(バイクのエンジン音)
(鳥居勘三郎)
14年前夜道を歩いていた男性がひったくりの被害に遭い大ケガを負った
幸い命に別状はなかったが被害者は脳外科を専門とする医師だった
年間500件に及ぶ手術を執刀し数多くの患者の命を救い続けてきた彼はその業績によって「神の手」と称えられる存在であった
しかし…
先生?
(堀田淳之介)できない…。
私にはできない。
事件の時のケガによって彼の右手には軽い機能障害が残った。
神の手を失った彼は病院を去りその後二度とメスを持つことはなかった
ひったくり犯が特定できぬまま時効を迎えそして14年…
(丸尾利明)一生付きまとってやるよ。
死ぬまでずっとな。
(おたま)さあ坊ちゃまお飲みください。
(鳥居勘三郎)これ何?おたまの家に代々伝わる風邪の特効薬でございます。
いや…一晩寝たら治りましたけど?坊ちゃまが病に倒れて不憫だと思ってせっかくおたまが…。
わかりました!わかりました飲みます。
あの…これ何が入ってるんですか?葛根湯にウコンにカンゾウにゲンノショウコにトカゲの尻尾。
トカゲの尻尾!?冗談でございますよ。
やめてくださいよおたまさん。
僕はおたまさんと違って心臓強くないんだから〜。
(七尾洋子)おはようございます!参った参った寝坊しちゃった!コーヒーもらいますね。
あ…。
あ…。
ぐっ…にっがー!何ですかこれ?風邪の特効薬。
ええっ!?坊ちゃまにお作りしたんです!あなたに必要なのはねアバズレの治るお薬でしょ!おたまさんに必要なのは姑根性が治る薬でしょ!まあ〜減らず口ばっかりたたいて。
このアバズレ!お育ちのよろしいこと!!あら〜〜!ズレババのおたまさんにはかないません!頭痛薬ちょうだい頭痛薬。
はいよ。
(会沢桂子)指紋もお願いします。
はい。
(兵藤兵吾)ケンカの果ての犯行ってとこかな。
凶器はあの消火器か?そのようですね。
(大滝鉄也)死亡推定時刻は?昨夜の午後10時から午前1時の間だと思われます。
着衣からは財布が抜き取られてるようです。
物盗りが目的か?ええ。
(茅野太一)電車の下からガイシャのものらしき財布を発見しました。
(大滝)丸尾利明…。
(高岡俊介)昭和49年生まれというと…31歳ですよね。
うおーっ!ええっ!すごい!何枚あるんですかこれ。
わざわざ財布抜き取って手つけてないってのはどういうことなんだ。
それにしても普通の金額じゃありませんよね?はいおみやさん風邪の特効薬。
風邪の特効薬?そう!葛根湯にゲンノショウコウコン少々愛情タップリ!気持ちはありがたいけど風邪もう治ったから。
またまたそんな遠慮しないで!なんだったら今夜付きっきりで看病してあげる〜。
治ったってば!
(茅野)課長。
やまと公園の変死体の件ガイシャに前があることがわかりました。
暴行や恐喝で出たり入ったりしてます。
半年前から大宮町のヤミ金で取り立て屋をやってました。
(村井信治)ヤミ金か。
こいつはやっかいだな。
なんか変なんだよねこのヤマ。
変って?ホシはガイシャの財布を抜き取って死体のそばに捨てた。
でも財布の中身はそのまま。
現金もカードも残っていた。
物盗り目的じゃなかったってこと?うん…。
でもそうだとしたら一体何のために財布を抜き取ったのかがわかんない。
うんそうよね。
行動が矛盾してる。
ようし引き続きガイシャ丸尾利明の交友関係及び当日の足取りについて調べてくれ。
丸尾利明…?引っかかったかな?
(村井)鳥居君。
はい。
またそこで何か聞き耳を立ててるのかね。
そんな差し出がましい真似は…。
君は資料課なんだからそこんとこよーくわきまえてくれよ。
もちろんです。
ちょうど今資料の虫干しをしようと…。
資料の虫干し?なんでそんなことすんのかね。
「なんでそんなこと」?「なんでそんなこと」?えっ?課長!あなた先輩たちの汗と涙の記録が虫に食われて見るも無残な姿になってもいいんですか?かまわないんですか!?わかりましたよ。
虫干しでも虫封じでも勝手にやってくれ!ったく。
こっちは虫の居所が悪いんだ。
14年前のひったくり事件。
ひったくり?勤務先から帰宅途中の医師が2人組のバイクにカバンをひったくられて大ケガをした事件。
右腕の複雑骨折…痛そう!住所が北区上賀茂森ヶ岡町…。
洋子。
小腹が空いたね。
小腹?あれ喫茶店?住所は間違いないですけど…。
(女性の話し声)ちょっとすいません。
はい?ここに堀田さんて方住んでませんでした?堀田さんてあの病院の先生の…。
あの方やったら10年ちょっと前にもう引っ越さはったよねえ?あせやせやえっとねぇたしか祇園のほうの診療所で働いてはるって聞いたことありますけど。
14年前四条河原町を中心としてバイクによるひったくり事件が多発した。
その時に容疑者としてある不良グループが浮かんだ。
そのリーダーだったのが…。
今回殺された丸尾利明?そういうこと。
俺らがひったくりだ?お前ふざけんじゃねえぞ!おいおっさん証拠出せや証拠!見た奴でもおんのか?
(丸尾)どうなんだよ?
(栗原康介)なんだおっさん。
なにガンつけてんだよ!目撃者も現れず証拠らしい証拠もなく逮捕には至らなかった。
でもそのガイシャの方どうして複雑骨折を?バイクに引きずられた。
10メートル近く。
ひっどーい…。
右手に軽い機能障害が残った。
ああだいぶ良くなったね。
念のためあと3日分薬をだしておきましょう。
薬キラーイ!ええ!?じゃあみんなと一緒に遠足に行けなくてもいいのか?行きたい!だろう。
じゃあ頑張って飲まなくちゃダメだ。
ここですね。
どうもありがとうございました。
はいお大事に。
遠足までに治そうね?うん!お久しぶりです。
鴨川東署の…。
鳥居さんでしたよね。
覚えてますよ。
お元気そうで。
堀田先生もお元気そうで。
あっこちら…。
部下の七尾です。
よろしく。
まお入りください。
先生上賀茂のお家はどうされたんですか?あそこは売りました。
今ここに住んでます。
どうぞ。
殺された?あの不良グループのリーダーがですか?昨夜遅く。
そうですか…。
まだ折鶴折ってらっしゃるんですか?ええ。
指のリハビリのために続けてます。
どうですか一緒に。
どうぞ。
あっ…じゃあ。
折鶴なんて子供の時以来です。
指先を使うのは脳にもいいんですよ。
頭が良くなるんですか?ボケ予防になります。
ボケ予防ですか。
アハハ…。
14年前のあのひったくりの犯人があの不良グループの中にいると私は信じてました。
その思いは今でも変わりません。
でももう恨むのはやめました。
恨んだところでどうなるものでもない。
昔とずいぶん雰囲気変わったな。
昔って14年前?当時彼は大病院に勤める脳外科医でね。
神の手って呼ばれてた。
神の手?難しい手術を数多く成功させそう言われたんだ。
機能障害じゃなきゃ今でも現役の神の手だ。
メスを持てなくなってどんな気分だろう?でも堀田さんもうホシを恨んでないって。
いや口ではそう言っても本当はどうかな。
でも私は堀田さんの言葉嘘じゃないと思うな。
だって14年間も誰かを恨んでいたようには見えなかったもん。
洋子。
うん?最近人を見るんだ?ふふっ。
日々成長してるんです。
ガイシャの交友関係を洗ったんですけどねまあ方々から恨まれてる男でした。
女関係派手だし。
10代の頃は不良グループのリーダーだった。
当時の仲間についても調べたんですが1人は服役中2人は地元を離れていて1人はガイシャと縁を切って現在は医者になってます。
まあホシがいるとしたらこの4人以外の…。
ちょっと待って。
仲間の1人が医者になった?はい。
栗原康介っていう男で音羽病院に勤めてるそうです。
それが何か?洋子。
はい?葛きり食べにいこう。
はい!ううん!?私は?頑張ってね。
栗原先生が手術してくださるんだから。
大丈夫だからね。
先生どこ?ここだよここにいる。
手術したら学校行けるようになる?ああなるとも。
また目もちゃんと見えるようになる?
(栗原)もちろん。
先生の顔ももうすぐ見れるよ。
イケメンだといいなぁ。
それはどうかな?オペ室へ。
(看護師たち)はい。
(栗原)大丈夫だからね。
なんだおっさん。
なにガンつけてんだよ!はぁ〜もうこんな時間か。
大変な手術なんですねきっと。
うん。
あの患者さん中学生ぐらいだったなあ。
お待たせしました。
僕にご用でしょうか。
久しぶりです栗原康介君。
覚えてないかな?14年前君に会ってるんだけど。
あ…鳥居さんでしたっけ?思い出してくれた?ああ…。
あの時は大変失礼いたしました。
いやいいんだ。
お医者さんになって見違えたよ。
あのご用件は?丸尾利明が殺害された。
知ってますよ昼のニュースで観ました。
驚きましたよ。
一番最近彼に会ったのはいつ?ここ数年あの頃の仲間とは一度も会っていません。
栗原先生。
12号室の山田さんがまた痛み出したって…。
わかったすぐ行く。
すいません失礼いたします。
信じられないなぁ。
あのお医者さんが不良グループの1人ですか?うん14年前ね。
すっかり変わってるんで驚いたよ。
ふーん。
丸尾は死ぬまでチンピラだったのに友達は心を入れ替えて猛勉強して医者になったわけか。
人間ていろいろだなあ!女将さん人間てどういう時に変わんのかな?
(小池仁美)そうやねぇきっかけがいろいろあると思うけど例えば大切な人ができた時とか。
恋人とかね。
(福島重夫)男を変えるのは女ですか?女も男で変わることがありますやろ?きれいになったりやさしくなったり。
なるほど恋の力か。
洋子全然変わんないね。
ずっと男がいないって言いたいわけ?大きなお世話です!いやいや洋子さんは今のままが一番いいんちゃいますか?ですよね〜。
そのとおり!いいこと言うわ重さん。
ガラは悪いけどいいお客さんだったわよ。
これ買ってくれたし。
このバッグもね。
こちらには以前から常連だったんですか?1年くらい前からかな?でもいろいろ買ってくれるようになったのはここ最近。
あぁあのケンカ以来よね気前が良くなったのは。
やっぱりママもそう思う?あのそのケンカってのは?ええふた月くらい前かしらね。
丸尾さんが他のお客さんと大ゲンカになったことがあったの。
(丸尾)なめてんじゃねえぞオラ!おい待てこらぁ!あっ…。
あっ血が!結局大したケガじゃなかったけど。
それ以来金回りがよくなったわけですか?そう。
怪しいわ〜ってみんなで噂してたの。
他の客と大ゲンカ?ええ。
その日を境に丸尾の金回りがよくなったそうです。
ケンカの相手はごく普通のサラリーマンでしたがそれまで丸尾とは面識もなく丸尾が殺された日は東京に出張していたそうです。
アリバイの裏もとれてます。
チンピラがサラリーマンとケンカして負けちゃうのか。
丸尾はグラスの破片で負傷して救急車で病院に運ばれてます。
病院?
(大滝)はい。
資料課の鳥居君。
今度は何を聞き出そうとしてるのかね?聞き出すなんてとんでもない!雑談ですよ雑談。
いい季節になりましたねぇ〜って話。
ねえ?ええまあ。
そろそろバラの時期ですねえ!誰か贈ってくれないかなぁ。
笑わしちゃいけませんよ。
君がね花の話をするようなガラか!それに君たちもいつまでもこんなところにいるとカビ臭くなるだけだ!課長!?カビ臭いとはなんですか!ここにある資料はみな我々先輩たちの汗と涙の結晶なんですよ!全警察官が最高の敬意を払わなければならない宝の山なんです!それをカビ臭いとは刑事課長としてあるまじき発言!あれ?あれ…。
おみやさーん!!事務局で聞きましたが丸尾は2か月前にケンカしてケガしてこの病院に運び込まれてる。
その時の当直医があなたですよね。
それから君何度か丸尾診察してる。
面倒に巻き込まれるのが嫌で先日はつい嘘をついてしまいました。
申し訳ございません。
それ以来丸尾の金回りがよくなってる。
あなた関係してますか?ええ。
(栗原)君かケンカで運ばれてきたっていうのは。
うっせえ!おいここ何とか早くしてくれよ!
(栗原)騒ぐな!大の大人がみっともない。
うっせえ!康介…。
お前康介か!?ケガが治ってからもあいつは患者をよそおって何度も僕を訪ねてきました。
来るたびに「金に困っている。
少しだけ都合してくれ」と。
殺された日も彼ここに来てるよね?その時どんな話を?いつもと同じですよ。
…金の相談です。
もう来るなと言ったはずだ。
おい治療を受けにきちゃいけねえのかよ?診察券だってちゃんとあるんだぜ。
傷ならとっくに治ってる。
さっさと帰ってくれ。
おいお前ずいぶん態度でかくなったじゃねえかよ。
昔はあんなに気が弱い奴だったのにさ。
金の相談ならよそでしてくれ。
僕は忙しいんだ。
まそう言うなよ!患者にはもっとやさしくするもんだぜ?
(栗原)突き放してやろうとも思いましたがついズルズルと。
昔何かと世話になったこともありますし。
昔って14年前?類は友を呼ぶって言いますからね。
あの頃はできそこない同士不思議と気が合ったんです。
あなたすっかり変わった。
今別人だ。
別人なんかじゃありませんよ…。
ひったくり被害者の堀田さんは医者。
丸尾のかつての仲間も医者になった。
これって偶然ですかね?折鶴も偶然?折鶴?
(七尾清一郎)いたいた!洋子ちょっとこれ見てごらんよ。
何よ今忙しいの!いいから見なさいっていうの。
もう何これ?結婚相談所!?ああ。
おみやさんくっつけるのはこの際諦めよう。
ちょっとこれ読んでごらんよ。
「年間3200組のカップルが誕生」いやいやいや実に見事じゃないの〜。
パパのおせっかいのほうがずっとお見事。
それからお前ももっと視野を広げてだな。
そしていろんな男性と積極的に出会って…。
まずい!出会い系サイトはまずいぞ。
な?うん。
やっぱりだなこういうところできちんと生活しているそういう男性と知り合ってまず文通からいこうか?うん文通。
メールじゃないぞ。
やっぱり手紙のほうが心を伝えるんだよ。
はいはいはい…。
1人で盛り上がってちょうだい。
行こうおみやさん。
手紙?…手紙!おみやさん?やっぱりそうだ。
14年前のひったくり事件で奪われたのは現金だけじゃなかった。
カバンの中に一通の手紙が入ってた。
手紙?堀田医師は患者さんからもらった手紙をいつも大事に持ち歩いてた。
時々読み返しては励みにしてた。
その手紙がホシの手に渡った。
洋子。
今日うちにご飯食べに来る?うんうん行きます行きます。
その代わり調べてくれる?…え?
(染谷愛)いらっしゃいませ!染谷愛さんですよね?ええそうですが…。
鴨川東署の鳥居って言います。
14年前四条河原町で起きたひったくり事件捜査した者です。
堀田先生の事件ですか?私今でも許せません犯人のこと。
堀田先生をあんなひどい目に遭わせるなんて!あなた高校生の時に堀田先生の手術を受けたんですよね?私が今こうして生きていられるのは堀田先生のおかげなんです。
あんな事件さえなければもっとたくさんの人が先生に救われるはずだったのに…。
あなた堀田先生に手紙出しましたよね覚えてます?何を書いたかは覚えてませんけど折鶴を同封したのは覚えてます。
折鶴?はい。
ピンクの折鶴。
ピンクの折鶴…。
堀田先生の患者さんたちがみんな私みたいに元気になりますようにって。
そんな願いを込めて折ったんです。
ああ〜!坊ちゃま!お夕食の支度がととのいました。
今夜はね坊ちゃまの快気祝いでございます。
快気祝いってオーバーでしょう?お邪魔しまーす!また来たあのアバズレ…!いやいや僕が呼んだんです。
え?おみやさん調べましたよ。
栗原康介の過去!…ったく!えー栗原康介は小学校2年生の時に両親が離婚し母親に引き取られたんですが経済的な事情もあって施設に預けられたそうです。
でその施設の話では10代の半ばから荒れるようになり高校2年で丸尾のグループに加わったとか。
ひったくりと同じ時期だな…。
ところがその後グループと縁を切り猛勉強の末に医学部に入学。
大学の授業料はある人物の援助によって支払われていたそうです。
ある人物?そう。
あしながおじさんがいたんです。
やっぱり思ったとおりだった。
ん?先生とってもイケメン。
先生。
ありがとうございました。
ほんとに。
明日からは軽い食事も大丈夫です。
お母さんの茶碗蒸しが食べたいそうですよ。
ええ作って持ってきます。
お大事に。
どうしても気になりましてね。
あなたがなぜ医者になったのか。
変なこと気になさいますね。
14年前のひったくり事件。
犯人あなたでしょ?何を根拠にそんな…。
奪われたカバンの中に入ってたのは現金だけじゃないんです。
ある少女からの一通の手紙が入ってました。
その手紙の中に折鶴が同封されてたんです。
ピンクの折鶴。
その折鶴があなたと堀田先生を結び付けあなたの人生を大きく変えた。
違いますか?そうです。
あのひったくり事件の犯人は僕です。
僕と丸尾でした。
(丸尾)しけてんなぁ。
最近のオヤジろくに金持ってねえのかよ。
大学生カツアゲしたほうがよっぽどマシやで。
おい康介。
次お前運転しろよ。
あいつひったくんの下手なんだよ。
(愛の声)「前略初めてお便りします」「覚えていらっしゃるかどうかわかりませんが私は以前堀田先生に頭の手術をしていただいた染谷愛という者です。
おかげさまであれから病気の再発もなく今は普通に高校に通ってます」「小さい頃両親を亡くした私は周りの方々の温かい寄付によって先生の手術を受けることができました」「救ってもらった命を精いっぱい生きることそれが私にとって支えてくれた人たちへの恩返しだと思っています」「入院している時皆さんが折ってくれた千羽鶴が私の心の支えでした」「今度は私が堀田先生のために願いを込めて鶴を折ってみました」「堀田先生の手がこれからもたくさんの命を救ってくれますように」「今病気と闘っている人たちがみんな元気になりますように」愛コンビニ寄ってかない?
(愛)うん行く!
(愛の声)「最後に一言お礼を言わせてください」「先生命をありがとうございました」
(栗原)家庭に恵まれないというだけで僕は世の中全部が敵みたいに思ってた。
なのに彼女は僕と同じように孤独でしかも病気で大変な思いをして…。
それでもあんなに明るかった。
あんなにまぶしかった。
それで君手紙の住所をもとに堀田先生に会いに行ったんだよね?はい…。
一言謝りたくて。
(戸の開く音)君は?あの…。
手紙を返しに来ました。
この手紙は…!すいませんでした!ひったくりの犯人は君か!私の右手を使い物にならなくしたのは君か!申し訳ありませんでした!
(栗原)先生は一言も怒りませんでした。
その代わり僕に医者になれと。
医者になって患者たちを救うことが僕にとってのつぐないだと。
そう言いました。
そして君は医学部に進学した。
堀田先生は自分の家を売って学費を出してくれた。
そうだよね?ええ。
ありがとう。
長い間の謎が解けてすっきりした。
洋子帰ろうか。
は?あ…知ってると思いますけどもひったくりの時効は成立してます。
あなた刑事責任には問われません。
完全に自由です。
ちょっとおみやさん!おみやさん!一体どういうつもりですか?調べてたのは14年前のひったくりじゃなくて今回の殺しでしょ?どうして追求しなかったんですか?これでいいんです。
あきれた〜。
ちっともよくないじゃないですか。
(田口浩司)課長。
たった今栗原が自首してきました。
何だって?
(星野康夫)自分が丸尾利明を殺したと。
え…?おみやさんこれって…。
来ると思った。
(兵藤)「医者である君がなぜ人を殺した?」「しかも昔の友人を」「あんな奴友人なんかじゃありませんよ」「14年前も今も友人だと思ったことなんか一度もない」「動機は何だ?彼との間に何があった?」金ですよ。
14年前の事件をネタに君は丸尾に金を脅し取られてた。
そうだよね?殺すしかなかったんですよ…。
今度500万頼むわ。
500万!?いいだろう?友達じゃねえか。
ふざけるな500万なんて金はない!そこを何とか頼むよ。
(栗原)冗談じゃない帰ってくれ。
帰ってやるさ。
ついでに触れ回ってやるよ。
あの先生は昔通行人から金を奪って大ケガをさせましたってな。
やめろよ…。
時効を過ぎたことをいいことにのうのうと先生ヅラしてますってな。
やめろよ…おい!おいおいお医者様がこんなことしていいのかな?耐えられませんでした。
丸尾が生きている限り僕は過去から逃れられない。
だから…。
過去の罪から逃れたいために新たな罪を犯してしまった。
(大滝)そういうことか?自由になりたかったんですよ。
それだけです。
(足音)先生。
栗原康介が自首してきました。
え?丸尾利明殺害の件です。
過去から自由になりたいそう言ってます。
先生。
これでいいんですよね?神の手…。
そんなものは初めから存在しなかった。
私はオペ室に向かう時にいつも祈ってたんですよ。
もし神というものが存在するならどうかこのオペを成功させてくれこの患者を救ってくれと。
(ため息)康介を過去に縛りつけていたのはこの私です。
今さら謝られても私の手が元に戻るわけじゃない!二度とメスは握れないんだよ!
(雷鳴)まだいたのか。
申し訳ありませんでした。
何度謝られても私の手が元に戻るわけじゃない。
君は高校生かね?帰ってご両親と一緒に警察に行きなさい。
親は…いません。
(雷鳴)まあ上がりなさい。
指のリハビリのために毎日こうして鶴を折ってる。
1羽折るのに5分はかかる。
それでもどうしても端と端が合わない。
合ってるように見えても0.5ミリのズレができる。
わずかなズレもない完璧な鶴でした。
上手いじゃないか。
これでやってみなさい。
(堀田)あれほどの指先の持ち主はそうそういるもんじゃない。
あれを見た時私は自分の失った手を取り戻したような気がした。
栗原康介の資質を見抜いたあなたは彼を医者に育て上げようとした。
そのための学費を捻出するために上賀茂の家を売ったんですよね。
しかし理由はそれだけじゃない。
あいつを医者に育て上げることで私はあいつに生涯自分の罪と向き合うように仕向けたんです。
そんな私をなぜかばおうとするのか…。
14年は長い。
人の心を動かすに十分な年月です。
もとは加害者と被害者の関係だった。
それが最初は怒りの感情だったものがあなたの中で少しずつ変わっていった。
同じように彼の中でも変わっていった。
もう休みなさい。
あぁ…もう少しだけ。
両親のいない彼にとってあなたはいつしか父親のような存在になっていったと僕は思います。
そんなあなたの身代わりになろうとしてる。
身代わりに罪をかぶろうとしてる。
康介は十分につぐないました。
私もとっくに彼を許していたんです。
いや感謝すらしていた。
そうです。
丸尾を殺したのは私です。
あの先生は昔通行人から金を奪って大ケガをさせましたってな。
(堀田)あの日私は久しぶりに康介と会うためあの病院に行きました。
ところが事もあろうか丸尾が康介を脅していた。
康介が脅されているのを知って私は許せなかった。
これ以上康介に付きまとわんでくれ。
金は十分に払ったはずだ。
(丸尾)十分?冗談だろ。
(堀田)あいつはもう昔とは違うんだ。
今医者として一生懸命頑張ってる。
これ以上過去に縛りつけないでくれ!頼む自由にしてやってくれ。
頼む!寝言言ってんじゃねえよバカ!一生付きまとってやるよ。
死ぬまでずっとな。
(堀田)あの男の財布から病院の診察券を抜き取りました。
あの男と康介との間に接点があると思われたくなかったんです。
康介に罪はない。
丸尾を殺したのは私です。
私がこの手で…この手で…人を殺したんです。
手紙をある人から預かってきてます。
読んでいただけますか。
はい。
「先生お元気ですか?愛です」
(愛の声)「私は現在夫と2人で小さな花屋を切り盛りしています」「幸い今も病気の再発はありません」「時々先生の言葉を思い出しています」「あの頃手術を怖がる私に先生は千羽鶴を手渡してこうおっしゃいましたね」こんにちはー!「『神の手は誰でも持っている。
誰かのために祈りを込めて鶴を折る時その手にはきっと神が宿っている』『だから君はたくさんの神の手に守られているのだ』と」「あの時の千羽鶴は今でも私の宝物です」「実は来年私には赤ちゃんが生まれます」「先生が救ってくださった命の中に今別の新しい命が宿っています」「先生生まれてくる赤ん坊の分までもう一度お礼を言わせてください」「命をありがとうございました」ありがとうございました!ありがとう。
(栗原)待ってます。
あなたを超える医者になって…待ってます。
加害者と被害者だった2人の間にいつしか親子のような絆が芽生える。
そんなこともあるんですね。
人間同士だからね。
彼もいつか神の手って呼ばれるようになるのかなぁ。
なると思ういや必ずなる!ね!さてクイズです。
どんなお医者さんにも絶対治せない病気があるの。
何でしょう?病気…。
洋子ちゃんわかる?恋わずらい!ピンポンそのとおりです!もう見て!ほらこんな熱!平熱。
2015/10/19(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
おみやさん4[再][字]
京都鴨川東署。資料課の窓際課長・鳥居勘三郎が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難解事件を鮮やかに解く、渡瀬恒彦主演の好評シリーズ第4弾。
詳細情報
◇番組内容
14年前、バイクを使った引ったくりが頻発、被害にあった脳外科医がバイクに引きずられて大ケガを負うという事件も発生していた。洋子(櫻井淳子)とともに堀田を訪ねたおみやさん。それに対して堀田は、もう引ったくり犯を恨んではいないと答えたのだった。
◇出演者
渡瀬恒彦 櫻井淳子 加勢大周 七瀬なつみ 谷啓 菅井きん 他(ゲスト)石橋蓮司 川岡大次郎
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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