趣ある優しい灯りの提灯
いにしえの時代から伝わる技法を生かしながら斬新な提灯を生み出している若き職人の兄弟が京都にいます
彼らが目指すのはお店の看板だけではなく室内の照明として使える提灯
暮らしに溶け込むインテリアとして注目されています
そんな2人が新作づくりに挑戦!
祖父が50年前にたった一度だけ作ったというユニークな形の提灯
それを兄弟2人がよみがえらせます
今回は暮らしに新たな灯りをともす若き提灯職人の夢のカタチ
江戸時代から続く京都園の名劇場・南座
毎年11月に開かれる吉例顔見世興行に合わせて新調される大きな赤い提灯
一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
京都の伝統技法の粋を集めたという南座の提灯
実はとても若い職人の手によって作られているのです
東福寺にある提灯づくりの小嶋商店
創業は寛政年間
240年を超える長い歴史を持つ老舗です
ここで今リーダーシップを発揮しているのが
そしてもう1人同じく10代目・弟の諒さんです
しっかり者の兄と明るい弟
そんな2人は5年前から南座の提灯づくりを任されるようになりました
小嶋商店にはパートの女性を含め8名の職人がいます
京都の伝統的技法を代々受け継いできました
えっと親方です親方でいつも僕らに提灯づくりを教えてくれたおやじですで母親も一緒に提灯作ってて僕ら兄弟が今新しいチャレンジしたりだとかということをしてますこうしようああしようとか結構バトルもありますしそらもういろいろですけどね基本的には仲いいと思いますね忙しなった時とかの結束力とかっていうのはやっぱ全然違うと思いますよ
小嶋商店では京都を中心に旅館やお店・ゲストハウスなどの看板となる提灯や祭りで使われるものなど数多く制作しています
提灯づくりは分業制
兄の俊さんは京都で採れた竹を割り「骨」と呼ばれる竹ひごを作ります
この「竹割り」の作業から始める提灯屋さんは今ではとても珍しいそうです
いいと思いますよこれもうこの茶色さとここが常に湿ってるような水分もめっちゃ残ってるんで
使うのは青竹
カットした断面が褐色を帯び水分を適度に含んだもの
それが提灯づくりに適しているそうです
提灯のサイズによって竹ひごの太さは変わりますがおよそ160本ほどにカットしていきます
提灯づくりに適した竹を選びまっすぐカットすることが大切
それができなければいい提灯は作れないのです
基本切って巻いてもらったあとの作業をするっていう感じですねちょうど僕が始めた時に竹を割る人が少なかったいなかったんで僕に先竹割りを教えてくれたんですよほんでそれが勝手に得意分野になっていって弟の時はもう割るヤツが1人いるからほな張るほうから教えようかっていうことで弟が張るほういってそれが得意分野になったっていう感じですね
兄が竹の骨を準備したらそこから弟へバトンタッチ
まずは「型組み」
代々伝わる型はおよそ100種類
今組んでいるのは最も多く注文を受けるサイズ
8枚の板を放射線状に立て上下を固定します
一般的に提灯は下のほうが細くなるように設計されています
そこにはある理由が
一緒の肩の張りしてたらしもぶくれに見えちゃうんですなんで提灯の下のほうがすぼんで作ってあるんです
先人の知恵が今も受け継がれています
続いて竹の骨をつないで輪を作りきれいな円にするための作業「骨ため」を行います
提灯の見た目を左右する大事な作業です
これいい竹やとほんまにたまんのも…たまるって言うんですけど円くなることをたまんのも早くてちょっと乾いてる竹とかやったら何回やってもなかなか円に近づかないんです
500回ほど「骨ため」を行ったあとはその骨を型にかけていきます
下が細くなっている提灯当然輪の寸法も異なります
(諒)これ一応順番があって1本ずつ寸法が違うんですよやま印が入ってるんですけどこのやま印の大きい順から入れていってます
このように輪にした骨を型にかけていくのは「地張り式」と呼ばれる京都の伝統技法
提灯の作り方は大きく分けて2つ
1本の細長いワイヤーを螺旋状に巻いていく「巻骨式」と輪にした竹の骨を何本もかけていく「地張り式」
「地張り式」は1本ずつ直径を測り異なるサイズの輪を組んでいくため当然手間も時間もかかります
今ではほとんど見られなくなった技法なのです
次は「糸つり」
骨をしっかり固定しながら提灯の表面がフラットになるように間隔を整えていきます
緩まんようにまっすぐ…あと間隔をそろえるのが難しいというか3つぐらいのことを同時にやらないとダメなんで1個に集中しすぎるとほかのやつができひんかったりするんで
続いて骨にのりを塗り紙を張っていきます
提灯のサイズに合わせて和紙の種類や厚さを変えて作業を行います
ゴツゴツと竹骨の表情が感じられる「地張り式」は
紙との接着面も多く丈夫な仕上がりになるのが特徴です
つなぎ目が目立たないよう細心の注意を払いながら丁寧に張っていきます
のりがしっかり乾いたら提灯から型を抜き取ります
次に「筋入れ」
提灯は収納のことを考えて伸縮自在の蛇腹になっています
ゴツゴツ感がなくて僕らその
仕上げは「絵付け」
古くから伝わる絵柄やさまざまな書体を下書きして色を付けます
一筆書きしたように見せる塗り方は親方のみができる熟練の技
灯をともすとまるで命が吹き込まれたように提灯の表情は大きく変わります
ゴツゴツと荒々しくそれでいて温かい
これこそ「地張り式」の魅力だといいます
祭りの多い秋は1年で最も忙しく一致団結して乗り切ります
しかし家族と毎日いることはどう感じているのでしょう?
基本うっとうしいですけどね
(一同笑い)
(9代目)でも当たり前ですよねそれがね
(俊)基本うっとうしいんやうっとうしい思てんねや
(諒)特に兄貴が一番うっとうしいやめとけお前そういうの
老舗の長男と末っ子として生まれた小嶋兄弟にとって提灯は幼い頃からとても身近なものでした
そんな環境の中父と同じ職人の道に進むことはとても自然な流れだったようです
なんか当たり前みたいなそういうもんやと思ってた…とこはありますけどねそんなだから就職とかっていうのは別にどんな会社入りたいとか考えたことないよなないな最近はなんか自信じゃないですけどなんていうんやろ…兄貴もいますしおやじやらもいますしこれからも思ってます
高校を卒業しこの道へ
もちろん甘い世界ではありませんでした
最初やってみろって渡された1本目の時に最初の刃入れでこの…これでこれがかたくて入らなくてむちゃして指切って縫いに行くっていう
(スタッフ)弟さんは竹を割ることもできるんですか?いやなめとるんですよこいつは完全にほんまにたまにマネしてやるんですけどこんな早いことできないんで
ご両親は継いでくれたことをどう思っているのでしょう?
まさか一緒に仕事してくれるなんて思ってなかったんでいいようになるってわしは提灯…なんか頭がかたいんか昔ながらのやり方を守っていくので精一杯やったんですけどイメージがあるんですよね
(俊)掃除してくれる?ちょっとパパのこの辺
長男の俊さんは4年前に結婚
忙しい時期は寝る間を惜しむ職人の世界
子どもたちと触れ合う時間はあるのでしょうか?
早よ帰る時は早よ帰るんでその時にガッツリ遊ぶというかお風呂も両方入れてみたいなことはしますけどヒャーアァ…
子どもたちの笑顔が日頃の疲れを癒やしてくれています
にこにこっとしてくれよ心ちゃん
この日新たな提灯づくりが行われていました
デザイナーと考案した一風変わった提灯
1日1個張れへんぐらいなんで普通の提灯やったら2〜3時間ぐらいで張っちゃうんですけど豪華に見えるっていう感じですね
金と白の紙をバランスよくはり合わせながら美しく仕上げていきます
この斬新な提灯の納品先はこんにちはこんにちはあ〜お世話になりますあっこんにちは
こちらのロビーに2人が作った提灯を展示することになったのです
(諒)どっちにしょうかな…すいませんちょっとこっちに回してもらっていいですか?そこそこです完璧です今すいません細かいこと言っていえいえ
(女性)調整というか…この柱が…
(男性)入った入った
(女性)じゃあ平行でちょっとこれ写真撮ろう
大創業祭という百貨店を挙げての一大イベントのシンボルとして2人の作った提灯は多くの人の目に留まりました
(女性)ほんと珍しいですねすてきですよ
周りを暗くすると漏れる光が幻想的な影を生み出します
これまでの看板としての提灯ではなくインテリアとして楽しめる室内照明の提灯が誕生したのです
このように提灯の新たな可能性を広げていきたい
そんな思いから兄弟2人で自分たちのブランドを立ち上げました
(俊)「小菱屋忠兵衛」っていう内装に入っていったりだとか…
生活様式が変わり提灯の需要は年々減ってきています
それならば提灯のスタイルも時代の流れに合わせていこうと考えたのです
こちらのショップでは店内の吹き抜け部分にいくつもの提灯を組み合わせました
まるでシャンデリアのような豪華さがあふれています
こちらのバーにも提灯の新しい形が
お店にふさわしくシェーカーの形をした提灯
見た目にも楽しいデザインです
またワークショップでは提灯を使った室内照明が作れます
テーブルランプにも使える僕ちょっと1面だけ見本見せるんでこれを張っていきます張る時は一番上をまずこうやってカチッと決めてくださいで使う指は人差し指と親指だけ人差し指で竹を触るほんでこういうシワが気になる時につまんで伸ばすこれの繰り返しですね
京都らしいものを家に飾れるとあって観光客に人気
この日は仙台からカップルが訪れていました
ほな電気消しますね
揺れる灯りが和紙のやわらかな質感と重なりとても温かい雰囲気になっています
小菱屋忠兵衛というブランド名のもと新たな提灯のスタイルを模索する小嶋兄弟
そんなある日工房に1人の匠が
8代目祖父の豊一さん
だんだんだんだん
提灯づくりに没頭してきた豊一さん
ふだんからあまり話をせずとても頑固な性格だったといいます
みずから提灯の型をつくるなど新たな可能性にも挑戦していたのです
たくさんあったんですけどね何面か残ってへんかな?残ってるやつもあるそれちょっともっぺん
(俊)いやめっちゃおもろいやんそれ
ひょんな話の流れから祖父の豊一さんが手作りした提灯の型を捜し出しました
かぶら型はあるんですけどここまでこんなんはないですね見たことないですね
50年前に祖父がたった一度だけ作ったという提灯の型
和紙を張るのが難しいとっても珍しい形状なのだとか
この型の提灯をよみがえらせ新たな室内照明を作りたい
そう考えた兄の俊さん
実は今新しい灯りの制作依頼が来ていたのです
築100年以上になる町家
雑貨の販売やカフェ・ギャラリーなど多目的なスペースとしてオープンする予定になっています
オーナーの石黒さんは以前小嶋兄弟が作る提灯を見てとても気に入りオーダーを決めたのだそうです
依頼は入り口につる灯り
ここにおじいさんの型の提灯を合わせようと考えていました
こういう形なんですなかなか大っきいもんですね
実際の場所に型を合わせイメージを膨らませます
(俊)その辺になるんちゃうか?うんそんな感じになると思うポンとまぁずっと見えてる感じになれば…いっぺんちょっとやらしてもらっていいですか?是非是非
早速提灯づくりがスタート
楕円形のデザインで直径が大きいため長く頑丈な竹が必要です
しかしここで問題が…
この感じ直径がこんだけ大っきいとうーん…
竹屋さんに電話し急遽新しい竹を仕入れることに
すいませんお世話になってますあの…
翌日注文した竹が到着
この秋に採れたばかりのパワーを感じるしなやかな竹を用意してもらいました
早速カットして品質を確認します
これやったらこれでいけると思います
続いては「型組み」
見たことのない初めての形に四苦八苦
そっちいってんねんちゃうねん俊これがちょっと丈長かったわあぁそう
型を組み終えおじいさんが50年前にチャレンジした提灯のイメージがつかめてきました
提灯とは思えぬほど平らな構造
表面積が大きく竹の骨を70本以上使います
作業が進むにつれ兄の俊さんにはある迷いが…
これが今下なんですけどだから結局見てもらえるような仕組みにはしたいなと思ってるんでこうやって見たらめっちゃ見えんねんか中糸つってるとかさそんなん全然伝わらへんやんか何が違うの?普通の提灯とって中見てもらったらこうやって巻き目があってとかさ1本ずつかがってあるんですっていうのが見えるやんか
240年続く伝統の技法を人々に知ってほしい
そのためには構造を見て楽しめるデザインにしたいそう考えているのです
諒さんにも納得してもらい口を少し大きめに開けることに決まりました
兄弟ならではの発想と思いが加わり新たな提灯が誕生します!
京都で240年続く伝統の技法で作られる提灯の専門店
10代目となる若き兄弟は今50年前おじいさんが作った型から復元した室内照明となる提灯を完成させました
よーしやっとできたねぇよかった中から見たいなぁちょっと早よ外してとりあえず納品終わるまでずーっと緊張っすよね
おじいさんも様子を見に訪れました
50年前の提灯が新たな発想も加わりよみがえりました
ほんまに?へぇ〜
いよいよ納品喜んでくれるのでしょうか?
こんにちは〜こんな感じになったんすけど大っきい〜!大丈夫かなはまる?
(俊)はまります大丈夫です
いよいよ点灯
ライトついたらあんまり大っきさ感じひん
扉を開けると大きな灯りで優しく包んでくれる室内照明としての提灯
(俊)だからまぁ一応僕らもそれ考えて風合いの出る和紙を選んで…中から見てもらったら節のバーッて流れとか
大きな口からかいま見える職人の知恵と技
新たな第一歩となる提灯を生み出した小嶋兄弟の夢のツヅキは?
提灯を今これから生活の中に取り入れてもらったりだとか店舗の内装ですねそういう所に色んな所につってもらえるようになったりとか
(諒)どんどん照明作っていって自分らの店持てたらいいなって
(俊)最終的には僕は子どもたちと一緒に仕事ができたらな〜って思ってるんですけど言わないですけどね
240年に及ぶ伝統の技術を生かしながら新しい提灯の形を提案する若き職人・小嶋兄弟
フレッシュな感性と培われた技が新たな文化を照らし出します
2015/10/17(土) 11:00〜11:30
ABCテレビ1
LIFE〜夢のカタチ〜[字]/「京都で人気イケメン提灯職人兄弟」語り佐々木蔵之介
人生はいろんな夢でできている…夢追う人の輝く瞬間を描きます。今回は「京都で人気イケメン提灯職人兄弟▽50年前の提灯を復刻!」です。
詳細情報
◇番組内容
京都の観光名所・南座に掲げられた印象的な巨大提灯。この提灯を制作しているのが小嶋商店の小嶋俊さんと諒さん兄弟。伝統的技法を守るイケメン職人兄弟です。そんな小嶋さん兄弟は屋外で使われる提灯を室内照明として展開する新ブランド「小菱屋忠兵衛」を立ち上げ、新たな挑戦をしています。
◇ナレーション
佐々木蔵之介
◇おしらせ
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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