Updated: Tokyo  2015/10/23 19:58  |  New York  2015/10/23 06:58  |  London  2015/10/23 11:58
 

日銀:次の関門は会合前日の生産、輸出下げ止りひとまず安堵-関係者

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    (ブルームバーグ):日本銀行は9月の貿易統計で輸出が下げ止ったことを受けて、ひとまず安堵している。次の関門は、30日の金融政策決定会合の前日公表される同月の鉱工業生産。日銀は息を殺してその結果を注視している。

財務省が21日公表した9月の輸出金額は前年比0.6%増と事前予想(3.8%増)を下回った。名目の輸出額はさえなかったが、日銀が同統計に基づき独自に算出している実質輸出(名目輸出を日銀作成の輸出物価指数で割った指数)は前月比1.9%増と2カ月ぶりのプラスに転じた。同統計は月末公表の鉱工業生産の有力な先行指標でもあるため、複数の関係者によると、日銀内では安堵の空気が流れている。

日銀は30日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2017年度までの見通しを示す。複数の関係者によると、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)前年比の見通し(委員の中央値)は、15、16年度とも7月の中間評価(それぞれ0.7%上昇、1.9%上昇)から下方修正される公算が大きく、物価目標である2%に達する時期も「16年度前半ごろ」から後ずれさせる方向で検討している。

一方、日銀が独自に試算しているエネルギーを除くコアCPI前年比は足元で1.1%上昇と着実に伸びを高めている。複数の関係者によると、日銀は同指数が当面高めに推移するとみており、物価の基調は着実に上昇しているとの見方を変えていない。日銀は9月の鉱工業生産、それに会合当日発表される同月の消費者物価を見た上で、30日の決定会合で追加緩和が必要かどうかを最終判断する。

輸出はひとまず下げ止り

元日本銀行理事の早川英男氏は16日のインタビューで、追加緩和の手段が限られる中で、「ここは取りあえずいったん様子を見るというのが、いかにも日銀が考えそうなことだ」としながらも、「9月の鉱工業生産が悪かったら、方針は1日で変えられる。日銀はそこで背骨を砕かれる可能性もある」と述べた。

具体的な目安として、「9月の生産予測指数は前月比0.1%増だが、同月の実質輸出が前月比横ばい程度にとどまらず2~3%落ちると、相当危なくなる。日銀にとって今すごく大きな心の支えになっているのは、10月の生産予測指数が4.4%増と大きく回復していることだ。4%は無理でも、半分の2%程度に行ってくれれば御の字だろう。外需が落ち込み、これが期待外れに終わるとアウトだ」としていた。

しかし、ふたを開けば9月の実質輸出は前月比1.9%増。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは21日のリポートで、「7-9月は前期比0.5%増と小幅だが2四半期ぶりに増加し、輸出は下げ止まっている。中国を始めとした新興国景気の減速が続き、アジア向け輸出は小幅ながら減少が続いたが、欧州向け輸出が緩やかに増加する中で、米国向け輸出がようやく持ち直しに転じた」と指摘した。

生産弱ければ追加緩和の可能性高まる

次の注目材料は9月の鉱工業生産だ。8月の鉱工業生産速報は前月比0.5%低下と予想外の2カ月連続のマイナスだった。予測指数は9月が同0.1%上昇、10月は同4.4%上昇。15日発表された8月の確報値は同1.2%低下とマイナス幅が拡大した。ブルームバーグ調査では、9月の鉱工業生産は同0.5%減が見込まれている。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは22日のリポートで、「来週の最大の注目は日銀の政策決定会合だが、その直前の鉱工業統計はその最終判断に影響を与える重要な指標となるだろう。9月の生産のみならず、10-11月の生産予測調査の結果が弱ければ追加緩和の可能性が高まり、強ければ低まる」と指摘。9月分はコンセンサスと同じ0.5%減を予想している。

バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは23日のリポートで、このところ鉱工業生産と相関が高いのは「実質輸出」ではなく、財務省が作成する輸出価格指数で輸出金額を実質化した「輸出数量」だと指摘。9月分は実質輸出が増加したのに対し、輸出数量は同2.2%減とむしろ大きく落ち込んだ。

森田氏は「9月分の輸出数量は、29日に発表される9月分鉱工業生産の下振れリスクを示唆する」と指摘。9月の鉱工業生産は前月比1.0%減程度を予想している。予想通りであれば、7、8月に続く3カ月連続の減産となり、「景気の緊張感、ひいては日銀への政策プレッシャーも高まるであろう」としている。

2001年のトラウマ、再び背骨砕かれる可能性も

日銀は2001年3月19日、量的緩和を導入した。その1回前の2月28日の会合で、当時ターゲットだった無担保コール翌日物金利を0.25%から0.15%に引き下げたが、引き金になったのが当日発表された鉱工業生産だった。当時、調査統計局長として決定会合に出席した早川氏が「ショッキング」と形容したほど大きな打撃だったことが、10年後に公表された議事録で明らかになっている。

早川氏は当時を振り返り、「もともとITバブル崩壊で米国経済が悪くなっていたので、どこかでショックが来るかもとは思っていたが、予測指数と全く違う数字が出てきたのでびっくりした。これは無理だと。あんな数字が出れば、ここは何もしないでよいという話にはならない」と語る。

さらに、「既に公表されていた貿易統計が悪くてやばいなと思っていたが、思った以上に生産が悪かった。今回もまずは貿易統計、そして生産だ。貿易統計に基づく生産の予想も外れることもある。生産が悪かったら金融政策は1日で変えられる。9月の生産、それに10月の予測指数の改定が出て、これで日銀は背骨を砕かれる可能性もある」としている。

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記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 上野英治郎, 中川寛之

更新日時: 2015/10/23 16:30 JST

 
 
 
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