巣穴からひょっこり顔を出したのはオーストラリアに住む珍獣ウォンバットです。
かわいいですね〜。
ずんぐり丸っこくてまるでぬいぐるみみたい。
愛くるしいウォンバット。
でも実は意外な一面があるんです。
えっ敵の頭を砕く!?一体どんな技を繰り出すんでしょうか。
その秘密は住みかである巣穴にあるといいます。
そこで今回特殊なロボットを使って地下の巣穴を徹底調査。
複雑に枝分かれしてどこまでも続く巣穴。
まるで地下迷宮に迷い込んだよう。
そんな巣穴の中でおしりを使った奇妙な行動を目撃。
実はおしりにすさまじいパワーが秘められているんです。
おしりを武器に生きる。
珍獣ウォンバットの驚きの暮らしに迫ります。
(テーマ音楽)今日の舞台はオーストラリアの南に浮かぶタスマニア島。
北海道を一回り小さくしたほどの島には豊かな自然が広がっています。
撮影に協力してくれるのはクレイグ・ウイリアムズさん。
この島で20年にわたってウォンバットを観察し続けています。
クレイグさんの案内でウォンバットの姿を探します。
早速巣穴を発見。
ウォンバットは昼間は穴の中で寝ているそうです。
日が傾きかけた午後4時過ぎ。
あっ顔を出しましたよ。
ウォンバットです。
ウォンバットは主に夕方から夜にかけて穴から出て活動します。
でもまだ目覚めたばかりでぼ〜っとしている様子。
ようやく歩きだしました。
大きさは頭からおしりまで80センチ。
体重は20キロほどです。
草を食べ始めましたよ。
カメラが近づいてもおかまいなし。
夢中で食べ続けます。
全然人を怖がらないんですね。
今度は何やら地面を掘り返しています。
ツメにご注目。
長くて鋭いので土を掘るのに好都合なんです。
土の中から掘り出したのは植物の根っこです。
草だけでなく根っこまで食べるんですね。
あれ?おしりから小さな顔が出ています。
これは赤ちゃん。
ウォンバットはカンガルーと同じくおなかに袋を持つ有袋類。
こうして赤ちゃんを袋の中で育てるんです。
ウォンバットのおなかの袋は後ろ向きに開いています。
おかげでお母さんが土を掘っても袋が後ろ向きなので土が入ってしまう心配はありません。
うまくできていますね。
でも時には子どもの頭にお母さんの…ウンチがポトリ。
こんなハプニングもあるんですね。
ウォンバットは妊娠して1か月で出産。
赤ちゃんは体長わずか1.5センチしかありませんが自分の力で袋の中に入っていきます。
袋の中の乳首に吸い付く生後間もない赤ちゃん。
生まれて半年間は袋から外に出ることはありません。
お母さんのおっぱいだけで成長していきます。
こちらのお母さんおなかの袋が大きく膨らんで重たそうですね。
この子どもは生後7か月ほど。
頭だけ出して草を食べています。
こうして徐々に草の味を覚えながら外の世界に慣れていくんです。
こちらは1歳ほどの子ども。
生後8か月を過ぎると袋の中での生活はもうおしまいです。
でも子どもにとって袋の外はまだまだ不安だらけ。
お母さんにぴったりくっついて離れようとしません。
お母さんが歩き始めると「あ〜ん待ってよ〜」。
慌ててあとを追いかけます。
とにかく甘えん坊の子ども。
お母さんにかまってほしくてしかたがないようです。
「ねえねえお母さん遊ぼうよ遊ぼうってば」。
「もう!今はお食事中だからだめ」。
子どものしつこいおねだりに「こらっ!もういいかげんにしなさい!」。
怒られちゃいました。
でも子どもはどこ吹く風。
お母さんのそばから離れるつもりはないようです。
お母さんが体をかきかき。
すると子どもも。
ウォンバットの子育ては母親が一手に引き受け2年ほどかけて1匹の子どもを育て上げます。
おなかがいっぱいになったのか親子は巣穴へ戻っていきました。
ウォンバットは食事の時以外穴の中だけで過ごします。
でも中の様子はこれまでほとんど観察されたことがありません。
一体中はどうなっているのか。
クレイグさんにアドバイスを受けながらスタッフがのぞいてみると…。
奥深〜く伸びるトンネルは直径およそ40センチ。
人が入ることは到底できません。
そこで日本から助っと参上。
ロボット工学の専門家山田浩也博士です。
手にしているのはヘビ型ロボット名付けて「スネイクくん」。
もともとは災害救助を目的に開発されたスネイクくん。
どんな地形でも狭い場所でもヘビのようにスルスルと進んでいくことができます。
スネイクくんに小型カメラを載せてウォンバットの巣穴に潜入です。
まっすぐに奥へと伸びる巣穴。
入り口から進むこと4メートル。
トンネルが二手に分かれました。
右へ進んでみましょう。
すると今度はグネグネと曲がりくねった道が続いています。
そしてまたまた分かれ道に出ました。
ここも右に進んでみましょう。
入り口からおよそ10メートル。
あらっ外が見えています。
巣穴の出入り口は1つじゃないんですね。
いったんスネイクくんを後ろに下げ今度は先ほどの分かれ道を左に進みます。
するとトンネルが急に広くなり小さな部屋が現れました。
中には大量の枯れ草が敷き詰められています。
ここはウォンバットの寝室。
あっ!顔を出しています。
昼間はこうして枯れ草のベッドで寝ているんですね。
ウォンバットさんお休み中のところ失礼しました。
調査の結果この巣穴は出入り口が3つ。
寝室は2部屋ありトンネルの長さは全体で30メートルほどもあることが分かりました。
ウォンバットがこんなに長い巣穴を作るのには理由があります。
季節は冬。
この日の気温はわずか1度しかありません。
一方穴の奥は…13度。
地下深くに掘られた巣穴の中は外の気温の影響を受けにくく1年を通して温度がほぼ一定なんです。
ある日の夕方。
ウォンバットの親子が草むらで食事をしている時の事です。
遠くの茂みから姿を現したのは天敵のタスマニアデビルです。
食事に夢中の親子。
タスマニアデビルが近づいてきました。
ようやく気が付いたようです。
慌てて近くの穴に逃げ込む子ども。
あら?入り口で立ち止まってしまいました。
こちらはお母さん。
あれ?お母さんも頭隠して尻隠さず。
入り口でおしりを出したまま奥に逃げ込もうとしません。
ちょちょっと待った!早く逃げないと敵におしりをかじられちゃいますぞ。
まあまあ慌てないでヒゲじい。
このおしりだけ巣穴から出すポーズこそがウォンバットの防御姿勢なんですよ。
はあ?実はねおしりにある秘密が隠されているんです。
ほうおしりに秘密ってどんな?その秘密を教えてくれるのが動物園で飼われているこちらのウォンバット「ウォルタくん」といいます。
アッハハかわいい!ウォルタくんよろしくね。
ちょっと失礼してウォルタくんのおしりをたたいてみると…。
ヒゲじい聞こえます?
(おしりをたたく音)うん?何だかコツコツと硬そうな音がしますな。
硬いのはおしりのこの部分。
皮膚の厚さがなんと1センチ以上もあってとっても頑丈なんですよ。
そうなんだ。
こちらは実際にタスマニアデビルに襲われたウォンバットのおしりです。
鋭い牙でかじられても表面の毛が抜けただけで大けがは負っていません。
ふ〜むこりゃ確かに硬そうですなぁ。
でしょ。
しかもウォンバットの巣穴はとても狭いのでこうしておしりでフタをしてしまえば敵も手出しができないんですよ。
なるほど。
守りの要は「おしりでフタ」というわけか。
そうなんです。
さらにさらに!この硬いおしりが活躍するのは身を守る時だけじゃないんですよ。
え〜武器?おしりが武器になるって一体どういうことなんですかね。
それは第2章で詳しくお伝えします。
おっと〜おあずけですか。
おしりだけに早くシリた〜い!今日の舞台オーストラリアのタスマニア島は世界的にも珍しい動物たちが数多く暮らす野生動物の宝庫です。
ところがその一方で動物が車にひかれる事故があとを絶ちません。
親が死んでしまうと残された子どもは1匹では生きてゆけません。
そんな子どもを自宅で保護し育てるのが「ケアラー」と呼ばれるボランティアです。
ウォンバット専門のケアラー資格を持つノーマ・ベイカーさん。
今は4匹を育てています。
本来ならまだお母さんのおなかの袋に入っているはずの幼い子どもたち。
ノーマさんはお手製の暖かい袋に包んで母親代わりを務めます。
これまでノーマさんが野生復帰させたウォンバットは200匹以上にのぼります。
こうしたケアラーたちによる保護活動は30年にわたって地道に続けられています。
一方かつてない深刻な事態が最近タスマニア北部で起きています。
それは人が持ち込んだペットに寄生していたダニによる皮膚病。
毛が抜け落ち皮膚がただれています。
病気が進むと死に至ることもあります。
この病気皮肉なことにウォンバットにとって快適なはずの巣穴での暮らしが感染を拡大させています。
ウォンバットはほかの仲間が使わなくなった巣穴をリサイクルして自分のものにする習性があります。
そのため巣穴を介して病気がどんどん広がってしまうんです。
そこで現在タスマニア大学の研究グループが解決策を模索しています。
しかし治療を行うために全てのウォンバットを捕獲することは極めて困難です。
そこで思いついた作戦がこちら。
まずは巣穴の入り口に扉を設置。
そしてダニを退治する薬を仕掛けます。
ウォンバットが扉をくぐれば薬が背中に注がれる仕組みです。
さあうまくいくんでしょうか。
背中に薬がつけば全身に渡って効果が1週間持続します。
やった!見事作戦成功。
現在は200個の巣穴に扉を設置。
今後の成果に期待がかかっています。
人の営みがもたらした悲劇。
解決に向けた粘り強い努力が続いています。
一風変わった方法で身を守るウォンバット。
危険が迫ると巣穴へダッシュ。
そしておしりでフタ。
硬〜いおしりを生かした護身術です。
しかも防御だけでなく攻撃力もすごいといいます。
ええっ!おしりで頭を砕く?一体どんな技を繰り出すんでしょうか。
そこで取材班はあちこちの巣穴にカメラを設置。
さらにテントに隠れたカメラマンが決定的瞬間を狙います。
待つこと3日。
夜8時ごろのことです。
何者かがウォンバットの休んでいる巣穴に近づいてきました。
オオフクロネコです。
体長は60センチほどで小柄ですがれっきとした肉食獣です。
動きが素早く性格はどう猛。
子どものウォンバットを襲うこともある侮れない敵です。
巣穴の前をウロウロ。
そしてついに忍び込んでいきました。
おや?逃げ出しました!別のカメラで見てみます。
オオフクロネコがウォンバットの巣穴の中へと入っていったその直後。
ドンという音が響きました。
この音は一体何でしょうか?穴の中を見てみるとウォンバットがおしりでフタをしています。
カメラが近づいたその時。
カメラに向かっておしりを突き上げてきます。
そうこれこそがウォンバットのとっておきの技。
名付けて「尻ドン」です。
ちょっと待った!あれヒゲじいどうしたんですか。
「壁ドン」ならぬ「尻ドン」ですか?そうです。
名前はともかくこれで本当に敵をやっつけられるんですかね?大したことなさそうに見えるんですけど。
そう来ると思って尻ドンの威力を確かめるため実験してみました。
使うのはこちらの測定器です。
この測定器これまでもワニやトラなどいろんな動物のかむ力を測る実験で度々活躍してきました。
ヒゲじい覚えてますか?はいはいもちろんです。
実験に協力してくれるのは先ほども登場したウォルタくんです。
う〜んハハッどれどれ?こりゃ楽しみですな。
さあウォルタくん尻ドンよろしくね。
え〜…うん?あれ?ウォルタくん何もしませんぞ。
いや実はですねヒゲじい。
何度も測定に挑戦したんですが人に育てられたウォルタくんはとっても人懐っこくて尻ドンしてくれませんでした。
え〜ハハハハあちゃちゃちゃちゃ〜ですな。
でもその代わりウォンバットのすさまじいパワーを示す証拠がちゃんと見つかったんですよ。
それがこちら。
うん?これは何ですか?取材中ウォンバットの巣穴の中に死んでいるオオフクロネコを見つけたんです。
えっえ〜!ウォンバットの作戦はこうです。
巣穴に侵入してきた敵に対しウォンバットはまずはおしりでフタをします。
あ〜はいはいはい。
なかなか敵が出ていかないと今度はわざと体を低くして敵を誘い込むんです。
ほう。
そして敵が襲いかかってきた瞬間おしりを突き上げ尻ドン。
巣穴の天井と硬いおしりで何度も挟み込み相手の頭を砕いてしまうというわけです。
ほう尻ドンすさまじいですな。
おお〜。
ヒゲじい納得して頂けましたか?はい。
子どもを守るためお母さんは必死になっておしりで反撃したというわけですな。
おケツで敵と対ケツそして危険を解ケツなんちゃってね。
すごい!激しい雪が降りしきるある日のこと。
寒々とした草原に親子の姿を見つけました。
ひたすら草を食べ続けています。
背中に雪が積もってもへっちゃらな様子。
ウォンバットは長い毛に全身覆われているので寒さには強いんです。
翌朝。
すっきりと晴れ渡りました。
あっという間に雪が解けていきます。
ここで問題発生!巣穴の入り口に雪解け水がたまっています。
中の親子は大丈夫でしょうか。
あっ子どもが顔を出しましたよ。
無事だったようです。
実はウォンバットの巣穴には水が穴の奥まで入り込まないような仕組みがちゃんとあるんです。
ポイントはトンネルの傾斜。
下ったり上ったりしてところどころにくぼみが出来ています。
巣穴に水が入ってきてもくぼみにたまるだけで奥まで流れ込む心配はないんです。
ある晩。
草むらにいるお母さん。
枯れた草をおなかの下にかき集めています。
様子を見に来た子ども。
お母さんの行動に興味津々です。
草を丸めながら後ろ向きになって運ぶお母さん。
巣穴の中へと引き込んでいきました。
トンネルの奥。
親子の姿が見えます。
その下にお母さんが持ち込んだ草が敷かれています。
お母さんは巣穴を快適に保つためベッドを作り直していたんです。
こうして子どもは心地よい巣穴とお母さんに守られながらすくすくと育っていきます。
オーストラリアタスマニア島に暮らすウォンバット。
巣穴とおしりを巧みに使って身を守り時には敵に反撃。
硬いおしりに命を託す珍獣です。
(美和)ここが群馬…。
2015/10/18(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「おしりに技あり!?珍獣ウォンバット」[字]
オーストラリアのかわいい珍獣ウォンバットの意外な一面をご紹介。天敵に襲われると、なんと、「おしり」で猛反撃。相手の頭を砕いてしまうという。真相を徹底解明する!
詳細情報
番組内容
オーストラリアに暮らす珍獣ウォンバット。ずんぐりと丸っこい姿は、まるでぬいぐるみだ。しかし、かわいい外見とは裏腹に、恐るべき攻撃力を持っているという。なんと、敵に襲われると、おしりで相手の頭を砕いてしまうのだ。いったいどんなワザを繰り出すのか?取材班は、ウォンバットの暮らしぶりを徹底調査。地中に掘られた巣穴に、特殊なヘビ型ロボットで潜入!そして、巣穴の奥でカメラは衝撃の瞬間をとらえた。歌:平原綾香
出演者
【語り】和久田麻由子,龍田直樹,豊嶋真千子,塩屋浩三,高木早苗
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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