中国が大量売りの米国債、米国勢は気にせず記録的ペースで購入
2015/10/19 12:02 JST
(ブルームバーグ):中国が米国債市場でのプレゼンスを縮小しつつあるという警鐘が発せられる中で、1つの単純な事実が見過ごされている。それは米国の需要がかつてないほど盛り上がっている点だ。
米国債入札での国内投資信託による購入額が記録的規模に上っているだけでなく、12兆9000億ドル(約1540兆円)に上る米国債市場での米投資家の保有シェアも2012年以降で初めて増えたことがブルームバーグの集計データに示されている。
海外勢では最大の米国債保有者である中国が少なくとも01年以降で初めて保有を縮小しているだけに、米国勢の購入は米国の資金調達コストの抑制で極めて重要になっている。米国債の指標10年債利回りは今年、市場の大方の予想に反して低下し、先週は一時2%を割り込んだ。
米国は中国の気まぐれの影響を受けやすくなると見る悲観論者のシナリオ通りにはなっていないが、米国勢の資金が米国債に流れ込んでいる現状はもっと深刻な懸念を示唆するのかもしれない。つまり、米経済は賃金が伸び悩んでインフレ率もほぼゼロの状況にあるため、金融当局が利上げに踏み切るほどには力強くはないという不安だ。
RBCグローバル・アセット・マネジメントの米債券共同責任者、ブランドン・スウェンセン氏は「世界の成長やインフレ、金利に悲観的な見方が強まるなら、資産運用者はそうした環境で米国債を買うだろう」と指摘した。
米国がリセッション(景気後退)からの脱出を目指して多額の借り入れを行う中で海外勢がこれまで、米国の資金調達で重要な役割を果たしてきた。08年以来、海外勢の米国債投資額は2倍強に拡大し、現在の保有額は約6兆1000億ドル。けん引役は中国で、好景気の中、自国通貨の上昇抑制のためのドル買いを背景に、米国債に多額の資金を投じてきた。
しかしここにきて、中国の姿勢は変化しつつある。低迷する景気や株式相場を支援するための資金調達が必要となった中国は今年に入ってだけでも保有を約2000億ドル相当減らしており、このパターンが続けば、年間でも初めて米国債保有が減ることになる。この額には中国の保管口座が存在するとアナリストらが指摘するベルギーの数字も含まれる。
原題:China’s Selling Tons of U.S. Debt. Americans Couldn’t Care Less.(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Daniel Kruger dkruger1@bloomberg.net
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更新日時: 2015/10/19 12:02 JST