西村京太郎トラベルミステリー55 寝台特急カシオペア殺人事件 2015.10.17


(十津川直子)イサム・ノグチってすごい芸術家だったのね。
(十津川警部)彫刻家で画家でインテリアデザイナー。
そしてこういった公園の設計までする。
あり余る才能の持ち主っていうのは彼のような人の事を言うんだろうね。
(直子)あら?
(十津川)ん?
(大山アキ)あなた。
(大山茂)おう。
(大山)なあアキ!
(直子)あの2人確かホテルも一緒だったはず…。
ご夫婦かしら?はは…。
じゃあ私たちも。
あなた!おい…。
(2人の笑い声)それでは私たちの結婚20周年と…。
君の誕生日に…。
(2人)乾杯!すいません今何て…。
私たち今日が結婚記念日なんです2年目の。
そして私の誕生日で。
あ…いやだ。
お2人今日モエレ沼公園にいらっしゃいませんでした?ええ。
それで明日は函館に泊まって次の日小樽に行ってそしてまた札幌に戻って夕方の…。
カシオペアに乗って帰る…。
ははは全く同じだ!違うのは…。
結婚2年目と20年目っていう事だけ。
(2人の笑い声)よろしく。
(2人)よろしくお願いします。

(ピアノ演奏)じゃあ改めまして。
おめでとうございます。
(一同)おめでとうございます。
そうですか…大山さんは建築デザインを。
それは素敵な仕事だ。
(アキ)今度お台場に出来る事になったオペラハウスご存じですか?ええ。
ヤナギダコーポレーションが総力を挙げて造るっていう…。
確かシドニーのオペラハウスを超えるとかって。
(アキ)それ設計したのこの人なんです!すごーい!だからデザインの事でモエレ沼に?ええ。
色んな事勉強したいなと思って。
あそこはねこう…公園それ自体が1つの彫刻みたいになってるんですよ。
で十津川さんはどんなお仕事を?あ…地方公務員です。
地方公務員?学校の先生…あ!校長先生そうでしょう?ええ…まあ…。
ねえ校長先生もしよかったら明日の函館ご一緒しません?こうして出会えたのも何かのご縁ですし…。
そうねえ。
どうかしら?校長先生。
おいおい…。
しかしお邪魔じゃ…?いいえ。
ねえ!ああぜひ!じゃあ朝のジョギングにも付き合ってもらっちゃおうかしら。
ジョギングされてるんですか?はい。
すごーい!でも私はちょっと…。
はははははは…!
(鳥の鳴き声)あーいい気持ち!やっぱり空気が違うわ。

(直子)これこれほら!
(アキ)あーこれすごい!アキ直子さん。
はいチーズ。
(カメラのシャッター音)
(アキ・直子)ありがとうございます。
ほんとに仲がいい。
ははははは。
あの2人よほど気が合ったんでしょうね。
ですね。
はははははは。
じゃあ奥様夜ホテルで。
(アキ)またご一緒にお食事しましょうね。
ええ楽しみにしてるわ。
じゃあお願いします。
お願いしまーす。
さあてと…。
あなた箱館戦争で亡くなった人たちに会いに行きたいんでしょ?いやあそんな事は…。
んー?あはははは。
まあね。
私ご近所へのお土産買いに行くからこの辺で解放してあげる。
市場までは市電で1本だから。
あとで来て。
ああわかった。
(市電のブレーキ音)
(2人)じゃあね。
(警笛)
(女性)キャーッ!どうしました?え?これは…。
すいません発見したのはあなた方ですか?はい…。
すいませんがここにいてくれますか。
私警察の人間です。
今函館署の方に連絡を取りますんで。
すいませんがここにいてください。
もしもし…ああ函館署ですか?今排水場で男性の死体が発見されまして…。
ええ…いや首から血を流して。
はい…はい…そうなんです。
すぐにこちらに…。
死んでるんだってよ…。
(簑島絵里)ねえ死んでる…。
どうしたの?
(別所透)いや…行こう。
別所透…。
(亀井刑事)そうですか…。
はいあの…警部どうぞお気を付けて。
あわかりました。
(西本刑事)カメさん別所透といえば7年前の事件のあの別所透ですか?警部がね函館で殺人事件に遭遇してねその現場の野次馬の中に別所透らしい男を見たっていうんだ。
函館っていえば…確かあいつの両親の墓があの辺ですよ。
そ…そうだよ。
ええ。
あいつは交際中の女性をねその両親の墓の前に連れて行ってその墓の前でプロポーズするってのがあいつの結婚詐欺の手口だったよ。
そうなんです!
(北条刑事)あカメさん。
ん?別所透は8か月前に出所しています。
(三田村刑事)そんな男がなんで殺人を…?相手の女にばれちゃったんだよ。
「警察に訴える!」って言われちゃったんだな。
ふざけないで!いやーっ!…なんだよ!なあ!なあ!
(別所)人を殺すってああいう事なんですよね…。
まだ感触が残ってますよ。
ねえこいつ…。
(亀井の声)正直取り調べの時のその顔を見た時私はゾッとした。
(清水刑事)じゃあその別所がまた?いやあわからん。
警部は一応函館署に別所の事は知らせたみたいだが旅行中の警部や奥さんに何もなければいいがね…。
さあいらっしゃいいらっしゃい!朝市だよー!お願いします。
どうもありがとうございます。
大山さん…。
ちょっと待ってよ。
(木下伊沙子)もう!いい加減にしてって言ってんの!あ…。
大山さんアキさんと一緒だったはずなのに…。
初めまして。
大山アキです。
(中谷光世)あなたがアキさん?はい。
え?大山さんが!?ええ。
市場でね知らない女の人と一緒にいたの。
(直子)ものすごく真剣な顔して話してた。
そりゃあ見間違いだろ?何かの…。
いいえ!あれは絶対に大山さん。
ふーん…。
ああ…君ここにいて。
何の用かね?とぼけないでくださいよ。
あなたでしょ?さっきの殺人現場に私がいると函館署の刑事に言ったのは。
刑事から色々聞かれましたよ。
私は自分の目撃した事を話したまでだ。
まだ刑事の目で私を見てるんですね。
せいぜい気を付けてください。
私を怒らせないようにね。
それだけは伝えておきます。

(大山)十津川さん!ああ…。
今の方は?ああちょっと昔の知り合いです。
それよりうちの家内が心配してましたよ。
大山さんが市場で見知らぬ女性と話をしていたと。
偶然知り合いに会いまして。
一人旅をしてるらしくてなんだか元気なかったんで声かけたんです。
自殺でもされたら嫌だなと思って。
でも大丈夫でした。
こちらの考えすぎだったみたいで。
あそうだ。
奥様にお伝えください。
僕は女房以外に目を移したりしませんからと。
伝えます。
はははは…。
(ドアの開閉音)お奥様だ。
ん?アキ。
ああなた。
ほらね。
考えすぎなんだよ君の。
…みたいね。
ふふふふふふ。
(船の汽笛)ハッ…ハッ…。
ハッ…ハーッ!フーッ!ハーッ!眺めも最高!フーッ!何してんだろう?出発の時間だっていうのに…。
(ため息)奥様まだ戻られないんですか?ええ…困った奴で。
あ!あれ奥さんじゃ?ああなた。
別所…。
丘から転がり落ちてそれをこの方が助けてくださったの。
あなたからもお礼言って。
いえいえたまたま通りかかっただけですから。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
いえ。
ああアキさん。
もうこんな事だからごめんなさい。
小樽にはお2人で行って。
いや…僕たちも残りますよ。
なあ。
ええ奥様が心配ですから。
ううんいいの。
私の事は心配しないで。
小樽を私たちの分まで楽しんできて。
いやぜひそうしてください。
あなた方がいると家内は病院に行きたがらない。
ぜひお願いします。
あなた病院なんて…。
いやいや。
いいからいいから。
うーんわかりました。
じゃあ帰りのカシオペアで。
お会い出来るの楽しみにしてますから。
ありがとう。
じゃあ夕方。
あなたほんとに病院なんかいいから。
でも…。
でもなんだ?誰かに背中を押されて突き飛ばされたような気がするの。
何!?あでも…気のせいかもしれない。

(中島雅彦)なんだこんなに乗るのかオプショナルツアーに。
(夏山未奈)仕方ないでしょマー君。
では「小樽オプショナルツアーガラス工芸の旅」出発します。
行ってらっしゃいませ。
お願いします。
(運転手)はい。

(構内アナウンス)「札幌札幌ご乗車ありがとうございます」十津川さん。
ああ!小樽どうでした?ええよかったです。
大丈夫でしたか?お怪我。
このとおり。
もう全然。
ご心配おかけしました。
よかった。
じゃあまたご一緒出来ますね。
じゃああとで。
今朝はどうもありがとうございました。
(別所)いえ大した事をしたわけじゃありませんから。
どなた?いいんだ。
行こう。
あなたあの人の事疑ってるでしょ?あの人が私を突き飛ばしたんじゃないかって。
いやあ…。
とぼけてもダメよ。
何年あなたの奥さんやってると思ってんの?
(直子)あの人!あの人よ!
(直子)函館の市場で大山さんと話してた人。
びっくりした!こんなとこで会うなんて。
伊沙子さん…。
1人?ああええまあ…。
あとで一緒にご飯食べよう。
ええ…。
じゃああとで。
(構内アナウンス)「4番線から寝台特急カシオペア間もなく発車いたします」
(発車ベル)さあ私たちも乗り込もう。
(汽笛)
札幌と上野の間を走る寝台特急カシオペアは全室個室の2階建て車両で1号車の展望スイートは人気が高い
札幌を16時12分に出発したカシオペアは南千歳苫小牧登別東室蘭伊達紋別洞爺長万部八雲森函館に停車
翌朝4時33分に仙台に停車したのちは福島郡山宇都宮大宮に停車
終点上野には9時25分に到着する
約17時間の旅である
また何か考え事してる。
あ…すまない。
ふふふふ大丈夫。
怒ってないから。
ふふふふふふ。
私お食事が終わったら大山さんたちのスイートルームに行ってくる。
心配かけちゃったから。
ああそうだね。
それがいい。
ああカメさん。
どうだ?函館の事件のその後の捜査の進捗状況は?ダメですね。
被害者の中年男性の身元が全くまだわからない状況らしく…。
それでですね奥さんを突き飛ばしたのはやっぱり別所なんでしょうか?いやわからない。
確かに彼は私を恨んでる。
だがそんな事をするかな?という気もある。
それはそうですね。
でも警部油断しないでくださいよ。
ああわかってる。
ありがとう。
ねえ誰なのよ?あなたの客室にいる男。
一人旅って嘘なんでしょ?ああ…あれ町工場のオヤジ。
全然渋チンでもう参っちゃった。
(伊沙子)ほぉ〜町工場のオヤジねえ…。

(ノック)
(アキ)はい。
すいません十津川ですが。
ああ。
あのー家内お邪魔してませんか?なかなか帰ってこないもんで…。
いいえ。
さっきいらして私たちがルームサービスで食事をしていたら「じゃあラウンジカーの方へ行く」って…ねえ。
うん。
奥様いらっしゃらないんですか?一緒に捜しましょうか?あいや…。
じゃあラウンジカーでしょう。
途中ですれ違ったのかもしれない。
じゃあまた。
どこ行ったんだろう?ああすいません。
(乗務員)はい。
ここに黒とベージュの横縞のカーディガンを着た女性いませんでした?ああ…お見かけしてないです。
すいません。

(ノック)何してたんだ?遅いじゃない…。
(中島)誰だ君は?私あなたが誰だか知ってる。
あなたが北海道で何をしたのかも。
また連絡するわ。

(ため息)直子…。
(携帯電話)「お前の妻は預かっている」「無事に返して欲しければ余計な事はしないで次の指示を待て」ああ…直子!?
(ノック)
(山田)はい。
警視庁捜査一課の十津川と申しますがあのちょっと…。
(山田)わかりました。
じゃあ迷子のお子さんが出たという事で私たちが1号車から順に捜してみます。
ああ…助かります。

(ノック)はいちょっと待ってください。
なんですか?
(車掌)あの…恐れ入りますが迷子の事でちょっと…。
迷子?はい。
いやここには誰も来てないよな?こんな時間に子供が迷子っていうのも気になるなあ…。
あっどうぞ調べてください。
ありがとうございます。
失礼します。
でもいくつぐらいの子なんですか?その迷子になった子って…。
4歳?はい。
じゃあどっかに潜り込んじゃったって事もあるかもね。
迷惑な話ね。
はあ…。
シャワー室もよろしいですか?どうぞ。
すいません失礼します。
あっかっカメさん!ああ西本。
本当ですか?警部の奥さんが誘拐されたって。
ああそうなんだよ。
それで今ねみんなにこっち来るように連絡をとったとこだ。
やっぱあの…別所透ですかね?いやそれでね車掌たちにはね別所の事は詳しく話してないんだよ。
連中が意識をするとね奥さんにとって危険じゃないかっていうんでね。
警部その…余計不安でしょうね。
だが…犯人がなんの目的で警部の奥さんを誘拐したかだよ。
ねえほんとに迷子なんですか?おたくたちの捜し方を見てると爆弾でも仕掛けられたんじゃないかってそんな気がするけど…ね。
失礼します。
すいません。
やめて物騒な事言うの。
いやここにはそんな子来てないけど。
でも念のためいいですか?ベッドはいいけどシャワールームは今使ってるんだ。
女性の方ですか?あああ…。
出来ればバスタオルを巻いて頂いて中を見るだけなんですけども…。
(ノック)おい。
中を見るまで帰らないみたいだぞ。
も〜…ほら見てよ。
迷子なんていないわよ。
いない?どこにも?はい。
どうしましょう。
函館には6分間ほど停車します。
その時警察に入ってもらった方が…。
(メールの着信音)「函館で5号車から降りてホームに立て」函館着は?20時54分です。
それから6分間の停車ですね?
(山田)はい。
私はこの犯人の指示に従います。
鉄道警察隊にはそのあと私から連絡を入れます。
はい。
20時39分。
あと15分で函館…。
直子…。
(構内アナウンス)「1番乗り場に列車が入ります」「ご注意ください」
(構内アナウンス)「函館函館。
ご乗車ありがとうございます」「お忘れ物のないようご注意ください」発車1分前か…。
(駅員)「1番乗り場の上野行き寝台特急カシオペアまもなく発車致します。
発車の際ドアが閉まります」「閉まるドアにご注意ください」
(メールの着信音)「お前の妻を解放する」「ただ解放したのでは面白くないので爆弾をつけさせて貰った。
助けてあげられるかな」…!
(笛の音)
(発車ベル)直子!すいません出してください!はい!直子!直子待て!止まれ!奥さん…!十津川さん助けてください!刑事さんなんでしょ!?うちの人がうちの人が…!これは…!「十津川という男は刑事だ」「夫の命を助けたければ1号車のゴミ箱を探せ」「そこのビニール袋の中に入っているカーディガンを着て発車寸前に1号車からホームに降りて改札口へ走れ。
指示に従えばあんたの夫は無事だ」
(メールの着信音)メールが入ってます。
「ゲームは終わった。
あんた達の連れ合いは解放した」「スィートルームに行ってみるんだな」私たちの部屋に…?車掌に携帯の番号聞いてます。
ちょっと連絡してみます。
あっもしもし。
お客様!大丈夫ですか?しっかりしてください!ロープをほどけ!はい!
(車掌)きっつい…!無事!?2人共無事だったんですか?いやありがとうございます!ご主人も私の家内も無事に保護されました。
ほんとですか!?ああよかった…!ただ薬か何かを使われたらしく2人共朦朧としていて起こしてもすぐにまた眠ってしまうのでこのまま付き添って保護してくれるそうです。
我々も21時48分発の北斗星であとを追いかけましょう。
上野駅で私の部下が2人を保護してくれるよう手配をしておきます。
はいありがとうございます…!
(構内アナウンス)「8番乗り場に列車が入ります」「ご注意ください」
(駅員)「まもなく発車致します。
お乗りの方はご注意ください」
北斗星はカシオペアと同じく札幌上野間を結ぶ寝台特急である
函館を21時48分に出た北斗星は仙台福島郡山宇都宮大宮に停車
翌朝の9時38分つまりカシオペアより13分遅れで終点上野に到着する

(構内アナウンス)「上野上野」あっ奥さん!亀井さん。
持ちましょう。
すいません。
いやご無事で何よりです。
私警視庁の亀井と申します。
ご気分はいかがですか?ええ少しまだ頭がボーッとしますけど大丈夫です。
ああそう…。
じゃ参りましょう。
いませんねえ。
うん。
よし向こう行こう。
カメさん。
いや…。
ああ奥さんご無事でしたか!よかったみんな心配しましたよ。
すいません。
あっカメさん別所いませんよ。
なんかどっか途中の駅で降りたんじゃないですかね?いや車掌の話によると上野まで切符は持ってたはずだっていうんだよ。
あれ?あれは確か…。
どうかしました?いやいやどっかで会った人のような気がして…。
すいません刑事さんちょっと来てください!あっこれ頼む。
あとは頼んだよ。
西本行こう。
ああっ!あっ!カメ…カメさん鑑識呼びます。
ああ頼む。

(構内アナウンス)「上野上野」あなた。
アキ!あなた!ごめんよ心配かけて。
十津川さん刑事さんだったんですね。
いや隠していて申し訳なかった。
しかし無事でよかった。
怪我はないか?事件なんだ。
君の話を聞きたい。
清水と一緒に本庁へ行ってくれないか。
すみませんがお願いします。
はい。
じゃあ行きましょう。
アキこれを頼む。
あっはい。
さあどうぞ。
カシオペアは操車場です。
(パトカーのサイレン)ああカメさん。
ああ警部。
この女性…。
(直子)あの人よ。
函館の市場で大山さんと話してた人。
ああ偶然知り合いに会いましてね…。
大山茂さんに話を聞けば身元がわかるっていうんですか?ああ恐らくな。
いやあそれは助かりますよ。
何しろね携帯電話を始めとして身元のわかりそうなものは全部持ってかれてしまいましたからね…。
それと彼女はこのカシオペアに乗る時に誰か知り合いがいたらしく声をかけていた。
年齢は27〜28歳の若い女性か…。
ひょっとするとこの犯行のために家内は誘拐され私は函館駅でカシオペアから降ろされた…。
するってえと警部は誘拐と殺人が関係あるとおっしゃるんですか?ああ。
で死亡推定時刻は?昨日の夜8時から10時の間です。
ですが函館の駅員が9時に出発したこのカシオペアが発車したばかりの時客席に彼女がいたっていうのを確認してるんですよ。
という事は9時から10時…つまり函館から仙台までこのカシオペアが走っている間に彼女は殺された事になる。
で別所の足取りは?西本に当たらせてます。
どういう風に拉致されたんだ?確か大山さんたちのスイートルームからラウンジに向かってる時だったと思う。
いきなりうしろから何かツンとするようなもの嗅がされて…。
私もいきなりうしろから襲われて意識を失いました。
迷子の子供がいるっていうんで自分でも何か出来ないかなと思って捜しに出てたんです。
申し訳ありませんが…。
ちょっとこの写真見てくれませんか?伊沙子…!彼女だったんですか殺された女性っていうのは!伊沙子?姓はなんていうんですか?いや姓まではわかりません。
昔仕事で使ってた新宿のクラブで働いてたんです。
でもそこは確か潰れてしまってそれ以降は…。
そのクラブの名前はなんていうんです?歌舞伎町にあった「セレニティー」っていうクラブでした。
(ノック)亀井さん。
どうした?
(北条)現場にあった缶コーヒーから別所透の指紋が発見されました。
それだけじゃありません。
この犯行に使われたナイフから微量の別の血痕が発見されそれは函館で殺害された身元不明の男性の血痕と一致したそうです。
そうか。
ありがとう。
はい。
大山さんもう1枚写真を見て頂けませんか?殺された伊沙子さんの男友達の中にこの男性はいませんでしたか?これ…!館山…!ご存じなんですか?この男性を。
昔私の事務所にいてクビにした館山義男という男です。
クビにした男…?ええ。
1年前までね大山さんの設計事務所で働いていたんだそうですけどもねその建築設計料を水増ししてお客さんに請求してるんでクビにしたんだそうですよ。
でそれ以来会ってないって言ってます。
よしまずは館山義男の家宅捜索から始めてくれ。
(一同)はい!
(久保田刑事)亀井さん。
ああ。
館山義男は36歳独身。
大家の話だと最近は仕事もせず昼間から酒を飲んでいる事もあったそうです。
ああこの部屋見りゃわかるよ。
相当荒れた生活を送ってたようだな。
(携帯電話)はい。
ああ警部。
伊沙子という女性の詳しい身元がわかった。
うん。
木下伊沙子34歳。
うん。
新宿のセレニティーっていうクラブが潰れたあと転々と働き口を変えて最後はひと月前まで赤坂のクラブで働いていたようだ。
うん。
そこでの話によると伊沙子には結婚を約束した建築デザイナーの恋人がいたらしい。
ああ。
伊沙子の住まいはわかってる。
へえ〜これまたすごいですね。
館山義男の部屋とはだいぶ違いますね。
ん?カメさんこれ!え?ああこれは…。
「Y.TATEYAMA」…館山義男。
カメさんこれ鑑識にまわしてくれ。
警部。
やっぱり間違いありませんね。
あの図面から館山義男の指紋が検出されました。
じゃあ木下伊沙子が付き合っていた建築デザイナーっていうのは館山義男だったんですね。
おい清水。
(清水)はい。
大山さんと館山の間柄これどうなんだ?単に不正を見つけクビにしたというだけなのか?大山さんの事務所の人間に話を聞いたんですが館山義男は相当大山さんを恨んでいたようです。
その恋人の木下伊沙子にも恨まれていたって可能性がありますね。
しかしなぜ木下伊沙子の殺害現場に別所透の指紋のついた缶コーヒーの空き缶があったんでしょう?
(清水)凶器のナイフからは誰の指紋も…別所透の指紋も見つからなかった。
って事は普通に考えると大山さんの犯行って事になりますね。
恨まれていてで何かをされたんで殺害をした。
しかし館山義男が殺害された時刻私と家内は大山さん夫婦と一緒にいてつまり彼にはアリバイがある。
そして木下伊沙子が殺された時大山さんは何者かに誘拐されて奥さんと一緒に縛られていた。
って事はやっぱり犯人は別所でしょうかね?
(電話)はい十津川だ。
別所がですね大宮で降りてたんです。
はい。
それも北海道旅行で一緒だった簑島絵里という女性とです。
でその簑島絵里の実家が大宮の在にあるんですが2人はそこに立ち寄ってました。
つまりその絵里って女性は結婚相手として別所を親御さんに紹介したって事か?はい。
もちろんあの別所の前歴の事は一切触れておりません。
はい。
いやそれでまあ警部この簑島家というのが実にこう金持ちなんですねえ。
わかった。
警部別所呼びましょうか?いや缶コーヒーの指紋だけでは弱い。
もし別所の犯行と見るならその前に動機を見つけないと。
(朱美)知らないなあ…。
はあ…。
あっ建築家のフィアンセがいるって事は伊沙子ちゃん本人から聞いてたけどでも誰も顔見た事ないんじゃない?ああ…。
あっじゃあ木下伊沙子さんの特に親しくしていたような方は?別にいないんじゃないかなあ?秘密主義でちょっととっつきにくい子だったから。
ああ…。

(携帯電話)もしもし。
さっきうちの店に警察が来た。
カシオペアの事件の事調べてた。
俺の事は口が裂けても…頼む!わかってる。
その代わり未奈にお店を持たせてくれるって話…。
ああ約束する。
頼むぞほんとに!この事がばれたら俺は身の破滅だ!大丈夫。
ただいまー!
(直子)はーい。
ん?あっおかえりなさい。
ああ。
大山さんたちご夫妻いらっしゃってるの。
(直子)北海道の写真持って。
いやあいらっしゃい。
先日は…。
(アキ)お邪魔してます。
写真を口実に来ちゃいました。
お忙しいところすみません。
いいのよ。
結婚2年目と20年目で仲良くしましょうって言ったの私なんだからねえ。
これよく撮れてるねえ。
まあどうぞ。
(大山)すいません。
でも大山さんたちと一緒だと私たち年齢を感じるわね。
そんな事ないです。
奥様おきれいだしお若いし。
あっこれ私が小樽で作ったガラス細工なんです。
奥様にと思って。
うわあー見て。
ほら。
上手だねえ。
ねえきれい。
え〜いいの?はい。
ありがとう。
ところであのカシオペアの事件どうなりました?知り合いが被害者だったんですごく気になってて…。
ああそれで我が家に?いやそうじゃないんです!…すいませんほんとはそうなんです。
お訪ねするっていうアキに便乗して。
(携帯電話)あっちょっと失礼。
(携帯電話)ああカメさん。
どうしたんだ?うん。
え?7年前の別所を逮捕したマンション?ああおはよう。
(一同)おはようございます!ああカメさん。
警部ちょっとこれ見てください。
このマンションです。
7年前にこのマンションで女性と同棲していた別所がその女性を殺害したのは。
ちょうどその同じ頃このマンションで大山さんの建築事務所でバリバリ働いていた館山もここに暮らしていたんですね。
別所の方は知らなくとも同じマンションの住人だった館山の方は別所の事を知っていた可能性があるという事か。
そういう事です。
警部それともう1つあります。
別所透と付き合っている簑島絵里の実家は資産家だって言ってましたよね?そうそうそうそう。
だって大宮の駅前にビルいくつも持ってんですから。
その1つのビルを設計デザインしたのが大山さんの事務所に勤めていた当時の館山なんですよ。
そう繋がるか…。
別所透が簑島絵里を連れて歩いていたら今度の結婚詐欺のターゲットはこの金持ち女だって館山義男ピーンときちゃいますね。
ええ。
それで館山は別所を脅し金をとろうと決めた。
別所透が結婚詐欺師で人を殺した事もあるなんて簑島絵里が知ったら当然結婚は御破算でしょうしね。
警部。
これで別所の動機がわかりましたね。
ぶつけてみよう。
ありゃ〜…。
私の指紋が?そう。
この殺された木下伊沙子さんの客室にあった缶コーヒーの缶から君の指紋が発見されたんだよ。
なんでまた…。
それがねこの館山義男という被害者以前君と同じマンションに住んでた。
脅かされたんじゃないのかね?君の過去を簑島さんやその家族にばらすと。
なるほど。
それが動機でこうして私を疑った。
でも変だと思いませんか?凶器のナイフの指紋を拭き取った私がそんなコーヒーの空き缶を置いてったりします?あれ〜?凶器のナイフに指紋がついてないっていう話はまだ一度も君に話した覚えがないんだけれどもね。
そんなの常識でしょう。
凶器に指紋がついてたらあんたたちはすぐに私を逮捕する。
しかし犯人はナイフの指紋を拭き取っていた。
そこであんたたちは私の動機を見つけようと必死になった。
で見つけた。
(笑い声)あの…こうは考えないんですか?この館山という男がなぜわざわざ北海道まで来たのか。
私なら絵里の両親に紹介されたそのあとに脅しますけどね。
これで金は入る事になった。
いいのか?お前の素性をばらしてもってね。
(笑い声)それで君は簑島絵里さんをだました。
いえいえ例えばですよ。
私は絵里をほんっとに心から深く愛してる。
この館山という男がそう思わなかったとしたらそんな風に脅すんじゃないかって想像しただけです。
君の言い分はわかった。
それより5日前の函館でのお昼前後の君の行動を全部話してくれたまえ。
館山という男が殺された時間のアリバイですね!ありませんねアリバイは。
だって絵里と一緒にあの犯行現場の近くを観光してたんですから。
私が前歴者という事だけでもし絵里に余計な事まで吹き込んだらその時は私にも覚悟はありますから。
これ殺人事件なんだよ。
だから聞かないわけにはいかない。
いいですか?服役して罪を償った人間を疑う。
それも無実の人間をね。
相当な大問題になると思いますよ。
これは。
君が無実だったらね。
もちろん私は無実です。
まったくもう…強かというかむかつく奴ですよ。
だってこっちに決め手がないのしっかり見抜いてるんですから。
カメさんの印象は?いやまだなんともいえませんね。
あの…別所の言い分もあると思うんですよ。
だって缶コーヒーにしか指紋がついてないってのもなんか変ですし…。
ああ確かにな…。
それにこの木下伊沙子をカシオペアの中で殺害するために家内を誘拐し私を函館駅で降ろしたというのはわかる。
しかしなぜ家内を函館の丘の上から突き飛ばす必要がある?それは警部への逆恨みかそれか奥様に怪我を負わせてカシオペアに乗せまいと考えたからじゃないでしょうか?とにかく警部別所の周辺洗わせてください。
ぴったりマークして何か手がかり見つけてきます。
わかった。
それと木下伊沙子が札幌駅で声をかけていた若い女性。
これが一体誰なのか洗い出してみてくれ。
(一同)はい!ご存じないですか?この女性ご存じないですか?
(男性)見せてもらっていいですか?どう?絵里みたいだよ。
(携帯電話)ちょっと待って。
(携帯電話)嘘つき!私帰るわよ!あっ行くぞ!あああそこだ!いない!クッソー…!右行こう!はい!逃げられた〜!おお来たか。
あんただろ?あのカシオペアであの女殺したのは。
金でケリつけようじゃねえか。
黙っててやるよあんたの事も…。
(別所)誰だ!おいそこにいんのは!
(パトカーのサイレン)ああ警部。
申し訳ありません。
ずっとマークしてたんですがちょっと目を離したすきに逃げられてこんな事になってしまって…。
死因は?
(三田村)はい頭部をこの鉄パイプで激しく何度も殴られたようです。
指紋は付着していませんでした。
フィアンセの簑島絵里には?あっ連絡をしたんですがもう遺体の確認はおろかそんなもの見る必要も興味もないと拒否されまして…。
拒否?どういう事だ。
いやわかんないんですよ。
ただ昨日もいきなり激しくケンカをしてたんですね。
で私これから行ってちょっと話を聞いてこようかと思うんですが…。
ああ頼む。
はい失礼します。
なぜ別所は殺されたかだ…。
やはり一連の事件と関係があるんですかね?いや警部ひょっとすると別所は真犯人が誰かを知っていたんじゃないでしょうか?警部この方がゆうべ遅くここから出て行く男女を目撃しています。
男女?間違いありませんか?ああ。
多少酒は入ってたけど間違いない。
清水この方の話を聞いてモンタージュの作成急いでくれ。
はい!
(絵里)だからあの男とはもう関係ないって電話で言ったでしょ!?ですからそれがなぜなのか差し支えなかったらその訳を…。
うちの両親が人を使って調べて昨日電話をくれたのよ。
あの男結婚詐欺師だっていうじゃない?それだけじゃなくて7年前には人も殺してるって…。
なんで警察はそれを言ってくれなかったのよ!それを別所に…?ぶつけたわよもちろん。
(絵里の声)そしたら居直って…。
お前みたいなハイミス実はこっちからヘドが出てたんだよ!なんですって!?じゃあ返してよ!これまであなたに貸したお金耳を揃えて返してよ!でなきゃ訴えるから!返してやるよこの野郎!耳を揃えてな。
明日か明後日には金をたたきつけてやる!明日か明後日…。
絵里さんがお貸しになった金額というのはおいくらなんですか?500万ぐらいだと思うけど。
500万!?すると別所にはその500万を返す当てがあったという事か?はいそうなんですよ。
それもその場しのぎの嘘やはったりじゃなくてこの男は本当に500万返すつもりだと簑島絵里は確信したそうです。
しかしどこでどうやって作るつもりだったんでしょうね?警部ひょっとして埠頭から逃げた男女が別所透のゆすりの相手とか…。
(久保田)警部!埠頭から逃げた男女の似顔絵が出来ました。
これです。
ん?この女性…。
札幌駅のホームで木下伊沙子が声をかけていた女性にそっくりだ。
あっ警部ちょっと失礼。
ん?ああ!この男中島雅彦だ。
え?カメさん知ってるのか?この男。
ええ。
私と同じ津軽出身のこれ国会議員ですよ。
彼ね上野駅のカシオペアの前で見かけました。
この中島雅彦は元財務官僚でねで地元では名士と言われてる中島与平の娘婿に入りましてね。
そりゃ県会議員なんですけどおやじはね。
その地盤看板を利用して国政に出たんですよ。
あれ?ちょっと待ってよ。
この殺された館山義男も青森県の出身ですよ。
ひょっとするとこの中島雅彦の顔を知ってるんじゃないですかね?何?
(電話)ああ十津川だ。
木下伊沙子が札幌駅で声をかけていた女性がわかりました。
元ホステス仲間で夏山未奈27歳。
わかった。
中島雅彦は不倫旅行であのカシオペアに乗った。
いやあ現職国会議員の不倫旅行これ大スキャンダルになりますよ。
もし義理の父親の中島与平に知れたら大変だ。
ええ〜?じゃっじゃあ…ちょっと待ってくださいよ。
館山が脅していた相手というのは中島雅彦っていう事ですか?そして館山は中島雅彦を脅し殺されてしまった。
その事を知った恋人の木下伊沙子がまた中島を脅し殺されてしまった。
そうなんだ。
で別所はこの館山とそれから木下伊沙子を殺したのは中島雅彦と夏山未奈だっていう事を知ってあの埠頭に呼び出したんだ…。
とにかく中島雅彦とこの夏山未奈という女性呼ぼう。
私を誰だと思ってるんだ!なんでこんなところに呼ばれなくちゃいけないんだ!まあまあまあまあまあちょっと座って…。
あのね昨日この男が青海埠頭で何者かに殺されてるんだ。
でその現場からねあなたともう1人この女性夏山未奈が逃げていくのを目撃されてるんだ。
知らん。
見間違いだろう。
私はそんなところへ行ってない!悪いが弁護士を呼んでくれ!それはわかりますがもう一度よくこの写真を見てくださいな。
間違いないですよあの男に。
夏山未奈の方は?あっ見てもらいました。
彼女も間違いないそうです。
行ってません私そんなところに。
誰かの見間違いなんじゃないんですか?うん…あっじゃああの昨日の夜11時頃っていうのはどちらにいらっしゃいました?お店が休みだったので部屋にいました。
その時間はちょうどお風呂に入ってたと思います。
1人で?はい。
久保田君ちょっと代わってくれ。
はっはい…。
もう一度ゆっくり見てくださいよこの写真。
知らないって言ってるだろ!まあそう言わないで…。
(ノック)カメさんちょっちょっ…。
なんだ弁護士じゃないのか…。
いや…ちょっと来てください。
いややりましたよ。
彼女あっさり自供しましたよ。
あんなにやけた男なんか好きでもなんでもないんだ。
悪いのは全部あの男だって!ちょっと待ってくれ!何言ってるんだ!鉄パイプを振り下ろしたのは私じゃない!あの女だ!鉄パイプ?あれ?それはなんの話ですかね?私昨日見たテレビの話をしてただけなんですが…。
じゃあ鉄パイプを振り下ろしたのは彼女だったんですね?まあまあ…まあ座ってください。
私ねあなたに鉄パイプの話なんか一度もしておりませんよ。
いいですね?もう何もかも包み隠さず私に話してくださいよ。
別所透を殺したのはあなたですね?違う!電話があったんだ!カシオペアで起きた事に関して話がしたいと!私はてっきりあの女の仲間だと思った…!仲間ってなんですか?カシオペアの中であの伊沙子とかいう女にゆすられたんだ!私あなたが誰だか知ってる。
あなたが北海道で何をしたのかも。
国会議員がこんなところでホステスを連れて不倫旅行?高いわよ口止め料。
たったのこれっぽっち?まあ私たち長い付き合いになりそうだし今日はこれくらいで勘弁してあげるわ。
(中島の声)あの女はまた連絡すると言ってたから!私はてっきりあの男があの女の仲間だと思ったんです。
それで仕方なくあの埠頭へ行ったら…。
金でケリつけようじゃねえか。
黙っててやるよあんたの事も…。
誰だ!おいそこにいんのは!やっぱりなあ思ったとおりだ。
お前たちが2人であの…木下伊沙子って女を殺したんだな?殺した!?さっきから一体なんの話だ!ウッ!とぼけんな。
この俺に罪を着せようとしやがって!ふざけんな。
いいから1億!黙ってな?大人しく出しゃいいんだよ。
ほら頷け!ほら頷け!頷け!ウッ!行こう!この男は何か誤解してる…!こんな男にかかわってる暇はない!嘘じゃない…。
私は一度しかたたかなかった!一度だけ?血なんか出てなかったもん!だからこんなの嘘よ!私はやってない!私は殺してなんかない!そうか。
何度もたたいた事を2人共否定したか…。
そうなんですよ。
でも警部こういう事はあると思うんですよね。
当人たちにとって1回しかたたいてないとひたすら思い込もうとしてるんですが本当は何発も何発も殴り続けていたっていう…。
私も西本さんの意見に賛成です。
別所にゆすられた事は認めてるんですし何より中島雅彦には館山義男や木下伊沙子を殺す動機があります!夏山未奈との不倫を脅されたっていう線か?はい。
しかし…。
しかしなんですか?私は中島雅彦とは面識がない。
そんな中島が私の家内を誘拐し私をカシオペアから降ろす理由がわからない。
それに函館で家内が誰かに突き飛ばされたその理由が…。
警部それは事件とは関係がないんですよ。
別所の警部に対する単なる嫌がらせなんじゃないですかね?しかしそのために大山さんまで誘拐するかね?あれはどうしても私をカシオペアから降ろし木下伊沙子を殺害するための手立てだったとしか私には思えないんだ…。
確かにそうですね。
よしもう一度一から洗い直してみよう。
大山さんの事を調べる?函館から小樽カシオペアと同じルートをたどっていたのは別所だけじゃない。
中島雅彦に夏山未奈それに大山さん夫婦も同じだと思ってね。
しかしですよ館山義男が殺害された時に大山夫妻と警部と奥さんは一緒でしたよね?でカシオペアで薬を嗅がされて身動きとれないように縛られてしまった。
ああだから彼もまた被害者の1人である事に変わりはない。
恐らく私をカシオペアから降ろすために利用されたんだろう。
だがなぜ大山夫妻まで巻き込んだんだ…?私に「函館で降りろ。
そうすれば家内を解放する」とメールを送ればそれで済む事だろう。
でもそういうメールだったら警部はカシオペアから降りましたか?いや恐らく降りないね。
家内がカシオペアの内部に拉致されてる事は間違いないわけだから。
でしょ?だから計画的な犯人は大山アキさんを警部の奥さんに仕立てた。
それともう1点2人もの人間をカシオペアのどこに拉致していたのかその事も謎のままだ。
あっ警部ひょっとして大山さんは縛られてなくて犯行におよんだ…?ああダメだ。
車掌が大山さんを発見した時に大山さんは両手でうしろにきつくロープで縛られていた。
自分で自分を縛る手品のような技でも持っていれば話は別なんだがねえ。
それで警部は引っかかる事や疑問を1つ1つ潰していこうっていうんですね?まあな。
ここだよ。
ここが大山さんの事務所だ。
(大山)そうですか。
カシオペアの乗客を一人一人?大変なお仕事ですねえ十津川さんたちのお仕事も。
いやあの…つかぬ事をお伺いしますけどもあのここで何人ぐらいの方が働いてらっしゃるんですか?私を入れて4人です。
でもヤナギダグループのオペラハウスのコンペを勝ち取った事で次から次へと仕事がくるようになりましてまあ近い将来もう少し広いところに引っ越さなきゃいけないなあとは思ってるんですけどね。
なかなかやり手ですね大山さん。
とんでもない!タイミングがよかっただけですよ。
うん。
あっお茶お願い。
はい。
建築家の世界というのは想像以上に保守的な世界でして名のある建築家にしかあんな大きな仕事はとれないんです。
それを独学で建築を学んだだけの一匹狼みたいな私がオペラハウスのような仕事をとったんですから。
独学で?ええ。
私は大工の倅なんです。
父が幼い時に亡くなって…まあそれなりに苦労しまして。
でやっぱり育ててくれた伯父も大工で建築現場では使われる人間よりも人を使う人間になれってたたき込まれたんです。
それで建築家になった?あっこれが次のオペラハウスの模型です。
いやあこれは立派なもんですねえ。
(大山)ありがとうございます。
ところで犯人に捕らわれてる時の事で何か思い出したような事は…?残念ですけどありません。
すいませんお役に立てなくて…。
いやそれならそれでいいんですが何か思い出しましたら必ず連絡してください。
もちろんです!なかなか感じのいい青年でしたね。
それに相当な努力家のようだね。
これからどうしますか?ここまできたんだ。
ついでにコンペのいきさつ聞いてみようじゃないか。
ヤナギダグループですね?
(東田)確かに大山先生の作品がうちのコンペで選ばれたというのは建築家の世界では奇跡に等しいでしょうね。
といいますと?うちのビルや建物はほとんど松原先生や黒崎先生たちのような建築家として数々の賞を受賞してきた人たちが請け負ってこられたんです。
これまでの常識で考えると大山先生はあのキャリアではコンペにすら参加出来なかったと思います。
それがなぜ参加出来たんですか?
(東田)去年の暮れにガンで亡くなられた前社長の意向です。
これからは若い新人の建築家にも門戸を広げようって突然言い出されて…。
そういう方だったんですか?前社長は。
若い人の未知の力を信じて…。
いいえ。
石橋を十回たたいても渡らないようなタイプの方でした。
その事がヤナギダグループをこれだけ大きくしたんでしょうが…。
それがなぜ?わかりません。
ご自分の余命を悟られてからなのか私にも…。
熊倉さんなら知ってるかもしれません。
熊倉さん?
(東田)ええ。
長年前社長のお抱え運転手をしてましてこの春にお辞めになった方です。
(熊倉松吉)あまり話したくありませんな。
先代の社長には長い間本当にお世話になってますし…。
何かあるんですね?亡くなられた柳田社長が若手を使おうと突然言い出したのには訳が…。
お願いしますよ熊倉さん。
まあ中へどうぞ。
あっどうぞ。
車の前に突然飛び出してきたんです。
あああの…30歳ぐらいの女の人でした。
何やってんだ!なんの真似だ!
(柳田)クマさんいいんだ。
社長…。
すまない。
ちょっとここで待っててくれないか。

(熊倉の声)それから10分ぐらいしてでした。
社長が車に戻ってきてそして言ったんです。
あれは娘だ俺の。
えっ?
(熊倉の声)社長には2人の息子さん以外子供はいないはずでした。
だから私はびっくりしました。
訳あって認知出来なかった。
あの子の母親もそれを望まなかった。
その子がなぜ急に?社長に援助を…!?違う。
経済的援助を望む子じゃない。
だが一度だけすがらせてくれと言ってきた。
若い力にもコンペに参加させてほしいそうだ。
あの男が娘が好きな男なのかもしれない。
それで社長は…?コンペに参加させても俺が選ぶとは限らないと言ったらそれでも構わないと言った。
あの意地を張った顔は私の部下だった時のあの子の母親そっくりだ。
クマさん行こう。
それでその車を止めた女性というのはこの女性でしょうか?
(熊倉)男の人の方は離れて立っていたのでよく見えませんでしたが女の方はこの子に間違いありません。
警部!ああ。
お茶どうぞ。
ありがとうありがとう。
でどうだった?ちょっと持ってください。
あのね間違いありませんよ。
あの…北条君にね調べてもらいました。
大山アキ旧姓新田アキさんはね父親のわからない子供でした。
住まいは都内を転々としましてね母親一人で苦労して育てたんだそうですよ。
大山さんも幼い頃に父親を亡くし伯父さんに育てられたと言っていたなぁ。
決して平坦な道を歩んだわけじゃない2人が力を合わせてコンペに勝った。
どんな気持ちだったんだろうね。
はい。
うれしかったんでしょうねきっと。
アキさんの母親は志が強く柳田社長の援助を断ってきた。
都内を転々として引っ越して行方をわからなくしたのもその思いの表れだったんじゃないでしょうかね。
でこの子は私一人で育てる…そう思ってたんでしょう。
ところがその母親の思いと志をアキさんは1回だけ裏切って柳田社長にすがっていきました。
それでそのお母さんは?ええ。
10年前に病気で亡くなってます。
彼女もまた一筋縄ではいかないような苦労を重ねたんだね。
あの笑顔からは想像出来ないような…。
(携帯電話)ああ十津川だ。
うん?中島?うん。
うんうん。
そうかわかったそうしてくれ。
どうしました?中島の秘書と弁護士が中島の即時釈放を求めてきた。
北条君が突っぱねていいかって言うからそうしてくれと言っておいた。
私はこれから本庁に戻る。
警部私これからお台場の方へ行ってもいいですかね?わかったそうしてくれ。
はい。
これか。
なるほどな。
大山さんの意地というか才能を結集した斬新なもんだ。
大したもんだなぁ。
(光世)あの…。
すみません。
ここに建つこの建物いつ完成するか書いてあります?私目を悪くしてからよく見えなくて…。
ええと…完成は平成24年の秋ですからまああと2年先ですかね。
そうですかあと2年後…。
うっ…。
奥さん!どうしたんですか?大丈夫ですか?ちょっと待ってくださいよ。
ちょっと待ってね!うっ…。
(救急車のサイレン)あっ気がつきましたか?よかった。
いやお医者さんがね心臓がだいぶ弱っていらっしゃるから入院なさっているんじゃないかって聞きましてね。
はい。
函館の病院に入院しています。
今日は外出許可をもらってこちらへ来ました。
あっ…見ず知らずの方にご迷惑をおかけしてしまって…。
いえご心配なく。
私ね警察官なんです。
ですから人助けも仕事のうちですから。
警察の方?はい。
それでね身内の方に連絡が取りたいと思いましてね勝手ですけどもあなたのこのバッグの中をね調べさせてもらいました。
あのねそうしたら中にオペラハウスのね新聞に載った写真とか雑誌に載った写真の切り抜きがいっぱい入ってました。
私好きなんですオペラが。
だからいつ出来るのかと思って…。
いやいやそうじゃないんだ。
幼い子供とあなたの写真が入っていました。
あのねもし間違ってたら謝りますよ。
あなたひょっとしてねオペラハウスの設計者の大山茂さんのお母さんじゃないんですか?やっぱりそうですか。
いや私ねそうじゃないかと思ったんですよ。
息子さん気さくないい方ですね。
今ねある事件で協力してもらってるんですよ。
そうだ!あなたがここに搬送された事を私から連絡しましょうか?やめてください!ごめんなさい…。
私は母親なんて名乗る資格のない人間なんです。
お願いです。
このままそっとしておいてください。
そうですか…。
息子さん今仕事もうまくいってますし心に余裕が出来たらきっとお母さんに声をかけてくれると思いますよ。
だってねあなたたった一人の母親と息子さんじゃないですか。
…ですね。
その日が来たらうれしいと思います。
でも今は何も言わずそっとしておいてください。
お願いします!わかりました。

(光世)お父ちゃんに会いたいんでしょ?だったらここから飛び降りなさい!飛び降りたら会えるわよお父ちゃんに!
(大山)嫌だ…!北海道に?はい。
あの大山さんのお母さんに会いましてね。
函館と小樽か…。
私も付き合うよカメさん。
この目でもう一度事件現場を見たくなったしね。
はい。
警部。
まず第一の事件館山義男の殺害現場からですね。
ああ。
ここですか?警部が館山の遺体を発見したのは。
それで野次馬の中にいる別所に気づいた。
別所がここを通りかかったのは両親のお墓参りの帰り道だって言ってますね。
両親の墓はこの先にありますけど行ってみますか?ああ。
ここで別所はいつもの手口でご両親の墓に簑島絵里を紹介したんですね。
しかしまあ簑島絵里が詐欺に遭わなかっただけでも不幸中の幸いですかね。
あれ?警部。
うん?これ大山さんの塔婆だな。
ええ。
大山家の墓もここにあったのか。
あっ住職さん。
あのつかぬ事をお尋ねしますがね大山茂さんは最近お墓参りへいらっしゃいました?ああ…。
ああ…失礼しました。
私こういう者ですけれども。
これは事件とは関係ありませんがちょっとお訊きしたい事がありましてね。
あの息子は来ません。
墓掃除に時折来るのはあの息子の母親だけです。
えっお母さん?
(住職)あれは母親の鑑です。
ああいう女性を本当の母親というんでしょうね。
それはどういう事ですか?ありがとうございました。
警部意外な話でしたね。
うん。
大山さんが幼い頃住んでいた家がまだ残ってるそうじゃないか。
行ってみようか。
はい。
ああ…ここで病気がちだった母親が大山茂さんを育てていたんですね。
(大山)大丈夫?お母ちゃん。
(光世)大丈夫よ大丈夫。
(咳込み)お医者さん呼ぼうか?僕心配だよ。
(光世)大丈夫よ。
心配しないで宿題やりなさい。
(咳込み)わかった。
そして母親は1つの決断をした。
(光世)おいで!
(光世)お父ちゃんに会いたいんでしょ?だったらここから飛び降りなさい!飛び降りたら会えるわよお父ちゃんに!嫌だ…!それじゃあ別所や中島雅彦大山夫妻3組のカップルが行った小樽のガラス工芸の工房へ行ってみましょうか。
(警笛)あの日のツアー客は5人ですね。
5人?ええ。
まあこちらへどうぞ。
5人とおっしゃいましたが3組のカップルですから6人じゃないんですか?この中でガラス工芸を作らなかった人間がいるんでしょうか?ああ!この方は奥さんだけ参加して終わる頃に迎えに来ました。
大山さんどこで何をしていたんですかね?あっわかりますよ。
送ってきたタクシーの運転手が顔見知りですから。
あなた見て。
これ作ったの。
へえ〜。
お客さん!領収書。
ああありがとうございました。
おう!どうもありがとね。
(運転手)ここにいたんですけどね。
どうしてこんなところにタクシーを呼んだのかな?あたりには何もないのに。
(運転手)誰か女の人と待ち合わせしてたんじゃないですかね。
タクシーに戻ってくる時にかかってきた電話にやたら怒鳴りつけてましたから。
どうしたんだよ!なんで来ないんだよ?君を1時間も待ってたんだぞ!こんな寂しいところに1時間も…。
(携帯電話)ああ十津川だ。
木下伊沙子の行きつけの寿司屋の主人の話によりますとなんと木下伊沙子が連れてきた建築家のフィアンセというのは館山義男じゃないようなんですよね。
何!?もう一度よく見てください!本当にこの男じゃないんですか?だから違うって言ってるだろ!同じ建築家でもこんなシケた野郎じゃねえんだよ。
パリッとしたどこかのオペラハウスを設計した人間だよ。
えっオペラハウス?警部…!
(大山)間違いありません。
私は木下伊沙子さんと以前付き合っていました。
なぜその事を隠したんです?アキを…妻を愛しているからです。
偶然函館で会った時よりを戻そうって言われました。
でも私は拒みました。
私の女房はアキなんです。
アキだけを愛しているんです。
木下伊沙子さんが殺されたあともその事は黙っていた。
以前付き合っていた事がばれ函館の市場で拒んだ事がわかると疑われると思ったからです。
(大山)私はアキを失いたくなかった。
館山さんに関する事でもあなた何か隠しているんじゃありませんか?
(大山の声)館山は私を恨んでました。
だから何度も電話をもらいました。
私を必ずおとしめてやるこのままじゃ済まさないって。
だから館山が殺された時私に疑いがかかると思った。
でも信じてください十津川さん!私は誰も殺してません!館山が殺された時は十津川さんと一緒だったしカシオペアでは拉致されていた。
館山と伊沙子が何かの理由で手を組んだのかもしれません。
ひょっとしてあなたはあの日小樽の港で木下伊沙子さんと待ち合わせしていたんじゃありませんか?いいえ私は…。
ただ海が見たくてあの港に行っただけです。
ああ警部!どうでした?ああ…カメさんどう思った?いや状況から考えればこれはシロですね。
それにこの大山さんは2つの殺人は出来ないと思います。
(北条)警部!木下伊沙子の経歴を調べたところ奇妙な偶然に気がつきました。
木下伊沙子は大山アキさんの通っていた高校に同時期に在籍しています。
同時期ってどういう意味だい?
(北条)木下伊沙子は素行が悪かったらしく3年生の時に退学していますがちょうどその時大山アキさんは1年生に在籍しています。
顔見知りだっていう事かい?いやいやアキさんの方はたとえ知らなくても木下伊沙子は絶対知ってますね。
それにこれを見ると住まいも比較的近く通学などに使っていた最寄りの駅も同じだった可能性があります。
警部。
大山アキ呼びましょう?いや呼んだところで知らなかったと言われればそれまでだ。
今の段階で呼んでも仕方がない。
そうですよね。
一生懸命頑張って生きてきた大山夫妻を私も信じたいと思います。
(ホースから水が出る音)アキさん。
あっ…やだ奥さんいらしてくれたんですか?うれしい!どうぞこちらへ。
(アキ)さあどうぞ。
どうぞ!元気がなかった?というかなんか考え込んでるような感じ?あんなアキさん初めて見た。
それで声かけたら今度は逆に無理してはしゃいでるみたいな…。
つらかった。
なんかあったのかしら?うーん…まだ消えない。
どうした?いやね変な跡が消えないのよ。
ほら。
いつからだ?北海道の時にはなかったじゃないか。
カシオペアであんな事があって気がついたのはその日の夜。
すぐ消えると思ったんだけど…。
カシオペアのあと…。
警部。
この写真の丸いポッチの跡がこれが拉致された場所の手がかりになると…?そうとしか思えないんだ。
とにかくこの丸いポッチの出来そうな場所を探してみてくれ。

(清水)すみませんここを開けてください。
どうもすみません。
あっちょっと…。
はい。
カメさんマットを調べてみないか?はい。
よろしいですか?ええどうぞ。
これは…!?これは機械がいっぱいで人を隠せるスペースなんかありませんね。
いや…この機械の入っていないところもあります。
どこですか?それは。
例えば展望スイートとか。
展望スイート!?いやこれなら人ひとりぐらい十分に隠せますね。
(携帯電話)はい。
あっ警部。
木下伊沙子の死体が発見された日木下伊沙子の部屋から見知らぬ女性が出てくるのを見かけた住人がいます。
で確認してもらったところその女性は大山アキに間違いないそうです。
ありがとう。
ご苦労さん。
つまり木下伊沙子の部屋で我々が発見したあの館山義男の設計図。
あれは木下伊沙子の身元が判明する前に大山アキが置いたんだ。
恐らくそれは大山茂が持っていた館山の設計図だったんだろう。
それを利用して大山茂とアキは木下伊沙子と館山義男が恋人同士だと見せかけた。
(チャイム)はい。
「十津川です」あっ十津川さん…。
今開けます。
どうしたんですか?突然。
少しあなたとお話ししたい事がありまして。
ああ…散らかってますけどどうぞ。
失礼します。
どうぞ。
あお茶…コーヒーいれますね。
いやそのどちらもいりません。
どうぞここに座ってください。
なんでしょうか?あの日あなた方のスイートルームのベッドの下に私の家内は拉致されていたんですね。
なんの事でしょう。
殺された木下伊沙子さんはあなたの事を知っていた。
あなたが本当はヤナギダグループの総帥柳田社長の実の娘だという事を。
それが一体どういう関係があるんです?あなたのご亭主の大山茂さんが最初に付き合っていた女性が木下伊沙子さんだったんですね?
(大山)伊沙子に言われたんだ。
ヤナギダグループの柳田社長の隠し子を知ってるって。
だからその子をだまして柳田社長に近づけと。
そんな…。
そして大山さんはあなたに近づき大山さんとあなたは恋に落ちた。
そして2年前の雨の日…。
やはりアキか。
アキです。
新田アキです。
この人をコンペに参加させてあげてください!若い力にも門を開いてください。
お願いします!そうしてご主人は目的を果たしヤナギダグループのコンペに選ばれた。
なんの話です?そんないきさつ私は知りません。
私は大山を愛してるんです。
そして大山も私を愛してると言ってくれたんです。
ひょっとしてご主人は木下伊沙子に迫られ追い詰められていたんじゃないんですか?ねえどうしてよ!どうしてあのアキがまだ生きてんのよ!あなた今日こそ小樽で自殺に見せかけて殺すって言ったじゃない!君こそなんで小樽に来なかったんだ!ご主人は木下伊沙子にはあなたを殺すと言いながら本当は人目につかないところで自殺に見せかけて木下伊沙子を殺すつもりだった。
だから私や家内に思いつめた感じの知人に会ったと言って伏線を張った。
しかし木下伊沙子は小樽には現れなかった。
私たちはこう考えてるんです。
館山義男と木下伊沙子を殺した人間は同一犯ではないと。
館山を殺したのは実は木下伊沙子ではないかと。
(館山義男)聞いちまったんだよ。
あんたと大山が東京で話してるのを。
あんたたちあのアキっていう女房を殺す計画なんだろ?
(館山)事と次第によっちゃあその話目をつむってやってもいいんだけどな。
(館山)何が欲しいって?
(館山)そりゃ決まってるだろ。
金だよ金…。
(悲鳴)ご主人は函館の市場で木下伊沙子に迫られたんじゃないんですか?自分も手を汚したんだから早くこのナイフであなたを殺せと。
(大山)このナイフで君を自殺に見せかけて殺せば…館山の血痕が残ってるし館山と君は不倫をしていてその清算のために君が館山を殺して自らも命を絶ったと思わせる事が出来る。
伊沙子にそうしろって言われた。
でも俺には出来ない。
あなた…。
俺は…俺は君を愛してるんだ。
それでその伊沙子という人とはどんな約束を?ヤナギダグループの仕事が取れたら君と別れるって。
でも俺は本気で君を愛してしまった。
だからこの2年なんとか金でケリをつけようとした。
でもあいつはいくら金を渡しても「幸せそうなあなたたちを見ると殺してやりたくなる」って言って…。
そんな…。
私にはわからない。
聡明なあなたがなぜご主人の計画に加わったのか。
だがあなたたちが使ったトリックは既にわかっている。
まず私の家内に薬を嗅がせ…。
よし撮ってくれ。
(シャッター音)迷子?はい。
いやここには誰も来てないよな?うまく車掌たちをかわしたあとであなたたちは次の計画を実行した。
撮るわよ。
(シャッター音)よし。
それから私に函館駅で降りるよう指示しあなたは直子のカーディガンを着た。
函館駅に着いた時あなたはうちの家内に変装してカシオペアから飛び出した。
(駅員)「間もなく発車いたします」そして私を函館駅で降ろしその間にご主人は…。

(刺す音)
(伊沙子)うっ!そして木下伊沙子の所持品を奪い捜査をかく乱させるために私と因縁のあった別所が飲んだコーヒー缶を残して…。
やめてください十津川さん!第一あの人は奥様と同じようにきつくロープで手を縛られてたんですよ?カメさん頼むよ。
はい。
私はねひょんな形でご主人のお母さんに会いましてね。
お母さんは函館の病院に入院なさっているそうじゃないですか。
そうお母さんなら可能でしょう。
あなた方は走るカシオペアからお母さんに携帯で連絡をし函館駅でカシオペアに乗ってもらいロープで縛るのを手伝わせたんじゃないんですか?
(ノック)うろたえてる場合じゃないんだ。
これで俺の腕を縛ってくれ。
頼む。
(大山)早く!は…はい…。
ごめんよ。
でもあんたに殺されかけた俺だ。
これぐらいしてもらったっていいよね。
よし出てくれ。
仙台で降りて函館へ戻ってくれ。
茂…。
さあ早く行ってくれ!何言ってるんです!?証拠がないじゃないですか!
(携帯電話)失礼。
(携帯電話)今大山がですね函館空港行きの853便に乗ろうとしてます。
函館に?とりあえず乗ってみます。
あとでまた連絡します。
ご主人が函館に向かったようです。
アキさんあなたにはご主人が何をしようとしているかわかるはずだ。
これ以上お母さんを悲しませていいんですか?
(光世)あなたみたいないいお嫁さんもらってあの子はほんっとに幸せ者。
あの子を幸せにしてあげてね。
お願い…!お義母さんを殺させないで。
あの人…あの人止めてください。
お願いします!行きましょう!はい。
「留守番電話に接続します」ダメですねもう空の上でしょう。
電源切ってますね。

(電話)
(看護師)はい函館第一病院です。
えっ?中谷光世さん?ああ中谷さんは今検査に入っちゃってますね。
あぁそうですか。
わかりました。
じゃあまた電話します。

(呼び出し音)「留守番電話に接続します」あそうか。
なんだ今度は向こうが雲の上か。
電話切ってるよ。
「メッセージを録音してください」あもしもし西本です。
大山がですね…。
警部西本からの留守電で丸山海岸に向かったそうです。
あなたからご主人に電話をかけてくれませんか?私が電話をしたらその瞬間にあの人お義母さんを殺して自分も死ぬ。
そういう人なんです。
(大山)伊沙子は君と柳田社長の関係を公表するって言ってる。
だから俺は伊沙子を殺してあたかも伊沙子に殺されたかのように見せかけて自分も死ぬ。
そうすれば俺はストーカーの女に襲われて死んだ事になる。
伊沙子が館山の事を殺した事は君の口から警察に言ってくれ。
なるだけオペラハウスの建設に支障をきたさないよう俺はストーカーに殺された被害者として死んでいくよ。
君に会えてよかった。
君とあのオペラハウスは僕の宝物だ。
ダメ!死なないで!あなたが死んでしまったら私はまたひとりぼっちになってしまう!お願い死なないで!それであなたはご主人と…。
誰も死なせない。
もう誰も死なせてはいけない。
そうですね?警部。
ああ。
こんなとこまであいつ何しに来たんだろうな。
ごめんね遅くなって。
この間はありがとう。
助かった。
看板見たよオペラハウス。
すごい建物が建つんだね。
ああ。
あなたに会えてよかった。
こんな私を捜してくれたアキさんにも感謝しなくちゃね。
警察がさ…。
わかってる。
何も言わなくていい。
幸せになりなさいよアキさんと。
ああ…。
さようなら。

(アキ)やめて!やめて!あなた!あなたお義母さんを止めて!警部!アキ!十津川さん…。
君の犯行は全て判明した。
お母さん戻ってください!あなたが死ぬ必要なんかありません!いや!来ないでください!私は…!このまま海に消えたいの!死なせてください!!お義母さん!止めるんだ!お母さんを止められるのは君しかいない!君は33年前にお母さんに殺されかけたと思っているだろう。
だから自分のために命を絶ったとしても当然だと思っただろう。
しかしそれはそうじゃない!お母さんは男と幸せに暮らすために君を殺そうと思った。
それは…そんなのは嘘だ!嘘?君のお母さんに口止めをされていた住職が話をしてくれた。
お父さんが死んでお母さんには借金が残った。
お母さんは体が弱かった。
だから借金を返しながら君を育てるのはとても無理だった。
そこで伯父さんに君を預けようと思った。
ところが伯父さんはお父さんの借金の保証人をやっていた。
その上子供を押し付けられるのはいやだと怒った。
仕方なくお母さんはやむにやまれず一芝居打った。
伯父さんに聞こえるような芝居をだ。
自分が鬼のような母親だと思わせるようなそういう芝居をだ!
(泣き声)
(光世)死になさい!やめろ!
(光世)ここから飛び込むのよ!お前は鬼か!?自分の腹を痛めた子供をどこかの男と一緒に暮らしたいから殺すなんてお前人間じゃない!
(泣き声)泣くな茂!
(泣き声)伯父さんがいるから大丈夫だ。
お前を死なせない!大丈夫だ。
泣くな茂泣くな。
大丈夫だ茂。
茂泣くな大丈夫だ。
茂大丈夫だ…。
住職さんはこう言ってたよ。
お母さんは鬼じゃない。
子供を救った仏だと。
そんな…。
でも俺はあん時確かに殺されかけたんだ。
いやそうじゃない!お母さんは崖の上に君を連れていったんだろう。
飛び込めと言ったんだろう。
しかしなぜわざわざそんな事を言う必要がある?大人の力をもってすれば子供を突き飛ばすぐらいわけはない。
だがそれをしなかった。
それはなぜだ?伯父さんに聞かせるためだったとは思わないか?聞かせるため?思い出せ。
その時お母さんの手はどこにあった?それは君を突き飛ばそうとする手だったのか?その崖の上で誤って落ちてはいけないと必死に君を掴んでいた手じゃなかったのか?
(光世)いいのよ!知らないそんな昔の話。
幸せになってね茂。
よせ…やめろ…。
(大山)やめてくれ!あなた!
(大山)母さん!死なないでくれ!
(大山)母さん!
(光世)茂!死なないでくれ!母さん!
(光世)茂…茂…!
(大山)母さん…。
(アキ)あなた!お義母さん!
(光世の泣き声)あぁ茂…!
(泣き声)
(泣き声)西本どうしたの?おふくろの…母ちゃんの墓参りに…行きたくなりました…。
大丈夫か?あっ冷たい!冷たい…。
(光世の泣き声)別所を殺したのはなぜなんだ?伊沙子を殺して部屋を出た時通路であの男に後ろ姿を見られてしまったんです。
それで私にかまをかけてきたんです。
いや〜まいった。
あんだけむきになって怒るんだからあの女を殺したのはあいつらじゃねえな。
って事は犯人はあんたって事だ。
あっ…。
さーて…今度はあんたと平和に交渉だ。
いくらで俺の口をつぐませる?うわーっ!別所との会話で十津川さんが刑事だと気づき…。
(大山の声)十津川さんたちを小樽に行かせないためにあんなにひどい事をしてしまいました。
(大山の声)十津川さんの奥さんにも申し訳ない事をしました。
うっ!許してください。
そして伊沙子の身元が早くわかるとまずいと思い所持品をバッグに詰めてアキに処分させた。
(大山の声)今度の事は全て私が一人で計画しアキに無理矢理手伝わせたんです。
アキは悪くありません。
それだけは信じてください。
君に言っておかなくちゃいけない事がある。
ヤナギダグループのオペラハウス計画は白紙に戻ったそうだ。
そうですか。
でももういいんです。
私には母とアキという宝物があるんですから。
そうだよ。
あの2人は君にとってかけがえのない宝物だよ。
夢を追いかけて無我夢中で生きてきた。
しかし本当に大切なものは身近にあるんですね。
ああ。
アキさんもきっと更生してくれますよね。
そしてお母さんもきっと体を…。
ああ治すさ。
30年ぶりにお母さんと呼ばれたんだ。
それが力となってきっと治る。
はい。
(警笛)2015/10/17(土) 12:00〜14:25
ABCテレビ1
西村京太郎トラベルミステリー55 寝台特急カシオペア殺人事件[再][字]

函館駅6分停車の罠!走る密室で妻が誘拐され消えた…十津川警部に謎の挑戦状!!

詳細情報
◇番組内容
超ロングラン人気シリーズの“西村京太郎トラベルミステリー”第55弾!妻・直子と北海道旅行に出かけた十津川警部…ところが直子が“寝台特急カシオペア”で誘拐された…!さらに謎の連続殺人も発生!十津川は愛する妻を助けることができるのか!?
◇出演者
高橋英樹、愛川欽也、藤谷美紀、浅野ゆう子、山口馬木也、森本レオ、水野久美、井上晴美、森下千里、大浦龍宇一、山村紅葉 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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