韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の訪米中、「韓国型戦闘機(KFX)事業」をめぐる大統領府(青瓦台)外交・安全保障ラインの対応は幾つもの疑問点を残した。大統領府外交・安保首席室はもちろん、朴大統領もまた、訪米前の時点で既に「米国側に再度頼むが、4件の中心技術の移転は困難だろう」という判断を持っていたという。
にもかかわらず、なぜ国防部(省に相当)の韓民求(ハン・ミング)長官に国防総省(ペンタゴン)でアシュトン・カーター国防長官と「交渉」させ、その席で拒否されるという「禍」を招いたのか。両国の国防トップ会談の前日、既にソウルの国防部には、「移転不可の立場」を記したカーター長官の書信まで届いており、その内容はワシントンにいる韓長官にも伝えられていた。かつて韓長官が米国側に送った「協力」要請の手紙に対する返信だった。そうした事実をいち早く知りながら、韓長官は技術移転を要求し、自ら外交的な恥をさらしたという批判が相次いだ。帰国後も「余震」は続き、大統領府の内部からも「事前調整を誤った」という指摘が出た。このため19日には、一時「大統領が韓長官を米国に連れていったのは、最終交渉失敗の責任を問い、韓長官を交代させるため」という「説」も与党内の一部に出回った。しかし19日の内閣改造で、外交・安全保障ラインは朱鉄基(チュ・チョルギ)外交・安保首席が交代しただけだったため、こうした見方はひとまず外れることになった。
これについて、大統領府の中心的関係者は「韓国国内では、中心技術移転問題をめぐり、何か政府レベルの努力があるべきだという世論が強かった。現実的には、技術移転は難しい状況で、朴大統領が首脳会談で技術移転を要求しづらかったことから、韓長官がもう一度試すようにした」と語った。また、大統領府の別の関係者は「(中心4技術のほか)残る21件の技術も、100%移転が確定してはいない状態なので、その問題も議論する必要があった。両国が(21件の技術移転について)協議体をつくることにしたのは、それなりの成果ではないか」と語った。
韓長官が訪米随行団に加わったこともまた、大統領府の要請によるものだという。韓長官も19日、国会国防委で「ペンタゴンでの行事のため」という趣旨の答弁を行った。韓長官は「かなり前に大統領が、韓米同盟や韓米連合防衛態勢を内外に示そうという観点から(私の出席を)決定した」と語った。ペンタゴン訪問は、今回大統領府が最も気を使った行事の一つだった。米国側は、公式の儀仗(ぎじょう)などで朴大統領をもてなし、大統領府は「韓米同盟の堅固さ」を対外的に示す上で最適の「イベント」と見なした。