横浜欠陥マンション、くい調査開始も住人かみついた!
三井不動産グループが販売した横浜市都筑区のマンションの傾斜問題で、施工主の三井住友建設が19日、マンションの傾いた棟の北側のくい24本の調査を始めた。棟の基礎に打たれた計52本のうち、南側の28本は調査済みで、残りのくいが、強固な地盤の「支持層」に届いているかを確認するのが狙い。一方で、先行き不透明な状況に住民らの不安は高まるばかりで、住民の男性(69)は「ちゃんと調査を終えてから、建て替え案とか提案しろ」と作業員をどなりつける場面もあった。
この日午前9時頃、「三井住友建設」と書かれた水色の作業服を着た約10人の男性らが、4棟(計705戸)で構成されるマンションに入った。調査範囲に当たる傾いた棟の北側周辺で図面を確認、機械を設置し壁や地面を計測した。
午後2時すぎ、「なんで、そんなとこでコソコソ調べているんだ!」突然、男性のどなり声が、閑静な住宅街に響き渡った。棟の裏手で作業する光景が、男性にとって「隠れて行っている」ようにみえたのだという。作業員らは「予備調査をしています」と、しきりに頭を下げていた。男性は「調査を完全に終えないうちに、建て替え案なんて考えられない」などとまくしたてた。
傾斜問題発覚から6日、「建て替え」「引っ越し」などを迫られる住民の不安は高まるばかりだ。男性は、傾いた棟の隣の棟の10階を、8年前に新築で約4300万円で購入したという。「まさか、くいがこんな事になってるとは知らなかった。今日から調査することも知らなかった」と、事業主の三井不動産グループらに対する不信感を募らせている。
三井住友建設によると、今回の調査は、くいの脇にドリルで穴を掘る「サウンディング調査」と呼ばれる方法で支持層の深さを調べ、くいの長さと比べることで到達を確認する。19日から開始することは「9月に管理組合に伝えた」という。今後、他の3棟についても、住民と話し合った上で順次調査する予定。
一方、国土交通省は19日、施工主の三井住友建設や、くい打ちを施工した孫請けの旭化成建材などが、ずさんな施工管理やデータ改ざんをしたことが建設業法違反の疑いもあるとみて、本格的な調査に乗り出した。同法は契約に対して不誠実な行為があった場合などを処分の対象と定めており、一連の経緯の報告を求めた上で悪質性の程度を判断し、処分を検討する。
◆サウンディング調査 棒の先に付けた金属製ドリルを土中に差し込み、荷重をかけたり回転させたりして地盤を調べる方法。荷重をかけた際に沈む長さや、一定の長さが沈むまでの回転数から、その地点での地質や硬軟を判定する。調査のための機器が小規模なため、狭い場所でも調査できるのが特徴で、住宅地の地盤調査に広く使われている。JISや国土交通省の告示で標準の方法が規定されている。