2015年10月23日(金)

効果テキメン! ラグビー日本代表の大躍進を支えた「予言の書」とは

スポーツ・インテリジェンス【第33回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

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松瀬 学=文
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予期できた「ゴール前の厳しい笛」

ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会での日本代表の躍進がラグビー人気に火を付けた。改めて取材すると、試合のレフリー対策も躍進の理由のひとつだった。実は国際経験の多い日本ラグビー協会公認A級レフリーの平林泰三さんが『予言の書』をつくり、日本のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)に送っていたのだった。

予言の書とは、試合のレフリーを徹底分析して、その特徴や笛の傾向をつまびらかにした資料(画像)である。愛称「タイゾー」こと平林さんの努力は奏功し、日本代表はW杯でレフリーを味方につけたようにして戦った。現代ラグビーの構造において、レフリーの判断の占める割合は大きい。

平林さんは言う。「ジャパンが勝つことが日本ラグビー界を救うことになるんです」と。

平林さんは4年間、ジョーンズHCの依頼を受け、テストマッチ(国代表同士の試合)のレフリーの分析をせっせとジャパンに送っていた。とくにW杯でのレフリーに関する予言の書は効果を発揮した。W杯の1次リーグのレフリーは約3カ月前に決まる。試合の1週間前には予言の書をチームに提供した。

例えば、日本が番狂わせを演じた初戦の南アフリカ戦のレフリーは、ジェローム・ガロセ氏(フランス)だった。くせとしては「ゴール前の細かい反則に厳しい笛を吹く」「とくにスクラムで腕を曲げて下に崩す行為にペナルティーを吹く」といった傾向があった。それを示す実例の映像を送っていた。

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