島本啓輔
エール出版社
1500+税
著者は国立大医学部に、独学で合格しています。
中学時代は勉強せず、高校も早々に中退し、高卒認定試験の後、広島大学医学部に合格しました。
初版は2009年ですが、2015年に3版になっています。本書の優れた点は、各教科(数学・国語・理科・社会・小論文)ごとに数冊の参考書・問題集がレベル別に紹介されていることでした。合わせて各時期ごと(普段・直前期)の勉強法も紹介されていました。参考書・問題集の紹介は他の学部を受験する人にも使え、センター試験対策にも有効のはずです。
著者は受験には塾も予備校も高校も不要と述べていますが、本人のヤル気と正しい試験対策さえあればいいということでしょう。試験勉強は一種のゲームで何%を正答すれば合格できるか、大体の線がわかっているものです。もちろん、習ったところから出る以上、狙うのは満点となりますが(小さい頃から父にそう言われて育ったので)、社会人の勉強とは質も目的も異なります。
皆さんの中には、試験勉強ではなく、ある目標・目的に合わせた勉強がしたい(している)人が多いでしょうが、まずは目標(目的)の強さがポイントです。なんとなくではなく、どうしても必要、絶対にやるんだという精神が核になります。
目標については長期(最終)中期、短期と分けて、計画を立てておき、毎日の進捗(しんちょく)状態を記録するのです(これ、絶対にすべき)。時間に関しては、最初から長くするのではなく15分30分など、短く区切って始めます。記憶すべきことは5分3分1分など、ストップウォッチでリミットを設けるのも有効です。勉強の成果を常に意識して、量など視覚化できるものは目に見るようにしていきます。
特別に勉強という形はなく、生活の一部にしてしまうことです。記憶については、部屋の家具や電化製品や備品にあてはめていく(机の上に〇〇がのっているなど)体の部位を利用する(頭の上に△△があり、口には☓☓)物語を作る、などいろいろな方法がありますが、どれがいいか迷う前にどれか一つを試すことをオススメします。一つの方法ができれば他もできるようになります。
私は子供の頃から訓練してきたので、そういう方法は使わず、頭から片っ端に記憶していきました。黙って6カ月1年と、ほぼ毎日トレーニング(周囲のことを全て記憶する、本を丸暗記する)すれば、100%向上します。
本も初めは一行、次は二行、と続けることが重要です。すぐに成果が出ないからといって、やめるから向上しません。我慢して続ければ(そのために明確な目標・目的が必要)、ある日、大きく向上します。覚えたことは誰かに教えるつもりで、自分のアウトプットの方法を作るのです。私は必要最小限をノートにメモし、後から見出しだけを見て、内容がわかれば、そこに大きな☓をつけて消します。
勉強は、その時だけではなく、食事時、作業中、床に入ってからも記憶したことを胸の内で反芻するのが習慣です。覚える時に心がけるのは、「俺はできる」と念じることでした。
要は時間の問題だけと確信しています。不安を抱きながらでは効果も半減するのです。
初めからまとまった時間に耐えられないのなら、5分10分から始めます。ただし、毎日の状況を必ずメモしておくことです。あと大切なのは自分の頭・言葉に置き換えられるか、絶えず意識していなければなりません。
皆さんは私のように荷物の量に制限はないので、本・参考書などをとっておき、覚える部分の見出しとページのみをノートにメモし、それだけで何のことか、引き出すようにトレーニングできるはずです。的確に言えなかったなら、本や参考書を見直すことができます。
筆記の時間も節約できるでしょう。私は荷物の量に制限があるので、読んだ本はすぐに社会の人や養護施設に送っています。ノートには概要(詳述は時間がもったいないのでしません)とページ数をメモし、万一、わからなければ再度、購入と決めているのです。
若い時から本は「一期一会」の覚悟で読んできました。自分の頭で考えるためには、素朴な懐疑心を持つことです。どうしてそうなるのか、他に方法や理論がないのか、それはどうしてかなど、幼少期からの「どうしてちゃん」(母の言葉)「なんでよ君」(妻の言葉)が直らずにきています。
他に励行していたのは、極力、短時間で周囲や他者を観察して記憶したり、向こうから来る車のナンバーを何台分覚えられるかゲーム化していました。記憶力は筋肉と同様で、日々、鍛え続けければ必ず向上します。というより、筋肉とは比較にならないくらいに、限度はありません。どんな時代(特にこれからは)でも勉強する習慣は不可欠であり、5年10年20年後を見据えて取り組んでほしいです。
仕事がどうこうよりも、生まれてきた以上、己のベストはどこまでか追求するのは楽しみ(時には苦しみ)であります。今後も社会人向けの勉強の本(学生用も)を取り上げていく予定です。「学ぶ」というテーマでは
『頭がよくなったと実感できる習慣術』(河出書房新社)
『論理的に考え、書く力』(光文社新書)
『夢をかなえる勉強法』(サンマーク文庫)
などありますが、何よりも習慣をつける(それ以前に強い目的意識)ことですね。
『何事もならぬといふ事なし。一念起ると、天地も思ひほがすものなり。成らぬといふ事なし』
これは『葉隠』の一節でしたが、少しずつでも実行あるのみ!(美)