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【茨城】

鬼怒川決壊 その日、別の河川でも… 逆流で市街地に水害

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 常総市で鬼怒川の堤防が決壊した9月10日昼、決壊場所から約10キロ下流の市街地で、別の河川が逆流して水害を引き起こしていたことが分かった。同日夜、決壊による洪水が市街地に押し寄せ、被害が混同してしまい、実態が検証されないままになっている。被害を受けた住民は「決壊とは全く異なる水害で、行政のミスの可能性もある。なかったことにしないでほしい」と原因究明を求めている。 (妹尾聡太)

 被害があったのは、市内の水海道橋本町付近。町内を、生活雑排水などを集めて鬼怒川に流す新八間堀(しんはちけんぼり)川が流れている。市建設課と地元消防団員によると、九月十日午後二時ごろ、側溝やマンホールから突然、水があふれ出し、家屋が浸水した。新八間堀川が増水した結果、川の堤防の中程に開けられた排水口から水が逆流し、排水路を通って住宅街に流れ込んだものとみられる。

 この排水口は「樋管(ひかん)」と呼ばれ、出口に開閉ゲートがある。市街地への逆流を食い止めるために、同日午後四〜五時ごろ、市建設課の職員や消防団員が手動で六カ所あるゲートを閉じて、被害の拡大を防いだという。

 新八間堀川が鬼怒川と合流する河口には、国土交通省の水門と排水機場が設置されている。国交省によると、この日は水位が上昇した鬼怒川から、新八間堀川に水が逆流するのを防ぐため、午前二時ごろ水門を閉め、同時に新八間堀川から鬼怒川への排水も始めた。

 その後、鬼怒川の上流で堤防が決壊、水門付近の水位も上限に近い八メートルまで達し、新たな決壊の恐れも出てきたため、午後一時ごろ、水門を閉じたまま排水を中断した。

 市街地で被害が発生したのは、国交省が鬼怒川への排水を止めた直後。国交省は午後一時ごろ、市の災害対策本部に排水の停止を連絡したが、市は対策を取らず、建設課にも情報が伝わらなかった。建設課の担当者は「排水を止めたことで新八間堀川がせき止められた状態になり、水位が上昇して逆流した可能性がある。事前に知っていれば被害を軽減できた」と話す。

 排水の有無に関係なく、増水や逆流を想定して樋管を閉じておかなかったことについて、同課は「過去二十〜三十年、同じような例はなく、対策を取ってこなかった」としている。これに対し、市内の浸水状況を調べている筑波大の白川直樹准教授(河川工学)は「市は普段から地元住民と連携し、増水に備えた態勢を整えておくべきだ」と指摘する。

 車両や車庫が水に漬かった自動車整備業の秋葉智之さん(41)は「逆流がなければ、夜、洪水が来るまでに車や工具類を高台に移動できた。自然災害だったら諦めも付くが、防げたのなら悔しい。同じことが再び起きないようにしてほしい」と訴えた。

 防災担当の市安全安心課は「被害を検証するかどうか、現時点では何とも言えない」としている。

 

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