定型句と化しつつあるその言葉。
「結婚は人生の墓場」
自分より先に友人が結婚した時、まさにそんなセリフを言っていた。
その友人は、妻を「鬼嫁」といい、いかに普段の生活で自分が虐げられているかを自虐的に語っていた。はっきり言ってネタにしていた感もある。今にして思えば、あれは愚痴を言っていたというよりノロケを食らっていたのだが、毒男の自分にはそこまで行間を読むスキルがなかった。
だが、世の中には本気で「結婚は人生の墓場」と考えている人たちが一定数いる。
上記のサイトでは、結婚観に関して調査を行っている。
全国の既婚者400人に「結婚は人生の墓場だと思うか?」と聞いたところ、男性が15.0 % 、 女性では17.5% と、そう考えている人は2割に満たなかった。この調査では女性の方がより「結婚=墓場」と考えているというのが興味深い。
また、他人に対して「結婚は人生の墓場」といったことがあるかという質問に対しては、男性が16%、女性が8.3%と、その割合が逆転している。この辺りは、前述の友人のように、自虐ネタとして語っているというのもあるのかもしれない。
結婚前から「結婚=墓場」と考えていた人は、結婚後も約8割が同じように考えている。逆に、結婚前はそう思っていなかったが、結婚後にその考えを改め、「結婚=墓場」であると思うようになった人も1割強は存在する。基本的には、結婚前からどう考えていたかで、結婚後の生活の印象も決まるという調査結果になっている。
自分の場合。
自分が今の妻と付き合って、その後結婚したのはごく自然な流れだった。だから、結婚前に「人生の墓場」などと思ったことはない。
自分は、一人暮らししていた時は実にだらしない人間だった。
全く自炊をせずに、御飯は外食とコンビニ弁当ばかり。オマケに食べる量が多く、松屋で定食を食べた後に物足りなさを感じ、吉野家で牛丼を食べるなどという事も日常茶飯事だった。
当然、栄養のバランスを考えて食事を摂るなどという事などは考えたこともなく、常に自分が食べたいものだけを食べていた。気に入ったものは、飽きるまで何日も同じものを食べ続けた。
だから、体重も今より40kgほど多かったし、口内炎などが出来る確率も今よりずっと多かった。しょっちゅう口内炎が出来て「痛い痛い」と言っていた記憶がある。
だが、結婚して妻が料理を作ってくれるようになって、こういう自堕落な部分は劇的な改善を見せた。自分で選ぶとまず食べる機会のない魚なども適時献立に挿入され、野菜も充分な量を摂取するようになった。必然的に口内炎に悩まされる日々は殆ど無くなった。
未知との遭遇。
結婚して変わったのは、栄養のバランスだけではない。
自分は道が覚えられない。なので、車の免許を持ってはいたが、自分の住む町から出て他の町へ遊びに行くなどという事はしたことがなかった。行っても帰ってこれる自信がないからだ。
当時流行っていたmixiのプロフィール欄にも、「インドア派」と書くくらい全くもってどこにも行かなかった。だが、結婚してからは、妻が車で東京に行って帰ってきたり出来るレベルの人間だったことも有り、随分と活動的になった。
電車以外の手段では生まれて初めて自分の町を出て、新潟や仙台などの町へ遊びに行った。それどころか、新婚旅行ではフランスのパリへ行き、2011年にはイギリスのロンドンに足を伸ばし、あこがれのプレミアリーグ生観戦という夢を叶えた。その後も何度か台湾へと旅行をし、大いに楽しんだ。
欧州へ行った時は、妻が英会話スクールで英語を勉強していたこともあり、現地の人とのコミュニケーションも取ってくれた。自分は、ただ後ろを付いて行くことしか出来なかったが、この妻のコミュニケーションスキルには本当に感謝しているし、尊敬もしている。
自分一人で生きていたら、絶対にこんな経験をすることは無かっただろう。そういう意味では、自分は妻と結婚することによって、かけがえのない人生経験を積ませてもらったことになる。
子供が産まれて。
昨年には結婚8年目にしてようやく子供が出来て、12月に無事に産まれた。
この出産というものは、当然ながら自分たち夫婦にとって人生最大のイベントだった。何しろ、今までは自分たち二人の事だけ考えていれば良かった所に、守るべきものが現れたのだ。
当然ながら、全てのスケジュールは子供を中心に考えなければならない。事前に考えていた通り事が運ぶとは限らない。自分は不確定要素が嫌いな人間で、どこかに出かける時などは事前に全ての計画を立てておかないと気がすまない人間なのだが、乳幼児が相手ではそうも言ってられない。
日々起きるトラブルにすったもんだしながら、それでも以前より確実に「楽しい毎日」をおくっていると断言できるし、すやすや寝ている子供の顔を見ていると、本当に子供を作る決断をして良かったと思っている。
「そんなの今のうちだけだぞ」という人もいるだろう。
「結婚、出産はコスパ悪い」と考えている人もいるはずだ。
自分も昔はそうだった。
だが、愛する人が目の前に現れて、守るべきものを手にした今では、そんな昔の自分の考えが「間違っていた」とまでは言わないまでも、「視野が狭かったかな?」と思っている。
手にしてみないとわからない事って、本当にあるんだなぁと思った次第である。
結婚という契約が全てではないが、もし、結婚に関して迷っていて、結婚に対して絶望を抱いていないのなら、一歩踏み出してみるといい。そうすることで、今まで見えなかった景色が見えてくることもあるのだ。
そして気づくだろう。これは、ゴールではなくスタートなのだと。