【社説】レッテル貼りで無用の対立生む教科書国定化論争

 野党・新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表は18日、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と与党セヌリ党の金武星(キム・ムソン)代表に対し「お二人の先代こそ親日と独裁に責任のある方たちだ」とした上で「そのため後代たちも親日と独裁の歴史を美化し、正当化したがっている」と攻撃した。これに対してセヌリ党は19日「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の岳父(妻の父)はパルチザン(左翼系の反日非正規軍)だったが、その岳父のおかげで(歴史教科書が)2003年に改訂されたと言いたいのか」と反撃した。歴史教科書国定化問題が、今や与野党の元職・現職大統領や党代表の家族にまで飛び火し始めたのだ。

 朴大統領の父である故・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領はかつて韓半島(朝鮮半島)が日本に統治されていた時代、旧満州軍で中尉を務めた経歴があることはすでに広く知られている事実だ。これは誰かが圧力を加えても隠しようがなく、また美化することもできない。また金武星代表の父である故・金竜周(キム・ヨンジュ)元全南紡織会長は、1940年代に日本への飛行機献納運動の先頭に立っていたとの指摘が最近になって出始めるようになった。しかしこのことは教科書に掲載されたことはなく、また掲載すべきものでもないし、歴史論争の材料にすべき問題でもない。盧元大統領の岳父による左翼活動についても、2002年の大統領選挙の際に盧元大統領が自ら「(岳父を攻撃するのは)わたしの妻を捨てろということか」と発言し、いったんは収束していた。これらの問題で歴史を新たに書き換えることはできないし、また教科書問題と関連づけるべきでもない。

 ところが与野党はすでに故人となっている双方の家族を攻撃の材料とし、親日あるいは左翼などと互いに攻撃し始めた。これは歴史教科書とは関係なしに、相手の指導者に対して個人攻撃を行う政治攻勢と言わざるを得ない。そこにはイデオロギー面で偏りのない歴史教科書を作り上げるのに必要な生産的討論はなく、相手に対して連帯責任を追及し、人身攻撃ばかりが行われているのだ。またその言葉遣いも下品で節操がない。セヌリ党はこの日、文代表に対し「悪なる指導者」「低レベルの詐欺」などと非難し、新政治民主連合は金代表に「恥ずべき過去の取り繕い」と反撃している。

 先代に対するレッテル貼りは簡単で、なおかつ効果的な攻撃方法であるのは間違いない。しかし本質から目を背けた稚拙な人身攻撃は、結果的に下品で低劣な言葉のやりとりや無用な対立を生み出すだけだ。同じ18日から始まった国会教育文化委員会などの予算審議においても、やはり教科書問題での対立が影響し、本来行われるべき通常の話し合いが進まなかった。歴史教科書の国定化に関する議論を別の的外れな問題に飛び火させてはならないのだ。

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