高谷秀男
2015年10月20日05時11分
郵政民営化前に国や公社が募集した簡易生命保険契約の剰余金(利益)の一部を、日本郵政傘下のかんぽ生命保険が自社の利益として内部留保に回している。累計は民営化後7年半で3572億円に達した。非営利事業で集めた「契約者の財産」が「株主の財産」に変わっている。11月にかんぽ生命が株式上場すると一般株主の財産にもなる。
簡保契約(旧契約)は2007年10月の郵政民営化を境に新規募集が打ち切られたが、15年3月末時点で2290万件の契約が続いている。もともと剰余金が出れば配当として契約者に戻すかたちになっていた。
民営化後は、旧契約のお金の流れが変わった。旧契約は独立行政法人の郵便貯金・簡易生命保険管理機構が引き継ぎ、かんぽ生命が民営化後に結んだ新契約(15年3月末で1485万件)とは別に損益をはじいている。
機構は形式的な組織で、かんぽ生命に簡保の資金運用や保険金支払いなどを任せる「再保険」という契約を結んでいる。その際、機構とかんぽの間で、簡保の利益のうち契約者への配当に回すのを「8割」にとどめる取り決めにしたため、残り2割の利益がかんぽ生命の内部留保に回るようになった。
機構が9月末に公表した旧契約の14年度決算では369億円の利益がかんぽ生命に回った。14年度の同社の純利益817億円の45%にあたる。付け替えてきた利益を配当に回せば、今年3月末の旧契約で1件あたり約1万円になる計算だ。
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