瓦屋根の下に青や赤の丹青を施した景福宮、穏やかな微笑みが印象的だった慶州の仏国寺と石窟庵、朝鮮通信使の行列を再現した大規模なパレード…。
「新・朝鮮通信使」に参加した日本のイラストレーター、岩本陽子さん(38)が、8日間にわたる韓国での自転車の旅を絵で表現した内容だ。
岩本さんは毎日、自転車で移動したルートやその日訪問した場所をかわいらしい絵にした。「リンゴ畑をながめながらサイクリングロードを走る。景色は日本の山陰地方に近い雰囲気」といった短めの感想も添えた。まるで日記を書くかのように、毎日欠かすことなく描いた絵は、旅の記録であり、また岩本さんが自転車ツアーに加わることになった理由でもあった。
岩本さんは韓流ブーム真っただ中だった2010年、初めて韓国を訪れた。その当時は、韓国に対し特別な感慨を持つことはなかった。そんな岩本さんが今回の自転車ツアーに加わることになったのは、ある絵に出会ったことが決定的なきっかけだった。新・朝鮮通信使の参加者を募集していたちょうどそのころ、朝鮮通信使を描いた浮世絵(江戸時代の民俗画)を鑑賞した。日本に到着した朝鮮通信使の馬上才(馬にまたがって行う芸)の公演を、庶民たちが垣根越しに見物している様子を描いた絵だった。そのとき「絵を描くことを生業とする私が、かつての朝鮮通信使がたどった道を自転車で走りながら、その様子を絵にして記録すれば、それこそ新・朝鮮通信使と言えるのではないか」と思い立ったのだ。
「私たちは自転車で移動しながら、前に障害物があれば互いに『危ないよ』と注意を促し、誰から転倒すれば、誰彼構わず駆け寄って起こした。こうして個人個人の交流が次第に積み重なっていけば、日韓両国の問題も少しずつ打ち解けて話ができるようになるのではないかと期待している」