(写真左から)パネルのモデレータを務めたえふしん氏、MonotaROのIT部門長・安井卓氏、ゼロスタート代表の山崎徳之氏、GunosyCTOの松本勇気氏、ユーリエ代表の池内孝啓氏
今年10月9日~12日の4日間で開催された、Pythonistaたちの祭典『PyCon JP 2015』。開催期間中の来場者は過去最大の602名を記録し、Pythonコミュニティの盛り上がりを示す形となった。
この盛況の一端を担っているのが、PyCon JP実行委員会が企画しているイベントだ。今年は子ども向けワークショップなどが新規開催されたが、『PyCon JP 2014』から実施されているジョブフェアも数多くの聴講者を集めた。
今年のジョブフェアのテーマは「Possibilities of Python ~Python で広がる仕事、キャリア、未来~」。モデレータに弊誌連載陣のえふしん氏を招き、以下の登壇者がPythonの魅力や将来性、コミュニティに期待することなどを語った。
≪登壇者≫
■株式会社MonotaRO 執行役 IT部門長 安井卓氏
■株式会社ゼロスタート 代表取締役社長 山崎徳之氏
■株式会社Gunosy 執行役員 CTO 松本勇気氏
■株式会社ユーリエ 代表取締役社長 兼 CTO 池内孝啓氏
彼らのパネルディスカッションから垣間見えたのは、Pythonの現状のみならず、「プログラミング言語とサービス開発」の本質だった。当日のパネルディスカッションをダイジェストで紹介しよう。
「Pythonはサービスの仮説検証フェーズに向いている」
自社におけるPython活用について語るGunosy松本氏(左)とユーリエ池内氏
パネルに登壇した企業のほとんどが、自社サービスの開発・運用にPythonを使っているということもあり、最初に語られたのは「Pythonの持つ可能性」についてだ。
各種工具の通販サイトとして知られる『モノタロウ』を運営する安井氏は、「基幹システムをはじめ、ほとんどすべてのシステムをPythonで書いている」と言い、最大のメリットを「ライブラリが豊富で、本格的に仮説検証できること」と語った。
加えて、Gunosy松本氏やユーリエの池内氏は、データ解析システムの開発におけるPythonの利便性を強調。
昨年の『PyCon JP 2014』で「Pythonを使ったデータ分析」をテーマに登壇していた池内氏は、「5年前くらいは、データ解析といえばRなどを使うのが主流だったが、去年、今年くらいからPythonが主流として広まり出したと感じています。機械学習やディープラーニング用のライブラリが使いやすいのが要因」とその理由を分析する。
このように、「ライブラリの充実」と「データマイニング時の便利さ」を理由に広まりを見せるPythonだが、開発におけるスピードやスケーラビリティを考えた際、シーンに応じて他言語との併用も検討するべきという意見も出ていた。
実際、Gunosyでは「分散システムとダッシュボードも含めたフロントエンド開発にはPythonを使う一方で、他のシステムにはGoを採用していたりする。フロントとバックで棲み分けをしてくのがいいと考えてる」(松本氏)とのこと。
また、ゼロスタート山崎氏は、事業展開の観点からこのように述べていた。
「サービスの方向性を決める仮説検証フェーズでは、Pythonのライブラリの豊富さはとても有用。しかし、サービスの進む方向性・ロジックが決まったら、Pythonにかかわらず『どの言語でも構わない』というのが個人的な印象です」
サービスの初期設計の段階や、プロトタイピングのフェーズでは、開発スピードが何より重要視されるため単一言語でサービスを磨き込む方がいい。池内氏は、「Pythonは解析からフロント開発まで一通りフォローしているという点で、『入り口としての入りやすさ』が魅力」とも話していた。とはいえ、その後のスケールや(プログラマーの教育コストも含めた)コストパフォーマンスなどを考慮した場合は、言語の良し悪し以上に「開発チームにおける慣れ」や「使い勝手」も視野に入れた選択が求められるということだろう。
コミュニティに期待するのは「多様性」
事業経験の豊富なMonotaROの安井氏(左)やゼロスタート山崎氏は、持続可能性の面から言語選択の理を話す
この現実的な言語選択の重要性について、MonotaROの安井氏は自社におけるエンジニア教育の例を基にこう付け加える。
「早く開発にトライして分析して……というサイクルを高速で回しながら経験を積むことができるという点では、Pythonは非常に優れていると思います。
だから当社では、若手育成の際に『まずPythonを一通り教えて』、『その後にWebサービの担い手として学んでもらう』というステップを踏むようにしています。
ただし、開発時の問題解決で必要なモノ、問われる能力はもっと広い。だからプログラミングの知識は常に縦横に広げるべきだと思います」(安井氏)
ゼロスタートの山崎氏も、事業の継続性という面からこう私見を述べる。
「開発で大事なのは、『何を目的にPythonを選ぶのか?』という点です。個人の市場価値の面で仕事にありつけそうだからとか、『この言語は美しい』という理由だけで言語を選ぶという動機は最低の部類(笑)。そんなことよりも、『まず今止まっているサーバを直そうよ』と思ってしまいます。言語に賭ける夢や理想はコードを書く上での求心力として必要だけど、本質はそこじゃないと理解すべきでしょう」(山崎氏)
こういった視点を持ったエンジニアを輩出するという意味で、Pythonのみならず、プログラマーコミュニティに期待することは「多様性」だと皆が異口同音に語っていた。
「最初は汚いコードで成り立っていたサービスが成長していき、数百名規模のエンジニアを抱えるようになると、言語そのものも磨かれていくものです。だから、言語系コミュニテに必要なのは、まずプロトタイピングを支援することじゃないかなと思います」(松本氏)
「90年代から今までの歴史見ても、プログラマーコミュニティが“キャッキャウフフ”してる言語は使い手も増えていく傾向があります。Pythonはクールな言語だけど、まだまだアンダーグラウンドな印象があるので、コミュニティとしていろんなカタチで盛り上げてほしいと思います」(山崎氏)
取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)