韓国の朴槿恵(パククネ)大統領に男女関係に絡むうわさが出ていることを紹介した記事で、名誉を毀損(きそん)したとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)の論告求刑公判が19日、ソウル中央地裁で行われ、検察側は懲役1年6月を求刑した。判決は11月26日。

 韓国で外国メディアの言論活動をめぐり、記者に懲役刑が求刑されるのは異例。国内メディアに対しては厳しい求刑も出ているが、これと同様に処罰を求める姿勢を示した。小林毅・産経新聞社取締役は「驚きと怒りを禁じ得ない」とのコメントを発表した。

 検察側は論告で「うわさが虚偽と認識して記事を書いたのは明らか」と指摘した。

 加藤氏は昨年4月の旅客船セウォル号沈没事故当日、朴氏が元側近の男性と会っていたとのうわさがあると、韓国紙、朝鮮日報のコラムなどを引用し、同年8月に記事にした。

 検察側は「事故後の韓国社会の混乱期に、出所不明の虚偽事実で(大統領の)名誉を毀損した重大事案」と批判した。

 加藤氏は最終意見陳述で「大統領の名誉を毀損する意図がなかったことは公判で理解してもらえたと思う」とし、「裁判所は言論の自由への国際的常識や韓国国民の良心に立ち、法治国家の名にふさわしい判断を示してほしい」と求めた。

 裁判長は3月の公判で「うわさの内容は虚偽」と判断。弁護側は記事が名誉の毀損に当たらず「公益性」があったとの主張に焦点を絞り、証人として出廷した西日本新聞社ソウル支局長らは在宅起訴を「行き過ぎ」などと指摘した。

 論告求刑公判は当初9月21日に予定され、今月下旬にも判決が言い渡されるとの観測があったが、検察側の要請で約1カ月延期。11月1日に開催が見込まれる日中韓首脳会談を控えた段階での判決言い渡しを避ける政治的配慮との見方も出ている。(共同)