2015年10月21日10時46分
▽住民、不安・反発続く
米軍経ケ岬通信所(京丹後市丹後町)に「Xバンドレーダー」が搬入されてから、21日で1年が経つ。市は、国から支給が始まった「迷惑料」を使い、すでに防犯設備の整備などを始めた。一方、騒音や米軍関係者の住宅建設をめぐり、住民からは反発が起きている。
基地から数百メートル。約200人が暮らす袖志集落の住民はレーダー設置後、基地の発電機の騒音に悩まされた。「ブーン」という低周波音が24時間続き、「夜も眠れない」と訴える住民が相次いだ。大下教夫区長(65)は「我慢できず市や防衛省の事務所にどなり込みに行った」と振り返る。
米軍と防衛省の対応が遅れ、発電機に消音器が取り付けられ騒音がほぼ消えたのは、今年3月上旬。住民らは、発電機を使わないように基地に高圧電線を引くことを求めているが、防衛省は「いずれ引き込む」とするだけで時期は未定だ。
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基地の受け入れで負担が増えるとして京丹後市には2014年度に約6億円、15年度は約8億円の「米軍再編交付金」が防衛予算から支給される。市は総額で、同じXバンドレーダーを受け入れた青森県つがる市並みの約30億円が支給されるとみて、駅の駐輪場や幹線道路への監視カメラや防犯灯の設置などに使っている。
米軍関係者は地域の祭りやスポーツイベントに参加したり、ボランティアで海岸を清掃したりして、住民と交流してきた。袖志の大下区長は「軍人のイメージから、一人の労働者と思うようになった」と話す。
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基地では20人の軍人と、「軍属」と呼ばれる民間の警備員や技術者が多い時で約140人働く。昨秋の来日後、基地から直線距離で20キロほど離れた京丹後市役所近くのビジネスホテルに滞在してきた。だが、ストレスが大きいなどとして、独断で賃貸住宅に移る技術者らが相次いでいる。
一方で警備員の宿舎となる6棟68戸の集合住宅の建設が、基地から約15キロの同市網野町の島津地区で進んでいる。この住宅をめぐって地元の自治会は6月、全戸に住民意向調査を行った。だが、中山泰市長は、住む所を選ぶ自由に反するとして、市議会で「意向調査は倫理上問題がある」などと発言。その後、自治会が調査結果の公表を見送ったため、一部住民から「住民自治への不当介入だ」との声が上がっている。
また、市基地対策室によると、米軍関係者がからんだ交通事故は昨秋以降、8月末までに20件発生。住民がけがをしたケースもあった。今月16日には、山田啓二知事が表敬訪問に来た基地の司令官に対し、関係者に車の運転は慎重にするよう求める場面もあった。
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レーダー配備から1年となるのを受け、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」などの市民団体は31日、「基地いらんちゃフェスタ」と題した抗議イベントを開く。基地を監視しフェイスブックで500回以上報告を続けてきた、会の永井友昭事務局長(58)は「技術者が勝手にホテルを出たあたりから、防衛省も市もコントロールが利かない。住民の安全・安心は後回しになっており、このままでは大きな事件・事故が起きても、米軍に抗議できるわけがない」と心配する。
こうした住民の反発に対し、大村隆副市長は「住民が不安を感じる問題で、市が米軍や防衛省の言いなりになるなど一切ない」と話した。
◇Xバンドレーダー◇
米軍が開発した早期警戒レーダーで、1千キロ以上先のミサイル弾頭の形まで把握できる。使用する周波数帯「Xバンド」にちなむ。弾道ミサイルの発射を察知し、イージス艦や迎撃ミサイル部隊へデータを送る。国内では青森県つがる市と京丹後市だけに設置されている。
■Xバンドレーダー配備の経過
【2013年】
・2月22日 日米首脳会談でXバンドレーダーの追加配備を合意。直後に配備先を航空自衛隊の基地がある経ケ岬に内定
・9月19日 山田知事と京丹後市の中山市長が基地の受け入れを表明
【2014年】
・5月27日 基地の建設工事が始まる
・10月21日 Xバンドレーダー本体が基地に搬入される
・12月26日 レーダーの本格運用が始まる
【2015年】
・1月21日 騒音問題で防衛省が住民に陳謝
・6月3日 米軍関係の集合住宅計画が建設される地区の自治会が住民意向調査を開始。結果は非公表に
・8月24日 基地近くでの祭りに基地司令官が出席して住民と交流