文科省:科学研究補助を見直し 細目再編し分野融合
毎日新聞 2015年10月20日 08時20分
文部科学省は、公費で研究活動を支援する「科学研究費補助金(科研費)」の仕組みを、2018年度に抜本改革する。400以上に分かれていた研究区分を大きくし、審査に異分野の専門家も加わることで、複数の分野が融合した研究や新しい視点の研究に資金を回しやすくする。1968年に現行制度ができて以来、初の大幅見直しという。
科研費は年間2000億円以上が充てられるが、今年度は約10万7000件の新規応募に対し採択されたのが約3万件で、研究者にとって資金獲得は狭き門だ。厳しい競争の中、近年の日本の科学論文数は中国などに抜かれ大きく水をあけられており、基礎研究を支える科研費の配分は浮上の重要な鍵を握っている。
これまで科研費は「系→分野→分科→細目」という4段階の区分のうち、一部を除いて細目単位で公募・審査をしていた。例えば、ゲノム(全遺伝情報)関係では「ゲノム生物学」「ゲノム医科学」「システムゲノム科学」に分かれている。細目は5年ごとの見直しの度に増え、現在は最大約430に上る。
こうした細分化は、専門性の高い審査ができる半面、分野によって競争率に差がある▽異分野融合の妨げになる−−などの弊害が指摘されていた。
今回の改革では、細目を再編して3割程度減らし、さらに、より大きな区分での応募も可能とする。代表的な費目の「基盤研究A」(期間3〜5年、2000万〜5000万円)と「若手研究A」(期間2〜4年、500万〜3000万円)は、区分が70程度になる見通しだ。これにより、審査に異分野の専門家も加わりやすくなる。また、書面と合議の審査を別々の委員が担当していた従来方式を改め、同じ委員が統合審査をして質を高める。
同省の鈴木敏之・学術研究助成課長は「ノーベル賞級の成果を生み出しているのは研究者個人の自由な発想や独創性。多種多様な挑戦を支える役割を強めたい」と話す。【須田桃子】
【ことば】科学研究費補助金
学術研究に必要な資金を研究者個人に助成する仕組みの一つで、人文学、社会科学、自然科学の全分野が対象。研究者の応募した研究計画を審査して採択を決める。今年度は約10万7000件の新規応募のうち約3万件が採択された。継続分を合わせた配分総額は約2154億円。