2015年10月19日23時43分
共産党の志位和夫委員長は19日、朝日新聞のインタビューに応じた。詳しいやり取りは次の通り。
◇
――「国民連合政府」を呼びかけた狙いはなんですか。
安全保障関連法、戦争法をそのままにできない。戦後60年余り続いた集団的自衛権は行使できないという政府解釈を一内閣の専断でひっくり返し、立憲主義も破壊された。戦争法は廃止し、集団的自衛権の行使容認の閣議決定も撤回する。野党がバラバラでは安倍政権が続くことになるので、大義のために野党間の基本政策の違いを横に置いて勢力を結集すべきだ。国民の声に応えるためには、共産党も変わる必要がある。
――いつから構想を練っていたのですか。
夏の盛りの頃から色々と考えてきた。きっかけはやっぱり国民の声だ。国会前の抗議行動で若者のみなさん、学者のみなさん、ママの会など諸団体が集まり、戦後かつてない新しい国民運動となっている。それは「野党は一致結束して欲しい」という声であり、痛いほどずっと感じていた。
――8月には岩手県知事選での野党共闘の動きがありました。
岩手のこともあるが、安保法案の国会審議が始まった5月以降、衆院審議の段階で2回、参院審議の段階で4回、計6回の党首会談をやっている。それを通じて互いの信頼関係ができるし、(安保法が成立直前の)9月18日の野党党首会談では一致して内閣不信任案の提出も決めた。わたしはその席上、「もし仮に不信任案が可決されたらここにいる5党とそれに賛同した勢力で連立政権を作ることになりますね」と発言したが、理論的にはそういうところまで野党共闘が大きく進んだ。国民の皆さんの運動が後押ししてくれたから野党共闘が前進した。
――どうやって国民連合政府構想を実現するつもりですか。
まず、参院選で野党間の選挙協力が大事になる。特に32ある1人区は全部野党が勝利する構えで本格的な協力ができればと願っている。(具体的な)やり方はこれからの話し合いだが、一番力の出る、国民に野党の本気が伝わる協力をやりたい。衆院選でも選挙協力して自公政権を退陣させ、安保法廃止と立憲主義の回復に限った暫定的な特命政権をつくる。連合政府だから、第1党が首班を担うのが一般的ではないか。それを達成したら、その先の針路は総選挙で国民に問うて決めていくのが基本だ。
――その一歩として、党綱領にある日米安保条約の廃棄や自衛隊の解消の目標を「凍結」すると打ち出しました。しかし、自衛隊について違憲から合憲に政策変更した社会党のように批判される心配はありませんか。
当面は自衛隊を活用する党方針は2000年に決めている。国民合意で一歩一歩やっていくと以前から決めていた。安保は1998年に暫定政権の場合は凍結すると決め、党内的な議論はもう尽くされている。相違点は横に置き、一致点で協力するのが大原則だ。
――相違点は本当に横に置けますか。例えば民主党が容認する沖縄県の普天間飛行場の移設問題は、工事が着々と進んでおり、国民連合政府でも対応が問われます。
沖縄問題は県民があれだけ明確な「新基地建設ノー」の審判を何度も下している。民意を無視して強権的なやり方で工事を続けることはやるべきではないという線で、これはすぐ問われる。この点は話し合って前向きな一致を得たい。
――国民連合政府による政権運営期間はどれぐらいを想定していますか。
これはやってみないとわからない。ただ、わたしは安保法を廃止する、立憲主義、民主主義を本格的に取り戻すとなった場合、これ自体が大仕事になると思う。だから、彼ら(安倍政権)のように強行採決なんて絶対にやるべきではない。少なくともでたらめな憲法解釈を正すためには一定の作業は必要だ。
――これまで国政選挙の基本路線としてきた全選挙区での擁立を見送るのは、大差で敗れた選挙区での供託金没収を回避する財政的な狙いもあるのではないですか。
09年衆院選で小選挙区を絞ったのは財政的な問題もあったが、今の党の力からすれば衆参全区で擁立できる状況にある。今回は安倍政権を打ち倒すためだ。
――野党連携に共産も加わることへのアレルギーが民主にあり、逆に票が減るとの懸念も出ています。
私たちも誤解されている面があると思うので、取り除くために努力する。しかし、アレルギーも乗り越えて未来のために結束すべきだ。安保法制しかり、安倍政権がやっていることを個々でみれば、世論は反対だ。安倍政権に対して道理も筋もある強力な受け皿が見えたら、国民の状況はガラッと変わる。野党の決意次第だ。
――不破哲三元議長とは何か話しましたか。
この方針は中央委員会総会で決めた。その前には当然、幹部会、常任幹部会もやっている。不破さんも常任幹部会の一員であり、不破さんを含めて、この問題を良く議論して決めたということだ。
〈国民連合政府〉 共産党が提唱する野党結集による連立政権構想で、安全保障関連法の廃止と立憲主義の回復を掲げる。この二大テーマで合意できる野党が衆参の国政選挙で協力し、実現すれば解散する「暫定政権」との位置付けだ。共産は実現のため、これまで他党との協力の障害となっていた「日米安全保障条約の廃棄」や、「自衛隊の解消」などの共産の基本政策を一時凍結する考えを示した。これまでに民主、生活、社民の各党に参加を呼びかけ、維新の党にも賛同を求める考えだ。
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