米露の「火薬庫」シリアで、両国が代理戦争に突入する可能性について

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なぜ米軍の6万回にも上る攻撃に耐えたISが、ロシア軍の半月ほどの攻撃に壊滅状態になったのか―。この疑問に明解に答えてくれるのが『田中宇の国際ニュース解説』。米国はむしろISを支援しているのだそうです。

深刻化するシリア情勢

ロシア軍機による「イスラム国」を中心としたイスラム原理主義勢力の空爆が大きな成果をあげている。10月13日の24時間だけでもイラク北部のイスラム原理主義勢力の支配地域に88回の爆撃を行い、「イスラム国」の軍事拠点86カ所を破壊した。すでに「イスラム国」は多くの軍事車両や地上兵器を失い、半ば壊滅状態にあると見られている。

そのため、「イスラム国」の戦闘員の多くは、ヨーロッパのほか、周辺諸国に逃避し、これらの国々が新たなテロの脅威にさらされる可能性も出てきた。3,000名の「イスラム国」の戦士がヨルダンへと避難したことは広く報道された。

「イスラム国」の聖戦の呼びかけ

こうしたなか、「イスラム国」のスポークスマンのアブ・モハメッド・アルアバニはインターネットに40分のオーディオメッセージを発表し、世界中の青年はロシアとアメリカに対して聖戦を行うように呼びかけた。メッセージでは特定の攻撃の目標は示されなかったものの、「イスラム国」はロシアをかならず撃つとしている。またアメリカも悪魔と組んだ敵だとし、攻撃するように強く促した。

「イスラム国」は世界にあらゆる地域で、社会に強い不満を持つおもにイスラム教の青少年を引き付けている。こうした事実から見ると、シリアから周辺諸国に避難した「イスラム国」の戦士とともに、「イスラム国」の支持者がアメリカやロシアが海外に持つ施設がテロの攻撃目標になる可能性が高くなっている。

ロシア、ラブロフ外相の発言

ところでアメリカに対しては、やはり強い不信感が高まっている。ロシアのラブロフ外相はロシアのテレビ、「NTV」のインタビューに応え、次のようにアメリカに対する強い不信感を表明した。

「(連合軍が非能率的な)理由は、もう1つある。私は、これについては恐らく、我々は理解する必要があると考えている。私もこれについて、話をする他の外相たちに定期的に質問している。もしかしたら、目的は発表されているものとは全く違うのではないか? もしかしたら、やはり目的は政権交代なのではないかと。なぜなら彼らは、シリア問題の最終的な解決は、アサド大統領がいなくなった時にはじめて可能となるという自分たちの立場を放棄しないからだ」

またラヴロフ外相は、次のように指摘した。

「我々は、リビアのカダフィ政権を転覆させるために、我々の西側のパートナーと地域の国々が、最も悪名高き過激主義者たちと協力したのを覚えている。この過激主義者たちはその後、悪鬼を解き放つように北アフリカ全体、そして『ブラック』アフリカにまで広がった」

このように発言し、アメリカの真の目的は「イスラム国」の壊滅にあるのではなく、アサド政権を崩壊させることであり、そのために「イスラム国」を支援しているのではないかという強い疑念を現した。

事実、過去1年半の間、アメリカを中心とした有志連合は約6万回の空爆を実施したものの、「イスラム国」の主要拠点はまったく無傷だった。9月30日から始まったロシアの空爆で、「イスラム国」は短期間のうちに壊滅に近い状態に追い込まれている。こうした事実からすると、やはりアメリカは「イスラム国」を支援しているのではないかと疑われても仕方がない。

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