映像’15「いのちを、つかむ 〜駆ける救命救急医〜」 2015.10.19


(ナレーション)
その医師はいつも病院を飛び出し患者のもとへと向かう
乗り込んだのはドクターヘリ
今や全国に46機
救急医療は大きく変わりつつある
(小林誠人さん)ドクターヘリ豊岡1から兵庫・豊岡患者情報と救急隊情報お願いしますどうぞ。
ドクターヘリの出動件数は全国一
その救急チームのリーダーだ
小林たちが向かう先には常に命の危機に瀕した重傷患者がいる
ヘリバックボードそのまま滑り込ます。
出勤途中に交通事故を起こした男性
自宅で心筋梗塞を発症したお年寄り
仕事中突然襲った脳卒中
(番匠谷さん)・はいアドレナリン打ってるよこっちで。
オッケー!
ヘリの出動は年間1500件以上
ネットがちょっと高めなので…。
小林たちは他の医療機関にはない独自の方法で患者の救命率を上げている
はいここでいれて。
いれてください。
(番匠谷さん)CT空いた?・CT空きました。
交通事故で重傷患者が搬送されてきた
(番匠谷さん)
一刻の猶予もない緊急手術を開始
う〜ん…出る。
どっから出るんだ?
患者の容体は小林を待ってはくれない
(小林さん)
その執念の手がこぼれ落ちそうな命をつかむ
最近あかん涙もろうて…。
(番匠谷さん)うんそうだな。
ほんとに九死に一生でした。
はい。
(番匠谷さん)はい。
薄らいでいく命にすべてを懸ける医師たちの姿を通して救急医療はどうあるべきかを考える
兵庫県北部
人口8万人余りの地方都市豊岡市
全国トップクラスの救命率を誇る救命救急センターがここにある
そのリーダーがこの人だ
(スタッフ)おはようございます。
おはようございま〜す。
(スタッフ)今日は先生自転車で?はい。
いつもは自転車です。
救命救急医・小林誠人46歳
(スタッフ)秋っぽくなってきましたね。
そうですね。
だいぶ涼しくなりましたね。
スキューバダイビングやってるんです。
小林は白衣を着ない
どんな場所でも動きやすく安全性を追求した専用の服をまとう
足元には年季の入った安全靴
それは屋外が主戦場であることを示している
まだたかだか3000件弱ぐらいしか…。
うぃっす。
現場に出てませんし。
いやもうそろそろ替えないといけないんですけどね。
結構ボロボロですよやっぱり。
公立豊岡病院にある北近畿唯一の救命救急センター
外科や整形外科など専門の知識を持った16人の救急医が24時間体制で治療に当たっている
小林はセンター長として後進を育てながら自らも現場に走る
・ドクターヘリホットラインです。
美方消防ドクターヘリ要請。
ドクターヘリ出動の要請が消防から入った
すぐに病院に待機するパイロットがヘリに走る
小林了解です。
同時に病院内の小林にも出動の連絡が入った
この間僅か14秒
小林がヘリポートに到着したときにはすでに離陸のスタンバイは完了していた
(無線)はい了解。
要請から僅か4分5秒で離陸
救急車では間に合わない重傷患者のもとへと飛ぶ
上空に患者の情報が入ってくる
74歳の男性が胸の痛みを訴えているとしか分からない
(小林さん)
小林は僅かな情報で患者の病態をいくつか推測し治療への準備を進める
このドクターヘリがカバーするのは北近畿一円
15分もあればすべての地域を網羅できる
目指すのは病院から30キロ離れた兵庫県香美町
救急車で運んでいては40分かかる場所だ
(小林さん)
(無線)了解しました気をつけます。
情報によれば救急車はまだ患者のもとに着いていないという
あらかじめ指定された臨時ヘリポートに着陸
15分すれば患者を乗せた救急車が来るのだが小林はそれまで待たない
ウゥーー!
(サイレン)
消防車に乗り込んで患者のもとへと向かう
ここ中?こっち。
うん。
待っていては救えない
小林の信念だ
わあ〜ありがとうございます。
・ありがとうございます。
・助かりました。
・ドクター到着。
・ありがとうございました。
はいお疲れさま。
・ご苦労さまです。
ABCいけとる?
(小林さん)
冷や汗をかきながら胸の痛みを訴える男性
心筋梗塞の症状だ
じゃあこのスプレーだけやったら搬送しましょうか。
お口あ〜んと開けて。
まず薬を使って患者の容体を落ち着かせる
よし行こう。
行こう行こう。
よし行こう。
行こう行こう。
一刻も早く病院での治療を始めるためヘリといかに合流するかは重要な問題だ
・こっち側が今ヘリがある所です。
芝山…。
・芝山市。
芝山駐在所の横のグラウンドが多分いけそうなんです。
そこに移動ってできますか?ネットがちょっと高めなのでということでした。
下は芝生です。
小林自ら近くのグラウンドにヘリを誘導する
今胸の痛みいちばん痛いときを10とするとどれぐらい?今はもう大丈夫です。
まったく何もない?
ヘリポートへ患者を移動させながら問診を続ける小林
ホットローディングでお願いします。
1分1秒をいかに大切に使うか
それを極めるのが救急医の使命である
・スタートよろしいですか?オッケー。
ヘリの中から患者の心電図を救命救急センターに送る
到着と同時に治療を開始できるようにするためだ
ドクターヘリ出動要請から28分
救命救急センターに運ばれた患者はすぐにカテーテル室に運ばれ心筋梗塞の治療を受けることができた
この患者は数日後元気に退院した
スピード時間ですね。
時間軸がいちばん大事ですね。
事故に遭った瞬間倒れた瞬間そこから針が動きはじめてるので。
そこから治療が始まる。
根治的治療が始まるまでの時間というのが予後に直結するので。
小林が勤務する但馬救命救急センターの動きは119番通報から始まる
・豊岡消防119番です。
火事ですか?救急車ですか?・救急車お願いします。
分かりました。
どうされました?・うちのお母さんが朝から起きてこなかった。
目が覚めないんですわ。
はい。
・ベルトコンベアちょっと…子供さんが入っちゃったんですよ。
119番通報を受ける消防職員は通報者の切迫した言葉1つ1つを聞き逃さずドクターヘリが必要かどうかを判断する
ここではそれを見極めるための方法が確立されている
(職員)キーワードを聞けばその時点で要請するという体制になってますので。
これはキーワード方式と呼ばれるものだ
患者の容体に関わるキーワードを47ピックアップし1つでも該当すればすぐにドクターヘリの要請となる
この方式で119番通報からドクターヘリ要請までの時間を一気に短縮
全国平均が13分のところを半分以下の6分とした
小林のスピードへのこだわりはこれだけではない
ドクターヘリを患者の搬送のためだけに使わない
患者はショック状態
放っておけば心肺停止になる
小林は神経を集中させた
公園に着陸してすぐに患者を乗せた救急車が滑り込んできた
開けます。
瞬時に患者の診察をする
うわっもうチアノーゼ結構出てんな。
ショックだな。
はい。
もう湿潤冷汗ありです。
了解。
・大丈夫です?
呼吸はあるもののすでに受け答えできないほど重篤な状態
血圧は80台にまで低下していた
血液の循環が滞り肌が青紫色になるチアノーゼ症状が出はじめていた
急がないと危ない
震えと下痢?よし行くか。
はい上げます。
いちにぃさん!オッケー。
現場で緊急治療することも珍しくない小林だがこのときは見送った
応急処置に時間を費やせば確実に容体は急変する
そう考えた小林は患者を搬送しながら機内で治療を始めた
薬剤を投与し呼吸を安定させるための管を気管に挿入する
狭く揺れるヘリの中で治療を行うのは全国でも小林の救命救急センターだけだ
このあと病院での集中治療を受けた男性は1週間後元気な姿を取り戻した
ちょっと容体がよくなった状態で。
はい。
随分同じように助けられとる人は多いと思いますよ。
日々ギリギリの命と向き合う仕事
40代後半ともなれば第一線を離れる医師も多い
(スタッフ)先生もセンター長になったらもう現場に出なくてもいいんじゃないっすか?現場知らないとなんもできないっしょ。
いや〜やっぱり救急医療は現場がいちばんでしょう。
はい。
まあ最低限の管理職の仕事はしますけどやっぱりもう僕らは別に大学人でもなんでもないし…。
もう現場駆けずり回ってなんぼじゃないっすか?
当直の夜小林はいつも決まった場所で寝る
診察室そばの休憩室だ
ベッドには入らない
安全靴を脱いでしまったらすぐに現場に飛び出せない
小林がこの道を志したきっかけは研修先での救急医の姿
重傷患者を次々治療する様子に憧れた
飛び込んだ救命救急の世界
しかしそこで見たのは「忙しい」と救急車の受け入れを断る医療の現実だった
何度も上司に掛け合った
けれど変えることはできなかった
そんなとき新たな救命救急センター開設の話が舞い込んできた。
「ならば理想のセンターを作ってやる」と飛びついた
そして消防署員に訴えた
うちは絶対に患者を断りません
その姿勢は救命救急センター立ち上げから5年たった今も変わっていない
当直明けのこの日小林は京都府の綾部市消防本部を訪れた
現場の消防や救急隊と直接顔を合わせ互いの理解を深め合うことが大切と考えている
こんな医者は珍しい
消防側からは患者の観察方法やドクターヘリの活用方法について質問が相次いだ
これは若干多いのはありますけどもそれはまったく問題にはなりませんし逆に基地病院から遠い地域ですので救急隊現着後速やかにキャンセルをかけていただきということが非常にありがたいので。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
こうして毎月2回エリア内の消防本部を回っている
小林にとって消防あってこその救急医療なのだ
要するに僕らは呼ばれないとまったく意味をなさない集団なので。
消防が呼んでくれて初めて意味をなすドクターヘリ事業ですから。
基地病院の姿勢をきっちりとしとかないと。
都合のいいときだけドクターヘリ呼んでよなんていっても呼ばないじゃないっすか。
患者を救うためなら組織の違いは関係ない
救命率を上げてきた背景にはこうした地道な活動があった
いつもと同じ朝
小林が患者の回診をちょうど終えたときだった
あそこ置いてきて。
ありがとうございます。
小林了解です。
ドクターヘリ出動の連絡だった
よし。
ドクターヘリ豊岡1から兵庫・豊岡患者情報と救急隊情報お願いしますどうぞ。
30歳
男性が心肺停止で家族が心臓マッサージをしているという
またも1秒を争う患者だ
心臓が停止してまだ時間はたっていない
小林は僅かな望みに懸ける
ルートとれた?ありがとうございます!アドレナリンとシンビット両方いく。
・呼吸器ありですね。
オッケーね。
固定しといてや。
小林は部下に用意させていた強心剤をすぐに投与する
(小林さん)
患者の心臓は小さく震えている
まだ間に合うはずだ
8ccか。
8ccオッケー。
いった。
・はいはい。
バンドバンド。
バンドこっちちょうだい。
これ腕の下通して。
冷静に治療を続ける小林
上げるよ。
123。
VFやな。
除細動掛けるか。
オッケー了解です。
何ジュール?150ですか?200。
除細動掛けます!じゃあいきます。
受理します。
ピピピーピッピッピッピッ
(除細動器の音)ピピピピッ…いきますよ。
オッケー。
アドレナリンいきますよ。
離陸後も機内でギリギリの治療が続く
はい。
狭い機内で強心剤を投与し続けながら肺に空気を送り込むための管を装着する
連絡を受けた救命救急センターでは受け入れ準備が急ピッチで進んでいた
現場を離陸してから8分で患者が到着した
PEA。
今PEAよ。
いまだ心臓はかすかに震えている状態だった
血流を促して脳へのダメージを抑えるためすぐに人工心肺が装着される
その人工心肺が回りはじめてすぐのことだった
うおっ!目が覚めてる。
分かる?分かる?分かるんかな?
男性が意識を取り戻した
治療は順調と思われた
一瞬安堵した小林たちだったがCTの画像を見たときのことだった
(番匠谷さん)やばい。
(番匠谷さん)いかん。
なんか起きとるな。
なんで?どっから?
(番匠谷さん)センター長。
(番匠谷さん)腹水あり。
腹部に影が映し出されていた
なぜこんな所が…
肝臓の周囲で出血を起こしていた
これではいくら人工心肺で血流を保っても無駄だ
出血を止めなければ助からない
病院到着から20分
小林が緊急手術に踏み切った
(番匠谷さん)はい腹開きましたよ。
腹部にメスをいれてみると大量に出血していた
(小林さん)
あふれる血で出血している箇所が見えない
小林が指先で出血箇所を探る
(小林さん)
すぐに出血箇所を縫合していく
(小林さん)
何とか応急の止血は成功した
止まってる止まってる。
しかし手術後も血圧が戻らない
小林には気がかりなことがあった
出血量に比べて手術のとき見た傷が小さすぎる
まだ他から出血している可能性が高い
このままではもたないかもしれない
(小林さん)
やはり出血は続いていた
すでに4リットルの出血
このままでは輸血も間に合わない
しかしいまだ出血箇所は特定できていない
小林の指先だけが頼りだった
湧いて出てきますよね。
(小林さん)
それは肝臓の裏にある静脈だった
正面からは手が届かない
ここ裂けてますよね?抜けてますよね?でこの奥から出てますよね?
(番匠谷さん)そうですね。
(小林さん)ドーム直下まで先端を。
小林はこれまで数限りなく救命に挑んできた
消えかかる命を何度もギリギリのところでつかんできた
今回もなんとしてでも…
出る。
・はい分かりました。
これはどっから出るんだ?
出血は続いた
周りのスタッフから弱気の声が漏れた
・それだったらもうどうせあきらめるんだったら…。
(小林さん)
(小林さん)
小林は腹部だけでなく胸も開け出血箇所を確認しながら傷口を縫っていった
何とか出血は食い止めることができた
だがその夜患者は亡くなった
自分に何が足りなかったのか
どうすれば救えたのか
助けられなかった命と向き合う度に小林は集中治療室を訪れる
病やケガと闘い続けている患者がいる
(小林さん)
自分を待っている患者がいるんだ
心が折れてしまってはこの現場にはもう立てない
医師としての小林に惹かれこの病院にやってきた医師がいる
(スタッフ)おはようございます。
雨やのに大変ですね。
(スタッフ)このナンバーってなんか意味あるんですか?「いい救急」ですあえて。
車のナンバーは「11−99」
結婚記念日も99。
9月9日。
小林のもとで救急医療の経験を積んできた
オッケーです。
これでいいですか?ふふふっ。
(番匠谷さん)ごめんうちら行く。
(一同)はい。
(番匠谷さん)ヤスダ残るか?私行く。
1人で行く。
とっさの判断力はこの病院でも屈指だという
(番匠谷さん)分かりますか?はい豊岡病院の医師です。
(番匠谷さん)ドクターカーホットラインです。
はい。
はいはい。
ごめんちょっとだけ行ってくる。
要請が入った。
・はいよ。
この日集中治療室の患者を診察しようとしていた番匠谷に出動要請の連絡が入った
番匠谷が乗り込むのはドクターヘリではなく緊急サイレンを鳴らして患者のもとへ向かうドクターカーである
ピーポーピーポー…
(番匠谷さん)豊岡1から豊岡消防。
開局ええ〜…。
車同士の交通事故で1台は横転しているという
(番匠谷さん)緊急車両通します。
左へ寄って停車してください。
ドクターカーがカバーするのは豊岡市とその周辺自治体だ
天候や着陸場所の問題でヘリが現場に行けないときに出動する
(番匠谷さん)
出動から6分現場到着
ケガ人は車から救出されたばかりだった
(隊員)
(隊員)バイタルは橈骨も充実してるんです。
(隊員)この方。
はいはい。
聞けば男性が運転するシルバーの車が対向車線にはみ出し女性が運転する茶色の軽自動車と正面衝突したという
それぞれの負傷者を診て回る
(番匠谷さん)こんにちは。
横転されましたね。
横転した車を運転していた女性は切り傷はあるもののその他の痛みはないという
(番匠谷さん)じゃあ向こう先処置してます。
瞬時に2人の患者の容体を確認しより重傷が疑われるケガ人を診察する
番匠谷は最初に診た男性のほうを重いと見ていた
男性の右腹部にシートベルト痕
ひどい衝撃を受けた証拠だ
(番匠谷さん)ちょっと超音波の検査しますよ。
向こうも出してもらうんでこっちも行きましょうかね。
病院に向かう救急車の車内で治療をする
(隊員)左右の…そうですね。
右の鎖骨左の鎖骨の…。
シートベルト痕がある場合強い衝撃でおなかの中で出血を起こしている場合がある
その後ケガ人2人は病院で検査を受けた
心配された腹部の出血はなかった
(番匠谷さん)机の上が汚いから今。
ひと仕事終え遅い昼食だ
なんか一人でさみしく食べてて嫌やな。
メニューは決まっておにぎり2つと野菜ジュース
もっとも食べられるだけましかもしれない
(スタッフ)いつもこんな感じ?
(番匠谷さん)うんこれ。
(スタッフ)いつもこれありますよね。
(番匠谷さん)当直のときはこれを持っとかないとご飯食べれないときも水分さえあれば生きていけるんでこれは必需品です。
ふふふっ。
食事など意に介さない。
それが救急医の宿命だろうか
(スタッフ)コンビニ飯ですか?お昼は。
100%です。
少なくとも地位も名誉も何も別に求めてないですしほんとに自分とその診療してる相手のことぐらいしかほんとに考えてないので。
番匠谷が医師を志したのは高校生の頃
医療を題材にした小説を読んで憧れた
人の喜びに立ち会う医師になりたい
産婦人科医を目指した
しかしあるとき厳しい現実を突きつけられた
(番匠谷さん)当直をしてたときに産科病棟のほうで急変あったから来てっていって行ったら患者さん真っ青で周りが血の海で。
そういうときにどうしていいか習ったこともなかったし見たこともなくって上級医がなんかやってはるのを見ることしかできなくてっていうような状況やったので。
最終的にその赤ちゃん一回も自分で抱けないまま亡くなっていかれたんです。
医者として何もできない
無力な自分を痛感した
ひと晩中泣き腫らした
そういう方を救いたくて今もやってるので絶対に忘れるつもりもないし一緒にやっていきたいなと思ってます。
こういう思い出というかこういう記憶と一緒に今後もずっとやっていきたいなと思ってます。
人を救えなければ医師の意味はない
番匠谷は救命の世界に飛び込んだ
大阪の研修先で出会ったのが小林だった
一瞬でこの人から学びたいそう思った
ピーポーピーポー…
当直の夜番匠谷が向かったのはくも膜下出血の疑いがあるという患者
消防から指定された場所で患者を乗せた救急車とドッキングする
(番匠谷さん)はいありがとうございます。
くも膜下出血の場合再破裂の危険がある
刺激を与えないよう車内は暗くされていた
(番匠谷さん)そしたらちょっとあまりにも暗すぎるのでマスクを患者さんの目のほうに当てていただいて…。
(隊員)ちょっと目にマスク掛けますよ。
目にマスクを掛け光の刺激から患者を守る
小林から学んだ応急方法だ
・先生出たらいいですか?豊岡病院に向かってください。
痛みますか?分かりました。
そしたらねちょっと痛み止めのお薬とかいろいろしていきますよ。
患者の血圧は160台にまで上がっていた
どこかで出血しているかもしれない
番匠谷はすぐに止血剤や血圧を下げる薬を投与した
くも膜下出血なら今再破裂する危険性が高い
血圧が下がりはじめた
病院到着後すぐに男性は検査を受けた
すると…
(番匠谷さん)そこ
白く星形のシミは出血の証し
やはりくも膜下出血だった
その夜緊急手術を受けた男性は翌日には会話できるようになっていた
(番匠谷さん)ちょっと口の管抜けたらしゃべれますからね。
私昨日救急車の中にお迎えに行った先生。
「眠なりますよ」って言ってたでしょ?ふふっよう覚えてはる。
救急医をやっていてよかったと思える瞬間
ほんの僅かの差で救えた命とそうでなかった命
小林たちはその一瞬の可能性にすべてを懸けている
この日もそんな夜が始まった
重傷外傷2人来て1人が体幹部ショックで1人が重傷頭部外傷で…。
うんもうちょっとかかると思うので。
重傷患者の一報が入ってきた
(番匠谷さん)はい。
すぐに運転中に対向車に正面衝突されひん死の重傷を負った2人の患者がドクターカーで運ばれてきた
(番匠谷さん)順番は頭部外傷が先になってます。
この人は大腿骨骨折骨盤骨折疑いの人。
運転手の男性は両手右大腿骨を骨折しているものの命の危険はなかった
(番匠谷さん)手足の骨がボキボキに折れてますわ。
CT空いた?・CT空きました。
問題は助手席に乗っていた男性だった
腹部のCT画面には…
白いまだら模様は内臓が損傷し大量に出血していることを示していた
更に事故の衝撃でくも膜下出血も起こしている
手術室に移動する猶予すらない
病院到着から4分
小林はその場での緊急手術を決断した
・お願いします。
お願いします。
やはり内部の出血はひどかった
・そっちから回れないんですね。
回れない。
患者には手術歴があり内臓同士がひどく癒着していた
丁寧にその癒着をがしながら小林は出血箇所を修復していく
新しいのいれます。
・はい1枚目。
1枚オッケー。
・1枚オッケー。
ここまでは順調だった
(番匠谷さん)センター長耳だけ。
あっちも開けます。
腸間膜損傷。
・はい了解。
骨折が目立ったもう一人の男性の容体が急変した
血圧は一気に60台にまで下がりはじめた
はいじゃあお願いします。
(番匠谷さん)お願いします。
小林が手術する隣で番匠谷はこの男性の緊急手術を始めた
腸が損傷していた
(番匠谷さん)・先生写真撮れたら撮ったほうがいいですか?
(番匠谷さん)そうね。
ちょっとお待ちを。
先止血します。
・ここも切れてるな。
(番匠谷さん)そうですね。
断裂。
1つずつ確認しながら止血していく
そして…
(番匠谷さん)止血できたと思われます。
緊急の止血手術は成功した
小林が執刀した助手席の男性の緊急手術も終了
安堵したやさきのことだった
深夜容体が急変した
また腹部から出血しはじめたのだ
問題はその場所だった
まあ映してみますか。
・そうですね。
新たな出血場所がすい臓に見つかった
しかしこれ以上患者の体は開腹手術に耐えられない
小林は足の付け根の血管から管を通し出血している箇所に栓をするカテーテル術に踏み切った
番匠谷の指先が出血する血管までカテーテルを送り込んでいく
(小林さん)
それは細く枝分かれした血管の先にあった
確実に出血箇所までカテーテルを伸ばさなければ出血を止めることはできない
手術は番匠谷の指先に懸かっていた
(スタッフ)先生どうやったんですか?止まってる止まってる。
小林と番匠谷の連携で無事止血させることに成功した
それから1か月後
カテーテルの再手術で助かったあの男性は車椅子に乗るまで回復していた
こんにちは。
こんにちは。
元気になりましたね。
こんにちは。
リハビリは必要だが大きな山は越した
まあとりあえずのところは1ステップ2ステップ先に進んだという感じなので。
あとはがんばっていただきます。
失礼しま〜す。
・はい。
そしてもう一人
番匠谷が緊急手術をした男性は会話ができるまで回復していた
(番匠谷さん)ある意味打ち所がよかったんかもしれない。
頭のほうとかはね全然しっかりされてたから。
うぅ…。
ティッシュいりますか?・いやいらない。
大丈夫?奥さん出番ですよ。
はははっ。
最近あかん涙もろうて…。
(番匠谷さん)うんそうだな。
ほんとに九死に一生でした。
はい。
(番匠谷さん)はい。
僕らがもうやめよかって言った時点でその人のすべては終わりです。
救急医救急のスタッフたちのいわゆる実力提供してるものがこの人の人生をすべて決めちゃうわけですよ。
もちろん患者そのものの重傷度であるとかケガをした病気になった時点で助からないっていう方もたくさんいらっしゃるんですけど。
しかたなくそう判断をするまで常にフルスイングしとかないと…。
だめなんですよ。
患者はすべて受け入れる
待っていては救えない命がある
小林たちの取り組みは地方から日本の医療を変えようとしている

(ナレーション)
この物語の主人公・小雪は実は妖怪・雪女
2015/10/19(月) 00:50〜01:50
MBS毎日放送
映像’15「いのちを、つかむ 〜駆ける救命救急医〜」[字]

ドクターヘリの出動回数全国一の兵庫県豊岡市・但馬救命救急センター。重症患者の救命率を全国トップクラスに押し上げた医師たちに1か月密着。救急医療のあり方を考える

詳細情報
番組内容
兵庫県豊岡市にある公立豊岡病院の但馬救命救急センター。ドクターヘリとドクターカーを駆使し、24時間態勢で兵庫県北部を中心に鳥取、京都に及ぶ半径80キロをカバーしている。ドクターヘリの出動は年間1400件を超え、全国一の出動件数を誇る。「患者を待つのではなく、患者のもとに駆けつける医療」を目標に、救急搬送に頼らず、医師たちが患者が倒れている現場に1秒でも早く駆けつけことが何よりも重要と考えている。
番組内容2
但馬救命救急センターが開設されたのは2010年4月。「救命救急の理想を求めて」招かれたのがセンター長の小林誠人医師(46)。かつては西日本の救命救急のトップ・千里救命救急センターに勤務していたが、運営をめぐって上司と衝突し、辞めた。「出過ぎる杭は打たれない」がモットーで、いのちを救うことに医師としてのすべてを注ぐという考えで組織を率いている。その姿勢が重症患者の救命率を全国トップクラスに押し上げた
番組内容3
小林を支えるスタッフのひとりが、医長の番匠谷有紀医師(35)。小林同様、千里救命救急センターに勤務していたが、救命医・小林に「医師のあるべき姿」を見て豊岡にやってきた。番組ではこの2人の医師を中心に、事故現場に駆けつける医師たちに同行。救命という一刻を争う「いのち」の現場に向き合い、目の前の患者を救うことにすべてを傾ける医師たちの姿を通して「医療とはなにか」「救急医療とはどうあるべきか」を考える。
出演者
【ナレーター】
竹房敦司
 
おことわり
番組の内容と放送時間は、変更になる場合があります。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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