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日歯連:前会長ら3人を起訴 量的制限超過罪は初

毎日新聞 2015年10月20日 19時42分

 ◇政治資金規正法違反 両罰規定で団体の日歯連も起訴

 日本歯科医師連盟の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は20日、日歯連の高木幹正前会長(70)ら3容疑者を同法違反(虚偽記載、量的制限超過)で起訴した。日歯連のヤミ献金事件(2004年)を機に設けられた量的制限超過罪による起訴は初めて。特捜部は法の趣旨を無視して違法な寄付を繰り返した悪質な事件と判断、同罪の両罰規定を適用して団体としての日歯連も起訴した。

 他に起訴されたのは、日歯連の会計担当だった村田憙信(よしのぶ)前副理事長(70)と堤直文元会長(73)。3人は「違法との認識はなかった」などと起訴内容を否認しているという。

 日歯連は10年と13年の参院選比例代表に、組織候補として西村正美氏(民主)と石井みどり氏(自民)を擁立し、それぞれを支援するための中央後援会を作った。

 起訴状によると、3被告は日歯連幹部の立場で共謀し、政治団体間の年間寄付上限(5000万円)を超え、10年に西村まさみ中央後援会に1億円、13年に石井みどり中央後援会に9500万円を寄付。それぞれうち5000万円は他団体を迂回(うかい)させる形で移動させ、政治資金収支報告書に虚偽記載したとされる。10年分の量的制限超過は公訴時効(3年)が成立している。有罪が確定すると日歯連には50万円以下の罰金が科される。

 関係者によると、一連の資金移動は村田被告が考案し、当時会長だった高木、堤両被告が了承。あらかじめ上限を超える寄付が行われる前提で予算が組まれていた。特捜部は、参院選前に多額の後援会資金を必要とした日歯連が、計画的な違法寄付を隠すために「迂回寄付」で偽装を繰り返したと結論付けた。

 日歯連は13年参院選で、石井氏の上位当選に向け計約4億円を投じる組織的運動を展開。公示半年前から約56万人分の支援者名簿を集め、電話で支援を呼びかけていた。特捜部は公職選挙法が禁じる事前運動などに当たらないか調べたが、違法な選挙運動との断定は困難と判断し、立件は見送った模様だ。【平塚雄太、近松仁太郎】

 ◇石井氏の事務所「大変申し訳ない」、西村氏「心からおわび」

 日歯連元幹部らが起訴されたことを受け、石井みどり氏の事務所は「国民の皆様、関係者の皆様にご心配をかけ大変申し訳ない。裁判の行方を見守りたい」、西村正美氏は「日歯連会員、国民の皆様に多大なご心配をかけ、大変申し訳なく心からおわびします」とのコメントを発表した。

 ◇全体像として迂回は明らか

 日本大法学部の岩井奉信教授(政治学)の話 個別に見れば形式的には合法でも、全体像として迂回(うかい)させようとしたことは明らかだ。これまでまかり通っていた手法だが、検察が違法性を問うのは初めてで、チャレンジともいえる。政治家側に制度の改革を改めて促すだけでなく、業界団体間の献金を規制すべきだとの声も強まるだろう。

 ◇違法性の認識があったか微妙な問題

 元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士の話 複数の政治団体の代表者が同じ場合でも法的に別組織だ。各団体が収支報告書に寄付の流れをありのままに記載したことは客観的に明らかで、政治資金規正法の目的である「資金の出入りの透明化」に反していない。違法性の認識があったといえるか微妙な問題で、法的見解も分かれるだろう。

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