世界遺産中尊寺金色堂。
金粉と銀粉をまいた…120もの工程を重ねた…こうした日本の伝統に欠かせないのが漆。
それは5,000年以上前縄文時代に遡る。
しかし日本古来の漆が今危機にひんしている。
使われる漆の9割を中国産が占める。
このままでは日本の漆が途絶えてしまう。
国は今年文化財修復には主に日本産を使うと決めた。
北東北の森。
日本の漆を守る職人の多くが暮らす。
木に傷をつけて漆を採る…1本の木から採れるのはコップ1杯。
血の一滴と呼ばれる。
職人の数はおよそ20人。
全盛期の以下だ。
漆を採る道具を作る…漆掻きに欠かせない技。
たった一人で支えている。
岩手と青森にまたがる森で漆と生きる2人の職人を見つめた。
岩手県二戸市浄法寺町。
日本の漆の7割を生産する漆の里。
6月。
漆の花が咲くと職人は山へ入る。
15歳から漆を掻いてきた。
傷口を塞ごうと樹液を出す。
いわば血の一滴。
1本の木から採れる量はコップ1杯。
傷をつけると数日間木を休ませる。
木の堅さや皮の厚さを見て一本一本傷のつけ方を変えていく。
傷が深いと樹液は出なくなる。
どれだけ漆を出すかは木が決める。
豊かな自然に感謝して恵みを頂く。
3つの山を回り500本近い木と向き合う。
時代を経ても変わらない営みだ。
昭和10年代の浄法寺。
数百人を超す職人でにぎわった。
しかし安い外国産に押され日本産は売れなくなった。
職人は次々と森を離れた。
それでも大森さんはここにとどまった。
大森さんの山に大事な人物が訪ねてきた。
いやいやどうもご苦労さんです。
漆掻きに欠かせない漆かんなを作る鍛冶職人。
新しく作ったかんなを試してもらう。
傷のつけ方は職人によって違う。
中畑さんは一人一人に合わせたかんなを作る。
中畑さんは浄法寺の隣青森県田子町に暮らす。
(鉄をたたく音)40年間かんなを作り漆掻きを支えてきた。
妻の和子さんと鍛錬を繰り返す。
漆掻きが始まる前全国の職人の道具を作る。
二股に分かれた…全長は15センチ。
曲がった刃で木に傷をつける。
中畑さんの父長次郎さん。
近くに住む職人のためにかんなを作り始めた。
昭和40年代全国で漆かんなを作る職人は中畑さん親子だけとなった。
長次郎さんが亡くなってからは中畑さんが一人で漆掻きを支えてきた。
かんなは形のない1本の鉄から作る。
1,000度まで熱した鉄をひたすらたたく。
延びた鉄をはさみで切り刃を磨き上げていく。
木に傷をつける刃の部分。
ひびが入らないよう慎重に曲げる。
ミリ単位で調整。
肌で刃のかかり具合を確かめる。
1日3本。
渾身のかんなが生まれる。
日本の伝統を絶やしてはならない。
世界遺産日光東照宮が動いた。
本殿や陽明門など全ての建造物に漆が使われている。
現在平成の大修理の最中。
塗り替える漆はつい最近まで中国産に頼っていた。
しかし7年前全て浄法寺の漆に切り替えたのだ。
高くついても日本の漆を守る事が大切だと考えた。
今年2月国も動いた。
文化財修復に使う漆を3年で全て日本産へ切り替える。
国の動きを受け浄法寺では異例の事態が起きていた。
例年は10月に行われる出荷が2か月も前倒しとなった。
不純物を取り除き漆の純度を上げていく。
僅かな職人が支える浄法寺の漆。
年を取り採る量は半分以下に減った。
出荷量は急には増やせない。
日本唯一の中畑さんの技。
しかし後継者はいない。
2人いた弟子は中畑さんのもとを去った。
年齢を重ねた今体力の衰えも隠せない。
7年前骨髄性白血病と緑内障の診断を受けた。
半日しか作業できない日も多い。
自分の技術を伝えたい。
中畑さんは自分の技を形に残そうと決めた。
作り上げたのはかんなの製作過程を細かく分けた19の型だった。
漆掻きは終わりに近づく。
大森さんが山に通うのもあと少し。
一本の木につけた傷はおよそ200。
たくさんの漆を出して大森さんに応えた。
20年以上かけて成長した木は4か月で漆を出し切ると切り倒される。
漆の森で大森さんが続けてきた事。
41年前父が始めた漆の苗畑。
自分が掻いた木の種をまいてきた。
漆は人が手をかけないとうまく育たない。
漆を出す木に育つのは僅か1割。
大切に未来へつなぐ。
はるか縄文の昔から続いてきた漆の森。
失われつつある伝統を守る。
静かな営みを絶やしてはならない。
2015/10/18(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「漆の森に生きる〜5千年の伝統を支える職人たち〜」[字]
国産漆の7割がとれる東北の森では漆かき職人と漆をかく道具を作る鍛冶職人が伝統を守る。国が利用を促し需要が高まった今年、作業への影響は?4か月の密着ドキュメント。
詳細情報
番組内容
5000年以上前、縄文時代から使われている漆。日本の漆の7割がとれる東北の森で職人たちが脈々と伝統を守り続けています。木に傷をつけ、しみ出る漆を集める漆かき職人。漆をかくために特殊な道具を作る鍛冶職人。その職人たちを巡る環境が今年、大きく変わりました。国が国産漆の積極利用を打ち出したことで需要が一気に高まったのです。東北の森で自然と向き合いながらの作業への影響は?4か月の密着ドキュメントです。
出演者
【語り】田中泯
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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