皇后さまは20日、81歳の誕生日を迎え、これに先立ち宮内記者会の質問に文書で回答した。

 戦後70年となったこの1年を「改めて当時を振り返る節目の年」と言及し、次世代やその次の世代の人たちが各種の催しや展示場を訪れていると紹介。「真剣に戦争や平和につき考えようと努めていることを心強く思っています」と述べた。4月に天皇陛下と太平洋戦争の激戦地・パラオを訪れ、戦死者の霊に祈りを捧げたことを「忘れられない思い出」とつづった。

 皇太子家の長女愛子さまと2人で話している際に、原爆の被害を受けた広島の女子学生たちが自分たちで電車を動かしたという新聞記事が話題になったと紹介。「愛子もあの記事を記憶していたのだと、胸を打たれました」と記した。

 水害で被災した茨城県常総市を見舞ったことについては「水流により大きく土地をえぐられた川沿いの地区の状況」に驚いたといい、「道々目にした土砂で埋まった田畑、とりわけ実りの後に水漬(みづ)いた稲の姿は傷ましく、農家の人々の落胆はいかばかりかと察しています」と思いやった。

 このように戦争や災害で志半ばで亡くなった人々を思い、残された人々の深い悲しみに触れるなかで「この世に悲しみを負って生きている人がどれ程多く、その人たちにとり、死者は別れた後も長く共に生きる人々であることを、改めて深く考えさせられた1年でした」と明かした。

 北里大特別栄誉教授・大村智さん、東京大宇宙線研究所長・梶田隆章さんのノーベル賞受賞の決定は、この文書回答作成中だったといい、「明るい、嬉(うれ)しいニュース」と喜びを記した。ラグビーワールドカップでの日本代表については「輝かしい戦いぶり」とし、「4年後の日本で開かれる大会に、楽しく夢を馳(は)せています」と心境を明かした。

 持病の頸椎(けいつい)症性神経根症の痛みに加え、冠動脈が細くなって心臓に十分な血液が行き渡らない「心筋虚血」の症状が判明したが、ご自身の体調については「これまでと変わりなく過ごしています」と述べた。宮内庁はまとまった休日を設けることや、私的旅行や静養の機会を増やすことを検討している。