チューナーの基礎知識

チューナはもともと内蔵、もしくは接続されたマイク入力から、その音の音程(周波数)を測定する装置です。その機能を利用して、狙いの周波数がメーターの真ん中になるように表示して、出した音をペグで調整することで音合わせをするわけですね。くれぐれも「音合わせをしてくれる万能な機械」というわけではありませんよ。


まず、音程を表す表示で使われている記号、Hzとcentについて、おさらいしておきましょう。

Hzは「ヘルツ」と読みます。語源はドクドクと鼓動を打つハート(心臓)からきています。焼き鳥のハツも同じ語源と聞いたことがあります。

Hzは1秒間に何回の振動があるかを表す単位です。周波数ともいいます。音も空気の振動なのですね。音の世界では「音の高さそのもの」を指すのに使います。いわば、音程の住所のようなものですね。個人差はありますが、だいたい人間は20〜20000Hzの空気振動を音程として感じるそうです。


チューナーを見るとキャリブレーションといって、基準音を何Hzにするか設定できるボタンがついています。CALとかCALIBなどと書かれたボタンがそれです。まず基準になる音を決めておかないと同じ名前の音でも違う音になってしまいますよね。基準音は一般的に“ラ”の音(ギターでいうと1弦5フレット)で示されていて、たいがい電源を入れた最初の設定では440Hzになっているはずです。これは、国際的に「“ラ”の音は440Hzにしよう!(A=440Hz)」という取り決めがあったからで、通常はそのままで構いません。これで、“ラ”が440Hzという前提で、他の音も合わせていくことができるという寸法です。

基準音は「ピッチ」と言われたりすることもあって、例えば他の楽器などと合わせるときに「ピッチはいくつ?」なんていうやり取りをしたりすることがあります。国際的に決められたA=440Hzですが、実際の運用面ではもう少し高めA=442Hzとかでチューニングされたりすることもしばしばあります。オーケストラでは445Hzを使うこともあるなんていう話も聞いたことがあります。一方古楽器をやっている方々がバロックピッチとかローピッチ等と呼んでいる音程(A=415Hz)では、私たちが“ソ#”として扱っている音を“ラ”として(半音低くチューニングして)演奏したりしています。

もし、2台の楽器で片方がA=440Hz、もう一方がA=442Hzで合わされていた場合、同じ音を出すと1秒間に2回のうなりが発生します。当然、響きがにごり「合っていない」という状態になりますね。複数の楽器と音を合わせるときは、全員が基準音を同じに合わせていないといけません。簡単にチューニングできない楽器・・・ピアノや管楽器など・・・とアンサンブルする場合はギターはそちらに合わせることになります。チューナーを使えば、相手の楽器のピッチがいくつなのかを調べることも出来ますね。


さてもう一つ、針が振れるところのメモリをみると、今度はcentという単位が小さく書き込まれています。centは「セント」と読みます。センチメートルなどでおなじみの100分割(1/100)という意味です。
 音の世界では半音間・・・たとえば、“ド”と“ド#”の間を均等に100に割った単位で、「音と音の音程の隔たりを表す」のに使います。こちらは「何メートルとなり」みたいな言い方に似ています。

さて、ここまででチューナーでは基準音を音そのものを指すHzであらわし(例:A=440Hz)、メーター上で見る正しい音程(メーター中央)から、実際出ている音との隔たりをcentのメモリで表示しているのはわかりましたか?

では、先に行きましょう。


オートチューナーはいちいち合わせたい音を設定したりする面倒が無く、チューナーに触らずに次々合わせていけるので便利ですよね。でも、チューナーはこちらの気持なんてお構いなし。なんの音に合わせたいかなんて考えてくれないのですよ!では、どこが「オート」なのか、説明してみましょう。オートチューナーに音を入力すると、その音が+-50centの範囲でなんの音に近いかを自動的に選んで表示してくれるのです。・・・うーん、文章で書くとわかりづらいなぁ。

例えば、これから5弦を鳴らして正しい“ラ”の音にしたいとします。鳴らした5弦は少し狂っていて、でもそれが正しい音に対して+-50cent以内・・・これも例えば、-30cent低かったとしたら「正しい“ラ”の音よりも30cent低いですよ」と表示されます。だからペグを動かして針が真ん中に来るように調整すればそれでOKです。

でも、もし狂った5弦が正しい“ラ”よりも-60cent低かったらどうなるでしょう。このときは、半音低い「正しい“ラのフラット”よりも40cent高いですよ!」と表示されてしまうわけです。ここが「その音が+-50centの範囲でなんの音に近いかを自動的に選んで表示」のゆえんです。このときに「針を真ん中に合わせればよし」とばかりにペグを動かしてしまうと、5弦は正しい“ラのフラット”に合わされてしまって、先生から怒られます(笑)

では、もしちょうど50cent低かったらどうなるの?と思いません?そう思ったあなたはイジワルかも(笑)。結果は針がブンブンと大きくふれることになります。チューナーが迷って「正しい“ラ”よりも50cent低い」表示と「正しい“ラのフラット”よりも50cent高い」表示を交互に繰り返すでしょう。

だいたい基礎知識はこのくらいです。
では、次に実践編にいってみましょう!

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