ソウル=東岡徹
2015年10月19日19時16分
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を記事で傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長(49)の公判が19日、ソウル中央地裁であり、検察は懲役1年6カ月を求刑した。加藤氏は、朴氏の名誉を傷つける意図はなかったとして改めて無罪を主張した。
地裁での裁判は結審し、判決は11月26日に言い渡される。日本の政府やメディア団体は、報道の自由を脅かすとして起訴自体を厳しく批判してきた。有罪判決だった場合、好転の兆しが出始めた日韓関係にも悪影響を及ぼしかねない。
問題になったのは、昨年8月に産経新聞のウェブサイトに掲載された「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題した記事。韓国紙・朝鮮日報のコラムや証券街の情報を引用しながら、朴氏が昨年4月の旅客船事故の当日に元側近の男性と会っていたという「うわさ」を紹介し、「朴政権のレームダック(死に体)化は、着実に進んでいるようだ」と締めくくった。
検察側は19日の論告で、大統領府の出入り記録、元側近の証言や携帯電話の記録などから旅客船事故当日に朴氏が元側近と会っていた事実はないと指摘した。そのうえで、加藤氏は朴氏の名誉を傷つける目的で虚偽の事実を報じたと主張した。弁護側は最終弁論で、記事の一部が虚偽だとしても加藤氏はそのような認識を持っていなかったと反論し、無罪を訴えた。
この日は被告人質問もあり、加藤氏は、日本の読者の関心にこたえるために書いた公益性のある記事だとして、「誹謗(ひぼう)の目的ではない」と述べた。記事で取り上げた「うわさ」は、取材で実在すると確認したと強調した。一方で、うわさが真実かどうかといった検察側の質問に対しては、「答えは控えたい」と述べるにとどめた。うわさについて大統領府に取材したかどうかについても明らかにしなかった。最終意見陳述では裁判所に対し、「言論の自由に対する国際的な常識や韓国国民の良心に立ち、法治国家の名にふさわしい判断を示してほしい」と訴えた。(ソウル=東岡徹)
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小林毅・産経新聞社取締役(編集担当)のコメント この裁判が国際常識とかけ離れたものであることは明白だ。にもかかわらず、論告求刑にまで至ったことに驚きと怒りを禁じ得ない。異論や反対意見を許容する言論、報道、表現の自由は民主主義の根幹。韓国は今こそ、この根本に立ち返り、国際常識に即した判断を行うよう強く求める。
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朝日新聞国際報道部
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