横浜欠陥マンション、くい8本打ち込み不足は従来の24本分か
横浜市都筑区のマンション傾斜問題で、このマンションを施工する際に従来の3倍の支持力(強度)を持つくい打ち工法「ダイナウイング」が採用されていたことが18日、分かった。この工法はコストと環境に配慮し、くいの本数を減らすことが可能になるが、くい1本あたりの重要性は従来より高くなる。今回傾いたマンションの棟では、強固な地盤である「支持層」に到達していないなど打ち込みの深さ不足のくいが8本あったことが明らかになっている。
「ダイナウイング」は、旭化成の子会社で今回のマンションでくい打ち工事を担当した「旭化成建材」が開発。2004年から全国のマンションや商業施設で採用され始め、翌05年12月から06年2月にかけて工事が行われた今回の物件にも使われた。
鋼製の羽根が先端に付いたくいを回転させながら地中に埋め込んだ上、セメントミルクを注入して固める工法で、旭化成建材は「1本1本のくいの支持力を従来の約3倍に高める」と当時発表している。
「ダイナウイング」では、個々のくいの支持力が高まる分だけ現場に打設するくいの本数を減らすことが可能となる。掘削によって発生する残土量も同時に減らせるため、コスト・環境の両面に配慮された技術だ。
ところが、今回のケースは少なくとも8本のくいの打ち込み不足が明らかになっている。仮に従来の工法を採用した場合、全体の支持力で単純計算すると、24本のくいが打ち込み不足になっていることになるが、親会社の旭化成は「単純計算はできません」としている。
建築エコノミストの森山高至氏は「おみこしで言えば、担ぎ手を全員力持ちにして人数を減らした状態なので、(くいの施工不良で)担ぎ手が減ればバランスを崩す原因になる可能性はあります」と指摘。今後のポイントとして「施工主がくいの本数をギリギリに設定したか、余裕を持って設定したか。また(施工不良のくいが)どのように配置されているかも重要だと思います」と分析する。
傾斜した棟には計52本のくいがあり、これまで南側の28本は調べたが、北側の24本は未調査だった。事業主の三井不動産レジデンシャルと施工主の三井住友建設は、19日から北側の24本が強固な地盤に届いているかどうかの調査を始める。くいの脇にドリルで穴を掘る「サウンディング調査」と呼ばれる方法を採用。他の3棟についても、住民と話し合った上で順次調査する予定だ。
国土交通省は旭化成建材や三井住友建設などの行為が建設業法に違反する疑いがあるとみて、行政処分を視野に本格的な調査を進める方針だ。