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携帯値下げ、首相の仕事? 歓迎の一方「安保隠し」の指摘も

 安倍晋三首相の指示で、スマートフォンなど携帯電話の料金引き下げ策を話し合う総務省の有識者会議が始動した。「家計負担の軽減」という、誰もが反対しづらい旗印を掲げる。素朴な歓迎の声が上がる一方で、戸惑いと批判も強い。「それって、首相が首を突っ込むことなの?」

 「給料はあまり上がらないのに、携帯時代になって電話代はかなり増えた。安くなれば、みんな喜ぶ」。二十日昼、名古屋・栄の公園で、スマホでニュースを見ていた愛知県瀬戸市の会社員浜田哲也さん(50)は、首相主導の値下げへの期待を口にした。妻、学生の娘と息子の分を加え、毎月三万円の支払いがのしかかる。経緯はどうあれ、負担が圧縮できればうれしい。

 だが、中央省庁の検討会委員などを歴任した中央大経済学部の谷口洋志学部長(経済政策)は「民間の価格に問題があっても、公正取引委員会に任せておけばいい話。そもそも民業への圧力であり、首相が取り組む仕事ではない」と批判する。自民党が小泉純一郎政権時代から一貫して進めてきた規制緩和とも矛盾するとしたうえで「心血を注いできた市場自由化に逆行する妙な動き。合理的ではない」と切り捨てた。

 九月の安全保障関連法の成立など、政権の動きを継続取材しているジャーナリスト鳥越俊太郎さん(75)も「安直な人気取り。しかも『安保隠し』だ」と手厳しい。収入があまり多くない世帯も含めて、ほとんどの人が必需品として携帯を持つ「国民皆携帯」の時代に、民間企業わずか数社が仮に値下げすれば、国民の大半が恩恵を受ける。「民間企業に負担を押しつける『疑似減税』で、安保で下がった支持率を取り戻すつもり。だまされてはいけません」

 有権者の投票行動に詳しい同志社大の飯田健准教授(政治行動論)は「既に選挙対策が始まったということ」と、来夏の参院選との関連を指摘。「年明けから夏前に値下げが実現すれば『首相の手柄』となり、票を入れたくなる。政府の懐は痛まず、携帯電話会社が拒否すれば『抵抗勢力』の悪者に見える。実にうまい手だ」と話した。

 一方、千五百台の携帯端末を持つ「携帯博士」として知られるネットサービス品質検証会社ウェブレッジ(福島県郡山市)取締役の池端隆司さん(39)は、首相の主張に一定の評価を与える。「携帯各社は、新規契約の獲得競争にカネをかけすぎ。確かにもっと料金を下げられるはずだから、首相の横車も悪くない」。同時に「既に格安スマホがあるから、本当はそちらを賢く使う方法を周知すればいいだけ」とくぎを刺した。

(社会部・中野祐紀、立石智保)

 

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