目は終わりだ。
役目…?
(藁山)このあとも客が来る。
さっさと帰れ。
(加藤の声)私は言わずにはいられなかった。
いつまで詐欺を続けるつもりですか?何?
(加藤)もうやめてください。
以前の先生はそんなんじゃなかった。
きちんとものを書いていたじゃないですか。
(藁山)お前なんかに何がわかるというんだ。
俺は才能のかけらもないお前を養ってたんだよ!お前は俺にとってはただの番犬だよ。
出ていけ。
もう二度と俺の前に顔を出すな。
俺はなんのために…。
一体なんのために…。
この15年…。
あんたに俺の人生を捧げてきたんだ!
(雷鳴)なんのために!なんのために!
(加藤の声)先生への信頼や自分の誇りは一体なんだったのか…。
悔しくて悔しくて自分が抑えられませんでした…。
桐石くんは綴さんの事をかばった。
綴さんは桐石くんの事を思った。
嘘はいけないけど二人の気持ちは温かい。
で相沢先生の代わりに言わせてもらうよ。
今度こそもう二度と暴力を振るうんじゃない!綴さんもあんまり家にとじこもっていないほうがいいな。
負けるんじゃない!だって二人とも音楽に小説そういう夢があるじゃないか。
森江さんってすごい弁護士さんですね。
いやそんな事ないんだよ。
もうね司法試験通った時は奇跡だなんて言われてたんだよ。
研修生の時はねカメって言われてたハハハ…。
お米屋さーん。
え…?あ…はーい!いつものお米お願い!わかりましたー!ほらね誰も弁護士なんて見てくれないんだよ。
おばちゃんお待ちどお様。
ああはいはいはいはい…。
どうもどうもどうも。
はいどうぞ。
はいご苦労さん。
またよろしくね。
(ため息)はいよ。
うん。
はいよ。
生け花教室…。
頼んでない。
お前もいい歳なんだからさ先の事考えなよ。
だから私は時間がないんだって。
もう申し込んじゃったんだよ。
行けったら行けよ。
絶対にイヤ!行けよ。
ウニ!行けってんだよ。
イクラ!これでもまだか!トロだ!ただいま。
あおかえりなさい。
ああ疲れた…。
え?あれ?君は裁判員の…。
新島ともかさん。
今日からねウチで働いてもらう事になりました。
よろしくお願いします!よろしくって…。
私…これまでやりがいのある事って何もなかったんです。
仕事でもなんでも。
でもやっと見つけたんです。
私先生と一緒に困ってる人の役に立ちたいんです。
お願いですこちらで働かせてください!でもねそんな事いっても…。
ね働かせてあげましょうよ。
働かせるったってお給料どうすんの?もちろんその分先生にはしっかり働いてもらいますよ。
いや働いてもらうったって今だってカツカツなんだからさ…。
だって働くのは先生だもん。
もう…。
季節の新鮮なネタを10種類以上使った海鮮丼
2015/10/20(火) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
弁護士・森江春策の裁判員法廷[再][字]
容疑者5人全員に殺人動機あり!!真犯人は誰だ!?女検事と壮絶バトル…逆転のサシスセソ
詳細情報
◇番組内容
戸越銀座に事務所を構える気のいい弁護士・森江春策は、出版プロデューサーの藁山から自伝の出版を勧められる!!ところが藁山が自宅で殺害され、春策は事件の容疑者の弁護を引き受けることに!!芦辺拓原作の『裁判員法廷』を実力派キャストで映像化!
◇出演者
中村梅雀、若村麻由美、金田明夫、角替和枝、竜雷太、岩崎ひろみ、田山涼成、石丸謙二郎、中西良太、中村綾
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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